2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
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 FE
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 FE10
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カメラ雑文

[839] 2015年04月13日(月)
「デジタルでのモデル撮影会(1)〜事始め〜」


●撮影会に行く目的
我輩は5年ほど前から、当ウェブサイト以外にブログなるものを日常更新している。
内容は、日常の他愛無いことを投稿するだけ。ごくまれに、思うことがあってつらつらと文章を書くこともあるものの、ほとんどは日記的写真を掲載して一言添えるのみ。ありがちなブログ内容とも言えるが、我輩にとっては単なる維持のための更新となっている。なぜにこの我輩が、そんなことをやっているのか。
実は、このブログをやることには明確な目的があった。

今からおよそ10年ほど前の2003〜2005年の期間、我輩はモデル撮影会に何度か参加し、その様子は当時の雑文で書いている。
(参考:雑文451雑文466雑文467雑文479雑文509雑文512雑文529雑文530雑文531

当時はお気に入りのモデル3人をターゲットとしてそれぞれ撮影していたのだが、少人数参加の撮影会だったので参加費はそれなりに高額。せっかく高い金を出して参加するのであるから、その出費をムダにせぬよう重要イベントの位置付けとし、完全本気の中判カメラ撮影で臨んだ。そうなると撮影カットが増えれば増えるほど撮影コストも膨らむ。その結果、撮影会1回あたりの費用が7〜8万円(参加費含む)にもなった。
当然、よほど気に入ったモデルでなければ、そこまでの出費は出来ない。

当初は、必要度の低いカメラ機材を売却するなどして金の工面をしてきたのだが、回を重ねるうちに売る物も無くなり、いったん撮影会活動を休止した。
しかしその間にお気に入りモデル3人が撮影会から卒業してしまい、そのまま我輩の撮影会活動は終息した。

撮影会に行く目的とは何だろう?
女性を撮影対象とするのは、男の本能という面は否定出来ないだろう。いや、否定どころかそれが大変重要ではないかと考える。それゆえ、理由をそれ以上深く掘り下げようとしても、「女を撮りたいから」で終わってしまい、もう説明のしようがない。

それ以外の目的としては、「撮影テクニックを駆使して作品を創りあげること」、それから、「撮影機材の性能をフルに引き出すこと」というものがある。
もちろんそういったことは撮影会に限らず他の撮影でも同じであろう。しかし、撮影会が他の撮影と大きく異なるのは、それが撮影を目的として行われるイベントだという点である。

これはどういうことかと言うと、例えば、いくら子供の運動会が大事なイベントであろうとも、運動会そのものは撮影のために開催されるわけではない。撮影に失敗しても運動会は成立する。しかし、撮影会は撮影のためだけに開催されるので、撮影を失敗すれば目的を失う(※)。別の言い方をすれば、撮影禁止の運動会があっても不思議ではないが、撮影禁止の撮影会というものは無い。
(※撮影会参加の目的が撮影ではなくモデルとの交流という者もいるらしい。これについては我輩は否定も肯定もしない。だが少なくともここで触れる話題ではない。)

そして繰り返しになるが、撮影会は高い金を払って参加するものであり、時間枠も決まっており、撮影時の集中の度合いも他の撮影の比ではない。

●モデル探し
さてその後、2010年頃になると我輩のデジタル撮影環境もそれなりに充実してきた。十分な性能のデジタル一眼レフと大容量メモリ、画像処理に適した大ディスプレイとキャリブレーションシステムの導入、そしてRAW現像のワークフローも確立した。
この我輩のデジタル撮影環境は、いったいどれくらいのポテンシャル(真の力)を持っているのだろう? それを確かめるには、良質で光量十分なストロボでの撮影が最適である。

もちろん、これまでも屋外での日中シンクロ撮影で植物などを撮ってきたわけで、その実力の高さは、日常の撮影を通して感じている。
しかし今回、スタジオでストロボを使ったモデル撮影にてデジタルカメラを投入しようと考えた。これでどれほどのクオリティが得られるのかを知りたい。

そのためには、まずモデル探しを始めねばならぬ。このプロセスは大変重要で、かつ骨が折れる。
もし、手間を省いて適当なモデルで撮ったとしても、それでは写真の最終評価は出来ない。なぜならば、撮影対象が自分の気に入ったモデルならば、その魅力が写真に表現されない場合は撮り方が悪いということを認めざるを得ない。

しかし適当に探したモデルを撮影したとすれば、どう撮ろうとも魅力は感じないので、よほどの失敗写真でない限り、正しく撮れているのかは分からない。
もちろん、ブスを美人として写せるカメラや撮影テクニックがあればそれはそれで凄いとは思うが、例えば肌荒れの酷いモデルなのにカメラの解像が悪いためにボケてしまい、かえって肌がキレイに見えるなどということも有り得る話。その場合、カメラの性能の悪さが福となすわけで全くナンセンス。
だから、どんなに手間をかけても、自分にとって魅力的なモデルを選ぶべきなのだ。

そもそも撮影時の意欲として、自分の気に入ったモデルかどうかで全く変わってくる。
20年以上前に某フィルム会社主催の無料屋外撮影会に参加したことがあったが、その場でモデルたちを見て、適当なモデル嬢にくっついて撮影した。しかし撮影は気が全く入らず、撮影後のポジにも執着が無く、適当にピントチェックなどをして終わっただけだった。何の意味も無い。
その後、いくら無料の撮影会であっても、気に入ったモデル嬢でなければ撮らないこととした。

そういうわけで、モデル探しは入念に行うわけだが、インターネット利用の進んだ現在では、撮影会スタジオの公式ウェブサイトから探していくこととなる。
所属モデルの一覧から探しても、中にはほとんど活動休止状態のモデルもいるので、スケジュールページを毎日のように巡回する必要がある。それを複数の撮影会スタジオのウェブサイトに対して行わねばならぬ。

またそれと並行して、某有名ブログサービスにて我輩のブログ開設をおこなった。
このブログサービスを選んだ理由は、そこで多くの有名人がブログを開設しているからである。芸能人だけでなく、コンパニオンやモデルなども大抵このブログサービスを使っていることが多い。だから我輩は同じブログサービスを利用し、交流ツールを通じてモデルとの交流を図り、撮影に役立てようと思った。
ただし、交流しようとしても開設したばかりでは恰好が付かないので、モデルを見付ける前から更新実績を作っておきたい。

さて、ブログは無事に開設出来たものの、モデル探しのほうは難航を極めた。
数ある撮影会スタジオのウェブサイトをそれぞれ見ると、当然ながら所属モデルのプロフィールが出ている。しかしそこには小さな写真1〜2枚ある程度。
モデルによっては撮り方で全然違う顔に写る場合もあり、そこから実物の顔を知るのは難しいことが多い。

とは言うものの詳細は分からないながらもイメージに合いそうに思える写真があれば気になるので、もう少し大きな画像は無いかと写真をクリックすれば、モデル本人のブログやツイッターへ飛ばされてしまう。そこには「自撮り写真」と呼ばれる自分写真が掲載されているが、至近距離での撮影のため顔の遠近感が強すぎたり、酷いものになると鏡に映った姿を写して顔の部分がスマートフォンに隠れているものもある。宣材写真としては全く参考にならない。

また他にも、プリクラ写真ばかり掲載されいているモデルもあり、最近のプリクラは目を異常に大きく加工する機能があるらしく、まるで妖怪のような出目金写真で思わず仰け反る。これは最近流行りの「変顔(へんがお)」の一種とのことで、わざと奇妙な顔を載せたがるものだという。我輩には流行りなど解らぬが、いずれにせよ本当の顔が確認出来ないので話にならない。

もちろんモデル本人のブログを否定しているわけではない。それはそれで人となりが分かって良いとは思うし、カメラマンとの接点ともなる。だからこそ、我輩もブログを開設したのだ。しかしだからと言って、宣材写真としてブログへリンクさせるのは手抜きと言う他無い。

仕方無いので、モデル名をキーにしてウェブ検索してみるが、カメラマンが撮影した写真をウェブサイトに掲載を許可しないモデルなどは、インターネット上に全く写真が存在せず検索ヒットしないことも多い。場合によっては同姓同名のAV女優しか出ないこともある。

結局、たった1人のモデルの可否を決めるのに30分以上かかることもあるし、結局最後まで分からなかったということすらある。

もちろん、気に入ったモデルが1人も見付からないわけではないのだが、撮影会のウェブサイトに登録されているモデルの全員が活性化しているわけではなく、スタジオに在籍していながらも、撮影会スケジュールのほうには全く登場しないモデルも多い。気に入ったモデルが見付かってもそういう部類ならば撮りようが無い。

そんな状況ではあったが、開設したブログのほうは放置するわけにもいかず、日常の他愛ないことばかり書き、とりあえずの更新実績だけを積み重ねていった。
そして5年。
ようやく今年になって、撮影したいと思わせるモデル嬢が撮影スケジュールに登場した。
それまで意味の無いブログ更新が5年も続いていたことは自分自身でも驚くのだが、そんな地味な苦労よりも、撮りたいモデルを探す努力がようやく実った喜びのほうが大きい。

デジタルカメラでモデル撮影しようと考え始めて5年。その間にフルサイズのデジタル一眼レフカメラも3台(※)使ってきたものの、ついぞモデル撮影会で投入することは無く、今回、マイクロフォーサーズカメラを投入することとなる。
(※「Canon EOS 5D Mk2」、「Nikon D700」、「Nikon D600」の3台)

だが、マイクロフォーサーズというフォーマットでの撮影に不安は無い。今時のデジタルカメラならば、適正な感度(ベース感度)で適正な露光を得ればフルサイズに遜色無い画質が得られることは分かっている。ノイズ嫌悪症の我輩が言うのだから間違い無い。
今回使う予定の「OLYMPUS OM-D E-M1」では、ベース感度はISO200であるから、中判で使っていたISO100に比べれば高感度で撮り易かろう。

さて、肝心なモデル嬢の件について。
仮にその名前を「R嬢」としておく。R嬢を見付けたのは1年くらい前。ウェブ上にある写真を見ると強い目ヂカラを感じた。白目がちで視線が鋭く、ともすれば「目つきが悪い」と言われるかも知れないが、我輩はセクシーな印象を受けた。これは、完全なる我輩趣味である。

ところが残念なことに、R嬢は3年前からモデル活動をしていないようで、この様子ではそのままモデル界からフェードアウトしてしまうのではないかと思われた。
せっかく見つけたモデルなので諦めきれず、とりあえずウェブ上にある写真を拾って保存し、モデル候補の1人とした。他にもこういう状態のモデルは2〜3人いるが、モデル復活した試しが無い。

その後また無益な検索作業をダラダラと続けた。
どのモデルも目がパッチリとしてかわいいことはかわいいが、個性が無くどれも同じように見える。そのせいで、以前調べたモデルなのに気付かずまた調べていたりすることもある。宣材写真が少ないモデルほどそうなることが多い。

そんな検索作業が1年続いた後、別ルートから再度R嬢のブログに行き当たった。見ればなんと、つい最近活動を再開したというではないか。このチャンスを逃すわけにはいくまい。早速、撮影会スタジオのウェブサイトに行ってスケジュール表をチェックすると、平日の夜に1対1撮影の個別枠が4枠あり、そのうち遅いほうの2枠が既に予約済みとなっている。ボヤボヤしていると残り2枠も埋まってしまうと焦り、すぐさま残りの2枠を確保した。1枠9千円なので1万8千円。大きな出費だが、数年かけて厳選したモデルなのだからその価値はあろう。

初めてのスタジオ場所なので作法やルールなど不安な点もあるが、焦って予約を入れたので気持ちが迷うヒマも無く、踏ん切りも付いた。
そしてこれで、撮影についての具体的な計画も立てられる。

●撮影計画と準備
撮影日は平日の夜ということで、会社帰りの対応となる。幸いなことに、スタジオの場所は通勤経路から近いので、我輩にとってアクセスが良い。
ただしその反面、撮影機材は通勤カバンに入る範囲での持ち込みとなる。我輩にとってライティングはストロボ以外に有り得ないので、カメラとレンズ以外にもストロボ類が必要となる。
1対1の撮影枠では好きなようにライティング機材が設置出来るので、せっかく高い金を払うのであればライティングにはこだわりたい。
しかしそんな大掛かりなライティング機材を、通勤で持ち歩ける範囲に収められるだろうか。

まずカメラとレンズについては、マイクロフォーサーズなので軽量コンパクトで済む。
コンパクトだからと言って画質に妥協は無く、ローパスレスのイメージセンサーを持つカメラ「OLYMPUS OM-D E-M1」と超高性能ズーム「OLYMPUS 12-40mmF2.8」は画質最優先の組合せとなり、今回の撮影に相応しい。スタジオライティングという理想条件で撮影する女性写真にて、いったいどんな画像を生成してくれるのかを楽しみに思う。

問題は、肝心なライティングであるストロボ機材のほう。
持ち運びを考えると、クリップオンストロボしか選択の余地は無い。メイン1灯とサブ1灯、そして着色光の1灯の、計3灯を使いたい。そこに予備の電池を入れるとそこそこの容積・重量となってしまうが、何とかなる範囲かと思う。

スタジオは天井や壁面が白なので、単純にバウンスすれば光が回って影の無い柔らかな描写が得られよう。それによりモデルの顔も淡く、シミや肌荒れなどを隠すことにもなる。
つまり、誰からの評価も高い万人ウケする写真となるはず。当然、モデル本人からの高評価も得られるに違いない。

しかしそういう写真は、我輩自身好かん。
我輩は、女性写真には生々しい存在感や立体感、そして重量感を求める。我輩が自らの要求によって撮る写真なのだから、我輩が納得するように撮らねばその写真に何の意味があろう。

そこで今回、横からの光を主光として立体感を表現する方針とした。それによって全体的な立体感だけでなく、産毛や毛穴さえ浮き上がらせ、肌の質感も表現することを狙う。
そのような微細描写が我輩所有カメラで可能であるのか、そこが試されることとなろう。

<天井バウンスのみで撮った黄色いブタ>
毛並みが柔らかく見え、縫い目も目立たないが、質感や立体感などは弱い。
天井バウンスのみで撮った黄色いブタ

<直光を追加して撮った黄色いブタ>
毛は固そうで縫い目も目立つが、質感は鮮明で立体感もある。
直光を追加して撮った黄色いブタ

<ライティング状況>
ライティング状況

これはある意味、写真界のアンリ・ルソーになることを意味する。
もちろん作風の話ではなく、周囲やモデル嬢に理解されずとも自分の世界を突き進む信念のことを言っている。アンリ・ルソーの逸話の中で、自分を描いた絵を見たモデル嬢が怒ってその絵を破り捨てたというのは有名だが、我輩も周囲の評価など気にせず、モデルに嫌われようとも自らの趣味に走って写真を撮る勇気を持ちたい。
(参考:雑文588

さて、ライティングの具体的方法としては、(バンク)ソフトボックスを使い、柔らかいながらも方向性の強い光を横から当てようかと思う。
普通のバンクはジェネレータ式のストロボヘッドを装着するようになっていると思うが、探せばクリップオンストロボ用の、かつ持ち運びに楽な折り畳み式や分解収納式のものがあるはず。
検索してみるとズバリの製品が「プロ機材ドットコム」というショップから1万5千円ほどで出ていたので早速注文。バンクは以前から欲しいと思っていたので、ちょうど良かった。

ただ、バンクは大きいので、スタンドなどの支柱が必要となる。
しかしスタンドのような長くてガチャガチャするものを通勤で持ち歩くのは大変。そこで今回、以前から屋外ラジオシンクロで使っているポールポッドを使うことにしたい。これならば多少バラせるのでカバンの中に納まり好都合。

<分解収納式のソフトボックス(バンク)>
分解収納式のソフトボックス(バンク)


●撮影当日
撮影当日の朝、機材一式をバッグに入れて出勤した。通勤カバンではなく旅行バッグを使うことになったが、それでも1泊出張程度の荷物で、通勤電車の中でも特別難儀しなかった。そもそも普段使っている通勤カバンが大きいので、旅行バッグに替えてもそれほどの違和感が無い。

その日の業務を終えた夕方、事務所を出たその足でスタジオに向かう。時間的には十分に余裕がある。順調ならばどこかで時間を潰さねばならぬほど。
ところが事前に調べていたにも関わらず、乗り入れ路線違いの電車に乗ってしまって時間を浪費することとなり、スタジオの最寄駅に着いた時にはもう余裕は無かった。

駅からの距離を考えると迷っているヒマは無い。しかし地下から地上に出ると現在地点を見失ってしまった。ビルが林立して見通しが利かず、地図上にある目標物が見付からない。
そんなこともあろうかとポータブルナビを取り出したところ、現在地点の測位にかなり時間がかかっている。これには焦った。
しかし当てずっぽうに歩いてしまうとかえって遠くなる危険性もある。ここは辛抱するしかあるまい。

ナビの測位が終わって現在地点が示されると、後は歩くのみ。いや、小走りでないとダメか。
荷物が重い上、この季節は厚着をしており走りにくい。それでも何とか時間にはギリギリ間に合った。

スタジオに案内されて見れば、そこには6〜7台ほどのスタンドにLED照明がズラリと設置されていた。だが我輩には自前のストロボ照明があるので、丁寧にそれらのスタンドを脇に寄せ、バンクなどのセッティングを始めた。
当然ながら室内には暖房が強く効いており、小走りした後にはかなり暑く感じて汗が流れる。汗を拭きながらの作業で、事前に組み立て練習をしていたにも関わらずかなり時間を浪費した。

セッティング完了後、テスト撮影しようかと思ったその時、R嬢が登場。
R嬢を目の前にした第一印象としては、驚きも無く落胆も無い。事前に思い描いていたイメージそのままドンピシャリ。リサーチに時間をかけた成果と言える。

テスト撮影がまだ終わっていなかったので、挨拶もそこそこに、撮影しながらライティングの微調整をしていくこととした。
「OLYMPUS OM-D E-M1」の背面ディスプレイを見て丁度良い感じになり、そのまま本番撮影に移行。しかし、以前「E-M1」の背面ディスプレイ上で調整して失敗したことを思い出した(参考:雑文818)。確か、背面ディスプレイで見ると実際よりも硬調に見えるはず。ならば、イメージよりも硬調に見えるくらいが正解か。

硬調か軟調かという問題は、RAW現像時にどうとでもなるような気もするが、実際はそんなに簡単な話ではない。
しかも今回は白壁バックなので、下手なライティングをすれば衣装の白い部分が壁の白に溶け込んでしまう。一旦そうなってしまえば、もはやRAWデータを弄っても分離することは不可能。
やはり基本は、撮影時に最大限の調整をすべき。

さてR嬢の表情について、笑顔ではないほうが我輩のイメージに合っている。笑うにしても口を閉じた状態の微笑程度が良い。
しかしながらコミュニケーションの一環で冗談を交えた会話を入れるので、どうしてもR嬢は笑ってしまう。もちろんオヤジギャグなので面白くも無かろうが、R嬢も礼儀として笑うしかない。実に良い子だ。
それにしてもR嬢も慣れたもので、笑ってはいても撮る時には指定した表情をしてくれる。モデルは3年ぶりだと言うが、そこはさすがだと感心する。

撮影は2枠で約2時間ほど。1枠につき衣装2着で、計4着のパターンで撮影した。
衣装は基本的にスタジオに備えられたものの中から指定するのだが、メイド系やスクール系などコスプレ的な衣装は多い反面、普通の衣装はあまり無い。

以前、「一般人では着ないような衣装だからこそわざわざ金を出す意味がある」と書いたことがあったが、さすがにコスプレばかりでは撮影のシチュエーションに悩むし、人に見せるのも抵抗がある。例えば世間話で「ポートレート撮影してます」という話題になった時に、まさかコスプレ写真を作例として見せるわけにもいくまい。


<今回のコスプレ4着>
今回のコスプレ4着

それにしても撮影の2時間はあっという間で、合間合間で時計は見ていたが、そのたびに「もうこんな時間か」と驚く。こういう1対1の個別撮影は初めてということもあり、ペースが分からず飛ばし過ぎたか。
モデル側はどう思うかはともかく、自分の立場としては、時間が早く経つというのは充実した時間ということであり、悪い事では無かろう。

なお、撮影中は気にしなかったが、ずっとしゃべっていたので喉が異常に乾き、撮影終了と同時に疲労がドッと出た。機材撤収までは何とか頑張ったものの、帰り道の足取りの重いこと。身体に熱がこもっていたのか、冬の冷風がむしろ心地良く感じられた。

●撮影結果
帰宅後、RAWデータを現像すべくパソコンにデータを移したところ、ファイル数が約700個となっており驚いた。何かの間違いかと再確認したが、やはり700枚。
単純計算すれば1分あたり6カットの撮影ペース。そう考えると「まあそういうもんか」とも思える。しかしそうは言ってもフィルムの時代では考えられぬ枚数であることは間違いない。12枚撮りの120フィルムに換算すると58本分にもなる。およそ2分に1回のフィルム交換となるので、費用の問題以前に物理的に不可能な話。何しろ、フィルム交換作業だけで20秒はかかる。

それにしても、全てのカットがストロボ撮影なので、ストロボもそれだけの回数発光させたことになる。改めて、よくそれだけ耐えられたなと感心した。

さて、パソコンに取り込んだRAWデータを現像ソフト「SILKYPIX」に読み込んで等倍表示させたところ、思わず目を丸くした。そこには、これまでこの「E-M1」で撮影したことの無いほどシャープな画像があった。
今回の写真、なぜこうも違う?

このシャープさは、ストロボ撮影であることが理由の1つであることは間違いない。何しろ、ストロボは数万分の1秒の発光なので、スローシンクロで定常光を入れない限り、ブレは事実上発生しない。
しかしストロボ撮影は今回初めてというわけではないので、なぜ今回だけこのようなシャープな写真となったのか不思議に思う。

いずれにせよ今回の結果により、このカメラの実力は我輩が考えるよりも高かったということが判明した。これはまでは、我輩がその能力を発揮させることが出来なかっただけであり、今回まぐれながらもその能力が現れたのであろう。

改めてディスプレイ上で写真を等倍にしてみると、モデルの目にキッチリピントが合っていることが分かった。そこでふと、「もしかして、これまではピントが僅かにボケていたのではないか?」と考えた。

コントラスト式AFの場合、撮像センサーが測距センサーを兼ねているので(※)、測距系が別系統になっている位相差式AFに比べて原理的に誤差が発生しないはず。完全なるピンボケならばまだ解るが、微妙なボケというのはどうして起こるのだろう?
(※フィルム時代に存在した黎明期のAF一眼レフカメラはコントラスト式AFで測距系が別であった。またTTLですらないものもあった。しかしここでは完全なる余談。)

試しに、ファインダー画像を目一杯拡大表示させ、MF操作で厳密に合わせて撮影してみたところ、これまでに無く非常に先鋭度の高い写真が得られた。やはりピントさえ合えば極めてシャープに写るのだ。
では何がこれまでと違うのか?

推測するに、AF撮影ではフォーカスエリア内に遠近が混在することが多く、実際には狙ったものではなく隣接した別の部分にピントが合っていたのかも知れない。もしそうならば、以前「初代E-M5」の時にフォーカスエリアが大きいためにピントの中抜け現象がどうしても回避出来ないことがあったが、ピントの甘さはこれとに似た現象ではないかと思う(参考:雑文762)。

現在はピンポイントでフォーカスエリアが設定出来るようになったものの、それでもある程度の面積があるので微妙な遠近が混在することは有り得ることで、根本的には同じように中抜け問題が出てもおかしくない。小さなフォーカスエリアであるためズレに気付かなかったが、今回のように先鋭度の高い画像が撮影出来た時には、これまでのAFがちょっと合っていなかったということに気付かされるのだろう。

ではなぜ、今回に限ってピントがバッチリと決まったのだろう?
恐らくそれは、「顔認識機能」のおかげではないかと思う。今回、モデルを撮影するということで、我輩は「顔認識機能」をONとし、カメラが自動的に人の顔を認識して目にピントを合わせるようにしておいた。これならば、カメラがいったん顔を認識すればフォーカスエリアを外すことは無い。

もしそうだとすれば、我輩はこれまでこのカメラとレンズを1年以上使っていながらも、その実力を十分に知らなかったということになる。
そして今回、モデル撮影によって我輩のデジタル撮影機材の実力を知ることとなった。それはつまり、当初の目的が果たされたということになる。

なお、今回使用したカメラは「OLYMPUS OM-D E-M1」であるが、これは3年前の2012年に発売された「E-M5」の画質と同等とのこと。言い換えれば、2011年のカメラ画質ということになる。それでいてこの画質なのだから驚く。もちろん、カメラ本体だけでなくレンズのほうもマイクロフォーサーズで現状得られる最高画質である。

<E-M1とPROレンズ>
E-M1とPROレンズ

ただそうは言っても、所詮は1,600万画素。さすがに心細い。
高解像ディスプレイが普及し、更なる高解像4K・8Kディスプレイ(テレビ)が控えている今、1,600万画素の画像ではもう先が見えている。
せっかく金をかけて撮影するモデル撮影、どうせならば将来の高解像ディスプレイでも表示出来るようにもっと高画素で撮りたいところ。

マイクロフォーサーズで2,400万画素くらいのボディが1機種でもあればとつくづく思う。
小さなイメージセンサーで解像度アップはノイズが心配だと言うならば、ベース感度をISO64くらいに落とした業務用でも発売されないものか。ストロボ撮影ならばISO64でちょうど良いくらいであるし、フィルムの時代はそれで普通に使っていたではないか。


さて最後となるが、今回の撮影写真を別のウェブサイトに掲載したのでこの雑文からリンクする。
この雑文上で写真を直接表示しない理由は、今後のモデル撮影に不都合があろうかと考えたため。それゆえ、別サイトとして分け、この雑文の記事が直接写真と関連を持たない一方通行リンク状態とした。