2000/04/05
OPEN

表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
 F3 (F3H)
 FM3A
 FM2
 FM
 FE2
 FE
 FA
 FG
 FM10
 FE10
 F4
 F-401X

Canon
 AE-1P
 AE-1
 newF-1

PENTAX
 K1000
 KX
 KM
 LX
 MX
 MZ-5
 MZ-3
 MZ-M

OLYMPUS
 OM-3Ti
 OM-4Ti
 OM-2000

CONTAX
 ST
 RTS III
 Aria
 RX
 S2

MINOLTA
 X-700
 XD

RICOH
 XR-7M II
 XR-8SUPER

カメラ雑文

[466] 2004年01月24日(土)
「大撮影会2(野外編)」

我輩はギャンブルの類を一切やらない。
大学時代にパチンコを1度だけやってみたが、数十分やってすぐに持ち玉が終わってしまった。
「これはダメだ。」
我輩はそれ以上やらなかった。

この判断は全く正しい。
今の失敗を次回に挽回しようとする我輩の性格が、自分自身をギャンブルの泥沼へ突き落とすからである。
もし熱中してしまえば、何度負けても「次こそは!」と思うに違いない。


先日、雑文451にて大撮影会に参加したことについて書いた。

合計336カット撮って採用したのはわずかに30カット。率としては8.9パーセントの採用率ということになる。つまり、220フィルム1本(24枚)あたり2カットという計算。これは、構図やシャッターチャンスがどうこう言う前に、ピントや露出、ブレ無しというものを機械的に採用しただけのカウントである。実に情けない。

この8.9パーセントという採用率、もしいつものように3枚の段階露出をやっていた時の数字ならば納得出来る。段階露出をすれば、仮に全てが上手く撮れたとしても採用率は3枚のうち1枚、33パーセント以上にはならない。 しかしこの時は段階露出は全くやらずに露出の決め打ちであったため、採用率の低さは問題である。

失敗カットを分析すると、全カットのおよそ8割が被写体ブレ、そして全カットの2割くらいがピンボケであった(単純にそれらの割合を足すと10割となってしまうが、実際には被写体ブレとピンボケは併発しているものがあるため10割とはならない)。
ピンボケについては、自分自身だけの問題であるからどうにでもなろう。だが被写体ブレは相手の問題であるため改善は難しい。もし相手が静物であれば長時間露光でも動くことはないが、生身の人間であるから直立不動であってもやはり微妙にブレるもの。中判の微粒子であるから、その許容度もシビアとなる。

あらためて成功カットをよく見ると、顔はブレていなくとも身体がブレているものが幾つかあった。やはり条件として1/30秒は厳しいのか。つまり、フィルム感度100では無理がある・・・?
しかし我輩としては、せっかく中判を使うのであるから、どうしても感度100にて写真を残したい。どうしようもない場合でも、せいぜい感度200まで。

もしこれが35mmカメラであれば、明るいレンズによって問題をクリア出来よう。しかしながら我輩のブロニカレンズでは、一番明るくともF4.0のものしか無い。
「待てよ、80mm標準レンズならばF2.8だったな。」
現状のF4.0がF2.8へと改善されれば、1絞り分の明るさが稼げる。同じ条件の下でシャッタースピードが1段速く1/60秒で切れる。感度200ならば更に1/125秒か。

それまで80mm標準レンズなど使い道が思い付かず購入リストから完全に外れていたが、今回のように明るさが優先されるとなると途端に魅力を感ずるようになった。
早速、ネットオークションで標準レンズに入札し、競争相手無く開始価格25,000円にて落札した。

品物が届くまでの間、フィルムを増感現像した時のクオリティ低下を確かめようと、FUJI RDP3を用いて+1段及び+2段で試した。RDP3を選んだ理由は、RDP3が増感特性を売りにしているためである。「そこまで言い切っているのであれば」という期待があった。
しかし、元々の超微粒子に期待し過ぎたためか、結果はあまり良くなかった。恐らくこれは好みの問題なのだろうが、コントラストが強くザラザラ感が気になる。
増感はやめておく。

さて、オークションで落札した標準レンズが届き、早速ブロニカSQ-Ai本体に装着したが、コンパクトなレンズゆえに寸詰まりで頼りない。しかし、この新たな武器を手にしたことにより、「次こそは!」という再挑戦する気力が沸き上がった。

前回の数少ない成功カットをルーペで観ると非常に臨場感があり、色の深さや緻密感のおかげで、まるで目の前にH嬢がいるかのよう。片目をつぶって肉眼で見た映像そのもの。
いくら失敗しようとも再挑戦をするのは、成功カットが得られた時の達成感が35mmカメラやデジタルカメラの比ではないからだ。まさに、大儲けを目指すギャンブラーの心理状態とも言えよう。
大当たりさえ来れば、それまでの失敗が帳消しとなる・・・。


撮影会当日の1月12日(成人の日)、天気は微妙だった。
前回は野外撮影の部をパスしてスタジオ撮影のみ参加したため、今回は野外撮影から参加することにしていた。そのほうが光量不足によるブレを防ぐことが出来ると考えたからだ。
場所は、東急目黒線の武蔵小山駅近くの大きな公園。位置関係は未確認だが中古カメラで有名な三宝カメラが近くにあるらしい。

ところが現地へ向けて電車に乗っていると、陽が射したり曇ったりと定まらぬ。それはまるで花びらを1枚1枚ちぎって恋の行方を占う「花占い」のようであった。「晴れ」、「曇り」、「晴れ」、「曇り」・・・。
結局着いた時、空模様は「曇り」で終わった。

今回も前回同様モデルの人数はH嬢を含め4人だった。
参加者の人数は数えていないが、25人くらいはいたろうか。やはり中判カメラは我輩1人だった。
持参フィルムは前回同様Kodak E100G(220)を15本、そして予備に120フィルム10本である。220フィルムホルダーの中枠2つに加えて120用の中枠があるため、連続撮影可能枚数は24枚+24枚+12枚=60枚となる。一般的な35mmカメラよりもかなり多い。しかも巻き戻しが必要無い。

空は相変わらず曇っていたが、野外であるから何とかなろう。
撮影は4人のモデルごとに分かれてそれぞれに撮影するようだ。モデル1人とレフ持ちアシスタント1人の組合わせでそれぞれに場所を見付けて撮影し始めた。
我輩は直前にならないとフィルムを装填しないため(フィルムにクセが付いて平面性が失われるのを避ける意図がある)、最初の仕込みに手間取り、H嬢を後から追った。
見ると、木々の多い場所で撮影が始まっている。フラッシュメーターのスポット測光で光を測ると、ISO100では1/30秒でしか切れないことが判った。デジタルカメラでも同じ測光結果である。これでは確実にブレる。
ところが、H嬢を囲む撮影者は我輩を含めても3人しかいないのだ。他の2人が撮影した流れで我輩の順番(?)となった時に、撮らないでいることが出来ない。ブレると判っていてもシャッターを切るしかなかった。まあ、これは最初の挨拶のようなものと考えよう。

しかし他の2人も撮影しにくいのか数カット撮ってカメラの調子などを見始めた。我輩の順番がすぐに廻ってくる。まいったな・・・。
このままではどうにも出来ないため、アシスタントの女性に「ここは暗いので移動したほうが良いかも。」と控え目に言った。
「あ、じゃあ向こう行ってみますかぁ。」
恐らくは関西人であろうアシスタントは軽く言った。ああ、良かった。

我々5人はぞろぞろと歩き出し、比較的明るい場所のほうへ移動した。途中、ちょうどH嬢が我輩の隣を歩いていたので何か話したほうが良いかと思い、「さっきの場所だと暗くてブレてると思うよ。」と話しかけると、H嬢は「え、そうなんですか。」とこちらを見た。

新しい場所では、そこそこ速いシャッタースピードで切れた。
我輩が測光のためにデジタルカメラOLYMPUS C-700 Ultra Zoomを取り出したが、起動が非常に遅くイライラする。その間に他の2人が撮影を始めた。撮影者が少ないのであるから気楽にやればいいのだが、良い場所に来て自分だけ出遅れると気が焦る。

一通り撮影を終え、一行は再び移動を開始した。
途中、公園にありがちな子供の乗り物に遭遇したため、そこで数枚撮ることになった。
H嬢が乗り物にまたがった。他の2名が撮影した。我輩も遅れて撮影しようとした。だがH嬢が乗り物にまたがったまま遠慮無しに前後に大きく動くのでピントが合わない。いや、それ以前にブレてしまう。
「一瞬、止まって!」
我輩は思わず声を出した。

次の場所は、オブジェなどが置いてある場所だった。
場所的に三方からの撮影が容易で、ちょうど撮影者3人がそれぞれの場所から接近出来る。我輩は広角65mmレンズで接近して臨場感を出そうと考えた。
しかしあまり目線が来ている写真ばかりでも面白くない。しかもH嬢はふと目線を外した時に雰囲気が出る。この"雰囲気"というのは、一般的なモデルにありがちなカッコ付けのスカしたものではなく、少しお茶目な感じで後味が良い。それを言葉で指示してやってもらおうとするのだが、意識してやろうとすると上手く出来ない様子。
「さっきやったようにやってみて。」と言いたかったが、漠然と「さっき」などと言われてもH嬢も困るだろうな。
しかしH嬢は「私も、目線を外して45度くらい横に向いた顔が自分でも気に入っているんですよ。」と言った。
それ以降、我輩がカメラを構えると「目線はそっちでいいんですか?」と訊くようになった。なかなか気が利くな。
だが、後から考えれば「そっちでいいですか?」ではなく「そっちでいいんですか?」と言っていたことに注意すべきだったのだ・・・。

さてそのうち、アシスタントの携帯電話に電話が入り、レフ板を持ちながら話し始めた。
「あ、はい、はい、これ終わったら休憩ッスね。分かりました。はーい。」
休憩に入る前、我輩はH嬢に50センチくらい近付いてシャッターを切った。倍率から考えて、恐らくブレている可能性は高いが。

休憩場所では、各組が集まっていた。モデル同士並んで座り、その周りをアシスタントや撮影者たちが囲んで以前撮った写真などをモデルに渡しながら談笑していた。我輩は少し離れた場所で次の撮影に向けたフィルムの仕込みをやっていた。
実は、我輩も前回撮影した写真のプリントを1枚持参していた。最初は「写真など渡しても意味は無い」と思っていたのだが、「いや、自分がどのように撮られているのかということをH嬢に勉強させるために渡したほうが良かろう」と思い直しプリントしたのである。

通常、キャンペーンガールなどが撮影会に出るのは、カメラ慣れするという意味が強い。それと同時に、自分がどのように振る舞えばより魅力的になるのかという勉強にもなる。それには、"撮影された写真をモデル自身が見る"というフィードバックが大きく意味を持つ。
「せっかく贔屓(ひいき)にしているのだから、H嬢には吉岡美穂のように有名人になってもらいたいもんだなあ。」
自分では、暖かい目のつもりになっている。

休憩が終わると、再び各組がそれぞれの場所を求めて散った。
我輩は当然H嬢とそのアシスタントに付いていこうとしたのだが、誰も付いて来る気配が無い。アシスタントは立ち止まり「あれえ?」と見渡した。まさか、我輩1人か?それでは撮られるほうもやっておれまい。誰か来てくれ、頼む。
しばらくすると、先ほどの2人が現れて付いてきた。
なんでこんなに気を使うんだ・・・まったく。

その後、特に変わった事無く撮影は進んだ。
そして最後の場所を探して彷徨(さまよ)っていると、別の組のほうから声がした。
「ねえ、ここの場所は良いよー!」
そちらのモデルが声を掛けてくれた。
その組はもうすぐ別の場所に移るようで、今の場所を譲ってくれるとのこと。

5人でそちらに行き、その組と入れ替わった。
どういう向きで撮影しようかと皆で考えていると、先ほどの組の撮影者の1人が我々に、「こちらを背景にしたほうがジャマなものが入らないよ。」などと立ち去る前に教えてくれた。その親切が有り難い。

撮影中、強い陽が射してきた。冬の斜光がH嬢の髪の輪郭を照らし、良い雰囲気となった。野外撮影の最後を飾るひととき。シャッターを切った時の手応えは大きかった。
今まで、写真と言えばキレイに撮るということは二の次だったが、今回はキレイに撮るのが目的。キレイに写らなければ何の意味も無い。

そうこうしているうち、野外での撮影は終了した。
ずっとモデルに張り付いていた分、前回のスタジオ撮影よりも早いペースでフィルムを消費した。スタジオの場合、モデルが交互に出てくるから単純に考えると野外での撮影の半分となろうか。もちろん、野外では色々と場所を巡る時間が必要であるから、それほど単純には比較出来まいが。

全員が最初の場所に集まってきた。我輩は持参した写真のことを思い出し、H嬢に手渡した。H嬢はそのままアシスタントに写真を渡した。
時間はちょうど昼時。 午後からは近くのスタジオでの撮影があるため、各自で昼食を摂りスタジオに集合することになる。
そう言えば腹が減ったな。何処で飯を食おう・・・。

(次へ続く)