2000/04/05
OPEN

表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
 F3 (F3H)
 FM3A
 FM2
 FM
 FE2
 FE
 FA
 FG
 FM10
 FE10
 F4
 F-401X

Canon
 AE-1P
 AE-1
 newF-1

PENTAX
 K1000
 KX
 KM
 LX
 MX
 MZ-5
 MZ-3
 MZ-M

OLYMPUS
 OM-3Ti
 OM-4Ti
 OM-2000

CONTAX
 ST
 RTS III
 Aria
 RX
 S2

MINOLTA
 X-700
 XD

RICOH
 XR-7M II
 XR-8SUPER

カメラ雑文

[762] 2012年07月08日(日)
「OLYMPUS OM-D E-M5を実戦投入、その感想」


●はじめに
「OLYMPUS OM-D E-M5」を購入し約3ヶ月経った。この間に、色々なシーンで活用しそれなりに幾つかの結論を得た。
当然ながら、画質の良さに隠れていた不満点が徐々に気になってきているので、今回は褒めることが少ないことを前もって断っておきたい。

マイクロフォーサーズカメラ「OLYMPUS OM-D E-M5」。
OLYMPUS OM-D E-M5

なお、「OM-D E-M5」の評価にあたっては、我輩のデジタル写真環境特有の問題も絡んでくる可能性も考えられる。特にRAW現像ソフトによる相性も有り得る。その場合、「OM-D E-M5」に罪は無いかも知れない。しかしそれは我輩の環境の中では分からない。 それを検証出来るようにするため、下記に環境を記しておく。

<我輩のデジタル写真環境>
(※CPUとメインメモリに関しては処理速度だけの問題であるからここでは表記しない)
OS Windows7 Professional 64bit
ビデオカード メイン用:ASUS EAH3650 Silent/サブ用:ELSA GLADIAC 573 GT
メインディスプレイ HP ZR2740w (27インチIPSパネルLED/2,560x1,440)
デジタル写真はかつてディスプレイ上では等倍表示が当たり前だった。その基本に立ち返るため、出来る限り表示ピクセルの多いディスプレイを選びたい。その思想で購入した我輩設備のディスプレイの中で最新のモデルである。縦写真にも対応出来る90度回転ピボットを持つ。LEDバックライトは、電源を入れてすぐに輝度が安定するので有り難い。ただしOSD(画面調整メニュー)が用意されていないためPC側でのコントロールソフト(キャリブレーションなど)が必要。ところで我輩はブラウン管世代なのでグレア(光沢)液晶を好むが、これはノングレアなので光沢フィルムを別途貼った。価格は、本体5万6千円、光沢フィルム5千円。余談だが、解像度が高いせいで文字が小さく読みづらいため、文字物は主にサブディスプレイで行っている。
サブディスプレイ HYUNDAI W241DG (24インチIPSパネル/1,920x1,200)
かつてメインディスプレイだったが、「HP ZR2740w」購入のためサブに降格。90度回転ピボットを持つグレアタイプ。蛍光管バックライトの宿命で、電源を入れた直後1分くらいは輝度が不十分。特に写真レタッチやキャリブレーション時には念のため30分くらい暖機運転させる。
キャリブレーション Datacolor Spyder3 Pro
ディスプレイの正確な色表現をさせるためのツール。以前は「Spyder2」を使っていたが、マルチディスプレイに対応させるため「Spyder3」を導入。ただし1枚のビデオボードから2つのDVI出力しても個別調整は出来ないため、メイン用、サブ用とそれぞれに1枚ずつビデオボードが必要となる。
RAW現像ソフト SILKYPIX Developer Studio Pro5
カメラメーカーに依存しない汎用RAW現像ソフトとして導入。当初は「SILKYPIX Developer Studio 4.0」を使っていたが、最近、パープルフリンジ除去機能のある「Pro5」にアップグレードした。他にも汎用ソフトは発売されているが比較していないため当ソフトが画質的にどの程度のものかは分からない。フリーウェアのRAW現像ソフトについては、現在「RawTherapee V4.0」及び「Zoner Photo Studio Free 12」の2種類を試し中ではある。

●AF
<AF速度と合焦能力>
AFは、明るい場所では十分速い。それこそ位相差AFに遜色無いレベルかと思う。
ところが暗い場所や低コントラストでは迷いが多くなるし、意外なシーンで測距不能となったりする。比較対象は位相差AFの「Nikon D700」なのだが、そちらは「えっ?」と思うような暗さでも補助光無しでAF出来る。

<フォーカスエリアについて>
コントラスト式AFの特長でもあるが、画面上のどんな位置にでもフォーカスポイントが設定出来る。しかしそれが我輩には煩わしい。不用意にタッチパネルに触って変な所に設定されたりもするので、フォーカスエリアを中央部に完全固定したいとさえ思う。これは個人の好みの問題であるし、同様にタッチパネルを採用する「LUMIX DMC-GF3」でも当然ながら同じ問題がある。
もちろんタッチパネル機能を無効にすれば良いが、そうなると全てにおいてタッチパネル操作が出来なくなるので困る。

<運動会での望遠撮影>
運動会にて、LUMIX100-300mmレンズ(Panasonic製)との組合せで使ってみた。
撮影前、動体撮影ではどのAFモードにセットすれば良いのか少々悩んだ。フォーカスエリア選択を自動にしたとしても、自動的に自分の子供を選んでピントが合うとは思えないし、顔認識モードでも同じ問題があろう。他の子供に合ってしまったらどう解除すれば良いのか?
まあこれまで使ってきたAFカメラでは、中央1点のフォーカスエリアで特に困ったことは無かったので、このカメラでも同様に中央1点で勝負することにした。
しかしながらコントラスト式AFの弱点が出てしまったようで、ピントに迷いが出て最初の数カットはピンボケ写真となってしまった。つまり、コントラスト式AFはピントの方向を知ることが出来ないため、最初はとりあえず前後に探るようにピントを動かす。その挙動は標準域のレンズでは目立たないのだが、動きのある被写体を望遠レンズで撮影する際には大きな影響がある。

運動会での連続AF撮影。AFの最初は前後に行って戻る動作がある。その結果として、まず最近接にピントが移動、次に無限遠、そしてようやく合焦となる。なお、この写真はトリミングしているが、被写体は常にフォーカスエリアにかかっている。少し褒めるとすれば、最後の最後で合焦出来ているのは、新型機としての底力か。
AFの挙動

それを考えると、この場合の正しい使い方としては、コンティニュアスAFモードでピントが合うまで半押しで我慢し、ピントが合った時は休まず連写し続けること・・・ではないかと思うのだが、試そうにもその機会はもう終わってしまった。
それにしても、雑文713では「LUMIX DMC-GF1」で望遠撮影したが、特に動体でも問題無かったように思う。コントラスト式AFだからと言って一概に全否定すべきではないかも知れない。特に「LUMIX DMC-GH2」では位相差AFの速度を越えるとも言う。
そう言えば雑文713の時は140mm(35mm判換算280mm)だったし、しかもレンズとボディは同じメーカーだった。だから今回の運動会撮影は、コントラスト式AFの弱点をカバーしきれない撮影条件だったという可能性もある。改めて考えると、さすがに300mm(換算600mm)は酷だったか?
この問題は、今後様々な撮影を経験しながら検証してみたい。

<AF背景抜け問題>
AF時の背景抜けは、野鳥(カワセミ)・昆虫(トンボ)の撮影で大変難儀した。被写体が小さいと、ピントが背景に抜けてしまう。小さいフォーカスエリアに変更することも出来るが、設定が撮影毎に元に戻ってしまい小さいフォーカスエリアのまま維持することは出来ない。そもそもフォーカスエリアを小さくしても、枝が交錯するシーンではピントの抜けは改善しない。位相差AFであれば近いほうの被写体にピントを合わせるということも可能だが、コントラスト式AFは遠近の区別がつかないので、近いものを優先してピントを合わせるということが出来ないのだろう。
こうなるともはやAFは使えず、MF撮影しか手が無い。しかしMFも瞬時に切り替えられずメニューから呼び出す必要があるので、慌てている時にとっさにMF撮影に切り替えるのは難しい。

赤トンボの撮影。フォーカスポイントを小さいものに切り替えたが、このように背景のほうがコントラストが高い場合、本当にムカつくほどピントが合わない。位置を少しずつズラして測距したのだが、どうやってもフォーカスポイントに背景がかかるので背景のほうにピントが合ってしまうのだ。結局この赤トンボは撮れなかった。この歯痒さが解るか?
赤トンボ

●EVF(電子ビューファインダー)
このカメラのEVFによるMFは、フォーカシングスクリーンのマット面でのMFが出来る者ならば難しくはないと思う。それはまさに、眼でコントラストを見ながら前後を探って合わせる方法に他ならない。しかしこのカメラのEVF画素密度よりも肉眼の分解能のほうが上回っているので、画像の鮮鋭度がピークになる直前に画素の粗さが立ちふさがる。言うなれば、MFで使うには実用に足るが一眼レフのOVF(光学ビューファインダー)ほどクリアではないということ。

ちなみにMFアシスト用に画面拡大機能があり、マイクロフォーサーズ用レンズならばMFリングを回すだけで自動的に拡大するが、マウントアダプタを介した他社レンズ装着時など電気接点の適合しないレンズでは、拡大ボタン(カスタムでボタンを割り当てる)を押して拡大させることになる。
そして撮影時にレリーズボタンを半押しすると拡大は解除され、フレーミングを調整した後レリーズする。

一眼レフのようなOVF並のEVFカメラを開発するには、EVFの液晶パネルの画素数を増やし、そして同時にファインダーアイピースのルーペ倍率を上げることが必要になる。特にファインダー倍率は重要で、光学式のファインダーを持つ一眼レフでさえファインダー倍率が低いとMFは難しい。しかしEVFであれば、液晶パネルの位置(つまり光路長)は自由に配置出来るためアイピースのルーペ倍率も高く出来るのではないかと思う。
我輩は、NikonのFシリーズの高倍率ファインダーような広大な視野でEVFを使ってみたい。

ところで、EVFは良くも悪くもレンズを通った撮影光を肉眼で直接見ることは出来ず、いったんデジタルに変換された電気信号を出力デバイスに映し出したものを見ることになる。その最大輝度はデジタル信号の論理的上限もあるし、出力デバイスの輝度限界もあることから、一般的には眼を痛めるほどの輝度は持たない。
去る5月22日に我輩は金環日食を観測したのだが、撮影には「OM-D E-M5」を使用した。EVFであるがゆえ、強い光を長時間見続けても眼にダメージを与える心配が無いからだ。ただその代わり、シャッターが開きっ放しのミラーレス一眼ではイメージセンサーを焼く危険性も考えられたが、眼を痛めるよりはマシである。それに、NDフィルターを装着していたので、実際にそのようなことは無かった。あくまでも、最悪のことを考えた上での措置だった。

52mmφのNDフィルターをニッコールAi135mmレンズに装着して撮影。
NDフィルターを装着して撮影

雲に隠れた太陽が時々顔を出して強烈な光を放つ。生の光を見ているとその急変化で目を痛める可能性があるので、電子画像として出力した映像を間接的に見るほうが良い。この写真では、太陽の黒点まで写っていた。
金環日食

NDフィルターはたまたま52mmφのNDフィルターがしか所有していなかったため、そのフィルターに合うレンズの中で一番長焦点なものはニッコールAi135mmしか無かった。そういうわけで、今回はマイクロフォーサーズレンズではなく、マウントアダプターを介してニッコールレンズを「OM-D E-M5」に装着することになった。

●HDMI信号出力
HDMI端子への信号出力は、撮影済み画像をカメラ側が再生することで可能になる。そしてHDMI端子からケーブルを接続すれば、外部モニタへ映る。
しかしライブビュー状態のEVF映像はそのままHDMIとして出ないので、遠隔撮影で手元の画面からモニタしながらの撮影は出来ない。我輩は手元のモニタでフレーミングを確認しながら一脚を使って高所撮影したかったのだが、それは不可能ということになる。
ちなみに「Nikon D700」ではライブビュー中のHDMI出力は可能だが、ライブビューのバッテリー消耗が激しいだけでなく、伸ばした一脚の先端重量も半端無い。
(※調べてみると、ライブビュー映像をHDMI出力出来るデジタルカメラ製品はあまり一般的ではないようだった。)

HDMIによる画像出力は撮影済みデータの再生時のみで、撮影時はライブビュー出力は出来ない。
>HDMIによる画像出力

●画素・画質
画素数は1,600万画素と、我輩が現在所有するデジタルカメラの中では最高画素数で必要十分だとは思うが、どうせならば2,000万画素くらいはあっても良かった。

イメージセンサーはSONY製CMOSということで、素性としては良い。ただ、色味に若干の癖があるような気がするが、現段階では今ひとつハッキリしない。ただ何となく、他のデジタルカメラで撮ったものと比べると、このカメラだけが特定の色の出方が少し違うように思うのだ。

その他、画質については雑文754にも書いている。

●他社レンズでのパープルフリンジ
実は購入前に恐れていたことだが、同じマイクロフォーサーズ規格であっても、ボディとレンズの組合せが別メーカーであるとレンズの収差補正情報がボディ側に反映されないという。
我輩はこれまで、超広角ズームレンズ「LUMIX G 7-14mm」が優秀なレンズであることに大変満足していたのだが(参考:雑文746)、あまりに完璧過ぎる描写のため、レンズそのものの性能というよりも補正がかけられた結果ではないかと疑い始めた。
もしそうならば、レンズとカメラボディとの補正情報のやりとりが成立せねばレンズの収差がそのまま出ることになろう。

その心配は的中した。
「OM-D E-M5」を使うようになってから、Panasonic製レンズでの色収差やパープルフリンジが多く出るように感ずるのである。
色収差による色ズレの場合、RAW現像時に簡単確実に補正は可能である。単にRGBのズレを正せば痕も残らない。しかしフリンジの場合は簡単ではなく、「SILKYPIX」では何とか補正出来るケースとほとんど補正が効かないケースとがある。ただし補正出来る場合であっても、補正強度を上げるとエッジ部分の描写は著しく劣化してしまう。

PanasonicボディとOLYMPUSボディで、同じシーンを同じレンズで撮り比べてみた。フリンジの出やすい逆光のシーンである。
パープルフリンジ

以下の写真は、赤枠の中を等倍表示させたもの。
これはPanasonic製ボディである「DMC-GF3」で撮影。RAWから無調整でJPEG変換した。少々ピンボケしてしまったが、色収差やパープルフリンジは全く見られない。
パープルフリンジ

これはOLYMPUS製ボディである「OM-D E-M5」で撮影。こちらもRAWから無調整でJPEG変換した。同一レンズを使用しながらもパープルフリンジはかなり出ている。一見すると色収差のようにも見えるが、色ズレ補正では修正出来ない。
パープルフリンジ

そもそもフリンジの原因については諸説あるようで、レンズ側の問題、ボディ側の問題、あるいはその両方と言われている。我輩の印象としては、少なくとも性質の異なる幾つかのフリンジは存在しているように感ずる。
ただ、「GF3」ではフリンジは出ていないので、やはりレンズとボディ間の補正情報のやりとりが有効なのは確かだ。そういう意味では、PanasonicとOLYMPUSとの調整で解決してもらいたいと思う。共通のシステムを採用しておきながら、せっかくの補正情報が有効に活かされないのはユーザーには不利益でしかない。

●シャッター音
シャッター音は小さく、「カシュン」と篭(こも)ったような感じでカドの無い音がする。大会イベントや講演での会場撮影では、黒子として徹することが出来、大変重宝した。
もちろん数枚撮る程度ならば、関係者による撮影なので多少大きなシャッター音でも気にする必要は無い。しかし会場は暗いため手ブレが頻発する。手ブレの無いカットを得るには何度もシャッターを切るしか無いわけだが、いくら関係者と言えどもパシャパシャとしつこいのは好ましくあるまい。

機関紙に掲載予定の写真であるから必ず結果を出さねばならず、成功写真を得るために何度もシャッターを切る必要があった。
会場撮影

もっとも、「Nikon D700」で撮影していた時は「OM-D E-M5」よりも感度を上げることが出来たので、1シーンで2〜3カットも撮れば十分ではあった。

ところで集合写真では、シャッター音が小さいため静かな場所でなければ撮影のタイミングが相手に伝わらないだろう。我輩の場合、大会会場を出たオープンスペースの喧騒の中で集合写真を撮ったが、ストロボを焚いたおかげでタイミングは伝わった。逆に言えば、ストロボを使わねば「アレ?今撮れた?」となったはず。
撮られるほうとしての経験を思い出しても、いくら「ハイ、チーズ!」と声がかかっても、直後にシャッター音が無ければズッコケそうになる。

ストロボ撮影した集合写真。集合写真は全員の息が合うかどうかが命。一人でも目線が外れると台無しなので、複数枚撮って良い部分だけを合成することもある。
集合写真

同じ理由で、ストロボ無しのモデル撮影会では使いづらいかと思う。

シャッター音の大小については絶対的な価値観は無く、撮影者側がカメラの特性として理解した上で使うべきものであり、優劣を語るものでは無かろう。
ここでは、「OM-D E-M5」のシャッター音が目立たない音であるということだけを書いておく。

●プロっぽさ
撮影の場面によっては、カメラが醸し出すプロっぽさは重要となる。

先ほどの集合写真は、受賞企業の代表者を並ばせてカメラを構えたのだが、撮影しようとする我輩の横で企業関係者らしき人間がコンパクトカメラを使って我輩と同じようにカメラを構えた。
我輩が構えていた「OM-D E-M5」は、形状は一眼レフカメラに似ているものの、小柄でしかもシルバー色のためプロ的な迫力がほとんど無い。その時はかろうじてコンパクトカメラには勝ったものの、もし横の人間が一眼レフカメラを構えていたとしたら、いくら「こちらに目線お願いします!」と叫んだとしても、つい一眼レフのほうに目線を奪われてしまう者もいるに違いない。どうしても迫力のあるほうを気にしてしまうからだ。それがたとえ「EOS Kiss」であっても、堂々としたブラックボディならば敵わなかったろう。

今回はコンパクトカメラ相手でかろうじて目線を得た。
目線

もし相手が堂々たる一眼レフだったならばどうなっていたか・・・?
目線

これについては、「OM-D E-M5」をどう改善すべきだという話では無く、撮影者側がカメラの特性として理解した上で使うべきものである。どれほどカメラが目立たなくとも、カメラを構える人間のほうが工夫して、例えばヒゲを付けてベレー帽でも被るなどすれば、コンパクトカメラを使おうとも皆はこちらを向いてくれるだろう。

●ストロボ
我輩はクルマを運転する際、発進時と到着時には手元のデジタルカメラでODOメータの走行距離数値をメモ撮影している。ただし昼間は良いが、夜になればストロボが無いと撮影は難しい。ルームランプ点灯も撮影としては暗く、内蔵ストロボがあれば良いのだがと思う。
もちろん、本格的にストロボ撮影する場合は出力の大きいストロボを使うのだが、メモ撮影程度ではそのような大げさなことはしない。クルマの乗り降りで手早く撮影するためには、やはり内蔵ストロボが欲しい。
(言うまでも無いが、ODOメータ撮影はメモ撮影の一例であり、他にも色々と内蔵ストロボが重宝するメモ撮影は多い。)

ただ、製品の同梱品として、カメラ本体から電源供給するミニストロボが付属しているが、これはカメラに内蔵出来そうなほどコンパクト。ここまでコンパクトになるのであれば、なぜ一歩進んで内蔵としないのか理解に苦しむ。究極コンパクトボディ「LUMIX DMC-GF3」すらストロボが内蔵されているのに、それ以上に本格的なカメラのほうにストロボが内蔵されていないのは解せない。この付属ストロボをカメラのホットシューに付けっぱなしにしろとでも言うのか。

コンパクトな付属ストロボであるが、コンパクトゆえに外付けとした意味が分からない。
付属の小型ストロボ

もしストロボを内蔵することがシロウトっぽいと言うのならば、それこそシロウトっぽいアートフィルターのほうを無くしたほうが良いのではないか? 内蔵ストロボなど、フルサイズ一眼レフの「D700」や「D800」にさえ付いているぞ。

ところでこのカメラにはシンクロターミナルが無いので、少し気合を入れたストロボ撮影ではホットシューからアダプタを介して使うことになり少々面倒。その場合、付属ストロボが付いたままだとジャマになる。どうしてこうなってしまったのか・・・。

●手ブレ補正
カメラの電源スイッチを入れると、本体からかすかに「シャー」というホワイトノイズに似た音が出る。これは手ブレ補正のためにイメージセンサーを駆動している音らしい。しかし手ブレ機能をOFFにしても音は変わらないので、イメージセンサーを撮影状態として"浮かす"ための音だろうか。いかにもバッテリーを消費しているという音なので、「こまめにスイッチを切らなければ」という気持ちにはなる。
ただしビデオ撮影時には、この音は気にならないほど小さくなる。

ボディ内方式の手ブレ補正のため、どんな交換レンズを付けても利用可能で、しかも手ブレ補正の状況がEVFからモニタ出来る。
ただし最初の期待が大き過ぎたせいか、思っていたほど強力な補正でもないように感ずる。もっとも、レンズの画角やシャッタースピード、ひいては撮影者のちょっとした体調にも左右される問題でもあるので一概には言えない。

会場撮影の際、望遠140mm(35mm判換算280mm)で1/15秒の条件にて、手ブレ発生率は5割くらいだった。明らかに手ブレ補正機能に助けられたと言える。しかし撮影時に少しでも気を抜くと激しくブレてしまう。イメージセンサーの振れ幅限界を越えたせいであろうか。そういう意味ではまさに、「神は自らを助く者を助く」と言えよう。
またこのカメラのレリーズボタンには少々強めのクリック感があるのだが、これがブレに影響するのかは分からない。多分問題無いはとは思うが。

それから言うまでも無いが、被写体ブレに関しては速いシャッタースピード以外に対処法は無い。

ちなみに、コピーアダプタを用いたフィルムのデュープでは、手ブレ補正機能をOFFにしておかねば逆にブレさせられる。
コピーアダプタを使うと、被写体(デュープ元フィルム)とカメラがアダプタを介して一体となるわけだが、それゆえ、カメラが揺れても装置全体が揺れるだけなので原理的にブレは発生しない。しかしこの状態で手ブレ補正機能をONにしておくと、加速度センサーがカメラの揺れを検知してイメージセンサーを動かしてしまうので、結果的にはブレ写真となってしまうのだ。

コピーアダプタ(Nikon製)
コピーアダプタ(Nikon製)

余談だが、このコピーアダプタと55mmマイクロニッコールレンズの組合せは35mmフィルム用、要するにフルサイズ用となる。よって、マイクロフォーサーズボディではフィルムの一部分を拡大デュープすることになる。

●ハイビジョンビデオ撮影
フルハイビジョンビデオが撮れることにはなっているが、QuickTimeフォーマットのため我輩の環境では取り扱いが面倒。
手持ちの編集ソフト「VideoStudio Pro X4」や「Vegas Movie Studio HD Platinum 10.0」、「QuickTime PRO」でも編集は可能だが、ビデオカメラで一般的なAVCHD形式を前提にしている我輩としては、変換ロスによる画質劣化がどうにも容認出来ない。
AVCHD形式で撮り、編集後にスマートレンダリングで無劣化のまま書出し、それをブルーレイディスクに焼きたいのだ。

ビデオ撮影での手ブレ補正ついては、歩行中に手で保持しながらのビデオ撮影はステディカムほどではないにせよ手ブレ補正効果がそれなりにある。しかし中途半端な補正ではユラユラ揺れて観ているほうが酔ってしまい気分が悪くなることもあろう。使用するレンズよって結果が異なるかも知れないが、AVCHDカメラでは無いだけに、積極的にビデオ撮影する機会はあまり無かろう。

●最低感度ISO200
テーブルトップスタジオ撮影について我輩はストロボを使うことが多いが、ミニマムの出力であってもストロボ光が強過ぎる場面があり、最低感度がISO200では最小絞りでも露出オーバーになることが多い。
そのため、物理的に遮ってストロボ光を減じる措置やNDフィルターが必要になってしまうが、意外に手間がかかって効率が悪い。せめてISO100、可能ならばISO50が使えると良いのだが。
もっとも、このカメラでこのような撮影をする者は少ないだろうとは思うが。

●背面表示パネル
背面表示パネル(有機EL)での画像表示が露出オーバーに見えるので、白飛びを恐れてアンダー側に補正すると結果はその分アンダーとなってしまう。どうやら背面表示パネルでは実際よりも白っぽく見えるようだ。
いくら白っぽく見えたとしても、白飛び警告が出なければ気にしないことにしたい。

●カメラ生成JPEG
自宅のパソコンではAVCHDビデオがストレス無く編集出来るようスペックを上げているので、RAW程度の処理など負担にすらならない。しかし我輩の職場でRAWデータを取り扱う場合には、パソコンのスペックがCPU:Pentium4/RAM:4GBと低い。もちろんこれでも通常の画像処理には十分な性能ではあるが、RAWとなるとかなり重い。ちょっとパラメータをいじってみても、なかなかプレビューに反映されず効率が悪いのだ。

そういうわけで、職場パソコンで写真を利用する時にはカメラ生成JPEG記録で撮る機会もたまにあるのだが、カメラ生成JPEGを見ると、屋外で撮影したものはコントラストが高過ぎるのが少々使いづらい。
我輩はレタッチして使うから良いものの、レタッチなどせずカメラから吐き出したJPEG画像をそのままブログにアップロードする者などはどうしているのだろうかと疑問に思う。このような硬調な画像をそのまま使っているのか?
ちなみにこの件については、かつて「Canon EOS-5D Mark2」を使っていた時にも感じた。

カメラ生成JPEGは未レタッチ状態では硬過ぎる。タイヤの部分などはほぼ真っ黒に潰れて見える。かと言ってプラス補正するとヘッドライトの描写が白く飛ぶ恐れがある。
カメラ生成JPEG

レタッチソフトでトーンカーブを調整しコントラストを下げると、未レタッチでは黒く潰れていたタイヤ部もその厚さが判るくらいになった。逆に言えば、レタッチ無しで使うのは無理があるということ。
カメラ生成JPEG

●操作系
防滴性能実現のための交換条件なのかボタンの感触がすこぶる悪く(特に再生ボタンとFn1ボタン)、押せたのか押せていないのかが分かりにくい。
そもそもカメラとして全体的に反応が鈍く、まるで一世代前のパソコンを使わされているような気にさせられる。特にメモリカードのデータ入出力時にかなり時間がかかっているようなので(現在はCLASS6のカードを使用)、メモリカードを高速なものに替えると改善するだろうとは思う。しかしこの遅さは、同一メモリカードを入れた「GF3」では考えられないほど。画素数の違いがあるにせよ、それ以上の決定的な差を感ずる。

それから頻度は低いが、時々思いがけない挙動に遭遇することがある。例えば、AFが全く動かなくなってしまうことがあった。これはかなり焦った。何しろ、何度シャッターを切ってもピントがボケたままなのだ。そしてそれは、いつのまにか元に戻った。
現象の再現が難しいので何とも言えないが、何か挙動が怪しいと感ずる。今後のファームウェアの更新で改善されることを期待したい。

それから、外付けグリップについては今ひとつ理解に苦しむところがある。
グリップは、横位置グリップとその下に装着する縦位置グリップから成り、縦位置グリップ内に増設用にバッテリーが収納可能となっている。横位置グリップと縦位置グリップは分離出来るため、横位置グリップだけでも運用可能である。いやむしろ横位置グリップを装着してようやく1つのカメラの形にまとまるのだ。レンズの厚みを考えると、横位置グリップを外したところでその分携帯性が向上するとは思えない。ホールディング性を考えれば、常に横位置グリップは装着しておくほうが合理的。

それにしても横位置グリップにはレリーズボタンと電子ダイヤルが備わっており、ボディ側の同じ機能のレリーズボタンと電子ダイヤルが重複してしまう。もし横位置グリップがカメラと一体であったならばこんな無駄は無くせたものを、なぜそのようにしなかったのか理由が解らない。

間抜けな話だが、グリップを装着すると操作部材が1セット余ってしまう。何を考えた設計をしているのか。
OM-D E-M5上面

おまけに、レリーズボタンの同軸に電子ダイヤルを持ってくる意味があるのか問いたい。そこは電源スイッチの場所として最適なのだが、電源スイッチのほうはそこから離れた背面下のほうにある。しかも小さなレバー式で、指を立てないと操作が難しい。
スイッチが背面下にあると、カメラをホールドしている親指を使わせることになるので、カメラを片手で持ったままのスイッチON-OFFは難しい(特にグリップ非装着時)。このカメラはEVFなので電源をこまめに切らないとすぐにバッテリー切れになるので、NikonやPENTAXのようなレリーズボタン同軸スイッチが適しているように思う。

背面下にある電源スイッチ。位置、サイズともに操作しづらい。操作しづらいことが誤作動防止の意図だとしても、もっとマシな方法があったのではないか?
OM-D E-M5電源スイッチ

●電源
我輩は現在、テキストリーダーとして「Visor DELUXE」というPDAを使用しているが、これは単四電池仕様のため発売から10数年経っているにも関わらず何も問題無く使えている。もしこれが専用バッテリーを使う機器であったならば、こうはいかなかったろう。専用バッテリーの劣化が機器の使用寿命を決定付けるからである。

乾電池駆動の「Visor DELUXE」。その気になれば何年でも使える。そのつもりでメインの他にスペアを3台確保しており、現時点で1台は液晶割れのため2台目を使用中。一方、「OM-D E-M5」は複数台買う気にならない。その理由は書かずとも解るだろう。
OM-D E-M5電源スイッチ

デジタルカメラに限らず、電子機器は電源が無いと使えない。
デジタルカメラの場合も、「Visor DELUXE」同様に、乾電池仕様のものはカメラ本体が故障するまで永く使える。PENTAXの場合、一眼レフは単三電池仕様のものが結構ある。中古で8千円で購入した豚児用の「*istDS」も単三電池仕様である。
また「Nikon D700」では、バッテリーグリップに単三電池を装填可能だが、かなり重くなるので普段使うようなカメラとしては無理がある形態になってしまう。しかし使おうと思えば何年経っても使えないことは無い。

さてそこで「OM-D E-M5」についてだが、現状、バッテリーグリップには専用バッテリーしか入らない。これは確かに軽量コンパクトにすることが出来るかも知れないが、その代償としてバッテリーに製品寿命を完全に握られてしまっている。
せっかくバッテリーグリップは電源部と分離式なのだから、単三バッテリーホルダーも別に用意してくれても良さそうなもの。単純なパーツひとつで、このカメラの永続的な価値が上がるのだから、メーカーには是非作ってもらいたい。

今ある能力を少し伸ばすには、2バッテリー体制は良いかも知れない。しかし全く新しい能力の獲得は重要だ。そういう意味で、乾電池が使えるホルダーの発売には期待する。
バッテリーグリップを装着

●斜面転がり試験
最後に耐衝撃性についてだが、望遠レンズを装着した「OM-D E-M5」を土手から5メートルほど転がり落としたところ、特に異常も無く動作した。
実は耐久試験でも何でもなく単なるアクシデントだったのだが、土手の勾配は45度以上とかなり急で、落下したカメラを取りに降りるのも難儀したほど。カメラが転がり落ちて行く時、物凄い早さで回転する勢いだったので「もうダメか」と思ったのだが、土が軟らかかったせいか小さな傷2つで済んだ。大柄な望遠レンズを装着していたがマウントにも異常は無かった。


(2012/08/19追記)
Panasonicはレンズ側での手ブレ補正方式、OLYMPUSはボディ側での手ブレ補正方式を採用している。そのため、Panasonic製カメラボディにOLYMPUS製レンズを装着すると手ブレ補正機能は使えない。
だがその反対に、OLYMPUS製カメラボディにPanasonic製レンズを装着すると、ボディ側及びレンズ側の両方の手ブレ補正機能が利用出来る。つまり、カメラボディの手ブレ補正機能をOFFにすればレンズ側で補正が行われ、レンズの手ブレ補正機能をOFFにすればカメラボディ側で補正が行われる。
ではカメラボディとレンズの両方の機能を有効にするとどうなるのかと言えば、カメラボディ側の補正が優先され、レンズ側の補正は自動的にOFFになるらしい。
ところが我輩の「OLYMPUS OM−D E-M5」と「Panasonic LUMIX G 14-140mm F4-5.8」との組合せでは、なぜか両方の手ブレ補正機能を有効にするとブレが補正されない。その場合、改めてどちらか片方だけの機能を有効にすると補正が効く。
その現象の理由は分からないが、我輩の機材に不具合があり、自動切り替えがうまく働かないのかも知れない。