2000/04/05
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カメラ雑文

[713] 2010年12月10日(金)
「10倍ズームの威力」


まず本題に入る前に、ズーム倍率(ズーム比)について書いておきたい。

少し前の話だが、ソフトボールをやっている職場のT課長殿(※)が、「試合をデジカメで撮ったが選手が離れてて小さくしか写らない」と相談に来た。
(※T課長=雑文398に登場した当時のT主任。現在我輩とは別部署。)
その相談から、我輩に撮影に来て欲しいという空気を察したが、あくまでデジタルカメラについての相談として受け止めたい。

選手が小さくしか写らないとの相談ならば、望遠が足りないわけだ。「望遠の強いカメラに買い換えては?」と答えた。
するとT課長殿は、我輩に訊いた。
「何倍ズームくらいあればデカく写せるかな?」

我輩はこの言葉に少々ひるんだ。
恐らくT課長殿は、ズーム倍率のことを映像の拡大率のことだと思っているに違いない。2倍ズームならば2倍に拡大され、0.5倍ズームならば逆に半分に縮小されて写ると。もちろん、何に対しての拡大率なのかはハッキリしない。

わざわざ書くまでも無いことではあるが、ズーム倍率(ズーム比)とは、あくまでも焦点距離の変化量(変化の幅)であり、大きく写せるかどうかということはこの倍率表記からは判断出来ない。
例えば、100-300mmレンズならば3倍ズーム、20-200mmレンズならば10倍ズームとなるわけだが、大きく写せるレンズは焦点距離の大きな100-300mmのほうになる。この例では、10倍ズームよりも3倍ズームのほうが大きく写せることになるわけだ。


さて先日、我輩はマイクロフォーサーズ規格の10倍ズーム「LUMIX G VARIO HD 14-140mm F4.0-5.8(35mm判換算28-280mm)」を導入した(参考:雑文712)。
これまで我輩は、このような高倍率ズームを使ったことは無かったので、10倍ズームとは言ってもピンとこない。ワイド端とテレ端の焦点距離を見て「これはレンズ交換の手間が無く便利そうだ」と思ってはいるが、その焦点距離(画角)変化量について体験するのは初めてとなる。

レンズが届いたのは平日。屋外での昼光撮影は週末まで待たねばならぬ。
それまでの間は、室内で試し撮りをするしかない。

室内撮影となれば必然的にストロボ撮影となるため、この際、ブツ撮りを撮影テーマとした。
500w/sのストロボを1灯使い、最小絞り値近くまで絞って撮影。何か不都合があるかを見てみる。もし問題無ければ、例えばオークション出品程度の商品撮影に使えるだろう(今や出品出来る品物がほとんど無いところが皮肉ではあるが)。

ブツ撮りで重要なのは、まず最初に適切な撮影距離を設定することである。決して、レンズ選定(焦点距離選定)から始めてはならない。

遠近感というものは、雑文267「年の差」にも書いたとおり、撮影距離のみで決定される。広角レンズで撮ろうが、望遠レンズで撮ろうが、撮影距離が同じならば遠近感は全く変化しない。望遠レンズ特有と思われている圧縮効果も同様である。広角レンズでは像の拡大率が低いため、遠くの圧縮効果は気付きにくいだけの話。

したがって撮影の手順としては、撮影距離を決めた後に、レンズを換えたりズーミングしたりして映像の大きさを調節することになる。決して、近付いたり遠ざかったりして大きさの調節をしてはならぬ。

これまで、我輩のフルサイズデジタル一眼レフカメラ「Nikon D700」では、広角ズームを使うか望遠ズームを使うか微妙なボーダーラインであった。横着をしてレンズ交換せずに距離調整でフレーミング調整してはみたものの、結局は遠近感に納得出来ずレンズ交換するハメになることも多い。

しかし、10倍ズームレンズであれば調整範囲が広く、レンズ交換せずにズーミングで調整出来る。
下は小さな交換レンズであるが、小さいからと安易に近付き過ぎると妙な遠近感が付いて見苦しくなってしまうので、このようにズーム調節だけで拡大出来るのは有り難い。

<14-140mmレンズのワイド端・テレ端の撮り比べ(1)>
14mm(35mm判換算:28mm)
140mm(35mm判換算:280mm)
[Panasonic LUMIX DMC-GF1/14-140mm] 2010/12/02 23:39

さて次に、週末の撮影について予定を立てることにした。

以前、富士山麓にある「富士スバルランド・ドギーパーク」という施設に行ったことがある。
そこでは、飼い犬を連れて来て遊んだり、犬を飼っていなくともレンタルコーナーで犬を借り園内を散歩したりも出来る。我が家では犬を飼っていないためレンタルを利用したのだが、豚児はそれが特に楽しかったようだ。

そう言えば最近、クルマで遠出することは少ない。たまには手頃な距離でクルマを走らせたい。
だが千葉から富士方面に行くには、都内を通り抜けて行かねばならず少々気が重い。どうせなら都内を通らずに済む場所で同じような施設を探したい。

調べてみると、つくば市にて「わんわんランド」という、ドギーパークに似た施設があることが分った。入園料やレンタル料はかなり高かったが、ガソリン代や高速道路料金、そして渋滞による疲労度などを勘案すると、こちらのほうが良さそうに思う。

出発前、カメラ機材を選ぼうと思ったが、今回は「GF1」と「14-140mm」がメイン。「D700」は思い切って置いて行くことにした。
銀塩のほうは、豚児制式記録用の66判カメラの中から「New MAMIYA-6」を選んだ。

まず、出発時にクルマのODOメーター記録で「14-140mm」を使ってみる。
このレンズの最短撮影距離(※撮影距離=土星マークのフィルム基準面から被写体までの距離)が0.5mとのことなので、少々後ろに反らないとピントが合わないかと思ったが、特に問題無く撮影出来た。0.5mというのはこんなに近かったか・・・?
帰宅後に確認すると、テレ端では確かにメーカー公称の0.5mなのだが、ワイド端ではなぜか0.3mまではピントが合う。性能保障範囲外かも知れないが。

<なぜかワイド端では0.3mまでピントが合う>
なぜかワイド端では0.3mまでピントが合う
[Panasonic LUMIX DMC-GF1/14-140mm] 2010/12/04 08:51

現地に到着すると、筑波山が間近に見えた。
ちょうど良いので、ここで「14-140mm」の各焦点距離の刻み撮影をしてみた。ここではそれらのうち、ワイド端とテレ端を掲載する。

<14-140mmレンズのワイド端・テレ端の撮り比べ(2)>
14mm(35mm判換算:28mm)
140mm(35mm判換算:280mm)
[Panasonic LUMIX DMC-GF1/14-140mm] 2010/12/04 12:04

テレ端では多少の周辺光量低下が見られるが、これはRAW現像時に少々コントラストを高くしているせいで目立つのかも知れぬ。
それに、青空に雲が一片も無いことから、少しでも明るさに違いがあればすぐに判ってしまう。レンズには同情すべきシチュエーションと言えるだろう。

面白いことに、最初に掲載したブツ撮り写真よりも、テレ端の拡大率が大きくなっている。もちろん、撮影時に気付いたわけではなく、画像加工でテレ端撮影枠を入れる際に気付いた。
これは恐らく、IF(インナーフォーカス)方式のレンズの場合、近距離では焦点距離が短くなってしまうためかと思われる。

それにしても、10倍ズームの変化量には驚かされる。まるで、広角レンズと望遠レンズ、2本のレンズを付替えて撮った写真のよう。とても1本のレンズで撮ったものとは実感出来ない。
そして2つの写真を見比べていると、「なるほど、確かに10倍大きく撮れたと言っても良いかもなぁ」と思えてしまう。

ところで、「GF1」の予備バッテリーを持って来るのを忘れていたことに気付いた。カメラ本体の1個だけで今日一日の撮影がまかなえるだろうか・・・?

今度は、中距離で犬を撮影たものを下に掲載する。

<14-140mmレンズのワイド端・テレ端の撮り比べ(3)>
14mm(35mm判換算:28mm)
140mm(35mm判換算:280mm)
[Panasonic LUMIX DMC-GF1/14-140mm] 2010/12/04 12:12

写真表現でよくある撮り方の1つとして、まず広い範囲を撮影して全体の様子を説明し、次にアップで見せたいところを切り取る、という方法がある。このような撮り方は、観るほうにとって解り易いため、記録撮影を撮ることの多い我輩はよく使う。
ただ、一般的なズームレンズでこのような撮影を行なうと、「広角(標準)ズーム」と「望遠ズーム」にまたがる場合も多く、結局のところレンズ交換を余儀なくされる。

しかしこのような動物相手の撮影は、レンズ交換でもたついていたりするとなかなか撮影が難しい。2枚目を撮ろうとしたら、もうそこに犬はいなかったということも大いに有り得る。だから、今回のような高倍率ズームレンズでは、記録撮影としてとても利用価値が高いと実感出来る。

ちなみに、IFによるテレ側拡大率の変化についてだが、ここは中距離の撮影だけに、近距離撮影と遠距離撮影のちょうど中間くらいの拡大率になっている。やはり、遠距離撮影の時のテレ側が最も焦点距離が長くなっているようだ。
ただし望遠撮影というのは、通常は遠距離から撮影することが多いため、このような傾向があっても特に支障は無かろう。

次に、動体撮影をやってみた。
別に試してやろうと思って撮ったのでは無く、豚児と犬が走り回るので撮らざるを得なかったわけだが、ピントが合っているだろうか。

通常、動いている物体にAFでピントを合わせるには、シャッターのタイムラグ分の物体の移動距離をカメラが予測し、そこにピントを合わせるように制御する。これを「動体予測AF」と言う。
動体予測AF機能が初めて採用されたのは「MINOLTA α7700i」であるが、当時は画期的な技術だっただけにその機能も大きく宣伝されていた。
しかし現在、特に動体予測AF機能が大きく謳われることは無い。それは、当たり前のように身近な機能になったか、あるいは視線入力AFのようにデジタルカメラでは使われなくなってしまったか。

今回のライブビュー機「GF1」はコントラスト式AFなので、距離検出が難しいだろうと思うので、恐らく動体予測AF機能は無かろう。
一応、撮影はやってみたのだが、戸外の明るさでは背面液晶はとても暗く、拡大してもピントが合っているかは分からない。確認は帰宅後にパソコンで行なうしか無かった。

<動体撮影>
動体撮影
動体撮影
[Panasonic LUMIX DMC-GF1/14-140mm] 2010/12/04 11:37-11:45

パソコンでピントを確認したところ、ピントの合っているカットと合っていないカットは、動体に限って言えば半々というところ。予想よりも上出来。 ピントを外しているカットでは、やはり後ピン傾向。
ただ、やはり撮像素子の小ささにより、どうしても背景のボケが少ない。テレ端は35mm判換算で300mm近いとは言っても、被写界深度は140mmなりである。

さて余談だが、帰宅途中、渋滞の高速道路上空に光る物体を目にしたので撮影した。
夕焼けというシチュエーションからこれは飛行機雲であることは明白だが、意外にも動きが速く、大型旅客機ではなく戦闘機の類かも知れないが・・・真相は不明。
ということで、ここでは未確認飛行物体としての"UFO"という扱いにしておこう。

<UFO撮影> (80mm/35mm判換算160mm)
UFO撮影 (80mm/35mm判換算160mm)
[Panasonic LUMIX DMC-GF1/14-140mm] 2010/12/04 16:34

最終的に、この日「GF1」で撮影した枚数は470枚ほど。心配されたバッテリーは、1個で十分に保ってくれた。
今回は、カメラ本体の評価は主ではないのだが、レンズ側の手ブレ防止機能を終始働かせていたことを考えると、バッテリーの保ちはかなり良いと言える。シャッターレリーズの瞬間にだけ手ブレ防止機能が働く「MODE-2」に設定していたのも要因だろうと思う。

そう言えば、このレンズの手ブレ防止機能の効果については、今回は撮り比べをしておらず分らなかった。
この日撮影したカットを見ていくと、確かにブレのカットは少ないのだが、感度はISO400に設定していたためシャッタースピードが十分に速くなっていたせいもあろう。いつか、手ブレ防止機能のON/OFFで撮り比べてみたいところ。
ただ、少なくともライブビューカメラで望遠撮影が実用的に使えるということは分った。

高性能なフルサイズデジタル一眼レフカメラ「Nikon D700」も所有している我輩としては、「GF1」の少々粗い画像と深い被写界深度、そして操作性に妥協出来る撮影であれば、これまで「D700」で撮影していたものでも「GF1」で十分代用可能と考える。
逆に、コンパクトに10倍ズームで撮影したいとなれば、「GF1」以外に選択肢が無い。恐らく、中判カメラとの組合わせで使うことが多くなるに違いない。
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イラスト提供:シェト・プロダクション