2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
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カメラ雑文

[712] 2010年12月06日(月)
「マイクロフォーサーズ、悩んだ末に」


そもそも我輩は、デジタルカメラは総じて"一眼カメラ"だと思っている。
それがコンパクトカメラ形式であろうとも、ライブビューならば撮影レンズを通した映像を液晶画面に映すからだ。そのことについては、2005年に雑文554にて述べた。
そして、それらのカメラをそのままレンズ交換式にしてしまえば、一眼レフカメラの代わりとして使えるはずだと指摘した。

当時、新しい規格としてフォーサーズ規格が出ていたのだが、"小型軽量を実現させるデジタル専用システム"と謳いながらも、そこにはしっかりとミラーが残されており、我輩はその点に大きな矛盾を感じたのである。
「デジタル専用として開発した新しいシステムならば、過去の呪縛にとらわれるな。」
雑文554の主旨はこのようなものだった。

結果的に、2008年になってようやくミラーレスのマイクロフォーサーズ規格が立ち上げられたわけだが、我輩の指摘から3年も経っており、「本当にヤル気があるのか?」と疑念を抱いたものだ。
もっとも、我輩が指摘したことでオリンパスが頑なになり、かえってミラーレスの登場を遅らせてしまったという見方もある。そうであれば、申し訳無いことをした。

それにしても、フォーサーズ/マイクロフォーサーズ陣営は「OLYMPUS」の他に「Panasonic」がおり、我輩としてはそのことがどうにも気にかかる。胡散臭くて仕方が無い。
と言うのも、「Panasonic LUMIX」については次のようなエピソードがあるからだ。

我輩が現在の職場(川崎)に赴任した際、備品カメラを管理している者から「ウチは一眼レフがありますよ」と聞いたので見せてもらうと、レンズ交換はおろかミラー(レフ)さえ無いカメラ「LUMIX DMC-FZ10」で仰天した。
「おいおい、これは一眼レフじゃないぞ!」と教えてやると、「えー!?マジっすか、今まで一眼レフだと思ってた!」と驚いていた。

確かに、このペンタ部の特徴的な形はまさに一眼レフのシルエット。いかにもプリズムが収まっていそうな風体で、「一眼レフだよ」と言われればシロウトはまず気付くまい。
LUMIXのイメージキャラクターが浜崎あゆみであることからも、カメラとは縁遠い者たちをターゲットにしているのは明白。これは確信犯(※誤用承知)であることは間違い無い。
我輩は、このようにシロウトのミスリードを狙うような商法はとことん嫌う。

このことがあって以来、我輩の辞書には「LUMIX」というブランド名は「まやかしの」あるいは「モドキ」という意味が載ることになった。
もちろん、今ではこのようなミスリード商法はどのメーカーでも「デザイン処理」として普通にやっていることだが、最初にタブーを侵したPanasonicの責任は大きいと言える。

<LUMIX=まやかしのブランド>
LUMIX=まやかしのブランド

ただ、いくらLUMIXがまやかしのブランドであったとしても、ミラーレスのレンズ交換式カメラとしてのマイクロフォーサーズのコンセプトそのものは非常に合理的であり、我輩の心に訴えかけるものがあったのは確かである。賛同メーカー間で交換レンズの互換性があるのも面白い。

経緯は色々とあったものの、最終的には我輩はLUMIXアレルギーを克服し、「DMC-GF1」購入を果たした(参考:雑文700)。

<OLYMPUS製標準ズームレンズとパンケーキレンズ>
OLYMPUS製標準ズームレンズとパンケーキレンズ

これにより、レスポンスの良いコンパクトなメモカメラを手にすることになったわけだが、人間というのは欲張りなもので、「せっかくレンズ交換出来るのだからもっと望遠撮影したい」と思うようになった。メモカメラであるが故に、遊びたい気持ちが出てきたわけだ。

望遠撮影というのは、遠く離れていながらも引き寄せて撮影出来ることが楽しい。それがこの小さな「GF1」でも、レンズさえ装着すれば可能になる。
そうは言ってもレンズを買うのは金が必要。それは当たり前のことだが、実際のところ、マイクロフォーサーズに投資してシステムを拡充させることが正しいのか迷うところ。なぜなら、イメージサイズがAPSよりも小さな110判に近いため、将来的にマイクロフォーサーズを見限る時がやってくるのではないかと不安に思っているのだ。

どうせシステムを充実させるならば、APSサイズのレンズ交換式カメラのほうが将来性が感じられて良いが、現状、APSサイズでのレンズ交換式コンパクトカメラはSONYのNEXシリーズしか無い。ならばいっそのこと、NEXに乗り換えるか?

実際、NEXシリーズの操作や作例の比較、そして中古価格を調べたりしてみたのだが、値段は安くなっているもののどうも魅力が無い。ボタンやダイヤルが少ないし、画質もAPSサイズとして期待したほどではなかった。店頭で持ってみた感触も、本体が薄くともレンズがそれほど小さくないので、他と比べて劇的にコンパクトというわけでもない。

そして何よりも、交換レンズのバリエーションが現時点で3本だけというのだからどうしようも無い。もちろんそのうち充実してくるものとは思うが、極端に短いフランジバックのNEXで十分な性能を持つレンズが開発出来るのかが疑問に思う。それこそ、将来性があるのか怪しい。
あの本体の薄さは、ユーザーにメリットをもたらすためのものではなく、レンズ交換式カメラ後発メーカーとしての単なる話題作りではないのか・・・?

結局のところ、マイクロフォーサーズのシステムを拡充させることで腹をくくった。
というわけで早速候補選定だが、今回は望遠レンズということで手ブレ防止が必須と考える。何しろ、「GF1」はファインダーが無くライブビュー形式であるからホールドが不安定でブレ易い。Panasonicはボディ側での手ブレ防止機能が無いのだ。
そうなると、レンズ側に手ブレ防止機能を持たぬOLYMPUS製レンズは除外され、レンズ側に手ブレ防止機能を持つPanasonic製から選ぶことになる。

候補としては、「45-200mm(35mm判換算90-400mm)」、最近発売された「100-300mm(35mm判換算200-600mm)」、そして10倍ズームの「14-140mm(35mm判換算24-280mm)」を考えた。もちろん、中古購入しか頭に無い。

値段が安く、テレ側も十分なのが「45-200mm」である。これなら中古で2万円台。
しかし、ワイド側が45mmからというのが引っかかる。35mm判換算で90mmであるから、ワイド側とは言っても中望遠である。実際の使用では、望遠撮影のみというケースは少ないであろうから、標準ズームと付け替えながら撮影することになろう。
めんどくさいな・・・。

もしレンズ交換を必要とする望遠撮影と割り切るならば、いっそのこと「100-300mm」にしたほうが良いのではないか?
ただ、まだ発売されたばかりということで中古のタマ数が少なく、5万円台とそんなに安くはない。

ならば「14-140mm」か。
これならワイド側も35mm判換算で28mmと不自由無く、レンズ交換の手間を考えずに済む。しかし肝心の望遠が少々弱いように感ずる。35mm判換算で280mmか・・・。
それに、中古価格も5万円に近いようだ。

ここでまた、我輩得意の堂々巡りが始まった。
これら3本のレンズの中古を検索したり、価格コムの評判をチェックしたり、ユーザーブログの作例を見たりして、その度に有力候補が入れ替わった。

いい加減、我輩も疲れてきた。時間の浪費も尋常ではない。
そこで、実際にテレ側でどれくらいの違いが出るのか確かめることにした。使うのは、EOS用EF100-300mm。我輩が考案した"手写リング"(参考:雑文633)の要領で、「GF1」のマウントにEFレンズをくっつけて撮影したのである。

<"手写リング"で撮影して確かめた画角>
手写リングで撮影して確かめた画角
[Panasonic LUMIX DMC-GF1/EF100-300mm]

写真を見ると、300mmくらいになればかなりの拡大率で、140mmとの違いは大きい。だが、撮影時に顔に密着させて撮影出来ないライブビュー形式の「GF1」では、300mmではブレを抑えられまい。

意外にも140mmと200mmとでは思ったほど画角に違いは無く、我輩が妥協出来る範囲であることが判った。むしろ、ワイド側が14mmか45mmかということを気にしたほうが良さそうに思う。
そうであれば、撮影中にレンズ交換する必要の無い「14-140mm」を選ぶメリットは大きいだろう。
我輩は、毎度のことながら家計に借金をして、「14-140mm」をネットオークションで手に入れた。

到着したレンズは新品同様で、そして箱が無い。恐らくレンズキット(カメラとレンズのセット商品)のレンズのみを売りに出したということだろう。
(Panasonic LUMIXは、レンズ単体を買うよりもレンズキットで買うほうが異常に安い)

我輩が10倍ズームを手にしたのは今回が初めてだったが、ズームリングを回していくと、広角から標準を通り越して本格的な望遠まで連続的に変わるのが新鮮で面白い。
望遠側で拡大率が高くとも手ブレ防止機能によって画像が安定している。とは言うものの、室内ではスローシャッターとなるので、手ブレが補正しきれないことがある。感度を上げれば良いのだろうが、画像が粗れるのでISO400までが限界。まあ、望遠側は屋外で使うことがほとんどのはずだから問題は無かろう。
それに、「GF1」にはホットシューが付いているので、いざとなれば外部ストロボ撮影により室内撮影はクリア出来る。これがNEXとの大きな違いとも言える。

<GF1に装着した14-140mmレンズ>
GF1に装着した14-140mmレンズ

元々「GF1」は、雑文700のほうに書いているとおり、通勤カバンに携帯可能な高画質機(※)及びレスポンスの良いメモカメラ(含む簡易スキャナ)としての用途で導入した。
(※ここで言う"高画質"とは、コンパクトタイプデジタルカメラと比較した場合の表現)
我輩はこの2つの用途に対応させるため「17mmF2.8(35mm判換算34mm)」と「14-42mm(35mm判換算28-84mm)」の2つのレンズを揃え、単焦点パンケーキレンズでコンパクトにするか、あるいはズームでオールマイティにするかという着せ替え的に使い分けを行なっていた。

今回、10倍ズームを追加導入したことにより、本来ならばフルサイズデジタル一眼レフカメラ「Nikon D700」で対応するような撮影でさえマイクロフォーサーズカメラ「GF1」の守備範囲になってしまった。
しかも、広角までカバーする高倍率ズームのせいで、横着しようと思えばいくらでも横着出来る。画質はフルサイズのほうが良いに決まっているが、今後フォーサーズ画質に慣れてしまうと、なし崩しに要求画質が下がることが怖い。

確かに、「自分さえ満足出来るならば、要求画質が少々下がろうとも問題は無いのではないか」という意見もあろうが、それによって写真趣味そのものへのこだわりが低下してしまうことを我輩は最も恐れる。オーディオ趣味のように、手軽さと便利さに傾いて趣味が趣味で無くなったことは避けたいのだ。

ちなみに音楽鑑賞の場合、いくら音楽が身近になったとは言え、あまりに身近過ぎて音楽を聴くことが以前ほど楽しみではなくなったように思う。
視聴環境を整え、気合を入れてスピーカーに正対し聴くことはもはや無い。手間のかかる本当の高音質鑑賞を面倒に思い、手間のかからないポータブルオーディオの"準"高音質で満足するようになってしまった。
そればかりでなく、ながらでも聴ける手軽さゆえに、気が散って鑑賞に身が入らない。いつでも聴き直せると思うから、いつまでも本気で鑑賞出来ない。
こういう状態では、もはや音楽鑑賞は趣味と言えるレベルではあるまい。

今回、我輩のマイクロフォーサーズ装備が便利になったことは間違い無い。
それによって自分の写真に対する要求レベルを下げぬよう、より一層心を引き締めながら、この機材を活用したいと思う。

次回雑文では、この10倍ズームを実際に使ってみて、その可能性を探ってみたいと思う。
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イラスト提供:シェト・プロダクション