[746] 2012年02月28日(火)
「マイクロフォーサーズでシステムを拡充(超広角レンズ編)」
●マイクロフォーサーズに対する位置付け
我輩が最初にマイクロフォーサーズカメラの「LUMIX DMC-GF1」を購入したのが1年とちょっと前(参考: 雑文712)。
交換レンズは、標準ズームの他に高倍率ズーム「14-140mm(35mm判換算24-240mm)」とコンパクトな単焦点「17mm(35mm判換算34mm)」を買っただけでしばらく停滞していた。
<LUMIX DMC-GF1> |
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もちろん金が無かったという理由もあるが、本当にレンズを買いたいと思うならば、不要な機材を売却するなり借金するなり何らかの手段をとっただろう。
では、欲しいレンズが無かったのかと言うと、そういうわけでもない。マイクロフォーサーズは複数のメーカーが参入している規格のため、レンズのバリエーションも多い。
ならば何が理由なのかと言うと、我輩自身の気持ちがマイクロフォーサーズに本気になれていなかったということである。
本当にマイクロフォーサーズに対して本気になって良いのか、それを決めかねていた。
この葛藤は 雑文712当時にもあったが、一度は腹をくくってマイクロフォーサーズのシステム拡充を目指したはずだった。
ただそれでもやはり、「GF1」のライブビューではちょっと望遠になれば保持が不安定ですぐにブレる。そしてISO400を超えるともうノイズが増えてくる。画質的にフルサイズカメラとの足並みが揃わない。
だから、マイクロフォーサーズカメラにはメモカメラ以上の役割を持たせることが出来ず、もしマイクロフォーサーズから手を引くようなことになっても身軽でいられるようシステム拡充を見送り続けた。
要するに、片足を入れた状態に過ぎなかったというわけである。
今年の正月に「GF3」とコンパクトな標準ズームレンズ「14-42mm」を購入したが、これはナノ一眼カメラ「PENTAX Q」に刺激を受けた更なるコンパクト化への要求であり、ハイビジョンビデオ撮影の役割も担っていた。マイクロフォーサーズシステムを拡充しようという動機からでは無い。
<LUMIX DMC-GF3> |
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ところが先日、OLYMPUSから本気度の高いマイクロフォーサーズカメラ「OM-D E-M5」が発表された。
目を引くボディデザイン、新タイプの低ノイズイメージセンサー、強力手ブレ防止機能など、これまでのマイクロフォーサーズカメラがオモチャに見えるほど(実際のところは使ってみないと分からぬが)。
我輩もこのカメラには大変惹かれたが、ボディのみ10万円近い値段であるから、これを購入するか否かで我輩のマイクロフォーサーズに対する本気度が試されることになる。
<OLYMPUS OM-D E-M5> |
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結局、 前回雑文でも書いたように、ついに予約購入をしてしまった。金はもう振り込んである。
これにより、とうとう我輩も腹をくくった。
マイクロフォーサーズのシステムを本気で揃える時が来たのだ。
ただし、フルサイズカメラ「Nikon D700」とNikon交換レンズにはこれからも活躍してもらうし、それらはデジタル中のメイン機材であることはこれからも変わりは無い。感度800でも涼しい顔をして撮影出来るのは「D700」しかあり得ないのだ。
さて、これからフォーサーズシステムを拡充するにあたり我輩が求めることは、フルサイズをそのままダウンサイジングしたミニシステムを組むこと。
ダウンサイジングしたシステムならば、気軽に色々なレンズを使って撮影が出来ることになろう。
これは面白い。
フルサイズの場合、撮影時には全ての交換レンズを持ち歩くことは出来ないので、事前にシーンを想定して交換レンズを厳選しておく必要がある。しかもその想定が外れることも多く、撮影時の苦労も倍加することになる。
また、これまでは超広角や超望遠などの撮影ではフルサイズのシステムでしか揃えてこなかったので、結局はそういう撮影ではフルサイズを持ち出すしか無い。
もしこういう時にダウンサイジングされたシステムがあれば、撮影の可能性は大きく広がるだろう。
遊び半分で超広角や超望遠撮影というのもワクワクするではないか。
これはまさに、今年の正月に我輩が「PENTAX Q」で求めたものであった。しかし「PENTAX Q」では本当にオモチャを目指しているのかトイレンズばかりで使えない。だから、その代わりとしてマイクロフォーサーズで本格的なシステムを組むことにしたのだ。
●超広角ズームの導入
我輩が所有するフルサイズ用レンズの中でも最も大きく重い交換レンズは、超広角ズーム「AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G ED」(参考: 雑文643)であるが、これに相当するマイクロフォーサーズレンズ「LUMIX G VARIO 7-14mm F4.0 ASPH.」をまず導入することにした。
フルサイズ換算で14-28mmと、Nikonのものに比べるとズーム比が望遠側に若干大きい。大きさや重量もフルサイズ用よりふたまわりもコンパクト。中古で探すと6万円ちょっとで手に入るようだ。今回、フジヤカメラにて購入した。フルサイズ用が中古でも14万円ということを考えるとかなり安い。
<LUMIX G VARIO 7-14mm F4.0 ASPH.> |
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何はともあれ、「AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G ED」と並べて置いてみた。
この比較は、手に入れたらすぐにやってみようと思っていたもので、こうして並べてみると大きさの違いに改めて驚かされる。開放F値が1絞り分違うということもあるが、それでもこの差は別次元。
<フルサイズ用(右)との比較> |
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早速、それぞれカメラに装着してみた。
マイクロフォーサーズカメラのほうは最小サイズの「LUMIX DMC-GF3」だけに、その差がかなり際立って見える。これを「OM-D E-M5」に装着すればどんな感じになるのか早く見てみたい。
<カメラに装着した状態の比較> |
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超広角レンズの有効な利用目的の1つとして、「狭い室内の撮影」がある。
我輩がそれを最初に意識したのは、スペースシャトルコロンビア号が初飛行した時の写真であった。当時、科学雑誌「Newton」に特集記事が載り、その中にスペースシャトルオービターのコクピット内で活動する飛行士の写真があったが、写真周辺が少々引き伸ばされたような妙な写真だった。それが超広角レンズでの写真だった。
その写真は、狭い室内を1カット内にギュッと詰め込む緻密感があって面白く、我輩もいつかこんな写真を撮ってみたいとずっと思っていた。魚眼レンズには敵わない写角ではあるが、魚眼には無い四角い写真っぽさはそれはそれで魅力である。
我輩が大枚をはたいて「AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G ED」を導入したのは、まさにそんな気持ちを持ち続けていたからに他ならない。
●超広角ズームのテスト撮影
これまで我輩がフルサイズで超広角ズームレンズを使用した範囲で言うと、ほぼ広角端14mmの撮影ばかりとなっている。ズームしたとしても、フレーミングを微調整したい場合に限られていた。
そういう意味では、単焦点の14mmを購入したほうがサイズや重量の面で有利だったかも知れないが、カメラ雑誌の特集記事では単焦点レンズよりも「AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G ED」のほうが高画質であると書かれていたので、最初からこのレンズ狙いであった。
そもそも、広角撮影では撮影距離が少しでも変わると遠近感も大幅に変化してしまうので(参考: 雑文267)、ズーム操作で像面倍率を調整するしか方法が無い(トリミングという方法もあるが)。
今回導入したマイクロフォーサーズレンズ「LUMIX G VARIO 7-14mm F4.0 ASPH.」も、やはり広角端での使用がほとんどとなろう。
だから、テスト撮影も広角端が多くなるし、そこでの画質が重要となる。
カメラボディについては、本来ならば「OM-D E-M5」を使いたいところだが、未発売のため今回は「GF3」を用いた。RAW現像時に暗部を持ち上げる際にノイズが現れ易いが、本テスト撮影ではあくまでもレンズの描写という面を見てみたいと思う。
なお、撮影時の位置やアングルの微妙な違いがある上、アスペクト比の違いがあり、理屈上はフルサイズと同じ画角であってもフレーミングは完全には一致しない。
また、明るさや色合いの違いがあるとすればRAW現像時の見た目調整の結果であり、カメラやレンズの特性とは一切関係が無い。
ではまず、スペースシャトルオービターのコクピットでテスト撮影したいところだが、それは無理なので乗用車車内の撮影を行った。狭い撮影の代表ということになる。
最初に比較用として、フルサイズの広角端14mmで撮影した。
<35mm判フルサイズ14mm> (※画像クリックで横1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
[Nikon D700/4-24mm/ISO200/1/200sec. F5.6] |
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[ノートリミング] |
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[周辺部の等倍切出し] |
これは、運転席のヘッドレストの辺りから撮ったものであるから、それほど距離的な余裕は無いはずだが、それでも広々と写っているのが凄いところ。それに加え、周辺部まで流れること無く解像しているのが素晴らしい。
続いて、今回導入したマイクロフォーサーズの超広角ズームの広角端7mmで撮影。
<マイクロフォーサーズ7mm (35mm判換算14mm)> (※画像クリックで横1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
[LUMIX DMC-GF3/7-14mm/ISO200/1/160sec. F5.6] |
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[ノートリミング] |
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[周辺部の等倍切出し] |
驚いたことに、横1200ドットに縮小した程度ではフルサイズでの撮影と見分けが付かない。唯一、3:4のアスペクト比で分かるくらいだ。
等倍での比較をしたところ、暗い部分を持ち上げるとどうしてもマイクロフォーサーズである「GF3」のほうがノイジーになってしまうがこれは仕方無い。
だがこれを「OM-D E-M5」で撮影したならば、ノイズ耐性としてもフルサイズにかなり肉迫するのではないかと期待している。
それから、ついでとなって申し訳無いが、望遠端での撮影も比較した。フルサイズでは24mm、マイクロフォーサーズでは14mm(換算28mm)となる。焦点距離が異なるため撮影範囲も若干異なっている。
こちらは周辺部が被写界深度から外れているため周辺部の等倍比較はしていない。
最初はフルサイズ24mmでの撮影。
<35mm判フルサイズ24mm> (※画像クリックで横1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
[Nikon D700/4-24mm/ISO200/1/200sec. F5.6] |
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[ノートリミング] |
続いてマイクロフォーサーズ14mm(換算28mm)での撮影。
<マイクロフォーサーズ14mm (35mm判換算28mm)> (※画像クリックで横1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
[LUMIX DMC-GF3/7-14mm/ISO200/1/160sec. F5.6] |
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[ノートリミング] |
以上のように、超広角レンズの有効な利用目的の1つが「狭い室内の撮影」ではあるが、もう1つ「広い風景の撮影」も超広角レンズの利用目的として大きいだろう。
そこで、一般風景でのテスト撮影も行ったので掲載したいと思う。
こちらはさすがにフルサイズカメラを同時に持ち歩くことが難しく、マイクロフォーサーズ単独の作例とした。
次の作例写真は広角端7mmではなく、フレーミング微調整のため10mmでの撮影となっている。ズームレンズはこういう時に有用。
<マイクロフォーサーズ10mm (35mm判換算20mm)> (※画像クリックで横1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
[LUMIX DMC-GF3/7-14mm/ISO200/1/800sec. F4.5] |
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ここでは等倍画像は掲載していないが、超広角レンズとマイクロフォーサーズの組合せでパンフォーカス的に隅々までシャープに描写されていて気持ちが良い。
それから次の作例写真は通勤電車内での撮影であるが、超広角ズームを装着した「GF3」をコートのポケットに入れ、撮影時にサッと取り出してスナップしたものである。
こういうカメラがポケットに入っているということだけでも楽しい。
<マイクロフォーサーズ7mm (35mm判換算14mm)> (※画像クリックで横1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
[LUMIX DMC-GF3/7-14mm/ISO200/1/20sec. F4.5] |
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感度200での撮影のためスローシャッターとなり歩行中の人物が流れているが、それ以外はブレが目立たない。このレンズにはブレ防止機能は無いが、超広角に助けられた。「OM-D E-M5」の強力なブレ防止機能があれば無茶なスローシャッターでも撮影出来そうで、もっと人物を流して不思議な世界を描写するのも面白いかも知れない。
さて、次の作例写真は駅構内のLED運行表示板を写したものだが、幅広の表示板を間近から1カットで写し込めるのはメモ撮影用途としては上出来と言える。
また、ダイナミック感があるので写真表現的に見ても面白い。
<マイクロフォーサーズ7mm (35mm判換算14mm)> (※画像クリックで横1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
[LUMIX DMC-GF3/7-14mm/ISO200/1/40sec. F4.0] |
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この撮影では通行人も一緒に写し込んでいるが、超広角ゆえにレンズは上のほうを向いている。だから通行人に余計な警戒心を与えないのが良い(何を撮っているんだろう?という視線が写っていることもあるが)。
次は歩道橋から駅舎を撮影したものだが、空から真下まで写り込んでいるのがこれまた超広角的で面白い。撮影位置によってダイナミックな印象がガラリと変わるというのは、今回色々と気軽に撮影していて改めて気付かされた。
<マイクロフォーサーズ7mm (35mm判換算14mm)> (※画像クリックで横1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
[LUMIX DMC-GF3/7-14mm/ISO200/1/320sec. F7.1] |
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最後の写真は、アメヤ横丁を写したものである。
こちらもレンズの方向は上を向いているので、通行人への威圧感は少ない(と思う)。
<マイクロフォーサーズ7mm (35mm判換算14mm)> (※画像クリックで横1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
[LUMIX DMC-GF3/7-14mm/ISO200/1/200sec. F5.6] |
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アメ横のゴチャゴチャ感を写し込むには、やはり超広角レンズでギュッと押し込むように撮るのがイメージに合う。
ゴチャゴチャ写し込んで等倍に拡大し隅々まで眺めるのは、銀塩の頃から変わらぬ我輩の写真の楽しみ方の1つ。こういう撮影は、これまでは巨大なレンズを構えていたわけだが、これからは気軽にスナップ出来るのが嬉しい。
●テスト撮影後の感想
今回のマイクロフォーサーズ超広角ズームレンズは、マイクロフォーサーズ最小ボディ「LUMIX DMC-GF3」との組合せでコートのポケットに入れて使ったのだが、さすがに背広やズボンのポケットに入れるとかなり膨らんでカッコ悪い(一応、入ることは入る)。だから、気が向いた時にパッと取り出して使うスナップ的な撮影は冬限定と言える。通常は通勤カバンに入れておくことになろう。
だがそれでも、フルサイズ超広角ズームでは考えられないような運用が可能であることは間違い無い。手に持ったままでも邪魔と言うほどでは無く、使い勝手は非常に良い。
そういう意味でも、今後の撮影の可能性を広げてくれることは間違い無かろう。
ただし、フルサイズ超広角ズームを使ったことが無い者には、この有難味はなかなか理解出来ないかも知れぬが。
画質については、色収差がほとんど見られず、直線を写した時に僅かな樽型歪曲が見えるくらいだった。
聞いたところによれば、マイクロフォーサーズは収差をデジタル的に自動補正しているらしいのだが、RAWでも同じように補正されるのかは不明。まあ、結果を見ると補正されているのだろう。こんなコンパクトな超広角レンズでこれほどの画質であれば逆に信じられぬ。
今回のカメラボディは「GF3」ということでコンパクト感が大いにあったが、今度手元に来る予定の「OM-D E-M5」との組合せでどのような使用感となるのかが気になる。さすがにコートのポケットであっても入らないとは思うが、そこそこコンパクトであることは期待出来よう。
今回の超広角な画角が、「OM-D E-M5」によって更に高画質となることが今から楽しみである。
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