2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
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 FE
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 FE10
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カメラ雑文

[818] 2014年07月13日(日)
「本番撮影」


我輩は、写真撮影に関しては被写体主義である。
「この被写体を深く知りたい。持てる技法を駆使し写真に定着させ、自分の手元に置いて資料化したい。」と考える。だから写真を撮り始めた。
これは、かつて我輩が幼少時代、子供向け図鑑に掲載された写真を見てからずっと抱き続けていた気持ちである。

図鑑の写真というものは、閲覧者側の知識が増えれば増えるほど、同じ写真であってもより一層奥深く見えるようになる。だから、それらの写真を見終わることが無い。

<我輩の求める被写体主義の写真>
我輩の求める被写体主義の写真

雑文490でも触れた白尾元理氏の写真は、まさに閲覧者側の知識が増えるたびに見方が深くなる写真であった。
我輩も、こういう写真を目指しており、同じ方向性を感じた。

もちろん我輩には、あらかじめ被写体に関する全知識を備えて臨むことは不可能である。我輩はどの分野にとっても専門家ではない。
しかしだからと言って、全く白紙の状態で撮影に臨むこともしない。そんなことをすれば、それこそ「写真をナメている」ということであり、得られる結果もたかが知れている。

だから我輩としては、興味を持った被写体について調べられる範囲で調べた上で撮影し、そして撮影後はその写真を基にして、更なる理解を進める。そういう意味では、我輩は撮影者であり同時に閲覧者でもある。自分の知識が増えれば、自分の撮った写真が更に深く見えるようになる。そこが写真として面白い。

−−−−

さて、雑文814では、ラジオシンクロユニットを導入することで屋外撮影でもテーブルトップスタジオ同様な積極的ライティングが実現可能となったことについて書いた。これについては、もはや試験的運用から実用へと移行している状況。

テーブルトップスタジオではライティングは自分の意思で組み立てるわけだが、それは撮影者の思想を被写体に投影したものと言える。
「たまたま光が差し込んだからこういう写真になった」などという偶然性など一切存在しない。もしそんな偶然が入り込んだとすれば、それはすなわち失敗写真に他ならぬ。

<ライティングは撮影者の思想を被写体に投影したもの>
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ライティングは撮影者の思想を被写体に投影したもの

そういう観点で言うと、屋外でのストロボ撮影の場合、自然光などの定常光が入り込む状況が多い上、その場所が自分の管理下にはないためにライティングを自分勝手に設置することにも限度がある。

しかし従来は、日中シンクロというものがカメラに装着した真正面からの照射であったがために、なるべく目立たぬようさりげなく陰を照らすのみの補助的役割しかなかったが、ラジオシンクロ化により積極的にライティングの主光として使えるようになってからは、屋外であっても自分自身の思想を大きな割合で投影することが出来るようになった。

ただ、そういう強力な技法を手にして実用していながらも、我輩がこれまで撮影したラジオシンクロ撮影は必ずしも本番撮影と言えるものではなかった。いわば、「作例写真」である。なぜならば、どれもが我輩にとって被写体としての必然性が無かった。
つまり、「この被写体を撮りたいからラジオシンクロ技法を活用する」という撮影動機は無く、技法だけまずあって、その手法に見合う被写体を探し回って撮ったものばかり。当然ながら被写体に対する興味や知識など皆無。完全に技法ありきの撮影で、我輩は煮え切らぬ気持ちで悶々としていた。
(注:この撮影を通して今回興味を持ち始めた被写体も無くは無い。それはそれで今後の研究に繋げたい。)

●本番撮影1回目(2014年06月14日)
そんな技法ありきの一連の撮影の中、偶然あるものを撮った。
それが「ショクダイオオコンニャク」の芽。筑波にある「国立博物館・実験植物園」にて、色々撮った中での1枚だった。

<偶然撮ったショクダイオオコンニャクの芽>
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偶然撮ったショクダイオオコンニャクの芽
[2014/06/14]

この植物は、世界最大の花(※)を咲かせるとして有名であるが、植え付けから10数年くらいしないと開花しないらしい。しかもこの植物は絶滅危惧種ということで、存在自体が貴重とのこと。
(※単一の花としてはラフレシアが世界最大だが、小さな花の集合体としての花を含めるとショクダイオオコンニャクが世界最大となる。)

このコンニャクは数年間は枝葉だけが伸び、光合成で得た栄養を地下の芋に貯め込む。そしてその栄養が十分に溜まると、今度は花が直接芋から伸びてきて開花させるという。花が出現するタイミングは誰も分からないのだが、この筑波実験植物園では2年前の2012年に初めての開花を果たした。だから、この先数年間は花は咲かないだろうと思われる。2012年の開花のせいで地下の芋が栄養を使い切っているからだ。
実際、去年訪れた時には枝葉が茂り、開花で失われた栄養をせっせと貯め込んでいるようだった。恐らく今後数年間は、栄養が十分に貯まるまで枝葉のサイクルが繰り返されるだろう。

<恐らく今年も、去年のような枝葉が茂るだろう>
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恐らく今年も、去年のような枝葉が茂るだろう
[2013/03/09]

実を言うと、我輩は普通のコンニャクについては以前から興味を持ち、これまでも写真に撮り続けている。
なにしろコンニャクというものは、まるで作り物のような奇妙な枝葉の形、不思議な花が面白い。そして枝葉と花のサイクルが興味深い。
まさか、コンニャクという植物が思考力を持ち、「よし、十分栄養が貯まったから来年は開花させよう」と計画しているわけでも無かろうが、何かしら制御している仕組みがあるのは間違い無い。しかしコンニャク芋を縦に切っても単に白い身が現れるだけで複雑な仕組みが見えるわけでも無い。非常に不思議で興味深い。

<通常のコンニャクの枝葉>
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通常のコンニャクの枝葉

しかし世界最大のショクダイオオコンニャクについてはそれほど興味を持っていなかった。と言うのも、それは特殊な存在なので限られた場所でしか見ることは叶わず、継続的に生長(成長)を追うのも根性が要る。それに、開花したら開花したで世間が大騒ぎとなり、とても落ち着いて撮影など出来まい。単純にデカイだけで、それ以上でもそれ以下でもない。やはり継続的な記録という意味では、普通のコンニャクのほうが撮影・研究には適していると考えていた。

だから、今回ラジオシンクロ撮影の作例として撮ったショクダイオオコンニャクの芽に、それ以上の特別な撮影動機は無かった。たまたま目に付いたから、ラジオシンクロで撮ってみただけ。陰が明るく照らされ、日中シンクロ撮影の有用性を確かめたに過ぎない。

自宅に戻って写真をチェックしてみたが、ショクダイオオコンニャクの芽はなかなか良く写っていた。

<ショクダイオオコンニャクの芽が良く写っている>
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ショクダイオオコンニャクの芽が良く写っている
[2014/06/14]

それにしてもこの姿はまるでタケノコのよう。まさか、コンニャク栽培はやめて代わりにタケノコでも植えたか・・・?
ちょうど我輩の手元に、近所の竹林でタケノコを撮影した写真があるので念のために見てみたが、実際比べてみると似ても似つかなかった。まだまだコンニャクに対する知識が足らぬか。

<ちなみに本物のタケノコはこれ>
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ちなみに本物のタケノコはこれ

数日後、たまたま筑波実験植物園の公式ウェブサイトを見ていたところ、ショクダイオオコンニャクについての記述を見付けた。それによると、新たな芽は枝葉ではなく花に生長しつつあるとのこと。
どういうことだ? あと数年は花を咲かせず枝葉を茂らせて栄養を貯め込むと思っていたが・・・?
しかし公式ウェブサイトに掲載された写真には、タケノコのような芽が裂けて花弁が覗いている状態が写っているのだ。花になることは疑いようも無い。

そこで我輩は、このショクダイオオコンニャクが開花するまでの継続的撮影を決断した。
最初の撮影こそ特に意図したものではなかったが、偶然とは言え、出芽時点の最初の段階を撮影したのも何かの縁。開花までの生長の様子を捉えるための良いスタートとなろう。
それに、たった数日であれだけ大きくなるというのも驚かされた。コンニャクでなくともそれだけでも興味深い。

これまで撮影技法ありきで必ずしも我輩の欲する被写体とは言えなかったが、今回は是非とも、このショクダイオオコンニャクというものを写真に納めたい。そのために技法を活用し、自分自身のコンニャクの研究資料として役立つよう撮影に臨むのである。
これはいわば、本番撮影。

それから付け加えて言うと、筑波実験植物園の公式ウェブサイトに掲載された写真のクオリティが低いことも動機の一つ。
掲載写真は不鮮明で色が偏っているものが多く、中には逆光で白く霞んで見えるものもある。もしかしたらレンズが汚れているのに気付かず撮ったか? だとすれば、写真撮影に対する意識は極めて低い。実験植物園職員にとっては、写真撮影は片手間の価値しか無いのだろう。
そもそも、画像が小さくて何の参考にもならない。税金が投入された国立機関、ましてや植物に関する研究を行っているというのだから、記録写真くらいまともに撮って納税者たる我々へ公開して欲しいところだが、ここで文句を言っても仕方無い。自分が納得出来る写真は、自分で撮る以外に方法は無い。

そうと決まれば早速、撮影の計画と準備にとりかかる。この撮影は、事前に計画を練って準備をしておかねば失敗を招くこととなろう。
ショクダイオオコンニャクのある温室では、見学路から見ると逆光気味となるので、どう考えてもライティングは欠かせない。ところが開花が近付くにつれギャラリーが増えるだろうから、ライティング設置も一工夫必要になろう。
前回2012年の開花ピーク時、ちょうど土日に重なったせいで見学者が押し寄せ、見学路が一方通行かつ立ち止まり禁止となり、写真撮影も1人2枚までという制限が付けられたそうである。こんな状況でどうライティング設置出来るだろうか。

開花の日程については、実験植物園側の予想では2012年の状況を参考にすれば、7月1日(火)〜4日(金)になりそうとのこと。もしこの通り平日に当たるならばギャラリーは少なめとなろう。我輩は有給休暇で対応する。
ただよく考えてみると、月初の金曜日は業務上の多忙日に当たる。前月の買掛伝票処理の締め日なので、7月も3〜4日くらいにはとても休暇は取れない。ならば早めの7月1日くらいに開花となってくれればまだ何とかなるが・・・多分。

いずれにせよ、ライティングについて方策を考えるため、ギャラリーの少ないうちに現場で試行錯誤を重ねておきたい。
最初の芽の撮影が6月14日(土)だったので、2度目の撮影は翌週6月22日(日)とする。

●本番撮影2回目(2014年06月22日)
その日は朝から雨だった。
1時間半もの道のりをクルマで走り、開館30分前に実験植物園駐車場に到着。まだギャラリーは少ないとは思うものの、朝一で誰もいない時にあれこれやってみようと考えたのだ。
案の定、まだクルマは1台も停まっていない。少々気合を入れ過ぎたか。

<雨の中を一番乗り>
雨の中を一番乗り

結局、開館時間9時になるまで並ぶ者もいなかった。
せっかくなので今後のために年間フリーパス券を購入したのだが、購入申込書なるものを書かされたせいで入場が5分遅れ、一番乗りは果たせなかった。
しかしそれでも朝一番の入場者は数人で、そしてずっとショクダイオオコンニャクを見続けているわけでもないので、少し待っているだけで我輩一人だけの空間となった。

近付いてみると、確かにフリル状の花弁が顔を覗かせている。しかし改めてその生長スピードに驚かされる。つい1週間前までは小さなタケノコ状だったものが、こんなに大きくなるとは。
これくらいの大きさになるとライティングには苦労する。ストロボを設置したスタンドを片手で持ち上げて上方から照らすことは不可能ではないが、撮影距離がこれまでの小物撮りに比べると遠いので、カメラを構えながらのライティングは難しい。仕方無いので、まずは単純に被写体の脇にスタンドを立てて横からストロボ照射とした。

<脇にスタンドを立ててストロボを設置> ※トリミング掲載
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脇にスタンドを立ててストロボを設置

最初の数枚は定常光のレベルを落とし過ぎてしまい、まるで夜中に撮ったかのようになってしまった。その状態からストロボ出力やAv/Tvに対して微調整を加えてバランスを取った。

<真横からののライティング>
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真横からののライティング
[2014/06/22]

工夫の無いライティングではあるが、結果は我輩のイメージからそれほど外れたものでもない。ちょっとテカリがあって不自然さが残るものの、それくらいがライティング的主張があって良いとも思える。植物体表面の質感がリアルで、花弁のフリルの深みとともに情報量も豊富。

ただし、開花のピーク時の混雑期にはこのライティングは使えまい。大勢のギャラリーが取り囲むことになるのだから、そんな中でスタンドを置いたまま離れられるはずがなかろう。
改めて周囲を見渡したが、他にスタンドを立てられる場所は無さそう。もしかしたら、開花ピーク時にはラジオシンクロは活用出来ず、単純にクリップオン状態で真正面ライティングするだけになるかも知れぬ。

●本番撮影3回目(2014年06月28日)
3回目の撮影は次の週末となるわけだが、それまで平日の間は自宅から実験植物園の公式ウェブサイトをチェックするしかない。
最近の記述を読むと、驚くことに1日で13センチくらいも伸びているらしい。単純に計算すれば、1週間で1メートル近くも伸びるということか。そんな速い生長スピードで1週間おきに撮影するのは間延びが過ぎる。

それにしても、公式ウェブサイトに掲載された写真は相変わらずクオリティが低い。例え低クオリティが仕方無いとしても、大きな画像サイズで掲載してくれればそれなりに参考となろうが、画像をクリックしても拡大しないので脱力する。一部分を詳しく見たいと思っても何も見えない。
やはり、自分で撮らねばならぬ被写体ということか。

生長スピードの速さと公式サイトの写真クオリティにヤキモキしながらも、ようやく次の土曜日となった。
今回は豚児とヘナチョコ妻を連れて行くことにした。世間的に注目を集めている珍しいものであるから、豚児への教育的配慮である。実験植物園側の開花予想では、次の週末ではもう遅いので、開花前のタイミングとしてはこの週末しか連れて行くチャンスは無いとみた。

この日も、朝から雨だった。
1時間半のドライブで現地駐車場に到着。今回も開館30分前。開花が近いのでさすがに行列があるかと思ったが、意外に誰もいない。
開館時間になって入口が開くやいなや、入場券を買う豚児とヘナチョコ妻をよそに我輩は年間パスポートを提示して一人温室へ急いだ。

見ると、ショクダイオオコンニャクは1週間前に比べてグンと大きくなっていた。ホワイトボードに書かれた計測値には210センチとある。もはや人の身長も大きく超えている。
この生長速度で1週間ごとの撮影というのは間隔が長過ぎたか。しかしサラリーマンの我輩にはこれが精一杯。有給休暇は開花時のために取っておかねばならぬ。

さて今回、我輩は1つの試みを行うこととした。
ライティングについて、前回のようにスタンドを使わず、クリップを使って温室にある支柱にストロボを設置してみようと考えたのだ。少し高さが稼げるので、真横から光を当てるよりも多少自然な感じになろう。もちろん、あまりに自然なライティングとなってしまうと主張が弱くなるのでそれは避けたい。

<クリップを使ったストロボ設置例>
クリップを使ったストロボ設置例

実際にストロボを設置してみたところ、当たり前ではあるが温室内ではどうにもストロボの存在が目立ってしまう。
とは言っても今さらどうしようも無いので、とりあえずその状態で撮影してみると、なかなか良い具合に照明されているのが確認出来た。開花時のライティングもこの方法でいきたいが、問題はどうやってストロボを人の目から隠すか・・・。

ストロボを眺めながらそんなことを考えていると、後ろから近付いてきたおばちゃんに声をかけられた。
「新聞に載ってた大きな花ってどれですかね?」
「新聞に・・・? ああ、ショクダイオオコンニャクならアレですわ。」
そちらを指差しておばちゃんに教えてやった。
我輩は新聞を購読していないので知らなかったが、どうやら開花間近のショクダイオオコンニャクが新聞で紹介されたようだな。今後この調子で徐々に認知度が上がり、訪れる人も増えてくるに違いない。

ところで肝心のライティングについてだが、カメラ(OLYMPUS OM-D E-M1)の背面液晶に表示された画像を見ると、思いのほか硬調に見える。それを和らげるためカメラ側のAv/Tvを色々と調整したのだが、そうすると絞り値が大きくなり過ぎてパンフォーカス気味になってしまうことから、その状況下ではストロボの出力を弱めないと難しい。しかしストロボはクリップで柱に固定してあり、ヘタに裏側を向けて調整するとライティング角が微妙に変化してしまうのを恐れたため、やむなくカメラ側のISO感度で調整した。

だが不思議なことに、家に帰ってパソコン画面で見たところ、調整前のほうが我輩のイメージそのままの良い感じに仕上がっていたので安心した。
存在感が強く出ておりなかなかよろしい。

<意外にイメージに近い仕上がり>
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意外にイメージに近い仕上がり
[2014/06/28]

なお、その横には別の種類のコンニャクが、それに負けじと競うように枝葉を植えに伸ばしていた。写真の右端にはその一部が写っている。

ところでこの日は中判カメラ「PENTAX 645N」も持参したのだが、途中で電池切れ(単三電池6本)となり、無念にもフィルム撮影は中途半端に終わってしまった。4年前に購入して以来ずっと電池を替えずに動き続けていたので、もしかしたら電池を替えなくても動き続けるオーパーツ(その時代としては場違いな超技術製品)なのではないかと思ったこともあったが、まさかここで電池が切れるとは。

●本番撮影4回目(2014年06月29日)
1週間という撮影間隔が長いのであれば、土日限定での連続2日を撮影するというのはどうだろう。毎日ずっと撮影することは出来ないとしても、少なくとも特定の1日差の生長スピードを見るには貴重な記録となるのではないか。
日曜日の昼過ぎにそう考え、急遽出撃することとなった。

現地到着は15時近く。閉園まであと1時間半だが、ショクダイオオコンニャクだけが目的なので十分。
いつもより混んではいたが、駐車場にはかろうじて空きがあった。もっともこの時間帯では、これから駐車場は空く一方なので特にラッキーというほどでもない。

昨日と同じようにストロボを温室の支柱にクリップで固定し、撮影を始めた。
ショクダイオオコンニャクを見れば、確かに昨日よりも少し伸びたように思えるが、写真で比べてみないとどれだけ伸びたのか分からない。ホワイトボードに書かれた計測値には225センチと書かれており、数値上は昨日から15センチ伸びていることになる。

この時間ではさすがに他の人間は何人かいた。しかし、我輩の遠隔ストロボ発光を気にする者は皆無だった。やはり瞬間光というのは、どこから照らされているのかが分からないのだろう。何の変哲も無い普通のストロボ撮影だと思うようだ。

カメラの背面液晶に表示された画像を見ると、最初からバランス良く見えたので安心した。
しかしながら自宅パソコン画面で見てみると、思いのほかストロボ光が弱く、冴えない写真に見える。どうもこの「OLYMPUS OM-D E-M1」は背面液晶が実際よりも硬調に見えるようで騙された。

<少々冴えないライティングとなった>
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少々冴えないライティングとなった
[2014/06/29]

なお、別の種類のコンニャクもかなり伸びているのがこの写真からも分かる。昨日の写真と比べてみれば、その伸び方は歴然。
コンニャクという植物は、ショクダイオオコンニャクに限らず生長が早いようだ。

●本番撮影5回目(2014年07月04日)
6月30日(月)になり、7月の休暇予定を考えた。 ショクダイオオコンニャクの開花予想は、実験植物園側では7月1〜4日という幅を持ったものだが、前回開花時の公式サイト記録と付き合わせてみるとどうも7月3日(木)に開花するように思える。
ただし公式サイトの写真では細かい部分が不鮮明で参考にならず、もっぱら文章記述と生長スピードの数値変化から予測したまでのこと。あてになるかどうか分からぬ。

我輩の休暇取得については、幸いなことに6月は四半期決算のため買掛伝票締め日が早まり7月2日ということだったので、それならばピークを過ぎた翌7月3日に休暇を取っても問題無かろう。
しかしそれでも、開花情報を待たずに行って咲かなかったら困る。その翌日に咲いたとしたら、連続2日の休暇はさすがに無理。予定外の休暇ではなおさら。

ならば開花情報を得た上で、その翌日に行けば確実であろう。前回開花時の記録によれば、開花翌日でもまだ花は開いていたので大丈夫かと思う。
そういうわけで、いちおう休暇申請は7月4日(金)としておいた。

ところが、我輩の開花予想である7月3日(木)当日になってもなかなか開花情報が出ず、やはり7月4日(金)が開花日かと思い始めた。そうなると、当日は開花するまで現地で待ち続けねばなるまい。
もし間違って7月5日(土)が開花日となってしまうと、多くのギャラリーが詰めかけて撮影は難しいものになろう。それだけは困る。

最終的に、7月3日(木)の夕方になって開花の第一報が公式サイトに出た。
これにより、7月4日(金)の出撃は予定通りとなった。

当日朝、8時到着を目指してクルマを走らせた。通常の開館時間は9時からであるが、開花後数日間は臨時に8時30分開館となるとのこと。その30分前には到着しておきたい。
しかしながら、この日は平日のためか所々で通勤渋滞にハマッた。特につくば市に入ると、筑波学園都市に勤務する者たちが集中するためか、週末では考えられないほどクルマが多かった。
その結果、現地に着いたのが8時40分頃。もう開館時間を10分も過ぎていた。こうなっては焦っても仕方無い。

園内に入ると、ショクダイオオコンニャクのある温室までは一方通行の誘導路が出来ていた。所々に誘導員がおり、物々しい雰囲気を感ずる。混雑による混乱を避けるための措置であるが、いつもと異なる状況によりストロボ設置にどれほどの支障が出るかが気になる。
とりあえず温室内に入ったところ、ギャラリーは多いことは多いが想像したほどではなかった。やはり平日の早朝のせいか。

今回、ストロボ一式は一番古いものを用意した。ストロボ本体は外観や角度調節では少々ヤレがある。ラジオシンクロユニットも受信しか動作しない半不良品を選んだ。
これはつまり、設置したストロボが盗まれたり没収されたり、あるいはあまりの混雑で回収出来なくなったとしても諦めがつくよう考えた措置である。

ストロボの設置場所は前回と同じ場所の柱を考えているのだが、この日、その柱には実験植物園側が取り付けたと思われる定点観察用のコンパクトカメラや白熱灯の照明装置など数多く設置されていた。照明装置については、恐らく夜間観察のために使ったものであろう。今は点灯していない。
我輩はストロボを手に、一瞬どうしようかと考えたものの、試しに空いている箇所に我輩のストロボを設置してみたところ、他の設置物に紛れて我輩のストロボはほとんど目立たなかった。まさに、「木は森に隠せ」のことわざ通り。

ストロボを設置後、その場を離れて撮影位置に向かった。そしてさっそくシャッターを切る。ショクダイオオコンニャクを多くのギャラリーが取り囲んでいるので、シャッターチャンスとは言えないが、ライティングの確認としての撮影である。
ライティング確認と同時に、遠隔ストロボ発光による人々の反応を見たところ、不審に思う者は皆無のよう。これはいける。

ただしライティングについては、花弁が広がったことで余計な影が被ってしまい、まるで直射日光が当たっているように見える。調整にはストロボの位置を大きく移動させねばならぬが、それは事実上不可能なのでこのままとする。

ところが大きな誤算があった。
これまで撮影してきた定番位置でカメラを構えてフレーミングしたところ、ショクダイオオコンニャクの横で一緒に生長していた別のコンニャクの枝葉が予想以上に大きく広がり、ショクダイオオコンニャクを遮っているではないか。
その枝葉を少しでも避けようと左に寄ったところ、今度は左側に竹が入り込む。にっちもさっちもいかない。

<別のコンニャクの枝葉が主役を隠す>
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別のコンニャクの枝葉が主役を隠す
[2014/07/04]

仕方無いので定番としていた撮影位置を諦め、改めて別の位置から撮影することにした。
ここは多くの植物が生い茂っているので、ちょっと撮影距離を開けようと思うと必ずジャマな枝葉が入る。それらを避けようとすれば、もうピンポイントで撮影場所が決まってしまう。

だが撮影位置が決まっても、ショクダイオオコンニャクを多くのギャラリーが取り囲むので、なかなか全体が写せない。だから下のような写真を撮るには、まさに開館直後のわずかな間か、粘りに粘って奇跡の一瞬の空白を狙うしか無い。

<奇跡の一瞬を狙ったカット>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
奇跡の一瞬を狙ったカット
[2014/07/04]

あるいは、自分自身が目の前に近付いて撮れば少なくとも前をジャマする者は入らない。あとはショクダイオオコンニャク背後に回り込むギャラリーが途切れるまで粘るだけ。
ただし撮影距離が近いと遠近感が強調されてしまい、記録写真としての形状の正確性というか、形状の客観性を弱めてしまうのが好ましくない。

<近付いて狙ったカット>
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近付いて狙ったカット
[2014/07/04]

何度も言うが、平日にしてこのギャラリーの多さには驚く。
それから、9時近くになると、マスコミ(TBSと日テレ)が入れ替わり立ち替わりやってきて、こちらが小一時間撮影を中断せざるを得ない状況になったのには閉口する。ギャラリーへのインタビューはともかく、花だけを写すシーンでは開館時間前に済ませておくべきことであろう。実験植物園側も、通常の入館者へ配慮し、開館時間前にマスコミを受け入れるべき。

<多くのギャラリーとマスコミ>
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多くのギャラリーとマスコミ
多くのギャラリーとマスコミ
[2014/07/04]

撮影のジャマと言えば、ショクダイオオコンニャクを説明している研究者らしきセンセイが一番ジャマだった。それは、この場で撮影していたカメラマン全員が大なり小なり感じていたことであろう。
そのセンセイは説明の間中、手をショクダイオオコンニャクのほうへずっと向け続けているので、その手が必ず画面に入る。我輩はそのセンセイの説明を聞きながら、身振りの必要性を見てみたが、説明上の必然性がほとんど無く、ただ単にクセであることが分かった。
このような、撮影に対する配慮の無さが、公式ウェブサイトの写真のクオリティにも通じているのだと改めて感じた次第。

以上、ショクダイオオコンニャクの撮影は開花を以て終了とした。この後も萎れる様子を撮りたいところだが、次の週末まで自然な姿で残っているかは分からない。というのも、前回は研究と受粉作業のため花弁の切除が行われており、生長録としての意味合いが無くなってしまうからだ。

最後に、今回撮影した一連の生長過程を1枚の画像にまとめてみた。それが、以下の画像。
これは今回の撮影の集大成、我輩なりの報告書と言える。

<筑波実験植物園のショクダイオオコンニャク生長録>
(※画像クリックで長辺2000ドットの画像が別ウィンドウで開く)
筑波実験植物園のショクダイオオコンニャク生長録

ちなみに、実験植物園では現在写真コンテストで作品募集しているのだが、我輩はこの生長録画像を応募した。複数の画像を貼り込んだうえに文字入れまでした作品を写真コンテストに応募したのは、世界広しと言えども我輩が最初の人間である。
これが写真として認められるはずは無かろうが、そんなことはどうでも良い。写真コンテストに応募した目的は他でもなく、「研究としての記録写真を撮影するならば、もっと丁寧に写真を撮らぬか」という我輩の無言のメッセージを込めたもの。
少しでも公式ウェブサイト掲載写真の撮影と掲載方法に工夫が現れればと期待するものである。