2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
 F3 (F3H)
 FM3A
 FM2
 FM
 FE2
 FE
 FA
 FG
 FM10
 FE10
 F4
 F-401X

Canon
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RICOH
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 XR-8SUPER

カメラ雑文

[850] 2015年10月11日(日)
「モバイルスタジオ」


一昔前、インターネット上でモバイルコンピューティングを実現させた男の写真が話題に上ったことがある。
背中にタワー型パソコンを背負い、CRTタイプのディスプレイとフルキーボードをアームで吊り、歩きながらでもパソコンが操作出来る様子を写したものである。

<昔のモバイルコンピューティングをイラストで再現>
昔のモバイルコンピューティングをイラストで再現

もちろんこれはジョーク画像で、本気でそのような姿でモバイルコンピューティングを実現させたということではない。いくら昔のこととは言ってもノートパソコンくらいは存在したので、本気でやるならわざわざタワー型パソコンではなく素直にノートパソコンを使えば済む話。

だが仮にノートパソコンが存在しなかったならば、モバイルコンピューティングはどうなっていただろうかと、ふと思った。
普通に考えれば、タワー型パソコンを背負ってまでモバイルコンピューティングしたい者などおるまい。そもそもAC電源確保の問題もあるので、自動車用鉛蓄電池とインバータも背負い込まねばなるまい。鉛はハンパ無く重いぞ。

我輩の場合、モバイルコンピューティング自体に必要性は感じないものの、それでもいったん必要性を認めたならば、我輩のことであるから目的達成のために本気でタワー型パソコンを背負うことだろう・・・。

●ブツ撮りから"植ブツ撮り"へ
我輩はここ1年半ほど、積極的屋外ストロボライティングによって植物を撮っている(参考:雑文814)。
植物を対象とした理由は、ごく単純。「動かないから」である。

以前、ノラ猫に対して積極的屋外ストロボライティングを試みたが、伸ばしたポールスタンドとストロボ閃光を警戒されて近付けず、成功率は甚だ低かった。

<ポールスタンドに威嚇するネコ>
ポールスタンドに威嚇するネコ

結局のところ我輩の被写体の中では、積極的屋外ストロボライティングで撮れるものは、「植物」、「岩石・鉱物」、「昆虫」に限定されるのだが、それらの中で日常遭遇率の高い「植物」が、我輩の主たる被写体となっていった。

元々我輩は、植物を愛でる趣味は無かった。
それまでは、近場の植物園で撮影することがあったとしても、それは新しく導入した機材のテスト撮影という意味であり、植物そのものを撮りたいとは思っていなかった。

ところがテストながらも撮影を通して植物を見るようになると、その面白い形や生態などが目に入るようになり、その特徴を写真に表現出来るよう努めた。もし上手く表現出来なければ、何度も撮り直すこととなる。

そういったことを続けていたところ、いつしかテストのためではなく、植物を撮ることをを目的として本番撮影するまでになった(参考:雑文818)。

ところで、我輩が積極的屋外ストロボライティングを行うのは、そもそも「野外でブツ撮り(テーブルトップ撮影)する」ということが動機である。
昔を振り返ってみると、かつて我輩はブツ撮りをするという目的のために専用の撮影機材を揃え、それら機材の操作技術を習得してきた。66中判カメラシステムも、ジェネレータ式スタジオストロボも、露出確認用のポラバックも、ブツ撮りに必要だったからこそ導入したものである。そうでなければわざわざそんな大げさなものを買うはずが無い。
そういった経緯があるため、我輩の撮影の基本スタンスはブツ撮りであり、ブツ撮りではない撮影の時であっても、発想はあくまでブツ撮りである。

ブツ撮りでは、ライティングは事前に決めたイメージ(もしそれが商業写真ならばクライアントのイメージ)に従って自分の責任で組み上げることが重要である。だから天候や時刻に左右される自然光をアテにすることは出来ない。
ラチチュードに収めるという意味でも、自然光はコントロール範囲外なので厄介である。画面内に明る過ぎたり暗過ぎたりする部分が無いよう調整するには、人工光のほうが都合が良い。
そういう意味で、もし思い通りの結果が得られなければ、それは100パーセント撮影者の責任と言える。

ブツ撮りに求められる基本要件は、「対象物(商品)のありのままが正しく写真に表現されていること」である。普通ならば陰になって暗く見えなくなるような部分も、わざわざ照り起こして表現する。だからその表現が不自然と言えば不自然であり、カタログ的写真である。いや、まさにカタログに載せる写真がブツ撮り写真である。

具体的には、「商品全体にピントが合い、鮮明に写っていること」、「商品に色カブリ無く色が正確に表現されていること」、「商品の形が正確に表現されていること」、「画面内に白飛び黒ツブレが無くキチンと濃度が収まっていること」となる。
ブツ撮りが出自である我輩は、この点に強くこだわり、ブツ撮り以外の撮影でもこのような観点で撮影を行い、そして得られた写真の失敗・成功の評価をブツ撮りの観点から行う。

ところで、一般的な植物撮影の場合、その分野としての定石とも言える表現手法があろうかと思う。
良く見かけるのは、植物の一部分を拡大し、淡い色調にて透明感を持たせた写真である。特に花を撮る場合、いかにファンタジーに表現されているかが重要視されているように思う。
我輩の勤務先でも毎年「花カレンダー」の企画・制作があって花専門のフリーカメラマンを起用しているようだが、極端な表現は無いものの、それでもやはり図鑑写真ではないのだからファンタジックな表現となっている。

我輩も、見よう見まねでファンタジックな写真を撮ってみた。それが下の作例。
望遠レンズを使って背景をボカし、露出を少々オーバー気味にして淡く仕上げてみたのだが、一応はそれらしく撮れたと思う。

<見よう見まねで撮ったファンタジックな作例>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
見よう見まねで撮ったファンタジックな作例
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark2/12-40mm F2.8/ISO200/F2.8/1/160sec.

そこで試しに花写真投稿サイトにて、我輩の撮った「ブツ撮り撮影的写真」と「ファンタジック写真」の2パターンを投稿してみたところ、前者は全く人気が無く、逆に後者はかなり人気を集めた。
このことはつまり、世間一般では花写真にファンタジックな表現を求めていることを意味する。我輩がどうこう言おうとも、それが覆せぬ事実である。

結局のところ、もし花写真を撮る目的が「人に見せて評価を得るため」であるならば、ファンタジックな写真に徹するべきであろう。それこそが、ニーズを的確に反映させた写真活動と言える。

だが、これが本当に自分の撮りたい写真なのかは別の問題。
自分自身も世間一般と同様にファンタジックな表現を好むというのであれば、ニーズとマッチして良かろうが、世間のニーズとは異なる表現を好むとすれば、1つの選択に迫られることになる。
つまり、自分の撮りたい写真を撮るのか、あるいは人に見せるための写真を撮るのか、である。

もちろん、このような写真を本当に撮りたくて撮っている者もいよう。それは大変なる幸せ者と言うしかない。自分の撮りたいものとニーズがマッチしているからだ。
だが我輩のように、撮りたいものとニーズが完全に乖離しているのであれば、どちらかの選択をせねばならないのである。ニーズを完全無視し、あくまで自分の欲する方向に突き進むとすれば、アンリ・ルソーのような、誰からも評価されぬ孤独を覚悟せねばならない(参考:雑文588)。

我輩は、一般的植物写真の定石を無視して自分のスタイルを貫くことに躊躇は無い。
「図鑑みたいなつまらない写真だなあ」と言われようとも、我輩は自分の世界を追求する。なぜならば、我輩は他人に褒められたくて写真を撮っているわけではないからだ。
それでもウェブサイトに掲載する目的は、他者への啓蒙のためである。「本当にそんな写真でおまえは満足なのか」と、問うためである。

●これまでの積極的屋外ストロボライティングの方法
ここ1年半で我輩が行なってきた積極的屋外ストロボライティングは、メイン光をストロボ光としながらも、サブとなる環境光(いわゆるフィルインライト)は定常光、つまり自然光を利用することでコントラストの強さを緩和していた。
この手法により、デフューズ無しのストロボ直照1灯のみであっても、スタジオ撮影的な効果が疑似的に得られたのである。

この場合、コントラスト調整には、被写体自体のコントラスト調整と、背景に対するコントラスト調整の2種類がある。
前者は被写体に当たる定常光でストロボ光の固さを緩和する疑似ディフューズ効果を狙うものであり、後者は背景の定常光を減じて被写体を浮かび上がらせるスポットライト的な効果を狙うものである。
こういった効果を調整することによって、期待した効果が実現出来る。
これは、フットワークを必要とする屋外撮影では必要な撮影技法であり、ストロボ1灯のみで撮影するための苦肉の策でもあった。

ところが、補助的と言えども定常光に頼る部分があるということは、つまり夕方から夜間には対応が難しいということを意味する。
夕方は薄暗いというだけでなく色温度が低くなりサブ光としては不適であるし、夜間であれば全く定常光が得られず完全にお手上げ。

それに定常光を利用するにしても、被写体のコントラストと背景のコントラストは別個に調整出来ないという問題もある。例えば、背景に対するコントラストを強くしようとすると、その調整が影響して被写体自体のコントラストまで強くなり過ぎてしまうことになる。

そもそも定常光は現場なりゆきであるから、メイン光のストロボもそれに合わせることになり、結局はライティング全体としての自由度は狭くなってワンパターンになりがち。

当初、屋外ストロボ撮影において定常光をサブ光とすることは、我ながら良いアイディアだと思っていた。
だがその方法を極めるにつれ、限界も感ずるようになったことも確かである。屋外で定常光の影響を受けずに撮影しようとストロボ撮影したはずだったが、結局は定常光の助けが必要だというジレンマに陥った。
これは、我輩が次のステップへ移行する時期に来ていることを意味する。

もし、屋外で定常光を極力排除するのであれば、サブ光もストロボで補わねばなるまい。つまり、多灯ストロボが必要となる。
いやそれだけでなく、被写体のコントラストをコントロールするには、発光面積を大きくする必要がある。そのためにはレフ板を使ってストロボ光をバウンスさせるか、あるいは思い切ってバンク(ソフトボックス)を使うか。

我輩の頭の中にイメージが浮かんできたが、それはあたかもタワー型パソコンを背負ったモバイルコンピューティングの如く、スタジオ機材一式を背負っている自分の姿であった。
ライトスタンド2つにジェネレータ式多灯ストロボ、そして大きなバンク。
これは新たなジョーク写真になりそうではないか。

物は試しと、実際にジョーク写真を撮ってみたのが次の写真。
さすがにジェネレータ式ストロボではないが、それでもスタンドの数が多く、持ち込みには少々苦労した。

<これぞ理想の屋外スタジオ撮影(ジョーク写真)>
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これぞ理想の屋外スタジオ撮影(ジョーク写真)
これぞ理想の屋外スタジオ撮影(ジョーク写真)


●2灯撮影の有効性
屋外ストロボ撮影の新しい方法としてこれから多灯撮影を試みるわけだが、それには当然ながらストロボが複数台必要となる。
シンクロ的な問題については、元々ラジオシンクロユニットを使っているので何台増えようが問題は無い。
問題点は、携行するストロボが2灯以上となれば、持ち運びやセッティングの負担が増えてフットワークが削がれる点である。何しろ1灯の場合でも、カメラを右手に、ストロボを左手に持ち撮影していた。この状態で既にギリギリの状態だった。

<1灯ライティングのスタイル>
1灯ライティングのスタイル

それに加え、現在の我輩のメインデジタルカメラは片手撮影が難しいOLYMPUS OM-Dであることもハンデとなる。なんと、OLYMPUSのカメラは電源スイッチが左側にあるのだ。レフレックス機ならばいちいち電源を切る必要が無いのでこういう問題は表面化しないが、こまめに電源を切る必要のあるミラーレスカメラでこれは致命的。撮影開始と終わりでその都度、両手を空けねばならない。
このような現状で、もう1灯増やすことは可能なのだろうか?

だが、所詮はクリップオンストロボであるから、1灯くらい増えても何とかなるのではないか。
頭で考えるより、まずは試してみたい。取り急ぎ近場の植物園にて2灯での撮影を体験してみることにした。

試したのは、1灯はポールスタンドで自立させ、もう1灯は片手持ちとする方法。この方法は、撮影時には問題無いが、花から花への移動時の持ち運びに苦労する。

<2灯ライティングのスタイル>
2灯ライティングのスタイル

我輩の現在の撮影スタイルは、自由な撮影アングル実現のためにEVF(電子ビューファインダー)は使わずカメラを前に突き出して背面液晶にライブビュー表示させて撮影している。だからカメラのストラップは首から外す。そうなると、移動時にはカメラを首に掛け直し、改めて2灯のストロボを手に持つ動作が発生する。
この動作を場所を移動するたびに行わねばならぬ。

ともかく撮影結果を見てみると、仕上がりとしては悪くはなかった。

下の作例は、植物園の温室で撮った。ガラス張りとは言え、狭い空間に植物が密生しており、明るいとは言えない状況。
1灯はスタンドポールに設置してアクセント光として下から当て、もう1灯は直接手に持ってメイン光として斜め上から当てた。目指すところとしては、背景を暗く落として被写体を浮かび上がらせ、かつ適度な立体感と質感を表現するものである。

<ストロボ2灯によるライティング>
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ストロボ2灯によるライティング
OLYMPUS OM-D E-M1/12-40mm F2.8/ISO200/F11/1/80sec./FLASH

ここでもし1灯しか無かった場合、このようなアクセント光は望むべくも無い。もちろん、定常光がアクセント光として利用出来る場合もあるが、あくまでもその場の状況任せなので、我輩が思い通りにコントロール出来る問題ではない。
そういう意味で、2灯の効果は大きいと感じた。

●屋外でバンク照明
だがよく考えると、灯数が増えたとは言っても単にアクセント光が増えただけであり、フィルインライトとしての環境光に乏しい。だから被写体のコントラストの調整は解決していない。
今回の例ではたまたま強めのコントラストがイメージに合っていたのだが、もし明るく柔らかい質感の花を撮る時には白飛びが出たりと不都合があったろう。実際、そういうシチュエーションではイメージ通りには撮れず、やむなく定常光に頼らざるを得なかった。

そんな実験を何度か繰り返していたところ、偶然上手く撮れたカットがあった。
それは、ストロボのダイレクト光ではあったが、照射距離がかなり近く、相対的に発光面積が広くなったためであろうと思われた。やはりバンクのような面発光の装備は必要か。
再び、タワー型パソコンを背負うモバイルコンピューティングのイメージが浮かんだ。

いや、待てよ。
以前モデル撮影の時に、持ち運びに便利な組立て式のバンクをWeb検索し、その結果目的に適う製品に行き当たったことは前にも書いた(参考:雑文839)。
あの時は、人物撮影用ということで、出来るだけ大きなサイズのバンクを求めたわけだが、ならば今回、組立て式ではなく折畳み式で傘のようにサッと開けるような小さなバンクを探せば見付かるのではないか?

色々と検索キーワードを変えて検索したところ、確かに傘タイプのバンクが見付かった。傘を開くと長方形の発光面となり、そこに白布を張ってバンクの形態とするもの。クリップオンストロボは内側にセットし、傘で反射させて白布で拡散させるようになっている。

しかしいくらセッティングが楽だとは言っても、傘を開くとそれなりに大きく、奥行きもある。そんなものを使って外でライティングなど、タワー型ではないとしてもデスクトップ型パソコンを外で使うようなもの。さすがにこの案は却下とした。

もっと簡単に面発光出来るものは無いかと根気強く探したところ、面白い製品を見付けた。
「オーロラ製スピードバウンスSB-40(40cm径)7,500円」という、ウチワのような形をしたバンクである。

それはレフ版のようにヒネッて畳めるものだが、側面からストロボの光を取り込んで面発光化させるものであった。これは、ちょうど液晶ディスプレイのバックライトの仕組みと同じである。
ただし韓国製とのことで少々不安があったが、それほど高価なものでもないので取り寄せて使ってみることにした。ちなみに30cm径タイプもあったが、こういうのは面積が大きいほうが良いので40cm径タイプを選んだ。

<スピードバウンスSB-40(40cm径)>
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スピードバウンスSB-40(40cm径)

下の作例は、完全に夜間撮影のケース。街灯の光もほとんど当たらず真っ暗に近い状況にて、「スピードバウンス」を用いてストロボ1灯で撮ったものである。
仮に、強引に定常光で撮ろうと長時間露光したとしても、露光中に木が生長してしまい被写体ブレとなるであろう(もちろんこれはつまらんジョーク)。

<定常光を使わずストロボ1灯のみで撮影したキョウチクトウ>
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定常光を使わずストロボ1灯のみで撮影したキョウチクトウ
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark2/12-40mm F2.8/ISO200/F4.5/1/250sec./FLASH

ここでの注目点は、定常光を利用しないストロボ1灯撮影にも関わらず、花の陰影がソフトであるということ。
もし我輩がこの写真だけ見せられたら、バンクを屋外で設置して使ったのか、あるいは助手にレフ板を持たせてバウンス撮影したのだろうと考えるはず。まさか、コンパクトでフットワークの軽い機材で撮影したとは思うまい。

ただしこの「スピードバウンス」はあくまでも簡易的な製品のため、実際には一般的なバンクのような完全均一な面発光にはなっておらず偏りがある。しかしキレイな映り込みを期待するブツ撮りとは違うので、影響はまず無い。

しかし残念な点として、「スピードバウンス」を雨中で使ったところ、少し触れただけで内部の銀粉が指に付着して驚いた。水で溶ける銀色塗料が塗られているのか。表に出ていない所は手を抜くところがやはり韓国製。

ストロボの固定についても、使っているうちにだんだんズレてくるのだが、この点については作りが悪いという理由ではなく、微妙にサイズや形状の異なる汎用ストロボを固定させるにはどうやっても限界があろうと思う。

<スピードバウンスの内側>
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スピードバウンスの内側

なお、使っているうちにバンクとして必要な厚みが潰れてきてしまった。潰れぬように"押さえ"を自作する必要があろうか。製品としてもう少し工夫があれば良かったのだが、優良コンセプトなだけに誠に残念。

それでも十分有用性の高いアイテムなので文句は無いが、同じコンセプトで日本製のものは無いかと念のため探してみたところ、まさに日本製で「でんでんディフューザー」というものを見付けた。見れば見るほど、「スピードバウンス」に似ている。発売年月が今年の6月と最近なので、「スピードバウンス」をヒントにした模倣品だろうか?

<でんでんディフューザー(30cm径)>
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でんでんディフューザー(30cm径)

こちらは30cm径しか無いのが残念だが、「スピードバウンス」に比べて細かい所で対策してあり、特に潰れ防止のマグネット式のツッカイ棒があって「これは良い」と即座に注文した。

<「でんでんディフューザー」の潰れ防止のマグネット式のツッカイ棒>
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「でんでんディフューザー」の潰れ防止のマグネット式のツッカイ棒

届いたものは径は小さいものの、造りはしっかりしており、使い勝手は良さそうであった。
早速撮影に投入してみたところ、写りの効果は「スピードバウンス」と変わらないものの、雨の日でも特に不安は無い。そして何より、厚み部分が潰れることが無いので安心感を以て使うことが出来る。

ストロボの装着については、内側に白色ゴムバンドがあってストロボのヘッド部分を密着させることが出来る。
しかし首元の固定部分は、やはり汎用ストロボ用なので完全には固定することが難しく、使っているうちにズレてくる。

<「でんでんディフューザー」のストロボ装着部分>
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「でんでんディフューザー」のストロボ装着部分

今回購入した2種類を改めて比べてみたところ、発光面積は思ったほどの違いは感じられず、また意外なことに、配光ムラも両者でそれほどの違いは感じられない。厚みはそれほど問題ではないということか?

<「でんでんディフューザー」と「スピードバウンス」>
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「でんでんディフューザー」と「スピードバウンス」

ともかく、現状では「でんでんディフューザー」をメインで使い、それが破損した時のための予備として「スピードバウンス」は自宅待機させておこうかと思う。
そういう意味もあり、今後これら2種類を「丸型バンク」として特に区別せず総称する。

以下、丸型バンク使って撮影した写真を状況別に幾つか掲載する。

●バンクのみ1灯ライティング
これまで1灯の場合はクリップオンストロボをポールスタンドに設置して使っていた。その流れで、丸型バンクの場合もポールスタンドに設置して使おうと思った。だが持ち歩きでジャマになるし、使用時にも取り回しに苦労した。結局、丸型バンクはそのまま手に持つスタイルに落ち着いた。

<バンクのみ1灯時>
バンクのみ1灯時

丸型バンクは丸型レフ板と同様に折り畳み出来るので、ストロボを装着したまま畳んでカメラバッグに突っ込んだり、丸型部分を半分に曲げた状態で手に持ったりする。
あるいは脇に挟んでいたりすると目立たないので都合が良い。

●バンク併用の2灯ライティング
丸型バンクを使うと柔らかい光となるので、もはや定常光を利用する必要も無いわけだが、それでもアクセント光が無いとメリハリが弱いことがある。
そういう場合に2灯ライティングとした。

持ち運びには、脇に挟んだ丸型バンク1灯に加え、ポールスタンドにストロボ1灯を装着して杖のように持つ。長めの距離を移動する場合は丸型バンクを畳んでカメラバッグに入れておく。

<バンク併用2灯時>
ンク併用2灯時

下の写真はマムシグサを撮ったもので、メイン光を丸型バンク、アクセント光として半逆光のストロボ直光を用いた。

<左:直光/右:丸型バンク>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
マムシグサ
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark2/12-40mm F2.8/ISO200/F6.3/1/80sec./FLASH

このマムシグサの実はまだ赤く色付いておらず、画面全体が緑色となってメリハリが弱い。
以前のようなディフューズ無しストロボ直光であればコントラストが強かったため都合が良かったが、今回は被写体を柔らかく表現しつつメリハリを付けたく、半逆光となるストロボ直光を設置した。
これにより、実の1粒1粒の滑らかさと立体感が両立出来たように思う。

次の写真はキノコの撮影であるが、ここでは丸型バンクを極力近付けて陰が柔らかくなるようにした。なぜバンクを近付けると陰が柔らかくなるかと言うと、見かけ上の発光面積が大きくなるからである。

<左:丸型バンク/下:直光>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
キノコ
OLYMPUS OM-D E-M1/12-40mm F2.8/ISO200/F10/1/125sec./FLASH

その効果は大きく、屋内スタジオで大型バンク照明で撮ったかのように見える。
なお、いくらディフューズを利かせても1灯ではキノコの傘の裏側が暗く落ち込むため、下から2灯目のストロボ直光を当てた。そのせいで、わずかに陰の目立つ箇所がある。

次の写真は、寄せ植え状態の中にある花「ランタナ」を撮影したものである。夕刻のため定常光が少ない状況下で、さらに露出設定によって定常光をほぼシャットアウトした。

<背後逆光:直光/右:丸型バンク>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
ランタナ
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark2/12-40mm F2.8/ISO200/F6.3/1/250sec./FLASH

花そのものは丸型バンク1灯で済むものだが、背景が暗くなるので2灯目を使って照らすこととした。
しかし単純に背景を照らすよりも、逆光的に照らして背景が華やかになるよう演出した。

次は、赤い色が鮮やかな「タマゴタケ」を2灯で照明した。林の中で薄暗く、定常光が少ない状況。

<左:丸型バンク/右:直光>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
タマゴタケ
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark2/12-40mm F2.8/ISO200/F6.3/1/60sec./FLASH

この写真では、木の脇で生えている様子を撮影したかったので、左側にある木とともに照明する意図で左側から丸型バンクで照らした。
しかしその1灯だけではキノコの右側が暗く落ち込むため、右側から直光をわずかに当てて照り起こした。

次の写真は温室内にて「プルメリアドワーフ」という花を撮ったものである。

<背景:直光/右:丸型バンク>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark2/12-40mm F2.8/ISO200/F4.5/1/250sec./FLASH

これまでの1灯撮影の場合、照明は手前側の花を照らすだけで、背景側は暗く落ち込まざるを得なかった。しかしここでは背景を照らす別の1灯を用いており、奥行きが感じられる。
ある意味、2灯のメリットがハッキリ分かる写真と言える。

次の作例は「ヨウシュヤマゴボウ」を撮ったものである。
アクセントとして真下からストロボ直照を当て、左サイドから丸型バンクで面発光を当てている。

<下:直光/左:丸型バンク>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
ヨウシュヤマゴボウ
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark2/12-40mm F2.8/ISO200/F4.5/1/320sec./FLASH

ツヤのある球形の実は、ライティングによって大きく表情を変える。特にこの場合のような黒い実であれば、1灯の場合に定常光無しでは立体感を得るのは難しいだろう。

なお、この「ヨウシュヤマゴボウ」は歩道に覆いかぶさるように実っていたもので、たまたま歩いていて遭遇したもの。カメラバッグからサッと取り出してライティング出来たことが好都合だった。

<撮影場所>
撮影場所

次の写真は、夕刻にカボチャを撮ったもの。
右手前側からバンクによる照明をしているが、立体感を出すために別の1灯をダイレクトに逆光的に配置した。

<左:直光/右:丸型バンク>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
カボチャ
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark2/12-40mm F2.8/ISO200/F9.0/1/125sec./FLASH

このライティングによって、背景を照らすと共にカボチャの質感も得られた。
なお、ストロボ光の当たっていない画面左下を見れば分かる通り、定常光はほぼ無く、空が多少明るく見える程度である。1灯のみでは平坦な仕上がりとなっただろう。

●バンク併用の3灯ライティング
2灯ライティングの場合、背景を照らすために1灯費やすと、残り1灯しか無くなる。これではどうしてもライティングの自由度は制限されることとなる。
当初はレフ板を使うことで補おうかとも考えたが、ストロボを1灯増やす手間とほとんど変わらぬし、ヘタをすれば角度調整などそちらのほうが手間がかかることから、必要があれば3灯照明をすることとした。

下の写真は「ツリフネソウ」を撮ったものだが、日陰の下、露出設定で定常光をほぼシャットアウトし、ストロボ光のみのライティングとした。要するに、例え真夜中であろうとこれと同じ写真が撮れるということになる。

<左:直光/右:丸型バンク/背景:直光>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
ツリフネソウ
OLYMPUS OM-D E-M1/12-40mm F2.8/ISO200/F7.1/1/320sec./FLASH

これは、我輩の目指す「屋外スタジオ撮影」を実現させたものとして意味深い写真と言える。これこそ、我輩の意志で完全コントロールしたライティングと言えよう。
これにより、時刻や天候などに全く影響されず安定して思い通りの仕上がりが得られる可能性が拓けた。

もちろん、屋外での3灯ライティングは手間ではあるが、フットワーク低下とならぬよう工夫している。
まず移動時、ポールスタンドにストロボ1灯を装着して杖のように持ち、2灯目の丸型バンクは脇に挟み、3灯目のストロボは単体のままカメラバッグのポケットに入れておく。
3灯目はカメラバッグ側なので、実質的には2灯体制の場合と変わらない。

<バンク併用3灯時>
バンク併用3灯時

現場で設置する際、まず1灯目をポールスタンドで置き、2灯目の丸型バンクを左手に持ち、そして3灯目が必要ならばカバンから取り出したストロボを地面に寝かせる。もちろん微調整があるのでそれなりに時間はかかるが、経験を積めば配置場所はすぐに決定出来、あとはリモートで光量調整すれば済む。なお、手に持っている丸型バンクの光量調整はリモート調整ではなく直接操作したほうが早い。

ライティング撤収時は、丸型バンクを脇に挟み、地面に置いたストロボを拾ってカメラバッグのポケットに突っ込み、最後にポールスタンドを握って立ち上るのみ。5秒とかからぬ。

●これからの撮影
今回、「これからは全て3灯で撮影する」と結論するわけではない。
やはり3灯での撮影は状況を選ぶことも多いので、基本的には丸形バンクを使って1灯での撮影とし、それで不都合があれば2灯、それでも満足出来ねば3灯というように、必要に応じて追加出来るオプションとしたい。

下の写真は、夕刻の赤城山の覚満淵で撮ったコケだが、これは丸形バンク1灯で撮影したものである。陽が傾き、ほとんど真っ暗な状況下、ストロボ1のみでここまで自然な雰囲気で撮れる。

<定常光が無かろうとも無問題>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
ストロボ2灯によるライティング
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark2/12-40mm F2.8/ISO200/F9.0/1/320sec./FLASH

これはごく小さな被写体で遠景がほとんど無い状態であるからこそ可能であった。当然、遠景も一緒に画面に入れる場合には、またライティングも変えねばならぬ。そういった場合に2灯目以上のストロボを追加出来るオプションがあれば、撮影の可能性が広がるというわけだ。

さて、このようにして得られた写真について、背景を切り抜いて加工してみたものを以下に掲載する。
これの意図するところは、屋外にてスタジオ撮影が実現出来ているかを確かめるためである。

<丸形バンク1灯のみ>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
丸形バンク1灯のみ 丸形バンク1灯のみ


<丸形バンク1灯のみ>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
丸形バンク1灯のみ 丸形バンク1灯のみ


<丸形バンク併用2灯>
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丸形バンク併用2灯 丸形バンク併用2灯

それから、ライティングがスタジオ撮影的であるならば、本当のブツ撮りもそのライティングで可能であろうかと試してみたものが次の写真。
屋外ライティング撮影中にカメラを置いてみたのだが、まるでスタジオで別撮りしたカメラを合成したかのように写っている。

<同じライティングでブツ撮り出来る>
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同じライティングでブツ撮り出来る
同じライティングでブツ撮り出来る
同じライティングでブツ撮り出来る

以上、新しいライティングにより撮影の可能性が大きく拓けたわけであるが、今後も我輩独自の世界をさらに切り拓くべく、常識に囚われぬ発想を以て突き進み、自分自身の求めるものが何であるかを追求していきたい。
恐らく最終的には、誰からも理解されぬところまで尖鋭化するだろうが、それこそが、我輩がこの世に生きた証とするものである。