[514] 2004年11月12日(金)
「綺麗な色を知らぬ子供たち」
我輩が最初にパソコンに触れたのは、中学の理科教師が購入した「NEC PC-8001」というものだった。
当時はBASICが流行っており、ナツメ社のゲームプログラム集を数冊買い、一文字ずつ入力していったものだ。
モノクロモニターに緑色の文字が浮き上がり、非常に先進的に思えた。
その後、大学では「PC-9801VM」という機種を使い、実験結果を「ロータス1-2-3」で集計した。また、実験の合間に「シムシティ」で遊んだりもした。
モニターは8色のカラーで、非常にキレイに思った。
その後就職し、そこで初めてお絵描きソフトに触れた。
マウス操作によって画面に色が着き、それがフロッピーディスクに保存出来るのが面白かった。
表示出来るのはシステム16色のみで、他の色は掛け合わせによって表現する。例えば、赤と白のドットを交互に打つことによりピンク色を表現するのである。
その時は、掛け合わせのパターンにより、無限の色が表現出来るような気になった。
また写真も、スキャナからRGBベタファイルという形式で取り込むと、16色のディザによって表現出来る。パソコン画面上で見る写真というのは新鮮で綺麗だった。
しばらくしてウィンドウズが登場し、それに対応したウィンドウズアクセラレーターを組み込むことによって、256色、その気になれば1600万色もの色が扱えるようになった。
写真も、ディザ無しで滑らかな階調を持つ画像が表示され、今までの写真表示は何だったんだというくらい綺麗だった・・・。
人間というのは、良い物を知らなければ現状が当たり前のように思える。
8色表示が唯一のカラー表示だった時には、色が出るだけでも素晴らしく思え、写真表示機能も無いために不便とは感じなかった。
1600万色の写真画像を知っている今、8色の表示が素晴らしく思うことなどありえない。
今、デジタルカメラが登場してしばらく経つが、利便性もあり携帯電話内蔵型も含め普及度合いもかなり大きくなっている。
近い将来、趣味の世界でもデジタルカメラが割合を大きくし、フィルムを使ったことの無い子供たちの時代へと移り変わることになろう。
趣味の世界では、利便性ももちろんだが、画質も大きな要素である。
しかしながら本当に美しい色の写真を知らない子供たちは、「デジタルカメラの画像は綺麗である」と誤った判断をしてしまうだろう。
子供たちが画質にこだわろうとも、デジタルカメラの枠の中で努力して写真を得るのみ。
フィルムを使ったことのある大人たちから見れば、デジタルカメラの色はまさに8色表示の旧いパソコン画面のように見える。
超高価なデジタルカメラで撮影した写真を「さあどうだ」と見せられたとしても、まあ、確かに綺麗に見えなくもないのだが・・・。
大人達はもっと深く綺麗な色を知っているからなあ。
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