2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
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7.テーマ別写真
8.リンク
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カメラ雑文

[489] 2004年05月30日(日)
「最先端カメラ志向(後編)」

前回の雑文488「最先端カメラ志向(前編)」では、我輩の最先端カメラ志向について書いた。
我輩は最先端カメラを好み、F3を使う。

ところで現在の最新カメラに目を移すと、意外にも未来的なカメラは見られない。既に時代は、未来の象徴とも言える21世紀であるというのに、なぜか20世紀のうちでも想像出来る範囲内で進化したカメラばかり。そこには、MINOLTA xiシリーズのように無理矢理未来を先取りした、いわゆるブッ飛んだカメラは無い。

そういう意味では、21世紀ともなれば人工知能により、今何を撮影しているかということを認識するカメラが現れても良かろう。
α-7000からα-7700iへと進化した延長線上を辿って行けば、このようなカメラが現れても不思議ではない。いずれは高度に進化したカメラは自我に目覚め、人類を滅ぼすために世界戦争を引き起こそうとするようになる。そして写真サイトの掲示板では、如何に戦争を回避させるかという白熱した議論が交わされ、写真という趣味は人類の運命を左右することになるはずだった・・・。

未来世界に果敢に挑戦し跳ね飛ばされたMINOLTA xiシリーズ。 それは、21世紀へ到達するための最初のシリーズでもあった。これこそ、20世紀末に夢見られたエアカーのように、永遠に到達出来ない未来世界のカメラである。人間の判断を必要としない完全自律を目指したロボットカメラの最初のシリーズがこのxiなのだ。目指す究極の姿は、シャッターボタンさえ無いカメラであろう。
純粋に技術的な意味で言えば、xiシリーズは現在でも最先端テクノロジーのカメラであると我輩は考える。具体的な将来像を据え、それに向かって周辺技術を組み上げていく。

もちろん現在でも、視線入力や超音波モータ、手振れ防止など進んだ技術はあるが、それらは撮影をアシストするための単独技術でしかない。例えば、いくら視線入力技術が進もうとも、現状では「撮影者がどこを見ているか」という検知能力向上の方向性しか無い。それは決して、将来像として「カメラが人間の考えていることを汲み取る」という目的を成すための一つの判断材料に使うわけではない。何年経っても、視線のあるところにピントを合わせようとする動作は変わるまい。変わるのは精度のみ。

しかしxiシリーズはシステム全体として自律カメラを目指しており、人間側の操作を極力減らそうとしている。
視線入力技術が盛り込まれたとしたら、それは人間の意志を読み取るための判断材料の一つとして使われることになろう。もちろん、フォーカスの位置検知にも使われようが、それ以外にも、例えば次のようにカメラが判断することにも役立つだろう。

「撮影者は右の方ばかり気にしているようだな、右から何かがフレームインするのかも知れないな、目の前には道路があるから恐らく車が通るのだろうな、ではそこに置きピンして待っていようか。」
---数分後---
「目線の動きが不安定になってきたな、撮影者は緊張し始めたようだな、・・・ということはシャッターのタイミングが難しいのだろうな、恐らく時速100kmは越えるのだろうな、ではシャッターレリーズはカメラ側でタイミングを取ることにしよう。いちおう、撮影者の瞳孔が微妙に開くタイミングも参考にしてシャッターを切ろう。」

他のカメラでは「言ったことは忠実に行うが、その反面、言ったことしかやらない」というのに対し、xiシリーズでは「言わなくても仕草を見て気を利かせてくれる」と言える。どんなに優れた技術があろうとも、それが有機的に統合され一つの働きをせねば意味を成さないのである。
ただし現時点ではxiシリーズは察しが悪いため、気を利かせようと努力しても裏目に出ることのほうが多い。何しろ、ロボットカメラへの第一歩(バージョン1)である。最初から何もかも完璧であれば苦労は無い。

結局のところxiシリーズは、ロボットとしての完成度が低いにも関わらずそれを補うための操作性が悪かった。つまり、察しが悪く、しかも人の言うことを聞かないカメラということで世間の評判を落としてしまったのだ。今ではxiシリーズの中古は二束三文であるのは周知の事実。

その後、真面目なミノルタは180度転進し、操作部材をこれでもかというほど多く設置してカメラをゴチャゴチャにしてしまった。α-7などもうメチャクチャ。まさか今後、新機能が増えるたびにスイッチやダイヤルを増やす気なのか?
これならば素の手動カメラを使ったほうがまだスマートかもな。手動のフィルム巻上げ操作などあっても、それはスイッチ操作するのと変わらない。

ところで、xiシリーズのデザインはまさに"溶けかかったチョコレート"。その中でも「MINOLTA α-9xi」はブッ飛んでいる。ペンタ部前面が右肩から引きつっているようだ。
個性的と言いたいところだが、結局はCanon T-90の角を削ぎ落としただけであり、逆にオリジナリティを感じなかった。T90でさえ角が丸いと言われているのに、それを更に丸くするとは全く安易な処理だと最初に見た時に呆れた。

しかし今あらためてその姿を見ると、それが却って面白い。
現実世界のカメラとして捉えると拒否反応が出るが、SF映画に出てくる未来アイテムを使うという目で見ると興味が湧く。
しかも中古価格はかつてのフラグシップにも関わらず2万円台のものすらある。

我輩はしばらく考えた。
操作性が悪いとは言うものの、電子ダイヤルはシャッタースピード用、絞り用と2つ用意されている。モード切替せずマニュアル露出のみで使うならば特に問題は無い。
更に、インテリジェントカードを装着することによってマルチスポット測光が可能となる。これならば「MINOLTA FLASHMETER VI」と同じ役割を与えながらかつ撮影も出来る(参考:雑文440「MINOLTA FLASHMETER VI」)。

単純にスペックだけを見ても、秒間4.5コマというのはかなりのもの。最高シャッタースピード1/12,000秒、シンクロ接点が1/300秒であるから幕速はそれなりに速いだろうと想像する。そうなるとシャッターチャージの力は強くなり、巻上げ時の負担も大きくなろう。それで秒間4.5コマを実現しているのだから驚く。
繰り返しになるが、この「MINOLTA α-9xi」はかつてのフラッグシップである。造りの良さは想像出来る。

そこで我輩は、底値とも言えるこの時期に、このα-9xiを入手することを決断した。予算は今月の小遣い2万円分。これでフラッグシップが手に入るのだから安い。しかもAFのフラッグシップにしてはかなり小柄。
特に決定的だったのは、カードを使うことによってマルチスポット測光が可能だということ。これが無かったならば、いまだ購入を迷っていたことだろう。

マルチスポットとは、撮影者の意志によって複数測定したスポット測光値を平均する機能である。これは分割測光を手動化したものと言える。
そもそも分割測光というのは、分割された測光素子から得られた情報をあらかじめパターン化された様々な撮影シーンに当てはめ、適正露出値を推測する測光方式である。それ故、当てはめるパターンを誤ればとんでもない値を出す可能性がある。
それは素子の分割数が多ければ解決する話ではない。分割数があまり多くなくても、パターンに当てはめるアルゴリズムが優れていれば露出の的中率が高くなる(参考:雑文238「摂関政治」)。

ところでマルチスポット測光可能なカメラというのは、実はあまり多くない。そしてその多くは上級機である。
しかしMINOLTAでは、インテリジェントカードを使えば「α-7700i」、「α-8700i」、「α-7xi」、「α-7xiP」、「α-9xi」、「α-707si」にてマルチスポット測光が可能だという。

我輩は過去の体験から、ミノルタαシステムはどうも絞り機構が脆弱だというイメージを持っているのだが(参考:雑文063「不具合だったα−9000」雑文201「印象と信用」)、α-9xiは造りが頑丈そうに思えるのでそこは心配しないことにした。
そういうわけで、α-9xiはAF撮影で本気で使うことにしようかと目論んだ。

ネットオークションでα-9xiを検索すると4台ほど見付かり、その全てが未入札状態。やはりxiシリーズは人気無いな・・・。 1万8千円〜25,000円まで幅があったが程度を勘案して2万円の物件に入札した。競争相手が現れれば競り負けるとは思ったが、その時はまた別の物件を探すことにする。
結局、競争相手無きまま我輩が2万円にて落札。当時の定価は「Nikon F3HP」と同程度だったのだが本当に価値が下がっているな・・・。

さて、いくらα-9xiが手に入ったとしても、マルチスポットカードが手に入らなければ意味が無い。
早速オークションで検索すると1件だけヒットした。念のためにマルチスポットカードの仕様を調べてみようとしてWeb上を検索してみたところ、ミノルタのサイトに行き当たり、そこでマルチスポットカードが現行品であることが判明。しかもカードを通販しているカメラ店(馴染みの高千穂カメラ)も見付けたため、オークションとの価格差もあまり無いので新品購入することにした。

また同時に、取扱説明書を手に入れねばならない。何しろ、xiシリーズが現役だった頃に店頭で手に取ってみたのだが、撮影モードを変更する方法が全く分からなかった。
xiシリーズは取扱説明書が無ければ操作することは不可能。
ミノルタネットショップにて、取扱説明書のコピーを購入した。

更に、esbooksから「ミノルタαシステムの使い方3」を注文した。xiシリーズ全般について書かれているため参考になる。 幸いなことに在庫があったため、すぐに最寄りのセブンイレブンへ配送されてそこで代金を払って受け取った。コンビニ配送ならば送料が不要なので助かる。

しばらくして、待ち望んでいたα-9xi本体が届いた。
状態はなかなか良い。傷などもほとんど無い。
早速手に持ってファインダーを覗いてシャッターを切る。さすがにフラッグシップだけのことはあり、重量感とシッカリ感は十分。α-303siのような極端に軽量化されたカメラはダメだ。何しろα-303siの液晶パネル透明カバーは両面テープで固定されているほど。
カメラというのは重くシッカリしているからこそ「カメラ」と言える。軽いカメラなど「カメ」とでも名乗っておけと言いたい。


手元にある初期型50mmレンズを装着してみた

α-9xiで特筆すべきは、そのシャッター感と言える。切れ良くシャキシャキしている。何度でも空シャッターを切りたくなる。
現行α-9の場合はミラーの音が「パカラン、パカラン」と耳障りなのに対し、α-9xiでは高級感とシッカリ感が素晴らしい。極端な話、この感触を得るためのセラピーグッズ(癒しの小道具)としてこの安価なカメラを手に入れるのも良かろう。

またAF駆動も速い。EOS並か。
手元のα-9000やα303siと比べると全く速度が違う。
ファインダーを覗いてみたところ、ワイドフォーカスエリアはかなり広いのだが、どの測距点でピントを合わせたのかという表示が出ない。しかしWeb上の情報を探ると、隠しコマンドとして「Pボタンを押しながら電源スイッチを入れる」という操作によって表示出来るようになることが分かった。
それから、ピントが合ってもAFカメラにありがちな「ピピッ!」という電子音が出ない。ちなみに昔のα-9000、そして現行α-7は合焦音が鳴る。

我輩は現在、ミノルタαマウントの交換レンズは24mm、50mm、100-300mmの3本を所有しているが、常用として標準ズームが欲しいと思う。
我輩の想定としては、マルチスポット測光のために100mmくらいまでズームインした後、24mmくらいにズームアウトして実際の撮影を行うことを考えている。
電動ズームの「28-105mm F3.5-4.5 xi」ならばこの条件に合致し、しかも中古で1万円前後と安い。ところが電動ズームということもあり電池消費量が増えるらしい。そういうのは困る。
xiカメラにはxiズームがよく似合うのだが、ズーム焦点距離の両端で使うことを考えると、28mmから105mmまで行ったり来たりを繰り返し、すぐに電池が干上がることは確実。ここは手動ズームを選ぶしか無かろう。
しかし金が無いため、今はレンズは手に入れることが出来ない。オークションで売って換金出来る物ももう無くなった。金策が立つまでの間はお預けとなる。
まあ、主たる任務の蔵王のお釜調査までには少し間がある。それまでに何とか手に入れれば良い。


・・・話は戻るのだが、それにしても、超全自動を目指したxiシリーズの方向性が事実上否定されたのは非常に残念でならない。xiシリーズは確かに不完全で人間の関与が欠かせなかったが、そもそも最初の製品が完璧であるはずがなかろう。このまま何世代か経れば人間がやろうとしていることを先取り出来るようになり、それこそボタンもレバーも何も無いカメラという方向性が見えてきたことだろう。カメラが撮影者の意図を酌み取り全自動撮影する。それこそ人類の夢である。

「人間の関与する余地を残したい」という意見は、現段階のカメラが不完全であることからくる不満であり、ローテク人間の近視眼的意見である。写真表現上大切な露出はカメラに任せておきながら、フレーミングは自分でやりたいとはな。
いずれ、「冗談みたいな話だが、昔はAZ(オートズーム)に拒否反応があったものだよ」と言われる時が来るだろう。
xiシリーズの失敗によって、その実現は先に延びてしまったが・・・。


現状は色々な最新カメラが存在するが、どれもこれも中途半端なオートカメラばかり。我輩としては、一歩未来に近付いたxiシリーズ(特に造りの良いα-9xi)を最先端カメラと位置付けよう。
手動操作の最先端カメラならばNikon F3、自動操作の最先端カメラならばMINOLTA α-9xi。
これ最強。


(2004.06.14追記)
この雑文を書いて以降、α-9xiのオークション競争率がかなり上がっている。10,000円くらいでスタートしても25,000〜30,000円まで上がってしまう。バッテリーパック付きのものなどは4万円近くで落札された。それらはいずれも入札者が10人くらいにもなり、我輩の時のように競争無く落札することは全く不可能。残っているのは、最初から勘違いに値段が高い出品物ばかり。
しかもそれだけでなく、中古カメラ店での在庫もどんどん売れてしまっている。昨日確認した在庫が今日にはもう無くなっている。程度の良いものから先に無くなっていく。
確かに、ローマ法王の発言の如く全世界に影響力を持つ「カメラ雑文」であるから仕方無いものの、これは行き過ぎではないか。α-9xiなど、25,000円を超えて手に入れる価値は無いぞ。それにバッテリーパックなど稀少価値は高いものの、いくら単3電池が使えてもリチウム電池より保ちがかなり悪い。わざわざ装着して大柄にする意味が無い。



(2007.11.17追記)
数年前からα-9xiは絞り機構が不調となり戦線を離脱している。修理する価値があるかどうかが悩みどころ。
それにしても、これまでα-9000、α-303si、そして今回のα-9xiと、全く同じ現象が発生してきた。これは特定機種の問題ではなくミノルタマウントとしての設計上の問題ではないかと思えてくる。そうなると、それを引き継いだSONY製一眼レフデジタルカメラは大丈夫だろうかと他人事(ひとごと)ながら心配する。
結局のところ、不具合の出た機種はいくら修理しようが安心して使えない。もし本当にマウントに関わる設計上の問題だとするならば、修理しても根本的解決とはなるまい。我輩がとれる対策と言えば、これまで不具合の出ていない機種に移行することくらいか。ミノルタ製カメラが同じ問題を抱えているとしても、機種によって現象が出やすいものと出にくいものがあるかも知れない。
そいうわけで、先日、α-707siの未使用品を\16,000円で購入した。