2000/04/05
OPEN

表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
 F3 (F3H)
 FM3A
 FM2
 FM
 FE2
 FE
 FA
 FG
 FM10
 FE10
 F4
 F-401X

Canon
 AE-1P
 AE-1
 newF-1

PENTAX
 K1000
 KX
 KM
 LX
 MX
 MZ-5
 MZ-3
 MZ-M

OLYMPUS
 OM-3Ti
 OM-4Ti
 OM-2000

CONTAX
 ST
 RTS III
 Aria
 RX
 S2

MINOLTA
 X-700
 XD

RICOH
 XR-7M II
 XR-8SUPER

カメラ雑文

[238] 2001年03月06日(火)
「摂関政治」

「摂政(せっしょう)」や「関白(かんぱく)」という役職のあった時代、彼らは天皇の代わりに政治的実権を握っていた。これを「摂関政治」と言う。
最高権力者は天皇であるのだが、摂政や関白の言うとおりに政治を行うしか無く、実質的に天皇は操り人形だったのだ。
これは何も歴史上の話だけでは無い。現代にも同じような構図が多くある・・・。



写真において、露出決定というのは難しい。なぜなら、その場で目で見て確認出来ないからだ。

露出を決定する際、露出計が必要となる。露出計の電子的な精度が十分に高ければ、露出計に頼って撮影することについて何も問題無いように思える。
しかし、リバーサルフィルムなど露出的許容量(ラチチュード)の狭いフィルムでマニュアル露出による撮影をする場合、多くの者は何度も測光するだろう。なぜならば、1回だけの測光では心配だからだ。

カメラの露出表示そのままに撮る場合、いくつか心配事がある。

まず、従来の「全面平均測光」や「中央部重点測光」のカメラでは、「もしかしたら余計な光に影響を受けた値ではないか」ということが頭をよぎる。
これは、逆光などによって主要被写体とは関係無いエリアの光に引きずられて露出値が変わってしまうことについての心配事だ。

次に、以前書いたような「分割測光(多分割測光)」のカメラにおいて、「もしかしたら予想が全くハズれているのではないか」ということが頭をよぎる。
これは、分割測光が過去の統計データを元にした状況予測を行っていることから、状況予測そのものが間違っている場合を考えた心配事だ。

カメラを信頼しきっている者は露出補正なしのオートで撮るのだろうが、我々「マニュアル露出人間(露出狂人間ではない)」はカメラの露出計を信用していない。
いや、「信用していない」などと言うと語弊があるので、さらに正確に言うならば、「カメラの指す露出値は最終決定値ではないと思っている」のだ。あくまでそれは、内蔵された反射光式露出計に過ぎない。だから、いろいろなポイントを何度も測光する。

「何度も測光する」という行為は、ほとんど無意識である。
日向、日陰、道路、空・・・。撮影画面に全く入らないようなものでも、光の比率を知るために参考として測ったりする。そしてそれらの値は頭の片隅に置いておき、露出補正の参考とする。
スポット測光や部分測光が可能ならば画面の一部だけを測光したり、ズームレンズならばテレ側で拡大させて測光する場合もある。意識して見れば、撮影フレーミングのまま測光する場合のほうが少ないことに気付くだろう。

我輩などは数字を記憶するのが大の苦手であり、先ほど測った部分を再び測ったりしてしまう。もし単体露出計であれば、メモリー機能によって視覚的に測光値を比較する事が出来るのだが、単体露出計を使えない状況は意外に多い。

そんな時役立つのが、「OLYMPUS OM-3/OM-4」のマルチスポット測光だ。これは、マニュアル露出人間にとって理想的な道具と言えよう。
測りたい部分のみをスポット測光でき、その値をメモリーに記憶しておける。しかも、それら複数の測光値を演算して加重平均の値を求めることも出来る。
分割測光のように確率に任せること無く、中央部重点測光のように光の差に引きずられること無く、自分の意志をそのまま反映させることの出来る強力な測光形式。これは手動の分割測光とも言える。重点を置くべきエリアを自分の意志で決定し、拾っていく。

逆に言えば、分割測光というのはマルチスポット測光を自動化したものだと考えてもいいかも知れない。分割された受光部はそれぞれのエリアでスポット測光している。そしてカメラの統計的判断によって、演算に使うべきエリアをいくつか自動的に拾い上げている。
しかし、撮影者はそのことを意識せず、ただシャッターを押すのみ。マニュアル露出で撮影していても、結局はカメラの露出計による指示のままだったりする。それはまさに、摂関政治そのものである。

「OLYMPUS OM-3/OM-4」のマルチスポット測光は、統計的判断に頼らず、自分の確たる意志でコントロール出来る。そこで得られた測光値は、摂政や関白の指示ではなく、有能なる側近が伝えるナマの情報である。それを基に自らの意志で責任を持って政(まつりごと)を執り行うのだ。
もちろん、強力が故に、使い方を誤ると悲惨な結果となろう。しかし、それは努力次第で克服可能なのだ。

・・・惜しむらくは、このような理想的な測光形式であっても、我輩所有のカメラの機能ではないということだ。そのことが何よりも悔やまれる。それを補うため、参考となる光をいろいろと測る。
頼りない側近の情報であっても、摂関政治よりはまだ意志の反映が出来ようというもの。

撮影するフレーミングのままで測光するような方法では、いつまでたっても真に思い通りの露出は得られはせぬ。
最高権力者なれば、自分が支配されることなく露出値を支配せよ。