2000/04/05
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表紙

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カメラ雑文

[855] 2015年12月30日(水)
「OLYMPUS退役計画(その2)」


●高画素の有用性と「α7R」の問題点
さて、先日新たに導入したフルサイズミラーレスカメラ「SONY α7R」。これを使い始めると、その3,600万画素の大画像の威力を改めて実感するようになった。
博物館で撮影するにしても、いつもは分割して撮らねば細かい文字が読めなかったところを、全体を収めた1ショットだけで実用に足るのだ。

これは例えるならば、戦艦での戦いにおいて、これまでは口径の小さな砲で何発も撃ち込まねば敵艦撃破ならなかったのに、たった1発で撃沈可能になったようなものである。

下に、超広角12mmを装着した「α7R」で撮影した画像を挙げる。
さすがに3,600万画素だけあって、全体を撮りながらも等倍表示をすると小さな文字が読める。マイクロフォーサーズ相当に縮小したものとを比べてみた。
これを見ると、文字の大きさが明らかに違う。もう少し小さな文字ではその違いはハッキリするだろう。

<博物館内撮影>
博物館内撮影
博物館内撮影

ただ残念なことに、微少なブレが気になる。これでもISO400設定で、慎重にホールディングして何枚も撮ったうちの一番マシなカットなのだが、さすがに手持ち1/5秒ではダメか。12mmの超広角撮影ならばイケるかと思ったのだが。やはりこういう撮影ではOLYMPUSの5軸手ブレ補正があればISO200でもピタリと止まる。

今回の撮影ではマイクロフォーサーズと撮り比べたわけではなく、1枚の写真をリサイズして擬似的に解像度比較しただけだったが、もしマイクフォローサーズ側の画像に5軸手ブレ補正効果が加わるとしたら、結局はマイクロフォーサーズと読み易さが同じだったということにもなりかねない。
そうなると、せっかくの3,600万画素も無意味となろう。

そもそも、何度も撮り直してようやく得られた写真について、「1ショットだけで足る」と言えるだろうか。いくら巨砲であろうとも何発も撃たねば当たらぬでは意味が無い。波が高く照準もままならぬ状態で、相手のスタビライザー付きの小艦がこちらを狙っているわけだ。
結局のところ、歩留まりの高いマイクロフォーサーズカメラで分割撮りするのと実質的な違いが無い。

それから、静かなところではシャッターを切るたびに「シャキーン!、シャキーン!」と大きな金属音が響くのは大変気になる。
もちろん、シャッター音が大きいというのは一概に悪いことでは無い。モデル撮影ではモデル嬢に撮影のタイミングが伝わるので好適だろう。ただし音質が「シャキーン!」とまるでスマートフォンのシャッター効果音のように安っぽく耳障りなので気分は乗らない。

ちなみに日曜の午後、閑静な住宅地でシャッターを切ったら、思いのほかシャッター音が響き、近くのアパート壁面に反響して驚いた。洗濯物を干しているオバちゃんがこちらを見た気がしたので急いで退散。
いくらモデル撮影で撮影のタイミングが伝わるのが良いとは言っても、スナップ撮影ではこの音はツライ。使う場面を選ぶカメラと言える。

結局我輩は、3,600万画素の有用性に心を奪われると同時に、「α7R」の運用の難しさに苦慮することとなった。使いたい場面で使えない、能力を発揮したい時に発揮出来ない。

●重大な決断
もし、5軸手ブレ補正を備えた4,000万画素機「α7RII」があれば、これらの問題のほとんどが解決されるだろう。しかしさすがに40万円もの金は逆立ちしようとも出ない。
そこでまたもや考えたのが、同じく5軸手ブレ補正機能を備えた2,400万画素の「α7II」であった。これならば、新品でも15万円。手元の「α7R」を売れば差額はもっと少なくなろう。
しかしせっかくの3,600万画素が、2,400万画素になるのであれば、意味が無いのではないか? そうであれば結局はマイクロフォーサーズに戻ったほうが、一番バランスが良いのではないか?

やはり、3,600万画素は時期尚早だったのだろうか・・・。

そんな時、インターネットの画面にて、ネットオークションの画面が小さく出ているのにふと気付いた。
これは新手の広告枠で、ユーザーの過去の閲覧履歴を分析し、好みに応じたオークション出品物を勝手に表示させるものである。

<オークション広告枠>
オークション広告枠

いつもならば横目で見るだけでほとんど気にもしないが、その時に表示されたオークション出品物に目が留まった。
「New MAMIYA-6」が10万円。

我輩は驚いた。
「New MAMIYA-6」はレンジファインダー式の66中判カメラであるが、言うまでも無くフィルム式である。今の時代、まさかこんな値段で出品されても落札されまい。
しかし気になって、他の「New MAMIYA-6」の出品物を検索したところ、そこそこ良い値段で出しているではないか。しかも、既に入札されているものもある。

我輩は10年くらい前に、2台あった「New MAMIYA-6」のうち1台を売却したことがあったが、ここまでの値段では売れなかったように記憶している。
「もしかしたら、今、中判機材が意外と高く売れるのかも知れんな」

実を言うと、ここ数年、中判フィルム撮影はAF撮影を主とするために645判に移行していた。だから「New MAMIYA-6」のようなマニュアル操作カメラの出番は無くなりホコリを被っている状況。
ならば思い切って換金してみるか、とフルセットをオークション出品した。

<オークション出品>
オークション出品

スタート値は9万円だったが、終了間際に入札の応酬が続き、その度に自動延長され、見ているほうも疲れてくるほど。最終的には13万円ほどで落札。
しばらく後、残額数千円だった我輩の銀行口座に、13万円もの金額が入った。

手元にある「α7R」の中古価値を加算すれば、もう20万円分の金が手に入ったことになる。もしかしたら、この調子で行けば40万円の「α7RII」を買うのも夢では無いかも知れぬ・・・。

しかし同時に、次のようにも思った。
「本当にそんな値段のカメラを買っても良いのか? 例え、金銭的に買えるとしても。」

「α7RII」は、端的に言えば「α7II」の画素数が増えただけである。それなのに、差額だけで25万円もあるのだ。むろん、フルサイズの大型裏面照射型イメージセンサーを使っているので、それだけでも製造コストがかかるということは理解出来る。しかしユーザーの立場からして、25万円の差額に納得出来るかと言われれば疑問でしかない。
それに、デジタルカメラは、時間が経てばどんどん価値が下がるもの。会社で買う機材ならばまだしも、個人で買う機材でそのような価値低下に心が耐えられるだろうか。

しかし、高画素の有用性を実感した今、歩留まりの悪い「α7R」に時間や努力を浪費するよりも、思い切って40万円出して「α7RII」を買ったほうが良いのではないかと考えるようになった。

もし家計をあてにせず、オークション出品益のみで「α7RII」の購入金額を賄えるならば、金銭負担の心理的圧迫は軽減されよう。
ただ、オークション出品物としては、主に中判機材しか残っていない。

これは今まさに、中判フィルムからデジタルへの完全移行を決断する瞬間にいることを意味する。我輩自身、そして、このウェブサイトにとっても歴史的な瞬間であるが、我輩の決断は案外早かった。

「もう、フィルム撮影はやめる。」

もしかしたらこの決断は、もう以前から決めていたことなのかも知れぬ。
これまでデジタルカメラでの撮影を進めていくうち、デジタルの撮影ペースにフィルムが付いて来れなくなっていた。費用の面では、フィルム代や現像代、そしてプラスチックマウントやファイルケースの購入。フィルムで撮影枚数が増えればとても費用を工面出来ない。
我輩は基本的に、金が無いのだ。

かと言って、今まではマイクロフォーサーズの1,600万画素程度のデジタルカメラに軸足を移すことなど到底出来ぬ相談であった。デジタルカメラの実用性は認めつつも、我輩にとっての制式カメラはあくまでも中判。
だがここにきて、ようやく中判から置き換えるだけの画素数のカメラを手に入れるかどうかの話になった。もちろん、色深度は相変わらずリバーサルフィルムには敵わぬが、少なくとも画素としてはもう認めても良かろう。
それに、フィルム撮影をやめたとしても、過去に撮影してきたフィルム資産は消えはしない。

●「α7RII」の購入
我輩は早速、中判機材のオークション出品を始めることにした。
これで全く売れなければ、せっかく中判から移行を決めたのに、また出戻りになってしまう。
まずは手堅く、PENTAXのデジタル中判にも使える交換レンズを出品してみたところ、3本合計で10万円の入札を得た。これでもう見込み30万円である。もうほとんど買える気分であるので、もうこの時点で「α7RII」の見切り購入としても良かろう。

最終的には手持ちの「α7R」を売却するわけだが、売却した後で購入となれば、一瞬の間空白となってしまう。出来れば、「α7RII」を手にした後に「α7R」を手放したい。そうなると、クレジットカードを利用するしか無い。引き落とし日までに金策出来れば良いのだ。クレジット口座は家計の口座でもあるので残高はあり、最悪でも支払い不能にはならない。

さて、「価格ドットコム」によれば、「α7RII」の最安値は36万円のようだ。
参考のため中古の出物も検索したところ、やはりあまり玉数は無く、価格は最安値で33万円ほど。安いと言えば安いが、この差額ならイメージセンサーの汚れの心配も無い新品のほうが良かろう。
ところがいざ最安店の注文画面を開くと、クレジットカード決済が無い。いや、あるにはあるが、「価格.com 安心支払い」という決済方法となり、手数料が2%取られるのである。つまり7千円以上余計にかかるのだ。

結局のところ、安い店はほとんどがクレジット決済は「価格.com 安心支払い」しか選べず、通常のクレジット決済が可能な店は最安店よりも1万5千円ほど売価が高い。つまり、最安を謳っておきながらも実質的には37万円以上かかるということだ。
これならば、33万円の中古を選ぶほうが良いのではないか。ちなみに取り扱い店は「レモン社」で、クレジットカードも利用可。すぐに注文ボタンを押した。

そういうわけで、まさかの超高価なカメラ「α7RII」が、とうとう我輩の手元に届いた。これまで苦楽を共にしたフィルム機材を売却し、それで得た金を、このカメラに注いだ。まさに、フィルム撮影に取って代わるカメラなのだ。

取り急ぎ、前モデルの「α7R」と並べてみた。
さすがに各所造りが違っている。シャッターレリーズボタンの位置はグリップ部へ移り、以前のように指がボタンを探すことも無く非常に押し易い。こういう部分は買い換えを狙った確信犯(誤用承知)であろう。つまり、最初に変な位置にしておくことで、次モデルが"改良された感"を醸し出すようにしているのだ。どう考えても、最初からグリップ部にシャッターレリーズボタンを設置しておくべきことだ。

<「α7RII」と「α7R」の比較>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
「α7RII」と「α7R」の比較

恐らく、現時点でも出し惜しみを仕込んでいるものと思われる。
そのうちの1つが、背面液晶のタッチパネル化だ。現在ではほとんどのデジタルカメラで採用されているタッチパネル機能は、例えばAFエリアの位置を設定するのに重宝する。いちいちボタンで縦・横・縦・横・・・などと少しずつ移動させるなどやっていられないのだが、このカメラではそれを強要している。
多分、このイライラを募らせておいて、次のモデルに採用された時に買い換えさせる魂胆なのだ。

<「α7RII」と「α7R」の比較>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
「α7RII」と「α7R」の比較

なお、「α7R」では「シャキーン!」という耳障りだったシャッター音について、「α7RII」では「シャキッ」という感じになり、まずまず許容範囲内となった。しかし静かなところではまだ響くようには思う。

●超広角ズームの購入
一連の金策のためのオークション出品のほうは、これまで死守してきた中判機材をいっぺんに出品したため品数も多く、単価はそれほどでもないにせよ、落札金額の総計は着々と積み上がっていた。もちろん、最終的には「α7R」の売却で締めるので、更に金額が増えることは確実。
そうなると今度は、AF撮影可能な超広角ズームレンズの購入も考えるようになってきた。

該当する製品は「Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS」という仰々しい名前の付いたレンズ。ドイツのカールツァイス基準らしいが、我輩としては、ドイツ光学品は今や現代技術に対応出来ない古臭さの代名詞との認識。だが巷ではブランド力があるようなので、言うなれば胡散臭い宗教とも言える。
せっかくの最新カメラだと言うのに、カールツァイスというオールドレンズとはな・・・。

だがそうは言っても、AF可能な超広角レンズはこれしか選択肢が無い。
まあ、カールツァイスとは言っても実際に設計・製造するのはSONYだろうからそこまで心配することはあるまいが。

検索してみると、新品最安値13万円に対して中古の出物最安値が12万円と差額が1万円しか無く、「どうせならば新品か」と思ったが、新品最安値店の在庫表示が「受注生産」となっており、そうなると次点は14万円の表示。10万円台レンズの2万円差は大きく感じ、結局は中古品を買うことにした。
ちなみに購入店は名古屋の「トップカメラ」。

<超広角ズーム16-35mmを装着したところ>
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超広角ズーム16-35mmを装着したところ

ほぼ同じ画角のレンズを装着したフルサイズとマイクロフォーサーズを並べて見るとそれほどサイズの違いが無いことに驚く。しかも、SONYのほうは72mm径のフィルターが付けられるほどに前玉が出ていない。これならば、OLYMPUSのような横からの入射光によるゴーストは少ないだろう。
ただしOLYMPUSのほうは1段明るい。

<ほぼ同等な画角のレンズを装着したフルサイズとマイクロフォーサーズ>
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ほぼ同等な画角のレンズを装着したフルサイズとマイクロフォーサーズ

●検証撮影
今回、超広角AFズームと高画素カメラボディの組合せが実現した。
広い範囲のゴチャゴチャしたものを、多くの画素で捉えることが出来るのだ。しかもAFと5軸手ブレ補正。これはまさに、最強の組合せと言う他あるまい。

だがこのレンズはカールツァイス。喜ぶのはまだ早い。
取り急ぎ、マイクロフォーサーズと撮り比べをし、我輩の決断が間違いでなかったということを確かめたい。

まずは、お決まりの博物館での撮影とした。
低照度下で資料性が高いものを撮影することにより、手ブレ補正機能や分解能を試すことが出来る。何より、先日の「α7R」での撮影のリベンジでもある。

マイクロフォーサーズ1,600万画素とフルサイズ4,000万画素とでは画素数が圧倒的に違うので、画質比較するまでもなく勝敗は初めから決まっているが、実際にどれくらい違うのかということを改めて確かめたく、同じ画角での撮り比べをしてみた。
なお、ここでのシャッタースピードは1/30秒なので、超広角撮影でもあるし、画質に影響する手ブレは無いものと考える。

<共通撮影範囲>
ほぼ同等な画角のレンズを装着したフルサイズとマイクロフォーサーズ

まずは、マイクロフォーサーズ1,600万画素とフルサイズ4,000万画素の等倍切り出しを並べてみる。
下の画像をクリックすると、等倍同士の画像が比較出来る。

<画面上の大きさ比較>
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画面上の大きさ比較

大きさが違うのは当たり前だが、等倍での単位面積中で見る画質は両者同等で、ベイヤー機特有の画像ニジミがある。ちなみに3層イメージセンサーFoveon機では、等倍の時点でクリアな画像が得られる。

さて次に、小さい方の等倍画像に合わせて被写体の大きさが同じになるよう、大きい方を縮小処理して並べてみた。
クリックすると画像が開く。

<同じ大きさに揃えた場合の画質の違い>
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同じ大きさに揃えた場合の画質の違い

これを見ると、画像サイズは両者同じではあるが、縮小処理をしてピクセルを詰めた方は解像感が優れていることが判る。
なお、装着レンズの明るさが両者異なるため、「E-M5 Mark2」のほうはISO200、「α7RII」のほうはISO400で撮影したが、この違いも画質として考慮すべき点であろう。

以上の結果から、フルサイズ4,000万画素は、超広角レンズを使って全体を1カット撮っておけば、後はトリミングするだけでそれぞれに写真を切り出して利用することが容易であると言える。

ちなみに切り出し時の注意点として、遠近感というのは撮影距離でのみ決定するため、いくら超広角レンズでの撮影であろうとも、そこから切り出した画像は望遠レンズで撮ったものと同じとなる。つまり、俗に言う「圧縮効果」が出てくるのだ。だから、もし切り出しを前提として撮影をするならば、事前に撮影距離をよく考えておく必要がある。
この点は以前に雑文267で述べたことだが、遠近感というのはカメラやレンズの種類やその調整には全く関係が無く、撮影距離のみでしか調整が利かない。つまり、機材任せでは不可能な調整である。それは言い方を変えれば、遠近感の調整はカメラマンの腕の見せ所とも言えよう。

次に、手ブレの起こりうる低照度下の文字資料についても撮り比べてみた。
16mmで1/10秒での手持ち撮影ながら、ブレは無い。全体を撮りながらも、それぞれの小さな文字が判読可能。もちろん、慎重に構えて何枚も撮ったわけではなく、気軽に1枚撮っただけでブレ無し画像が得られた。

<博物館内撮影>
博物館内撮影
博物館内撮影

この結果を見るだけで、高画素で撮る意味が実感出来る。
心配していたレンズ性能も、カールツァイスと言いながらもなかなかバカに出来ない描写力。画面周辺部も破綻が無い。5軸手ブレ補正能力はOLYMPUSには及ばないが、そこそこ効いてはいる。フルサイズの大きなイメージセンサーを駆動していることを考えれば、まずまず上出来と言えよう。
これはまさに、資料のスキャニング・メモ撮影の最適カメラである。

以前、トラブルに見舞われた博物館撮影(参考:雑文832)でも、もしこのカメラさえあったならば100枚撮りを敢行することなく4〜5カットで無難にミッションを終えたに違いない。

●課題ごとの作例
以下、それぞれの撮影課題に沿って作例を撮ってみた。
まずは、狭い空間での超広角撮影。

<狭い空間>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
狭い空間
SONY α7RII/16-35mm F4.0/ISO400/Av=F4.0/Tv=1/2sec. [2015/12/27 13:43]

宇宙機や航空機の狭いコックピットの撮影は、我輩の超広角の原点でもある(参考:雑文383)。
遠近感による多少の歪みがあろうとも、とにかくこの狭い空間とそこに埋められた計器類を1枚の写真に写し込むこと。それがここでの使命。

航空機のコックピットは比較的撮り易いが、スペースシャトルなどの宇宙機のコックピットはレプリカでさえなかなか撮れないもの。だがもしチャンスが回ってくれば、その貴重なチャンスを逃さぬよういつでも機材は万全にしておかねばならぬ。今回、そういう心積もりでの撮影となる。
約35年前の「ふくおか'82大博覧会」で撮ったジェミニ宇宙船船内。あの時、今手元にある撮影機材があったならば・・・と、ふと思う。

次は、広い室内空間での超広角撮影。

<広い室内空間>
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広い室内空間
SONY α7RII/16-35mm F4.0/ISO400/Av=F4.0/Tv=1/8sec. [2015/12/27 13:30]

広い室内空間は、超広角レンズを使ってギュッと凝縮して撮ると狭苦しく写ることが多い。そういう場合は、仰角をつけるとダイナミックな感じが出せる。
しかしながらあまり技法にこだわり過ぎると、何のために撮影しているのかという本来の目的を忘れがちとなる。まず最初に決めておかねばならぬことは、広い空間として表現したいのか、あるいは広い空間の情報を1カットに押し込めたいのか。それは、第三者が決めるのではなく、撮る人間が決めること。もちろん、その撮影が達成されたのかどうかの判定も、撮る人間の判断。

ここでは、中央の航空機をダイナミックに表現することが、それさえ包み込む室内空間の大きさを表現するものと考えた。これは勝手に名付けるならば「スターウォーズ効果」とでも呼ぼうか。巨大宇宙駆逐艦「スター・デストロイヤー」の背後に、更に大きな宇宙要塞「デス・スター」が覆い被さる風景。だからこそ、「デス・スター」の常識外れな大きさが映画スクリーンから伝わってくるのである。

続いては、広い風景での超広角撮影。

<広い風景>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
広い風景
SONY α7RII/16-35mm F4.0/ISO200/Av=F4.0/Tv=1/2500sec. [2015/12/20 15:01]

このレンズは開放絞りでは周辺減光が少々見られる。
これはは雲の無い一様な青空では目立ち易いが、ここではかえって深みを感じるグラデーションとなった。

ただ、この周辺減光はフルサイズにしては軽い方ではある。
当初は、画面端の斜め入射光でも大丈夫な裏面照射型イメージセンサーのおかげかと思ったが、裏面照射型でない「α7R」でもほとんど違いが無かったので、これはレンズ側の性能ということになろうか。

そして最後に、超広角での接写。

<接写>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
接写
SONY α7RII/16-35mm F4.0/ISO400/Av=F4.0/Tv=1/2sec.
[2015/12/20 10:37]

OLYMPUSのPROシリーズに慣れていると、もっと近付いて撮影出来るような気になるが、これで目一杯。
しかしそれにしても、超広角レンズでありながらも背景がボケ過ぎ、古い家屋を背景にして撮る意味が弱くなってしまったのは残念。

こういった低照度下の絞り込めぬ撮影では、ティルト撮影が出来れば背景まで描写出来るように思うのだが、手元にフルサイズ用のティルトレンズなど無いので、これが精一杯。
さすがに「根性ティルト撮影」までは考えなかった。

ちなみに「根性ティルト撮影」とはストロボ撮影を前提とした技術である。なぜならば、身体を微妙に前後しながら、指先の微妙なティルト調整を行い、一瞬のジャストピントを狙ってすかさずシャッターを押す必要があり、シャッターを切った直後はもうピントが外れた状態となっている。こんな状態では、定常光のスローシャッターではブレ写真しか得られないのだ(参考:雑文339)。

やはりこの場面だけは、マイクロフォーサーズとティルトアダプタで撮影すべきところだったようだ。
今後、もう少し撮り比べながら、マイクロフォーサーズとの棲み分けポイントを見付けていかねばなるまい。