2000/04/05
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表紙

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5.カメラ雑文
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カメラ雑文

[875] 2017年11月07日(火)
「通勤撮影、次のターゲット」


我輩はここ1年ほど激務(※)のため、週末の植物撮影が唯一のストレス解消でもある。
しかしながら週の初めの月曜から大きなストレスがたまってしまうと、週末があまりに遠く感じて絶望感が凄まじい。平日の会社帰りでも、気晴らしの植物撮影をすることが出来ないものだろうか。
(※我輩の仕事は複数の依頼者と複数の業者を結ぶハブ業務であるから、関係者が休む土日は確実に休めるものの、皆が出社している時は休めない。定時を過ぎて相手がいなくなると対応が進まなくなるため、定時間内に終わるよう全力疾走で業務をこなし、トイレに行く暇も無いほど。)

そこで、通勤カバンに最小サイズのミラーレスカメラ「PENTAX Qシリーズ」とストロボ2灯を入れて毎日持ち歩き、仕事帰りに花撮影出来る体制を整えた。このことは雑文870に書いたことである。

ちなみに我輩の勤務場所は、横浜みなとみらいにある「ランドマークタワー」という雑居ビルなのだが、周辺には色々な種類の花が植えられ、それぞれ花期が終わる前に次から次に入れ替わる。会社帰りの撮影も追い付かないほどだった。「さすが観光地横浜は違うな」と感心した。

ところが、ある日を境にパッタリと横浜から花が姿を消した。調べてみて初めて知ったが、これまでは花のイベントが開催されていたために特別だったのである。
今は、普通の公園程度の花しか無い。この時期だと白いペチュニア(ナス科)と、タマスダレ(ヒガンバナ科)の2種類のみ。そもそもタマスダレは夜になると花を閉じてしまうから対象外。

またそれに加え、職場が近々、観光地横浜から都内ビジネス街へ移ることが決定された。
要するに、花に無縁な通勤になることを意味する・・・。

ちなみに先日の雑文874にも書いたように、メインカメラと位置付けているフルサイズミラーレスカメラ「SONY α7RII」のサブカメラとして、「α7R」を最近導入した。気安くレンズ交換したり手荒く扱えるおかげでサブカメラのほうが稼働率が高くなり、今では通勤カバンにも常備するまでになった。

当初、通勤カバンには最小軽量ミラーレスカメラ「PENTAX Q7」を常備して予定外の撮影に備え、もし明確な撮影予定がある場合には気合を入れて「α7R」を持ち出すこととしていた。レンズはコンパクト性と画角を勘案すると「28mm F2.0」しか無い。

実際「α7R」を持ち歩いてみると、フルサイズカメラでありながら思った以上に軽く(驚くことに、マイクロフォーサーズの「OLYMPUS OM-D E-M1」よりも明らかに軽い)、持ち運びに気合を入れる必要が無いことが分かってきた。いったんカバンに入ってしまえば、あとは気にすることが無い。

そういうわけで、フルサイズカメラによる日常撮影の体制が出来上がっていたわけだが、ここにきて肝心の被写体である花が失われてしまった。カメラをカバンに入れたまま、通勤で往復するだけの毎日が続く。

そんなある日、会社帰りに友人とファミリーレストラン「ジョナサン」で夕食を共にした。
そこでふと、「花撮影用のストロボで料理も撮ってみようか。」と思い付いた。これまでも外食料理は写真に撮っていたのだが、ストロボなど考えもしなかった。

あいにくこの日はストロボディフューザーを持って来るのを忘れていたため、手持ちの白い紙を折って形を整えてレフ板とした。メインの1灯と、アクセントの1灯の合計2灯のライティング。
写真の仕上がりはなかなか良い感じで、液晶パネルの表示を友人に見せると「おお、いいねー。」と覗き込んだ。
実際、改めて自宅パソコンの4Kディスプレイで見てみると、さすがにフルサイズ3,600万画素の画像は圧巻。この画像を何度も見返しては、「このソフトクリームが良いよなあ」などと反芻(はんすう)するかの如く楽しむ。

<花撮影の機材が役立った>
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花撮影の機材が役立った
花撮影の機材が役立った

当たり前のことだが、料理というものは食べると目の前から消えてしまう。せっかくの料理が消え去る前に、写真に残しておきたい。
これは、我輩が花写真を撮る動機と似ている。

花も料理も、短い間で目の前から姿を消す。仏教で言うところの「無常」である。
次の新しい花が咲いたとしても、あるいは、再び同じ料理を注文したとしても、全く同じものが現れるわけではない。だから、それらは撮るたびに違った写真になる。同じ写真にはならない。それはまさに無常と言えり。

会社帰りに花が撮れぬのならば、今後は外食時の料理を撮ることとしたい。

なお、我輩はあくまでも被写体主義である。
花写真も、料理写真も、そして女写真も、欲しいのは写真作品ではなく、現物そのものだ。我輩にとって、写真撮影は現物コレクションの代替作業と言える。
だからこそ、現物そのままの存在感と本来持っている色を限りなく正確に表現することが重要となる。その場所の雰囲気など求めていない。その場所の光など求めていない。求めるものは、現物のリアリティのみ。

しかしながら、もし被写体そのものを持ち帰ってコレクション出来るとしても、それがベストとは言えない。
花は萎(しお)れるし、料理は食べて無くなってしまうし、女は表情や髪型や衣服でガラリと変わってしまう。だからベストな状態を写真として固定しておくのだ。

今回、外食料理撮影にて、そういった自らの要求を満たすことが出来、概ね満足である。
撮影上の制約のためなかなかベストは極められずベターとせざるを得ないが、ある意味、制約の中で工夫を凝らすことは面白い。

植物撮影をする時には、ストロボを何発も発光させてトライ&エラーで追い込みが可能だったが、レストラン店内でそのような目立つことは憚(はばか)られる。
ストロボ発光させるならば、1発のみ。

例えばの話、もし屁が「プッ」と出たとする。その音が隣に聞かれたとしても1発だけならば「ああ、出ちゃったのね」で済まされる。出てしまった屁を戻せとは言われない。
だが「プリッ、プリッ、プリッ・・・」と何発も屁が出続けている状態であれば、さすがに「お客様困ります」となろう。
勝負は1発。

撮影にあたり、まずは目立たぬよう、カバンの中でディフューザーとシンクロ機器装着などのセッティングをする。そしておもむろに、1灯をテーブルの上にポンと置き、右手にカメラ、左手に2灯目ストロボを持ってシャッターを切る。事情により1灯しか使えない場合もあるが、その時は白い紙をレフ板代わりに使ったりと工夫する。

<ラ・パウザ「モッツァレラスとバジルのトマトソース」>
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ラ・パウザ「モッツァレラスとバジルのトマトソース」

ストロボの発光量は最低レベル1/128に設定、さらにディフューザーによっても光量が弱まるので、周囲がビックリするような閃光とはならない。光量が足りなくなる分は、カメラ側の感度はISO400まで上げてカバーする。これによりF11くらいまで絞り込むことが出来、被写界深度を深くすることが可能となる。

弱いストロボ光はテーブル上を照らすのみで、横目に「何か光った?」と思っても、その時はもう撮影は終了しており、手に持ったカメラとストロボはカバンに突っ込んで何食わぬ顔をする。たとえカメラを見られたとしても、大きな一眼レフカメラではないので、「ミーハーが料理撮ったのか、内蔵ストロボが自動発光しちゃったんだな」くらいにしか見えない。

いずれにせよ1発勝負。この1発が失敗せぬよう、事前に露光値とライティングを決めておくことは言うまでも無い。
もっとも、食後のデザートを注文すると2発目の発光もあるわけだが、1発目とはおよそ1時間程度の時間差があるので、実質的にはそれぞれが1発目ということになろう。

<ラ・パウザ「自家製カタラーナ」>
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ラ・パウザ「自家製カタラーナ」

そういうわけでこれまで幾つか外食撮影してきた。ファミリーレストランの「ジョナサン」、「ロイヤルホスト」、「リンガーハット」、牛丼屋の「吉野家」、回転寿司の「スシロー」である。全て1発勝負。

さて、写真の仕上がりについては、さすがにストロボ撮影だけに、色が正確に表現されているのが素晴らしい。
通常、室内灯は種類によってそれぞれ特有の色の偏りがあり、例えば蛍光灯では緑色、白熱灯では赤色、というふうに偏っている。このような色の偏りは、肉眼で見た限りでは自動補正されてしまうため気付かないのだが、写真に撮ることで顕在化する。

もちろん、撮影時のデジタルカメラの設定や撮影後のパソコン処理でホワイトバランスの調整は出来るものの、照明光によっては完全に補正出来ないこともある。

その理由は、室内灯で使われる照明はどれも特定の色が不足しているからである。不足している部分があれば色が偏るので、足りない部分をゲインアップして他の色のレベルと揃えねばならないが、ゲインアップするとそれだけノイズが浮き上がるのは避けられない。

おまけに、違う種類の光源が混ざった、いわゆるミックス光も厄介。
違う光源が混ざると足りない色を補い合って好都合のように思えるかも知れないが、実際はそれぞれの照明は多少なりとも位置が離れているので、例えば主な部分のホワイトバランスを合わせたとしても、陰の部分は色がおかしかったりする。

<店内照明ではミックス光のため左右で色が違う>
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店内照明ではミックス光のため左右で色が違う

ストロボならば、ライティングの自由度が高く、ピンボケ範囲も少なく、手ブレも無い。
そして何よりも、色味が正確という大きなメリットがある。カメラ側のホワイトバランス設定を太陽光にセットしておけば、ほとんど無調整で済む。

よく、「赤みのある電球色のほうが美味しそうに見える」などと言われることもあるが、我輩には意味が分からない。正しい色のほうが美味しそうに見えるに決まっている。
もし電球色のほうが美味しそうに見えるのであれば、それは元々の料理のほうがおかしいのだろう。例えるならば、居酒屋合コンで知り合った相手が、後日のデートではちょっとイメージが違うぞ・・・というケースにソックリだ。

だいいち、レストラン店内には多くの照明があるため影が複数出てしまい、写真として見るとおかしなものになってしまう。いくらパソコン上で色の補正がうまくやれたとしても、影だけはどうにもならない。

<店内照明で撮ると影が複数出る>
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店内照明で撮ると影が複数出る

その点、ストロボでライティングするのであれば、店内照明の効果を打ち消し、改めて単一の影に置き換えることが可能となるし、そればかりか光の方向も自分でコントロール出来る。
それはつまり、「ただ与えられた場面を前にしてシャッターを切っただけ」という極めて受け身の撮影から一歩前に出るということである。

<ストロボで影がコントロール出来る>
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ストロボで影がコントロール出来る

ところで、料理写真はツイッターやインスタグラムなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で良く見かける。
そこで今回、インスタグラムにて関連するキーワードのハッシュタグ(日本語と英語)を付けて写真を投稿してみた。これは、世間的な反応を見るため、いわゆるモニタリングというやつだ。

<吉野家「牛丼並盛り(玉子付)」>
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吉野家「牛丼並盛り(玉子付)」

すると興味深いことに、外国人の評価が多いという結果となった。特に、コメントは外国人からのみであった。
恐らく日本人には、被写体の一部にしかピントが合っていないフンワリ・ボンヤリとした描写のほうがウケが良いようで、我輩の写真のような全体にピントが合っているハッキリ・クッキリとした写真は評価対象とはならないのだろう。

<ジョナサン「富山の味噌煮込みうどん」>
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ジョナサン「富山の味噌煮込みうどん」

ただしインスタグラムでは、レトロ色調加工オプションを利用した色の偏った写真の投稿が多く(インスタグラム創始者がトイカメラHOLGAの愛用者のためそういう機能があるのだが)、我輩の写真は明らかに異質で周囲から浮いていることは事実。

<ロイヤルホスト「十勝あずきクリームあんみつ」>
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ロイヤルホスト「十勝あずきクリームあんみつ」

もちろん中には、レストランあるいはプロカメラマンのアカウントから営業的なキッチリとスタジオ撮りした料理写真の投稿も目にすることもあるが、「外食してきましたよ」的な日記写真に限って言えば、ストロボで撮影したものは我輩の投稿しか見付からない。

<ロイヤルホスト「国産豚のロースカツ膳」>
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ロイヤルホスト「国産豚のロースカツ膳」

しかしまあ、いくら世間的な評価が得られなくとも、自分が求めるものが得られるというのは大事なことだ。
すでに腹の中に消えた料理の写真を時々眺めながら、味を想い出すというのもなかなか良い。

<ジョナサン「若鶏のみぞれ煮膳」>
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ジョナサン「若鶏のみぞれ煮膳」

ちなみに最近、友人がフランス料理に誘ってくれた。
以前もフランス料理に誘ってくれて時々食べに行っていたが、さすがに庶民の給料では金が続かず中断していたところだった。今回はせっかくなのでストロボ照明で撮ってみたいと思う。

<ジョナサン「カレー南蛮うどん膳」>
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ジョナサン「カレー南蛮うどん膳」

(2017/11/23追記)
友人が西麻布のフランス料理に誘ってくれたので、ストロボ撮影したのだが、こういう時はもう少し本気出して大きな発光面を確保したほうが柔らかくなって良かったか。

<西麻布宇ラ・カーヴ・ド・ノアの不思議なパスタ>
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西麻布宇ラ・カーヴ・ド・ノアの不思議なパスタ
<西麻布宇ラ・カーヴ・ド・ノアの肉料理>
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西麻布宇ラ・カーヴ・ド・ノアの肉料理
<西麻布宇niceのクリームパスタ>
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西麻布宇niceのクリームパスタ