2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
 F3 (F3H)
 FM3A
 FM2
 FM
 FE2
 FE
 FA
 FG
 FM10
 FE10
 F4
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 MZ-3
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MINOLTA
 X-700
 XD

RICOH
 XR-7M II
 XR-8SUPER

カメラ雑文

[870] 2017年05月15日(月)
「広角マクロ(2)」


我輩は現在、銀塩フィルム中判カメラの代替として、フルサイズ4,200万画素のデジタルカメラ「SONY α7RII」をメイン機と位置付けて使用している。
これはフルサイズながらも小型のミラーレスカメラであることから、中判代用としての本番撮影だけでなく、クオリティを必要としない撮影でもそのまま使えてしまう。日常でのメモ用途で使うことも少なくない。メモ用途だからといちいち別のカメラを取り出すのはむしろ手間。そのままメインカメラを使うほうが面倒が無いのだ。

しかしながら、いくらコンパクトなフルサイズカメラであっても、さすがに通勤カバン常備としての運用は難しい。
もちろん、やろうと思えば1日くらいは何とかなろう。弁当や水筒、その他携帯電話非常用バッテリーや折り畳み傘などを全てカバンから出してしまえば、通勤カバンにも入る。
ただしそのような状態で毎日通勤するとなれば話が変わってくる。なぜならその撮影機材は、写真を撮らない日には完全に無意味な荷物となるのだ。そんな荷物のために、弁当無し・傘無しで通勤するというのは、何かの罰ゲームかと思う。

そもそも、いくら持ち歩きに問題無いとしても、大変高価な「α7RII」を通勤ラッシュに揉まれるカバンに毎日入れておくのは抵抗がある。先日など、水筒の栓が抜けて、気付いた時にはカバンの中が水浸しになっていたこともある。そんなところに高価なカメラを常備する勇気は無い。
そういうわけで、代わりにAPS-Cサイズの「SONY NEX7」を中古で手に入れて通勤カバンに常備することとした。画素数は2,400万画素だが1,600万画素のマイクロフォーサーズよりマシか。

<通勤カバン常備カメラ「SONY NEX-7」>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
通勤カバン常備カメラ「SONY NEX-7」

正直言うと、この「SONY NEX7」画質はあまり良くない。ベース感度のISO100であっても、暗部にノイズが目立つ。
先日の雑文では「フォーマットサイズに関わらずベース感度ではノイズは無い」と書いたが、「NEX7」は3世代前のカメラなのでその理屈が適用出来ない。

ただ「NEX7」にノイズがあろうともそれは暗部に限られるので、カバン常備カメラとしては問題視することもあるまい。少なくとも情報量としては2,400万画素なりのものは確保出来る。いずれノイズの少ない現行機種「α6500(発売当初14万円)」が安くなった時に置き換えることとしたい。
ただ、広角単焦点レンズでは心許ないと考え、APS-C専用標準ズームレンズを購入。この状態にて、通勤カバンの荷物容量にジャストフィットの状態だった。弁当や傘の携行も問題無い。

ちなみに、元々カバン常備用のカメラは災害に遭遇した場合などを想定しており(参考:雑文853)、そういう意味ではいつ使うことになるか分からない。
つまりほとんどの場合、カバンの中にカメラが入ったまま出すことなく一日が終わることとなろう。
これは「備え」である以上、無駄な荷物ではない。カメラを持ち歩かないと、いざという時に後悔する。いや、そもそもカメラが無いと不安になる。これについては雑文723にも書いた通り。

ただそれでも、毎日持ち歩いている機材であるならば、日常的に活用することも考えてみたい。
撮影対象となるネタは何か無いかと少し考え、公園に咲いている花でも撮ろうかと思い至った。我輩の現在の職場は横浜みなとみらい地区のため、公園の整備も行き届いており、花などの被写体に事欠かないのだ。
週末はわざわざ植物園に出向いて植物を撮っているのだから、平日では通勤路の花というのも悪くない。

通勤時間は片道およそ2時間ほどかかることから、多少の電車遅延があっても吸収出来るよう、ある程度の時間的余裕をもって出勤している。そのため電車遅延が無ければ、始業時間まで間がある。
今まではその時間は公園のベンチに座って海を眺めたりしていたわけだが、今度は花を撮影する時間として使おう。

そう思い立った時点で季節としては冬だったが、それでもパンジー系は元気に花を咲かせて黄色や紫と色鮮やかで撮るものに困らない。
太陽光のままで撮ってみたところ、なんとも締まらない写真に閉口した。朝は陽の角度が低く、太陽光で撮影するには陰が強く出てしまう。いつものように花を撮るならば、やはりストロボが必要か。

<ノーストロボ写真はキビシイ>
(※画像クリックで長辺2000ドットの等倍切り出し画像が別ウィンドウで開く)
ノーストロボ写真はキビシイ

我輩は少し考えたが、すぐに首を横に振った。
「通勤カバンにカメラだけでなくストロボ機材も常備? いやいや、さすがに論外。」

ストロボを使うならば、帰宅時の夜間撮影も考えるとディフューザが必要となる。それにストロボは2台無ければ狙った効果が得られない。
他にもラジオシンクロのユニットや、予備の電池も忘れてはならぬ。それらを全て携行するとなれば、もはや「通勤カバン常備」を超えた、「撮影を主目的とした機材」ではないか。
いやもちろん、やろうと思えば出来る。出来るのだが、弁当が・・・、傘が・・・。

<レギュラーサイズのストロボ一式>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
レギュラーサイズのストロボ一式

とは言うものの、我輩にとって植物撮影というのは、毎日の激務によるストレスを解消するという側面も感じている。
1日を終えて抜け殻のようになっても、週末の植物撮影が心の支えにもなっていた。もし週末を待たず平日の会社帰りに夜の公園で植物撮影出来るならば大変嬉しい。

ストロボを使った撮影ならば、夜間でも植物撮影に何の支障も無い。むしろ定常光がジャマしないだけに撮り易かろう。これまでは夜間も入場可能な植物園が無かったので残念に思っていたくらいなので、写真表現上、新たな可能性が拓けるやも知れぬ。

<激務の後、花でも撮りたい>
激務の後、花でも撮りたい

それにしても現実には、通勤カバンにストロボを常備するならば、カメラがジャマ。カメラを常備するならば、ストロボがジャマ。
ストロボのことを考えなければ、標準ズーム付の「NEX7」はカバン常備カメラとして十分なコンパクトさであった。しかし夜間に花を撮るならば、ストロボが無ければどうやって撮る? カメラばかり立派でも仕方あるまい。
そもそも「NEX7」のAFは暗所に大変弱く、AF補助光を有効にしても合焦した試しが無い。

ふと、「PENTAX Q」が思い浮かんだ。
「Q」ならば、サイズが小さいのでストロボと共に携行可能だろう。ストロボ撮影も、レンズシャッター搭載の交換レンズを使えば1/250秒まで可能なので、日中シンクロにも適している。

このカメラはもう3年半くらい前に購入したものであるが(参考雑文794)、動作の遅さや、広角レンズが用意されていないなどの理由により、活躍する機会を得ぬまま死蔵していたものである。

<3年半前に購入したPENTAX Q>
3年半前に購入したPENTAX Q

ところがほどなく、「Q」用の高性能な広角ズームレンズ「08 WIDE ZOOM」が発売された。
広角派の我輩にとってそのレンズは気にはなったものの、価格が4万円を超えており、他の「Q」用レンズの価格帯1万円台に比べてかなり割高に思えた。もちろんその価格から性能の高さは想像出来る。そのレンズを導入すれば死蔵カメラが蘇る可能性もあるが、当時はメインカメラであったマイクロフォーサーズのほうに資金を投入していたこともあったし、今さら「Q」に金をかける気など無かった。

しかし今、「08 WIDE ZOOM」は3万円台に下がっていた。まだ安いとは言えないが、残業が増えた今ならそれで買えそうに思う。
このレンズを「Q」に装着し、ストロボと共に運用すれば、メインカメラ「SONY α7RII」にも劣らぬミニチュアシステムとして、妥協の無い植物撮影が出来るのものと期待する。
なまじ大きなフォーマットサイズに固執して中途半端なシステムとなるならば、むしろ小さなフォーマットであっても完全なシステムで臨むほうがベストだと考えたのだ。

なお、「PENTAX Q」とほぼ同じボディサイズでマイクロフォーサーズの「Panasonic GM1」が手元にあり、そちらのほうがイメージセンサーのサイズが大きく画質的に有利だが、「GM1」には肝心なホットシューが装備されていない。
そもそも、カメラボディと広角ズームレンズ全体の大きさでは、さすがに「Q」に敵うものは存在しない。

そういうわけで、「08 WIDE ZOOM」を3万4千円で購入。中古ならばもっと安く済んだかも知れないが、出物が無く新品購入となった。
このレンズは、1/2.3インチイメージセンサーの「Q」に装着すると21mm〜32.5mm相当になる。そこそこの広角である。

<広角ズームを装着したPENTAX Q>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
広角ズームを装着したPENTAX Q

とりあえず週末の植物園撮影にて、メインカメラの脇で使ってみたところ、この広角ズームレンズは思いのほか近接撮影可能であることが判った。
前回の雑文で紹介した広角マクロ専用レンズ「LAOWA 15mm F4」と共に使っても、足手まといにもならず付いて来れるのだから大したもの。

スペック表では最短撮影距離は25cmとのことだが、実際に使ってみた限りではその半分くらいに感ずる。もちろん、最短撮影距離というのはイメージセンサー面から対象物までの距離のこと。だから、レンズ先端からの距離(ワーキング・ディスタンス)はほんの3〜4cm程度だろうか。
小さいのでどうしてもミニスケールのオモチャのように見えるが、機能はフルスケール並み、いや、部分的には上回る。

ただやはり、「Q」本体の操作性がネックとなった。特に、電源OFF動作が遅過ぎ、ずっと待たされるのがかなわん。
電源ボタンの押下でOFFとなるわけだが、撮影後のデータ書き込み中に電源ボタンを押しても予約されない。書き込みが終わってアクセスランプが消灯してから、改めて電源ボタンを押下しないと電源が切れないのである。
だから、押下のタイミングがわずかに早過ぎて電源がずっと入ったままだったということがよくある。

この点については、後継機の「Q7」で解決されたという情報があり、以前から気になっていた。
今回手に入れた高性能広角ズームレンズを活かすのであれば、カメラボディは「Q7」とする以外に無かろう。このボディならばイメージセンサーも1/1.7インチになるので、広角ズームは17.5mm〜27mm相当と更に広角となり都合良し。

「Q7」は中古がそこそこあり、ボディのみの価格と標準ズームキットの価格との差があまり無かったことから、標準ズームキットのほうを選んだ。価格は約2万円。
購入はカメラのキタムラの店頭受け取りで、年末最終営業日閉店時間ギリギリのタイミング。これを逃すと年明けの初売りまで待たねばならぬところだった。

<PENTAX Q7と広角ズーム>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
PENTAX Q7と広角ズーム

<4本のレンズが揃った>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
4本のレンズが揃った

早速使ってみると、「Q7」は「Q」よりもイメージセンサーが大きくなった分、画角が広くなった。
それから全体的に動作が軽くなったように思う。問題の電源スイッチも、データ書き込み中であっても操作予約が可能となり、書き込み終了した時点で電源が切れる。
"待たされ感"がかなり軽減した。

<画角の差>
画角の差

なお、イメージセンサーが「Q」の1/2.3インチに比べて1/1.7インチと若干大きくなったせいだろうか、何となく画質が上がったような気もするが、それほどハッキリした違いではないし、厳密な撮り比べもしていないので実際はどうかは分からない。

いずれにせよ、スマートフォンに搭載されたカメラとそれほど変わらないイメージセンサーであるから、自慢出来るような画質ではなかろう。それでも、ストロボ2灯で撮影出来るという点ではスマートフォンのカメラとは一線を画すことは言うまでも無い。

では、いよいよストロボの選定に移りたい。
当然ながらレギュラーサイズのストロボを死加重覚悟で持ち歩くことは難しい。そこで小型ストロボを探してみたところ、幾つか検索ヒットした。

1つは、中国Viltrox製の「JY-610 II」というストロボ。写真で見る限り、あまりコンパクトには見えないが、単3電池2本仕様とのこと。
背面液晶パネルが今風で、マニュアルでの光量調節もレギュラーサイズ並みに可能。
現在我輩が使っているレギュラーサイズのストロボは中国Yongnuo製で、約7千円くらいと手頃なのでこれまで10台買っているが、機能は高く不具合も無い。同じ中国製ながらViltroxというのは未経験なので、信頼性は分からない。
ただし値段は3千円ほどと安価なので、試しに購入してみるのも良いとは思う。

しかしながら、SUNPAK製の小型ストロボ「PF20XD」というのも検索ヒットした。
こちらは単4電池2本仕様で、ダイヤルスイッチのみで液晶表示など無い。機能は貧弱ではあるが、何より軽量コンパクト。恐らくマニュアル発光可能な汎用ストロボとしては最も小さかろう。
値段は8千円ほどと中国製と比べると少々高いが、ストロボでは有名な日本メーカー製なので安心感はある。
今回、コンパクト性と信頼性を重視し、この「PF20XD」をとりあえず2個注文してみた。

日本製品にも関わらず販売店の在庫のせいなのか届くまで2週間かかったが、届いたものを見てみると作りが少々安っぽいのが気になる。小型ストロボなのでコストを限界まで切り詰めているのか。
しかしちゃんと作動するなら作りなどはどうでも良いこと。

<小型ストロボ「SUNPAK PF20XD」をとりあえず2個購入>
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小型ストロボ「SUNPAK  PF20XD」をとりあえず2個購入

この2つのストロボと、ラジオシンクロ用のユニット、ディフューザー、そして「PENTAX Q7」をひとまとめにしてみたところ、非常にコンパクトなセットになった。これならば通勤カバン常備としても問題無い。いや、これにもう1灯加えて3灯になったとしても問題無かろう。

なお、ストロボ本体にはディフューザーを装着するための加工が必要になる。
レギュラーサイズのストロボであれば、発光部が突出しているのでその部分にベルトを巻きつけてディフューザーを固定出来る。しかしながらこの小型ストロボは突出部が無いためベルト巻きつけは出来ない。その代わり、マジックテープ(ベルクロ)をストロボ発光部とディフューザーの双方に接着しておき、簡単に脱着出来るようにした。

早速、試しに近くの植物園へテスト撮影に行った。
1灯はディフューザーを取り付けてメイン光とし、別の1灯はそのままでアクセント光とした。

<撮影の様子>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
撮影の様子

以下、テスト撮影の植物写真を掲載する。
等倍画像そのままではファイル容量が4MBとかなり大きいため掲載することは不可能であるから、ここでは長辺2,000ドットの等倍切り出しとした。

低感度撮影のわりに若干ノイズが目立つものもあるが、露出不足の調整で明るさを持ち上げたからである。しかしそれはいつもの調整であろうから、このカメラの実力として判断するには不適当ということも無かろう。

<SUNPAKミニストロボでの作例>
(※画像クリックで長辺2000ドットの等倍切り出し画像が別ウィンドウで開く)
ドンベア・ワリッキー
サンゴアブラギリ
ラン
アマゾンユリ

このテスト撮影により、コンパクトなストロボであっても多灯撮影の有用性は確かめられた。
当初は、「単4電池2本であるから電池切れは早かろう」と予想していたが、300枚近く撮影しても電池交換の必要は無かった。フル発光をあまりしなかったせいであろうが、それでも特段節約しようという意識は無く、フル発光せずとも普通に絞り込み撮影出来るほどのパワーがあった。
単4電池2本でここまで撮れるとは驚かされる。これならば実戦投入も問題無かろう。

広角ズームレンズのほうも、意外に接近して撮れる。これまでメインのカメラではMF広角レンズを使っていたので、AFで撮影出来る快適さが嬉しい。

●実戦投入
さていよいよ、実際に通勤カバンにカメラとストロボ一式を入れて撮影することにした。これまではAPS-Cサイズの「SONY NEX-7」と超広角レンズ「COSINA 10mm F5.6」を常備しており、その機材との入替えとなる。
今回、カメラもストロボもコンパクトなので、同じスペースにすんなり収まった。ただし構成機材が多いので、サッと取り出してサッと撮るというわけにもいくまい。

まず朝の始業前撮影では、公園に着いてカバンからストロボ一式とカメラを取り出し、シンクロユニットやディフューザーを取り付けるなどした。
準備に約1分ほどかかったが、いったんセットしてしまえば、カメラとストロボを手に持って次々に撮影可能となる。シンクロユニットがちょうど良い指掛かりとなってホールド感は良好。

<通勤路での実戦投入>
(※画像クリックで長辺2000ドットの等倍切り出し画像が別ウィンドウで開く)
ニホンズイセン
パンジー

ただし苦戦したのがAFによるピント合わせだった。
「PENTAX Q」のAFエリアは小さい設定にしてあるのだが、それでも背景のほうへピントが抜けることが多発。特に細い枝葉に合わせる時は、背景もAFエリアに入ることが多いので、そちらに引っ張られてしまう。コントラスト式AFオンリーの一昔前のミラーレスカメラの欠点がそのまま出た。

それに、撮影アングルが低いせいで、フレーミングがなかなか難しいことも要因の1つであろう。背面液晶パネルは固定式で傾けられない。しかも角度の浅い朝日が強く照らすので、液晶パネルがテカって良く見えない。

レンズについては、回折の問題があるためか最小絞りはF8と不足気味ではあるが、約2段のNDフィルタを内蔵しており、それをONにすれば最小絞りF16相当にはなる。
またレンズシャッターのおかげで、シンクロスピードが1/250秒と上級機並み。ベース感度はISO100であるし、日中シンクロには都合が良い。

次に、帰宅時の夜の撮影を試す。
夜の撮影は、ストロボ撮影の本領を発揮するところである。仕事も終わった解放感の中、再びストロボをセットして道端の花壇の花を撮るなどした。朝の始業前のような時間制限が無いので気が楽。

手持ち構えのスローシャッターなので定常光の背景にブレがあるのは仕方無いが、超広角レンズと手ブレ補正機能のおかげかあまり目立たない。

<夜間撮影を試す>
(※画像クリックで長辺2000ドットの等倍切り出し画像が別ウィンドウで開く)
アネモネ・ポルト・ブルー

横断歩道近くで撮っていると、信号待ちのおばちゃん連中がしげしげとこちらを見ていたので、撮影画面を見せてやると「あらまー!すごいわね!」と大騒ぎになった。「花もこんなふうに撮ってもらえると幸せだわねー!」とまで言われて少々気恥ずかしい。

人通りが多い場所は集中出来ないので、朝撮影した同じ場所に行くことにした。そこは街灯の陰で暗かったが、赤いAF補助光により、ピント合わせに問題は無い。
補助光は遠くには届かないので、むしろ背景ヌケが無くて良い。しかも背面液晶パネルは強い光の反射が無く、夜の撮影は良いこと尽くし。

ただ、後日判明したことだが、AF補助光がギリギリ照射されない中途半端な暗さではAFが全く役に立たない。だから完全な暗黒よりも夕方の撮影のほうが苦労する。

さて、しばらく撮影していると1台のストロボで不発が多くなり、全く光らなくなってしまった。
かなり寒いので電池の消耗が早いのかと思ったが、それにしてはパイロットランプが点灯している。電池が消耗しているならばパイロットランプが点灯しているはずがない。

それでもとにかく電池を交換してみた。しかし問題は解決しない。シンクロユニットの問題かと思い、2台のストロボのシンクロユニットを交互入れ替えてみたが、現象は全く変わらず。シンクロユニットの電池交換でも変化無し。
そうこうしているうち、もう片方のストロボも不発が多くなってきた。ストロボ本体側の不具合なのか? 同時に2台とも?

色々とやってみたのだが、寒さが堪えて原因究明どころではなくなってきた。
ただ少なくともテストボタン押下による発光は可能だったので、緊急避難的措置として、カメラをテーブル三脚に固定してスローシャッターを切り、シャッターが開いている間にストロボの当て方を変えながら手動で5回ほど発光させた。使ったストロボは1台だけだが、結果的に多灯照明と同じこととなる。

<長時間露光でのストロボ5回発光撮影>
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長時間露光でのストロボ5回発光撮影

当然ながらこの方法は夜間の暗い場所でなければ出来ない。この例では6秒間シャッターを開けっ放しにしておいたわけだが、それで露光オーバーになってしまうと台無し。

さて、自宅に戻ってから問題のストロボの調子を見たところ、最初は発光しなかったものの、だんだん不発の回数が減ってきて、最終的に普通の状態に戻った。この状態で修理に出しても、現象が再現されないので修理されることなく戻されるだけなのは明らか。

試しに翌日の夜、また同じようにストロボを使ってみたところ、やはり最初は発光していたが使っていくうちに段々不発が多くなり、完全に光らなくなった。
電池交換や、接点の接触確認など色々やってみたがダメ。

仕方無いので、この日もシンクロ発光させずに手動発光で撮影することとなった。
なお、失敗写真からヒントを得て、夜景を流して光跡を写し込むようにしてみた。なかなかファンタジックで面白い効果が得られたと思う。

<光跡を写し込みガラにも無くアート調とした>
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光跡を写し込みガラにも無くアート調とした

自宅に戻って再度ストロボのチェックをしてみたが、どうも光ったり光らなかったりと安定しない。
原因は分からないが、カメラ直結では問題無く発光するようなので、恐らくワイヤレスシンクロシステムとの相性が悪いのだろうと推測する。
これまでこのシンクロユニットを使って、スタジオストロボ(ジェネレータ式、モノブロック式)を含めて様々なストロボで使ってきたが、今回のような現象は初めてで困った。

もしストロボ1灯照明での撮影ならば、単純に光ればそれで撮影が済むわけだが、2灯照明となれば、光ったように見えてもどちらか一方が光っていないこともあるので、都度確認せねばならず手間がかかる。そうこうしているうち、寒さの中で手がかじかんで苦痛となり、ストレス解消のための撮影が逆にストレスの元となってしまう。
当たり前のことだが、やはりストロボが毎回必ず2灯が光るという確実性は重要。

そこで、当初購入検討していた中国Viltrox製の「JY-610 II」という単3電池2本仕様の小型ストロボが再浮上した。1台3千円ならばダメ元で買ってみても良かろう。簡易ディフューザーも同梱されているとのこと。偶然にもこのディフューザーは別途購入しておこうと思っていたものだったので、ストロボに付属するのであれば買わずに済む。

ただ、商品は中国から送付されるようなので数週間はかかるだろう。1台買ってからまた1台と追加購入というのも時間のムダなので、思い切って2台注文することとした。
一応、Webサイトを検索してユーザーによる情報を探してみたが、日本ユーザーの情報が全く見付からない。まだ新しい製品なのだろうか?

注文から2週間後、忘れた頃に国際郵便でViltroxのストロボが届いた。
開封してみると、思ったほどの安っぽさは無かった。ディフューザーばかりでなく、布製のポーチまで付いている。これで3千円ちょっとなのだから驚く。

<Viltrox製「JY-610 II」>
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Viltrox製「JY-610 II」


<SUNPAK製「PF20XD」との比較>
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SUNPAK製「PF20XD」との比較

早速電池を入れてフタを閉めようとしたが端子の出っ張りが少々キツかったので、工具で端子を少し潰したところスムーズになった。

背面は大型のバックライト付液晶パネルがあり、細かい情報表示があって洗練された印象。ただし我輩はマニュアル発光でしか使わないので、大きな液晶パネルも宝の持ち腐れなのが残念。

<背面液晶パネル>
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背面液晶パネル

マニュアル発光の出力切り替えもレギュラータイプと変わらない細かさで、「1、1/2、1/4、1/8、1/16、1/32、1/64、1/128」という段階と、その間1/3単位での設定が可能。ただしあまり細か過ぎても設定が面倒という弊害はある。
なおこのストロボも、発光部にマジックテープを接着し、ディフューザーの装着が簡単になるよう加工した。
またストロボはよく落下させて破損することが多いので、レギュラーサイズのストロボにはスポンジゴムを貼っているが、このストロボにも貼ることとした。

寒い条件で使ってみたが、特段動作に不安定さは無く、発光したかどうかの確認に気を取られることなく安心してライティングに取り組めるのが良い。
本来これが当たり前のはずだが、そこに行き着くまで手間取ってしまった。

それにしてもストロボを使った能動的なライティングでは、同じ花を写しても表情が変わるのが面白く、工夫のしがいがある。
自宅に帰ってからパソコン画面で確認し、「ここはもう少しこうしたほうが良かったか」などと思うことがあれば、次の日に同じ被写体を相手にして試すことが出来る。毎日の通勤で必ず通るのだから、撮影のためだけに行く面倒も無い。

小さなカメラではあるが、システムとしては基本的にメイン機と同じ構成なので、まるでメイン機で撮影しているかのような自由なライティング。通勤カバン常備カメラでそれが出来るところが嬉しい。
そればかりか、コンパクトで小回りが利くので、メイン機でやらないような撮影でも色々と挑戦したり実験したりと活用出来る。

それにしても改めて書くが、この「PENTAX Q7」はオモチャのカメラのように見えながらもAF能力が高く、AF補助光を投射するとはいえ暗闇で問題無く合焦するのが頼もしい。いや、素晴らしい。
これは最初に期待した以上の能力で、この暗闇AF能力が弱ければ、いくらストロボ照明が可能であっても意味が無かったろう。

以下、暗闇で撮影した写真を掲載する。


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ニホンズイセン
ニホンズイセン
ニホンズイセン

以上、メインカメラのストロボ撮影システム機材をそのまま小さくしたミニチュアシステムの構築であったが、期待以上の結果に大変驚いている。
画質、超広角レンズの近接撮影能力、夜間AF能力。これらの能力が1つでも欠ければ、本当にオモチャで終わったことだろう。
しかし今や、実験段階を過ぎ、通勤カバン常備カメラとして立派にその役目を担っている。

実を言うと、今回の試みにより通勤路での花撮影が大変有意義であることを認めたことにより、どうせならもう少し大きなフォーマットのコンパクトカメラ(1インチ以上)で置き換えることを考えた。
検討したのは「FUJIFILM X70」と「Nikon DL18-50」の2機種。だが「X70」は画素数が少なく置き換えの必然性が薄く、そして「DL18-50」は仕様上の問題点は無かったもののまさかの販売中止の憂き目に遭い、結局のところ現在の「Q7」しか選択肢が無いことを思い知った。
ちなみに「DL18-50」はAmazon通販で予約までしていたのだが、販売中止によって強制キャンセルを受けたのは残念だった。

なお、通勤カバン常備カメラ「Q7」とフルサイズのメインカメラ「7RII」を並べてみたが、どちらも広角マクロの装備であるが、大きさが全く違う。

<広角マクロの2つの組合せ>
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広角マクロの2つの組合せ

「7RII」もフルサイズカメラにしてはコンパクトなほうだが、この広角マクロレンズはミラーレス専用設計ではなく、レフ機用と共通の光学系のためバックフォーカスがかなり長くなっており、それによって全長も長くなっているのは仕方無い。

それに対し、「Q7」はレンズも含めてミラーレスカメラとして最適化されたムダの無いコンパクトさ。
「Q」を導入当時に、「マウント径に対してイメージセンサーが極端に小さい」ということを書いたのだが(参考雑文794)、もしイメージセンサーが今よりもずっと大きければ、レンズ(特に広角レンズ)を大きくせざるを得ず、このようなコンパクトさは得られなかったに違いない。

なお余談だが、今回フルサイズのミニチュアシステムを構築したということで、モデル撮影にもこのミニチュアを活用し始めた。
事前に、同じ環境をミニチュアサイズでライティングのシミュレーションを行い、その結果を基に本番撮影に臨むのだ。これにより現場での試行錯誤が減り、限られた時間の中で無駄な時間を省くことに繋がった。

<等身大のスタジオ>
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等身大のスタジオ


<ミニチュアのスタジオによるシミュレーション>
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ミニチュアのスタジオによるシミュレーション
ミニチュアのスタジオによるシミュレーション

さて、「Q7」を使ってフルサイズと同様な撮影が可能となったことにより、思いがけず新たな問題が浮上してきた。これは小さな問題だが、大きな問題でもある。

次回、その問題について述べたい。