2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
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カメラ雑文

[800] 2013年10月30日(水)
「最後の戦艦」


45口径46センチ主砲を積んだ戦艦大和は、昔も今も、旧日本海軍の象徴である。
それは、日露戦争の日本海海戦勝利から始まる大艦巨砲主義が到達した究極の姿であり、まさに戦艦としての最高傑作であった。

<戦艦大和>
戦艦大和

大和建造にあたっては、現場責任者である海軍艦政本部の西島亮二技術大佐が採った建造法は革新的であった。
「工場内のレイアウト見直し」、「材料の制式化(規格化)」、「工数曲線(西島カーブ)の活用」、「溶接の大幅導入」、「ブロック建造法の導入」・・・など、戦後の造船大国日本の基盤となる技術が既にそこにあった。

軍艦としても、舷側には厚さ410mmの甲鉄を貼り、1,000を超える区画と注排水装置によって浸水傾斜の対策をし、また主要部を集中的に防御するバイタルパート構造を採用したことにより、極めて沈みにくい艦となった。

しかしながらここまで最新技術を以て造られた強大な戦艦であっても、既に時代は航空機の攻撃が主となり、戦艦の出る幕は無くなっていた。
いくら46センチ主砲を撃ちたくとも、互いの戦艦が対峙する状況はほとんど無く、出撃の機会を待ちながらトラック島に停泊を続けるしかなかったのだ・・・。

**************

さて、我輩が写真を撮り始めたのは小学生の頃であったが、一眼レフカメラを手に入れたのは中学生になってからだった。
当時、中学校の備品カメラだった「FUJICA ST-801」のスリガラス状のファインダースクリーンに投影された像を見て、「この像がそのままフィルムに写るのか」と感動した。そしてコツコツと小遣いを貯めて1万5千円の中古カメラ「Canon AE-1」を手に入れたのである(参考:雑文085)。
言うなれば、我輩にとっての一眼レフとの出会いはまさに写真の原体験であり、それ無しには我輩の写真活動は成立し得ないものと言い切れる(参考:雑文230)。

それゆえ、デジタルカメラの時代になると20万円を超える値段でありながらも中古のデジタル一眼レフカメラ「Canon EOS D30」をいち早く導入し(参考:雑文274)、その後「Nikon D200」、「Canon EOS 5D-Mark2」、「Nikon D700」、「PENTAX K-x」、「Nikon D600」と時代を追って導入を続けた。

ところが現在、デジタルのメインとなるはずの一眼レフカメラ「Nikon D600」を所有していながらもその使用頻度は極めて低い。それに対し、非一眼レフであるミラーレスカメラ(マイクロフォーサーズカメラ)の使用頻度は圧倒的。

もちろん、「D600」は我輩所有デジタルカメラの中では最高画素数であるので、もし大サイズ印刷用の写真が必要な時、あるいはフィルムスキャナ代わりのデュープ撮影(参考:雑文651)で使う用途があれば「D600」に代わるものは無い。
だが、いくら最新の技術で造られたフルサイズのデジタル一眼レフであろうともそのような場面はなかなか無く、まるでトラック島での停泊を余儀なくされている戦艦大和のように、机上に鎮座するのみである。

我輩にとって、デジタル化というのは戦略の大きな転換点であった。
「アウトプットさえ満足出来れば途中経路は何でも良い」という合理性が、デジタルであるが故に得られた解答であった。
だから、デジタルカメラのデザインは操作性の観点以外ではカッコ良さなどはどうでもいいと考えるようになり、光学式投影ファインダーの趣きよりも軽量コンパクトさを優先し、携行率を上げることでシャッターチャンスを増やすことを優先した。

黎明期にはデジタルカメラの足元にも及ばなかったミラーレスカメラも、今ではレンズのラインナップも充実し、カメラの操作性も向上し、そして肝心な画質もデジタル一眼レフと変わらなくなった。
そしてつい最近では、フルサイズのミラーレスカメラ「SONY α7R」さえ出現している。

確かに、現状のミラーレスカメラの性能が一眼レフカメラに比べて劣っているところもまだある。特にAFに於いては動体や暗所ではまだ非力なのは事実。しかしそういった状況は戦時中の航空機も同様だった。そんな航空機も日に日に進歩し、最高速度を増し、運動性能を向上させ、爆弾搭載重量を着実に増やし、戦艦を無用の物としてしまった。
ミラーレスカメラも、いずれは一眼レフキラーとなるほどの性能を持つことになろう。
デジタル化を推し進めるほどに合理性は重要となる。ミラーレスカメラの進歩に伴い、戦艦は消え去ることになるのだ。

我輩の場合に限って言えば、既に現時点でミラーレスカメラは戦略として重要な位置を占めるまでになり、そのコンパクトさによる携行率の高さを以て多くのシャッターチャンスを稼いでいることは紛れもない事実。
かつては、「Nikon D700」に「AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G ED」を装着した一抱えある機材で撮った超広角写真が、コートのポケットに入るくらいのミラーレスカメラで撮ることが出来るようになった。

手元にある「Nikon D600」は、まだまだ活用する場面はあろうかとは思うが、我輩にとっての最後の戦艦となるカメラであろう。