[639] 2008年12月08日(月)
「QP CARD」
我輩は今まで、自分が好きな色について特に深く考えたことは無かった。
性格判断の設問やコミュニティ会員登録のプロフィール欄などで答える必要がある時は、ちょっと考えて「青」と答えていたりした。
ところが自分の周りを見渡してみると、茶系の色、特に赤みがかった茶色が多いことに気付いた。
ブルゾンも赤茶色、スーツと革靴を買う時は必ず茶系を1セット買うし、Yシャツも茶色のものが必ずある。そして足元を見ると、自分の部屋だけは赤茶色のフローリング。
色が選べるものは、だいたい赤系・茶系を選んでいた。
そう言えば、高校入学祝いで買ってもらったAIWA製のコンポもシルバーではなく赤色を選んだし、NikonF3も赤色のラインが無ければ手に入れなかったかも知れない。なぜならば、 雑文152「7年目」でも書いたが、最初にF3を買った動機は極めて衝動的だったからだ。
それから、以前、茶髪の女性が好みであると 雑文394「Q&A」にて書いたのも、実はそういう関連があるのかも知れない。
そう考えると、実は我輩は赤系・茶系が好きだったようだ。
さらに記憶を探ってみると、黒ボディ色の自動車「メルセデスベンツW202/C200」を購入した際も、実はウェブサイト上で赤ボディ色の在庫車を見つけて問い合わせたことが中古車ショップ選びに繋がった。
この車に惹かれて中古車ショップにやってきた |
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[Nikon COOLPIX5400] |
ただこの場合、赤い車は我輩には似合わないということで断念し、結果的に黒ボディ色に落ち着いた。それさえ考えなければ、確実に赤いベンツを選んでいたであろう・・・。
さて、写真というものは、銀塩フィルムであろうとデジタルであろうと、なかなか正確な色を再現することは難しい。
フィルムの場合では、銘柄や商品によって色合いが異なる。さらには感光剤を調合したロットによってもまた異なる(比較対象にもよるが、ロットでの色違いはかなりのものがありバカにはできない)。そういう意味では、正しい発色をするフィルムというのは存在しない。だから、厳密に発色をコントロールするには、本番と同じフィルムでテスト撮影をして補正フィルターを決めたうえで本番撮影に臨む。
全ての調整は撮影時のみ有効で、撮影後に調整することは出来ない(リバーサルフィルムの場合)。
デジタルの場合では、撮影時の調整はもちろん、画像データをパソコンに取込んだ後にも調整が可能である。フィルムに比べると自由度が高いと言える。
しかしパソコンで色調整する時、ディスプレイが正しく色調整されていないと、いくらデータ上では正確な色であったとしても正しい色には見えない。そのため、何を基準にして色を調整すれば良いかが分からなくなる。
これらの色の問題は、写真がイメージとして捉えられている場合はまた状況が異なる。
夕焼け写真の色が冴えないならば、フィルターや画像処理で赤みを多くすれば良い。撮影者がそれで気に入るならば、そういう調整も良かろう。忠実な色調整ではなく、撮影者の記憶色(記憶で覚えている色調)やイメージ色(こうあって欲しいと思っている色調)に沿うことが重要である。そこには、撮影者のメッセージが込められているのだ。
しかしここではあくまでも、被写体となる現物に近い色を再現することに話を限定したい。
我輩の場合、ウェブサイトの写真で見た赤いベンツについて、実際に現物を見た印象とはかなり違うということを実感した。単に「赤」と言っても色々あるし、車種によって印象がガラリと変わる。
画像について、撮影者がホワイトバランス調整している保証は無いし、我輩のパソコンディスプレイも手動調整のみで、システマチックなカラーマネジメントがなされているわけでもない。色について何の指標も無い状態である。
もちろん、画面に表示された色を信ずるべきではないということは承知していた。だが、赤い色の車については我輩のイメージがあり、我輩の脳内でその色に変換されてしまう。それは、「ウェブサイトで見た色は正確ではない」という意識があるからこそ、ますますその脳内変換は強くなる。
もし仮に「画面で見たままの色である」という確証があるならば、余計な脳内変換をする必要は無かったろう。画面に表示された色を信ずれば済む。
また、実際に現物を見れば済むのかと言えばそうでもない。もし購入を検討することになったとしても、家に帰って検討するには困ることになろう。なぜなら、記憶色はアテにならないし、写真で撮ろうにも正確な色とは限らないのだ。
だからもし、車選びに重要なポイントの1つが「ボディ色」ならば、現物を見た後時間が経てば経つほど迷いも大きくなろう。だから迷うたびに中古車ショップに足を運ばねばならなくなる。
我輩は車を買う際、トヨタや日産やその他のショールームにも行ってきたが、そこでデジタルカメラで写真を撮っても、微妙な色合いが肉眼とは違って見えるのが悩みだった。ホワイトバランスをマニュアルに切替え、白い紙をターゲットにして調整を試みるのだが、調整方法が悪いのか、カメラごとにクセが異なるのか、なかなか現物と同じ色であると確証出来る結果が得られなかった。
何か良い方法は無いものか・・・。
トヨタのワインレッドカラーの車 |
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[RICOH GR-D] |
メルセデスベンツのボディカラー色見本 |
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[Nikon D200] |
そんな時、「 QPカード」というカラーマネジメントシステムを知った。
これは、専用のカラーチャートを本番撮影と同じ光源の下で撮影し、その画像を専用ソフトウェアで色の偏りを解析することで、本番画像も同様に偏りを補正するというものである。
「QP CARD 201」 |
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撮影時の注意点として、ホワイトバランスの設定を固定させるために「晴天(デイライト)」にセットしておく必要がある。もしオートホワイトバランスにセットされていると、カラーチャート撮影時と本番撮影時でホワイトバランスが異なる可能性があり、同じ補正量を適用出来なくなる。
QPカードによる補正は、デジタルカメラでの画像はもちろん、フィルムで撮影したものでもスキャナ取込み時には役に立つ。何しろ、フィルムをスキャナで取込む際には色調整が大きな問題であるから、このようなシステマチックな方法で色を合わせることが出来るというのは大変有意義と言えよう。
さて、製品として実際に購入する物としては、「QP CARD 201」というカラーチャートで、ヨドバシカメラのネットショップなどでも2枚入り3千円程度で売っている。
一方、補正用のソフトウェアは QPカードのサイトから無料でダウンロードするようになっている。
「QP COLORSOFT 501」でのプロファイル登録作業 |
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ここで、ワインレッドのミニカーを撮影してみたが、従来のように白い紙を使ってホワイトバランスをマニュアル設定した場合と、QPカードを使って色補正した場合を比べてみた。
ホワイトバランスをマニュアル設定したものもそこそこうまく色が再現されているように思うが、QPカードで補正したものと比較すると、若干黄味が強い。実物と見比べてみると、やはりQPカードで補正したもののほうが近い。
QPカードによる補正では、色相の歪みさえも補正しているそうである。
白い紙でホワイトバランスをマニュアル設定した撮影 |
QPカードを用いた補正 |
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もちろん、ディスプレイの色調整が適正でなければ正確な色は表示されないが、そういう環境のパソコンであっても画像データとしてはきちんと処理されるため、その画像データを環境の整ったパソコンへ移して表示させれば正確に見えることになる。
レタッチソフトでグレーポイントを探したりトーンカーブなどをいじって調整する方法は、QPカードのように色相の歪みを補正出来ない。それに、どうしても人間の目で見た主観が頼りとなる。あまりに長時間作業をしていると、何が正しい色なのか分からくなったりもする。
そもそも、自然な色調を狙って補正したつもりが、現物のほうが不自然な色だったらもうお手上げ。そういう場合には、現実のほうを否定しなければ辻褄が合わなくなる。イメージで済む写真ならばそれでも良いだろうが、色の再現性が問題となる写真ならば、QPカードを使うのがスマートかも知れない。
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