前回の雑文で、我輩はフルサイズデジタル一眼レフカメラ「Nikon D700」の購入を考えていると書いた。
我輩はこれまで「F3」関連のアクセサリ買い囲みをしてきたため、これらのうち少なくともレンズ系の資産がそのまま「D700」で活用出来る。
もちろんこれらの資産は、現在所有しているAPS機の「D200」でも使えないこともないが、フルサイズ機で使ってこそ真価を発揮出来るものであるし、場合によってはフィルムのフルサイズ機である「F3」との併用も効果的となるのが良い。
改めて言うが、我輩にとってフルサイズ機導入の価値は高い。
そこで肝心の「D700」の値段だが、登場時点での価格は30万円弱、そして現時点での最安値は25万円までに下がった。しかしながら、今ある金をかき集めても、ほんのわずか、あと23万5千円ほど足らぬ。
あと少しとは言っても、本当に足らぬものは足らぬ。だからどうにもならない。
参考として、同じくフルサイズ機である「Canon EOS-5D」が後継機を控えた終末価格が20万円弱であることを考えると、「D700」も20万円が安値の限界点であろう。
それにしても、考えてみると妙な気分になる。
というのも、フィルムカメラの時代であれば、10万円くらい出せば立派な一眼レフカメラが買えた。フラッグシップの「Nikon F3」などは15万円も出せば買えたのだ。
それが今、デジタルカメラの時代になり、フルサイズカメラというだけで20万円を軽く越えてしまう。フラッグシップになると40万円を超えるのだ。
一昔前ならば、「まだデジタルカメラの時代じゃないから、デジタル一眼レフカメラを買うくらいならフィルム一眼レフカメラだろ」とも言えたのだが、今やフィルム式のカメラの選択肢は無い。もはや、カメラと言えば「デジタルカメラ」を指すと言っても良い。
だからこそ、デジタル一眼レフカメラの値段の高さには驚くのである。
もちろんデジタルカメラの製品ラインナップは広がった。
7年前、
雑文242「普通のデジタルカメラを作らんか」でも書いたように、10万円以内のデジタル一眼レフカメラも出た。
しかし、普通の感覚で使えるのはフルサイズ機であるのに、それはまだまだ高い。
高いのには理由がある? 分かった分かった、そういう話は何度も聞いた。
大サイズのCCD/CMOSチップの歩留まりやウェハーの切り数の問題だろ?
だがそんなこと我輩に言われても関係無いし、ましてや我輩の責任でも無かろう。
問題は、そんな高いカメラしか無いのにフィルムカメラを絶滅させようとしているところだ。もしそれをやると言うのなら、じゃあ赤字覚悟でフルサイズデジタル一眼レフを売れよと言いたい。平行移行可能な代替を用意せずに高いものに乗り換えてくれというのは、横暴と言わずして何と言う?
「需要が無いから」という理屈でフィルム式一眼レフカメラを縮小するならば、新たな需要を掘り起こそうと努力している全国の営業マンの努力は何なんだ?
我輩は現在、営業支援という形で某商品の売り込みの戦略を立てているが、なかなか苦戦を強いられている。分析をすれば「需要が無い」の一言に尽きるが、それを言ってしまうと全てが終わってしまうため、何とか"提案"という形で需要の掘り起こしを狙っているのである。その努力は生易しいものではない。しかし我輩とその他営業マンは、必ずこの商品が役に立つと信じて努力を続けるのである。
このような努力が、フィルムカメラ界にあるかと言えば、全く無いと言えるだろう。あるとしても、ノスタルジックな退化でしか無い。
もっとも、別の考え方もある。
フィルム時代であれば普及タイプのカメラでも、プロ用フラッグシップカメラでも同じくらいの画質が得られた。画質は主にレンズとフィルムが担うものであった。
それがデジタルカメラの時代になると、フィルムに相当するCCD/CMOS撮像素子がカメラと一体となり、画質がカメラの良し悪しに直結する問題となった。だから、金をかければそれだけ高画質で利用範囲が広がるということで、値段に見合う見返りはあると言えばあるのだが・・・。
もちろん、APSサイズのCCD/CMOS撮像素子には、機材をコンパクトにできる(特に望遠レンズ)というメリットもあると言えなくもないが、現状、APSサイズ機とフルサイズ機を同列に比較し選ぶ環境にはなっていない。APSサイズを必要とする者は問題無かろうが、フルサイズを好む者にしてみれば価格の高さが障害となり、我慢してAPSサイズ機を使っている場合も多かろう。
恐らくあと10年ほどすれば、ローエンドのデジタルカメラでもフルサイズのものが現れるだろうとは思う。
しかしそこまで待つのか?
撮るという行為は日々発生する。新しいカメラを導入するまで待ってはくれない。まさか、満足な性能を持ったデジタルカメラが廉価になるまでの間、シャッターを押さずにいるか?
とにかく、デジタルカメラが高くて高くてしょうがない。
所得が下がっているこの景気の中で、カメラの相対的価格は額面以上のものを感ずる。
この時代、写真に対してマニアックに入れ込むのは無理なのかも知れぬ。気付かぬうち、金持ちの道楽となってしまったのだろうか。
あまり入れ込まずに、そこそこにとどめておくのが一番金がかからない方法なのだろうが・・・、それでは趣味として楽しいはずが無かろう。
金策の悩みは今日も続く・・・。