2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
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10.アンケート
11.その他企画

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カメラ雑文

[455] 2003年12月11日(木)
「中判フィルムスキャナ」

1年ほど前、中判対応フィルムスキャナ「Polaroid Polascan 45」について雑文366で書いた。
このスキャナは結構良く使ったもので、もしこれが無ければ、情報量を必要とする画像収集でさえも35mmカメラを使わざるを得なかった。いや、そればかりか、現在の我輩の中判体制さえ確立出来なかったろう。
ブロニカSQ用魚眼レンズも、手に入れるどころか今日まで気付くことが無かったかも知れぬ。ブロニカが66判カメラから撤退したのは2ヶ月ほど前。その時点で我輩に金は無かったが、普段使っているからこそ、必要な機材が自然と集まっており、特に焦ることは無かった(残念ながらF3の時のように、現状で必要を感じない物までゴッソリ買い囲むことは出来なかったが)。

だが現在、「Polascan 45」はそれなりに旧く、35mm用最新フィルムスキャナに比べるとかなり見劣りする。

まず第一に、解像度が2000dpiと比較的小さく、縮小処理して画像を締めるような使い方をする我輩には少し物足りない。現状では4000x4000ドットの画像を3000x3000ドットに縮小して使用している。もし解像度に余裕があれば、例えば8000x8000ドットの画像を縮小して4000x4000ドットに出来る。

次に、フォーカスが固定であるという点。
フィルムの浮きによって微妙にピンボケとなる。本当に微妙なため、縮小処理とシャープネス処理によって目立たないようには出来る。しかし必要以上のシャープネスは画像全体を粗らすことになるので何とかしたい。

さらに、フィルムの暗部において若干のノイズがあるということ。
これは、スキャンした後に暗部の描写にこだわって画像処理を行うと出てくる。そのため、普段この問題は表面化しない。


Polaroid製 Polascan 45

そういうわけで、ここ最近、中判対応フィルムスキャナを幾つか検討していた。
金は無いが、それは後から考えることにする。いざとなれば、ネットオークションにて何かを売って金を作ろう。
問題は、「何としても金を作らねば」と我輩を奮い立たせるほどの製品があるかどうか。

一通り調べてみると、中判対応フィルムスキャナは数が少ない。とりあえずの我輩の認識では以下の2機種のみ。
●Nikon SUPER COOLSCAN 8000ED(実売26万円)
●MINOLTA DiMAGE Scan Multi PRO(実売24万円)
この2機種はそれぞれに一長一短があり、高価な機器だけに甲乙付けがたい。

まずNikonのほうだが、8000EDは光源がLEDということで安定しているのが良い。蛍光管の場合は点灯後安定するまでしばらく待つ必要がある。
しかも、マウントされた中判フィルムも読み取り可能である。我輩の場合、マウントはドイツhama製の硬いマウントなため、マウントを外すのはフィルムに傷をつけたりマウントを破損したりというリスクがある。ゆえにマウントのまま読み取れるのは非常に有用。
ところがWeb上の情報によれば、スキャンした画像にはスジがうっすらと乗ることがあるとのこと。青い空にうっすらとスジが見える作例を見てしまった時、軽いショックを受けた。26万円のスキャナでこの結果とは・・・。
また一見キレイに見えたとしても、レベル補正をかけると隠れていたスジが現れてくるようで、Web上で8000EDを使って読み込んだ写真を見付けて極端な補正をしてみると、なるほどスジが見えてきた。
ニコンのサイトでは、スジ画像に対する対処法がhttp://www.nikon-image.com/jpn/ei_cs/faq/qa/qno_1883.htmに書かれているのだが、スキャン時間が3倍にもなるそうで困ったもの。

MINOLTAのほうは、それなりに評判も良い様子。
しかし大きな問題として、マウントされた中判フィルムがセット出来ない。これは痛い。
その上、このスキャナはNikonに比べて粒状感が強いらしい。海外のサイトで紹介されていた作例を比較すると、確かにMINOLTAのほうがザラザラしているように見えた。もっとも、これは原寸の大きな画像から切り出したものであるから、フィルムに記録された粒状をそのまま再現したと言えなくもない。
また別の情報によれば、このスキャナは中途半端な設定でスキャンすると画質が極端に悪くなるらしい。常に最高の設定でスキャンせねばならないとのこと。
それから、照明光として蛍光管を使っているのは少し気になる。

それにしても・・・選択肢が少な過ぎる。
Nikonのスジ画像は致命的であるから、どう考えてもNikonが選定外となる。そうなるとMINOLTAが自動的に選ばれてしまうことになる。しかし本当にこんな選び方で良いのか? 積極的理由でMINOLTAを選んだのではなく、Nikonが使えないからMINOLTAになってしまったなどとは・・・。

そうこうしているうち、衝撃的ニュースが飛び込んできた。
フラットベッドスキャナで有名なEPSONから、フィルム取り込みをウリにしたGT-X700という製品が発売されたのだ。なんと、解像度はフィルムスキャナと同等な4,800dpi。
店頭でスキャン画像のプリント見本帳を手に取ってみたが、なかなか美しい仕上がりに驚いた。これで店頭価格45,000円とは。

確かに、フラットベッドスキャナでフィルムを取り込む場合には、フィルム周囲から光が漏れないように厳重にマスクをしたりすることでフィルムスキャナと同等な画質が得られることもある。ただし、これはある解像度以下の場合に限ったことで、大きな画像になればなるほど、フィルムスキャナとの差は開いて行く。
フラットベッドスキャナの場合、カタログ記述の解像度数値は少なめに捉えたほうが良い。

・・・とは言うものの、4,800dpiというのはかなり大きい。仮に、実質的な解像度を少なく見積もってその半分程度だったとしても、それでも2,400dpi。我輩の中判用フィルムスキャナを僅かに越えている。普通に考えれば3,000dpiは出ているだろう。
カタログをもらって帰ったが、それにはフィルムスキャンがウリとして前面に出ており、もしこれでフィルムが上手くスキャン出来なければ悪徳商法になってしまう。

ここで、我輩の気持ちはググッとEPSONに傾いた。
しかし、冷静になって考えてみた。今、フラットベッドスキャナは2台もある。それが3台となった状況を想像して背筋が寒くなった。フラットベッドスキャナはその上に物を置くことが出来ない。置けばフタが開けられない。つまり、場所を占有してしまう。これは困る。現状でも大変な状況であるのに、これ以上苦しむことになるのはゴメンだ。現在のフラットベッドスキャナを減らそうにも、それらはドキュメント用であるために、単純にGT-X700へ置き換えるという意味合いにはならない。
そんな気持ちであらためてこのGT-X700を見ていると、今度は悪いところばかりが目についてしまい、結局このスキャナは選択肢から外れた。

ふと、ネットオークションを見てみた。
するとコダックの中判対応スキャナが数十万円(出品物によりかなりの幅がある)で出ているのを見付けた。Photo-CD用に使われたという業務用スキャナで、色再現性は素晴らしいとのこと。確かに、我輩もPhoto-CDの色は好感を持っていた。照明光もLEDと問題無い。 だが今となっては旧式のスキャナと言わざるを得ず、解像度も2,000dpi程度とかなり少ない。これならば、現状のフィルムスキャナから換えるメリットが少ない。色再現性のためだけに買い換えるには高価すぎる。

そんな時、ニコンから新しいフィルムスキャナの情報が明らかになった。その中に、中判対応のSUPER COOLSCAN 9000EDがあった。
だが、それは現時点で「発売日・価格は未定」となっており、購入計画を立てられない。製品の位置付けとしてはフィルムスキャナのハイエンド機とのことで、少なくとも現在の8000EDよりも高価であることが容易に想像出来る。貧乏人には買えそうもないな。
やはり今回、フィルムスキャナ購入は見送るべきか。

その後数日間に渡り、暇な時間にインターネット上でスキャナに関したものを色々なキーワードで検索していた。
その中に、Polaroid製「Polascan120」とMicrotek製「ArtixScan 120tf」があった。
元々、Polaroid製のスキャナはMicrotek社が作っているようで、同時期に両社から同じようなスキャナがリリースされるのはいつものこと。
外見上は「Polascan120」と「ArtixScan 120tf」は良く似ている。仕様も同じか?
だが詳しく見ていくと、微妙に仕様の違いが見られる。全体的に「ArtixScan 120tf」のほうが性能が上のよう。
ただし両社とも照明光はオーソドックスな蛍光管。しかもマウントされた中判フィルムはセット出来ない。結局はMINOLTA製と同じようなものか。

我輩は以前、Microtek製「ScanMaker 35t plus」という35mm判専用フィルムスキャナを使っていたと雑文にも書いた
日本製のスキャナがどれも一癖ある中で、このスキャナだけは安定した品質を持っていた。大きな特長は無いが、大きな失敗も無い。そこが安心出来る。
そういう過去が、我輩にMicrotek製を考慮させる要因となった。
「MINOLTAよりもMicrotekを選んだほうが安心出来そうだな」そんな漠然とした根拠の無い気持ちが我輩を支配した。

さて、この2つのスキャナは日本でも売られているが、実売でも35万円前後とかなり高い。
ところが、たまたま検索で引っかかった米国B&Hでは売値1,699ドルと割安である。1ドル110円とすれば186,890円か。しかも、200ドルのキャッシュバックにより、実質的に1,499ドルとなるらしい。そうなると、164,890円。

その夜、以前にも利用(その1その2)させてもらった輸入代行業者New York Best Life.comに見積を依頼した。
その結果、送料や手数料込みで2,179ドルであった。これで200ドル差し引くと1,979ドル。およそ220,000円。それでも日本で買うより10数万円安い。もちろん、MINOLTAやNikonよりも安い。
「これだな。」
我輩の意志は決まった。

機種が決まれば、あとは予算獲得である。これはもうボーナス頼みしか無い。
22万円の出費となれば、ボーナスの半分にも近い。そこで、現在のスキャナを5万円ほどで売れば差し引き17万円となり、少しは希望が出てくる。
しかしながら、キャッシュバックは数ヶ月かかり、現有スキャナの売却にもそれなりに時間が必要。当面の出費24万円のショックはデカイ。ヘナチョコ妻に言うタイミングが難しい。

日常会話の中でさりげなく言おうと思ったが、何度もタイミングを失した。しかしやっと話を切り出すことに成功し、しかも「比較的安い買い物である」、「キャッシュバックがある」、「現有スキャナ売却益を充てられる」等の説得により、思いがけず予算が通った。

我輩は、ヘナチョコの気が変わらぬうちに注文し、輸入代行業者より航空便で送ってもらうことにした。予定では1週間後の到着である。
その間に、現在のスキャナをネットオークションにて売却した。購入時は18万円だったが、7万円(諸経費別)での売却となった。

1週間後、ニューヨークから「ArtixScan 120tf」が届いた。 思ったよりも小さく、接続して難無く動いた。当然ながら英語版の取説に英語版のソフトウェアであるが、とりあえずはフィルムの取り込み作業は出来るようになった。しかし中判フィルムはマウントされたものはセット出来ないため、なかなか手間取る。現像したばかりのポジフィルムをセットしようと思ったが、カーリングが邪魔してなかなかセット出来ない。要領が悪くフィルムに傷が少し入ってしまった。


Microtek製 ArtixScan 120tf



ArtixScan 120tf 後面

セットした後、スキャンしてみたが、部分的にピントがボケている。あらためてホルダーを見ると、カーリングのためフィルムが歪んで少し浮いていた。
色々とやってみて何とか良い方法を発見したが、それは66判のみ有効な方法で645判では打つ手が無い。ホルダーへのセットすら出来ない。結局、645判ではマウントして数日間フィルムを伸ばすことで、平面性はともかくホルダーへのセットには成功した。
それでもマウントされた中判フィルムが読み込めないのは効率が良くない。裸のフィルムを取り扱うのは神経を使うのである。マウントされたものならば、マウントそのものがハンドルとなって扱い易い。

スキャンした画像については、見事なものだった。
それまで使ってきたフィルムスキャナは4機種だが、一つとして色補正が不要な物は無かった。それぞれに色の偏りが必ずあり、レタッチソフトで修正しなければ使えない。しかもそれは、微調整の域を越えた大きな修正である。
しかしこの「ArtixScan 120tf」は、ハイライト/シャドーを調整すれば、色に関しては微調整程度で済む。これは良い。 フィルムのセットに時間がかかっても、色調整の手間が省ければかなり効率が上がる。しかも、今まではいくら調整しても良い色にならない場合があったのだから、色調整の必要がほとんど無いというのは大きな進歩と言えよう。少なくとも、投資額に見合う。

また、暗い領域の多い写真では、マルチサンプリング機能によってノイズを低減することが可能。少なくとも前のPolascan45よりも暗部の再現性が良いことを確認した。

解像度については、4000dpiでの取り込みが可能で、6x6判では8000x8000ドットにもなる。しかし実際に取り込むと容量が大き過ぎて我輩のメインパソコンでも荷が重い。とりあえず3000dpiにて取り込み、4000x4000ドットになるよう縮小した。これでも十分な情報量。ピントさえ合えば素晴らしい大きさの画像を得ることが出来る。

総合的に見て、そこそこ良いと思っていた「Nikon SUPER COOLSCAN 4000ED」と比較しても、このスキャナはかなり良い。35mm判で50枚連続スキャンをする場合には4000EDを使うことになろうが、普段は35mm判、中判共、「ArtixScan 120tf」を常用することにしよう。