対角線魚眼レンズ「zodiak 30mm F3.5」を入手した後、ゆっくりとカメラボディの問題を考えようと思ったが、結局のところ、考える余地はあまり無い。どれを選んでも似たり寄ったり。
ただ、インターネット上の情報から考えると、「Kiev 6C」が他より幾分マシだと感じた。使い方さえ間違わなければ、不具合の発生は最小限に抑えられる(ような気がする)。
それにしても、いざ「Kiev 6C」を探そうとするとなかなか見付からない。
「Kiev 60」のほうは現在でも生産中のカメラのようで、オンラインショップやオークションでは頻繁に見掛けるのだが、旧型「Kiev 6C」は過去のカメラであるためか、なかなか出会うことが無いのである。
普通ならば改良型のカメラのほうが良さそうに思えるが、実は旧型のほうが丁寧に造られているらしい。
仕方無いので、予約受付中となっていたロシアカメラ取扱店「
King-2」のほうで「Kiev 6C」を予約した。恐らくここは、一定数の予約を取ってロシアに買い付けに行くのであろう。
個人サイトの情報を見ると、予約して入手するまで2ヶ月かかったという。まあ、ちゃんとしたモノが届くならば、それくらいは待つことにしよう。
そうは言っても、現時点で予約後2週間経った。カメラボディの無い状態では色々と不安になる。果たして満足に写真が撮れるのだろうか?
そもそも、ゼンザブロニカの魚眼レンズさえあれば、そんな心配事をしなくても済んだのだ。
「コーワ6」の全周魚眼レンズのように、はるか数十年前に生産終了したものならいざ知らず、「ゼンザブロニカPS 35mm F3.5 フィッシュアイ」は、ほんの数ヶ月前には販売されていた現役であった。
しかも、店頭で手に取るカタログやタムロン/ブロニカのサイトには、このレンズがいまだに現行品として掲載されており、本当に生産終了の直後であると感じさせる。ほんの少し早ければ、普通に手に入れることが出来たはずなのだ。それがまた、後悔の念を増幅させている。
「まだどこかに残っているのではないか・・・?」我輩はふと、そう思った。以前、
雑文092「逃げ遅れたレンズ」で書いた時のように、まだどこかに逃げ遅れたものが日本のどこかにあるかも知れない。
ところが、いくら探しても手掛かりとなる情報はインターネットからは出て来ない。比較的ニーズの多いセミ判(645)のゼンザブロニカETR-Si用フィッシュアイレンズならば、在庫を持っている店はいくつか見付かった。確かにETR-Si用フィッシュアイは現行品であるから在庫があるのは当たり前かも知れない。しかし、それならば我輩の探しているゼンザブロニカSQ-Ai用フィッシュアイも、生産中止と同時に物が消えることは無かろう。生産中止と言えども、店頭在庫さえあればそれが捌けるまで販売されているはず。
恐らく、セミ判に比べてマイナーな存在の66判であるから、そのフィッシュアイレンズなど購入する者は滅多におらず、事実上の受注生産とされていたのだろう。そうであれば、生産終了後直ちに販売不能となったことの説明となり、またそのことは全国の販売店には在庫が無いという根拠にもなる。
実は、
カメラのキタムラでオンライン注文をして在庫無しと言われた後、ヨドバシカメラ経由でブロニカに問い合わせをし、メーカーにも在庫が全く無いという確認までした。ここまでやってダメならば、もう本当に手に入らないと悟った。
いくら金を積もうがダダをコネようが、存在しないものは存在しない。
それでも諦めの悪い我輩は、時々インターネットの検索エンジンで、微妙に検索キーを変えながら手掛かりになりそうな情報を探した。しかし検索でヒットするのは、何度やってもブロニカ・タムロンのサイトや外国のカメラショップのページだった。日本に無くとも外国には在庫があるらしい。
「クソ、日本メーカーの製品だというのに、なぜ日本国内では手に入らず外国では手に入るんだ!?」
やり場の無い怒りと虚しさ。
またいつものパターンではあるが、我輩は力が抜けて前のめりにバッタリと倒れ込んだ。
うつろな目で見える映像が、円形に歪んで見えるようだった。
外国のショップで買い物をするには、我輩にとって色々と障害がある。
何より言葉の問題が大きい。英語を訳すことは出来ても、英語を作文することが出来ない。仮に、大体の意味が相手に伝わったとしても、微妙な言い回しで思わぬ行き違いが起こり、それが元でトラブルとなることは十分予想される。海を隔てた外国とのトラブルは非常に面倒だ。
他にも、支払いはどのようにすれば最も良いのか、また、税関でどのような対応があるのかなど知らないことが多い。あるいは、我輩の思い付かないようなことで気を付けねばならないことがあるかも知れぬ。その時になって不都合が発覚し、そしてその対応を求められても、対応出来る内容ならば良いのだが・・・。
まあ、これらの心配事は、一度経験してしまえば何とも無いようなことかも知れない。ただ、無知というのは、人を大胆にさせる一方で人を臆病にもする。
少なくとも我輩は、トラブル無しで外国のオンラインショップを利用する自信が全く無い。
そういうこともあり、しばらくは日本国内に絞って相変わらず検索生活を送っていた。
「ゼンザブロニカ」ではなく「ゼンザノン」と入力してみたり、「PS35mm」ではなく「PS35ミリ」と入れてみたり。
あまり検索キーを簡潔にすると、関係の無い情報まで引っかかってしまい情報の取捨選択が大変。かといってあまりに検索キーを特定し過ぎると、ほとんどヒットせず情報が得られない。
やはり、国内では無理か。そもそも、国内でこのレンズを所有している者などおるのか!?
我輩は次第に外国のショップで購入することを模索し始めた。
今はインターネット上で様々な情報が得られる時代である。もしかしたら、外国のオンラインショップで買い物をした者の体験談などがあるかも知れない。適当にあれこれ検索キーを入れて探してみた。
するとその中に、「
New York Best Life.com」という輸入代行業者が浮かび上がった。
メニューの中に「輸入代行見積もりフォーム」というものがあり、買い物をしたいショップの該当ページURLを送信フォームにペーストして送れば良いらしい。
見積もりならば、とりあえずの手掛かりにはなろう。我輩としては、とにかく相談相手が欲しかった。
さて、肝心のショップはどれを選ぼうか。
改めて検索すると、いくつのショップが出てきた。
そんな我輩とは対照的にヘナチョコ妻は、我輩が散らかした梱包材を何とかしてくれと文句を言った。「男のロマンを理解せぬとは許せん!」とは思ったが、金を借りた弱みもあり、素直に梱包材の片付けを始めた。箱も潰し、まとめてゴミの日に出す。
その時、箱の底にある一つの封筒が目に付いた。
中を見ると、商品価格の記述だった。これは、税関に提示するための資料である。これが箱の底にあったため、係員に気付かれなかったのだと想像した。しかしなぜ底に?
答えは全く単純。
税関では、表に貼り付けられた宛名伝票を避けるため、箱を裏返しにして開封したのである。その証拠に、税関の封印テープが底に貼られていた。
「内箱を外箱から完全に出さなかったな。」
つまらないことで4日ほど浪費してしまったが、まあ、無事に届いたので良しとする。