2000/04/05
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カメラ雑文

[861] 2016年01月16日(土)
「ジャングルレンズ」


我輩は現在、フィルム撮影をやめてフルサイズミラーレスを使用中である(参考:雑文855)。
4,200万画素は、一度使い始めるとそれまでの1,600万画素がパソコン画面上であまりに小さく感じられて価値を感じなくなってしまった。

いや、元々デジタル画像に"価値"というものを感じていたわけではなかった。単に利便性(※)を感じていただけだった。何しろそれまでは中判フィルムというメインが存在していたのだから。
(※利便性=低ランニングコスト、即時性、先進性(フィルム機は新製品を望めない)等)

1,600万画素が果たして小サイズかどうかということについては、以前に書いた雑文を見れば理解出来よう(参考:雑文811雑文815)。
今は支障無いとは言っても、近い将来には必ず不足を感ずるようになる解像度であることはもはや確定事項。
10数年前にデジタル一眼レフカメラで撮った300万画素の画像は、今では等倍表示で画面中央に小さく表示されるのみ。当時は300万画素は高画質の代名詞だったと言うのに、まさかこんなことになるとは思わなかった。

中には「画像などその場限りの利用で十分」という者もいようが、そいつらはフィルム撮影時代のことを忘れているとしか思えない。昔撮ったフィルムを簡単に捨てられるか?

我輩は、少なくともメインカメラで撮るものについては、数十年先まで画像を遺そうとする気持ちを持っている。だからこれまで、費用と労力をかけて中判フィルム撮影を行なってきたのだ。もしその場限りの利用とするならば、手間(※)のかかる中判カメラを運用する気などとても起きなかったろう。
(※手間=機材重量やサイズの問題だけでなく、中判用魚眼レンズや中判用ティルトレンズなどのちょっと違う機材、特にマイナーなメーカーの機材を得ようとすれば果てしない努力が必要となることは以前の雑文にも書いた。)

ところがフィルム撮影をやめたことで、4,200万画素のデジタル撮影がメインに格上げとなった。そうなると、通勤カバンに常備する日常メモカメラも1,600万画素では足りなく思えてきた。いやむしろメモだからこそ、情報量は必要だろう。これまで、メモ撮影をして細かい文字が読み取れず困ったことは幾度もあった。

現時点では、高画素機は大枚をはたいて買った「α7RII」しか持っていないわけで、これを毎日持ち歩くのは抵抗があるが、少なくとも具体的に撮影の予定があればこのカメラを持ち出すしかあるまい。
しかしそれにしてもフルサイズ。カメラボディがコンパクトになろうともレンズはそれなりに大きい。もちろんフルサイズだから大きいとは単純には言えないが(※)、現時点で商品化されているレンズに関して言えば、大きいものばかりなのは事実。
(※中判用レンズでもNewMAMIYA-6用レンズのように35mm判よりコンパクトなものがある。もちろん分解能的に単純には比べられないが。)

我輩としては、ズームレンズでなくとも、「24mm F2.8」くらいのコンパクトな広角単焦点レンズがあれば嬉しいのだが、SONYのラインナップを見ると一番近そうなのは「28mm F2.0」。しかしこのレンズは少々全長が長く、カバンの中での収まりが悪そうに思う。実際に使ってみればそうでもないかも知れないが、試しに買うには中古でも5万円と少々値が張る。
困ったな・・・。

少ない選択肢の中で行ったり来たりと1週間ほど不毛な悩みを続けた挙句、APS-CサイズEマウント用のレンズを見てみると、コンパクトなものが多数あることに気付いた。
フルサイズもAPS-Cサイズも、マウントとしては同じなので物理的な装着に支障は無く、ただAPS-C用レンズとしてイメージサークルが小さいだけである。

フルサイズからAPS-Cサイズへのトリミングは当然ながら画素数を減らしてしまうが、フルサイズで4,200万画素ならば、うまくトリミングすれば2,800万画素くらいは確保出来そうだ。これまでのマイクロフォーサーズが1,600万画素であったことを考えると、メモ撮影の画素数アップという目的には適う。

もし今後、5軸手ブレ補正機能を持つ高画素APS-C機が現れれば、改めてそれをカバン常備カメラとして導入しようか。そうすれば、APS-C用レンズも引き続き使える。

以上の経緯で購入したのが、「SIGMA 19mm F2.8 DN」である。
候補としては、SONY純正でパンケーキタイプの16mmや20mmもあったのだが、APS-Cレンズということで低価格を第一に、そして描写性能の評判も加味して決めた。
何しろ、SIGMAのこのレンズは新品で1万5千円、中古で1万2千円。この程度の差額ならば新品のほうが良かろうが、それでも少しでも安くと、中古のほうを選んだ。

<SIGMA 19mm F2.8 DN>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
SIGMA 19mm F2.8

レンズを入手して早速「α7RII」で撮影すると、まずはAPS-Cサイズにクロップ(自動トリミング)された。それがデフォルト設定なので当然の結果。
しかし自動的な処理では、まだ使える余裕分が少しあるのではないかと思うし、あるいはもし正方形で画面を使いたい場合には、自動トリミングすると完全に無駄切りとなってしまう。

そこで、カメラの設定を変えて自動トリミング処理をOFFとし、イメージサークル外の四隅の黒いところまで写るようにした。
一見すると全周魚眼レンズで撮ったような雰囲気となるが、180度の広い範囲が写っているわけではない。単に四隅がイメージサークル外のせいで黒くなっているだけ。

<APS-C用レンズをフルサイズカメラで使用>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
APS-C用レンズをフルサイズカメラで使用
SONY α7RII/SIGMA 19mm F2.8/ISO100/Av=F2.8/Tv=1/1000sec.
[2016/01/17 12:20]

手動トリミングについては、撮影が終わってからRAW現像時にジックリと吟味しながらやれば良い。もし正方形の画像にしたければ、RAW現像画面でトリミング範囲をやり直し、改めてRAW現像するだけ。トリミングされるのは書き出されるJPEGのみで、元データのRAWには変化が無い。

さて、問題はその画質だが、入手直後に適当に室内で夕食の焼き魚などを撮りパソコンで見てみたが、どうも画面にキレが無い。ストロボを使っていないのでブレたかと思ったが、そこまで遅いシャッタースピードではないはず。
これはハズレのレンズだったか・・・?

しかし週末に植物園に行って撮る予定があったので、このレンズも使ってみることにした。
植物が対象なので主にストロボ撮影となるのだが、撮影した結果を見て驚いた。
まず、解像感が物凄い。中央に小さく写ったアブを等倍表示させると、思いの外クッキリと描写されている。これまでベイヤー機で撮影した画像は縮小処理してピクセルの目を詰めないと使えないと思っていたのだが、この描写ならば縮小せず等倍のままでも使えるかも知れん。

<等倍でも甘さが無い>
等倍でも甘さが無い
等倍でも甘さが無い
SONY α7RII/SIGMA 19mm F2.8/ISO100/Av=F4.0/Tv=1/60sec./FLASH
[2016/01/17 13:25]

これはカメラのせいか、それともレンズのせいか。
少なくともレンズを換えてそういう印象となったのだから、つまりレンズのせいなのだろう。しかしなぜ最初の室内定常光撮影ではキレが無かったのかは謎。ブレかピンボケのせいか?
曖昧な言い方になるが、ストロボ撮影との相性は良さそうに思う。

さて、撮影したRAW画像をトリミングするわけだが、我輩の使っているRAW現像ソフト「Silkypix」では、複数画像を一括でトリミング範囲設定可能なので効率は良い。もちろん他のRAW現像ソフトでもそれくらいは可能だろう。ただしそれだとカメラ内処理と変わらないので、改めて1枚1枚を見ながらトリミング範囲を調整した。

四隅の黒い部分が目立たない絵柄ではそれほど切り詰める必要も無いわけだが、そういう観点で見ると、今回撮影したものはほとんど全てトリミングそのものが不要に思える。何しろ、元々背景が暗くなるよう調整したストロボ撮影のため、四隅が黒くても違和感が無い。むしろジャングルの中でスポットライトを当てたかのようにドラマチックに見えるのだ。植物園の温室で撮ったとはとても思えない。
これは面白い。

<コチョウラン (※ノートリミング掲載)>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
コチョウラン
SONY α7RII/SIGMA 19mm F2.8/ISO100/Av=F6.3/Tv=1/50sec./FLASH
[2016/01/17 13:43]

<エクメア・フォスターズフェイバリット (※ノートリミング掲載)>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
エクメア・フォスターズフェイバリット
SONY α7RII/SIGMA 19mm F2.8/ISO100/Av=F10/Tv=1/125sec./FLASH
[2016/01/24 10:45]

<カトレア (※ノートリミング掲載)>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
カトレア
SONY α7RII/SIGMA 19mm F2.8/ISO100/Av=F2.8/Tv=1/125sec./FLASH
[2016/01/22 15:12]

<カトレア (※ノートリミング掲載)>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
カトレア
SONY α7RII/SIGMA 19mm F2.8/ISO100/Av=F2.8/Tv=1/125sec./FLASH
[2016/01/22 15:13]

<グズマニア (※ノートリミング掲載)>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
グズマニア
SONY α7RII/SIGMA 19mm F2.8/ISO100/Av=F6.3/Tv=1/125sec./FLASH
[2016/01/24 10:49]

これらの写真、もし周辺の黒いマスクが無ければ周囲が明るく見え、ジャングルの雰囲気は出ない。だからうまい具合に、画として成立している。
特に、最後の写真「グズマニア」については、円形の構図がイメージサークルにうまく合致しており、仕方無くAPS-C用レンズで撮って誤魔化したというよりも、うまく活用したものと言えるだろう。

何しろ、今回撮影したのはこのレンズだけではなく、ごく普通に写るフルサイズ用のレンズでも撮っていたのだが、APS-C用レンズの四隅の黒い写真のほうがドラマチックだったせいで、フルサイズ用のレンズで撮ったほうもわざわざレタッチ処理で四隅を黒く処理してしまうほど。

我輩は、画像を損なうレタッチは邪道と考え嫌うほうだが、このように画像のテーマとして我輩の思惑に完全に合致するものは否定しようがない。
いやAPS-C用レンズで撮った写真ならば、レタッチしたわけではなく素の状態。ある意味「文句はあるまい」と堂々としていられる。

今後、このAPS-C用レンズは、コンパクトなメモ撮影用として使うことに加え、「ジャングルレンズ」と名付けて植物撮影用にはメインとして使っていきたい。

<2016/01/27追記>
通常、APS-C用レンズはその焦点距離に約1.5の係数を掛けてフルサイズ判換算として画角の目安とする。だからAPS-C用で19mmのレンズならば、28mmレンズ相当と言える。
だがAPS-C用レンズであってもフルサイズカメラにてノートリミングで使うならば、表記通り19mmレンズの画角となろう。単純に、四隅のイメージサークルが足りないだけの話。
今回、この19mmレンズにて植物撮影を行った際、我輩としては撮り易い画角と感じた。手の届く範囲の植物撮影ならば、ズームレンズでなくともこのレンズでカバー出来よう。

ちなみにこのレンズ、SIGMA社長インタビュー記事によれば、5,000万画素機の解像度に耐えるよう設計してあるそうだ。どうりでこの描写なのか。
値段が安いわりにこの性能ならば間違いなく"買い"であろうが、今のところ定常光撮影では驚くような描写を得られていないのは気になる。まあそれでも普通の写りは得られているのだから問題は無い。
しかしピントリングが金属剥き出しというのはコストカットの影響か? 寒い日に撮影したのだが、ピントリングの手触りが冷たくて気持ちが悪い。多少値段が上がってもオーソドックスなゴム巻きとするべきだ。もしかしたら、打ちっ放しコンクリート壁のようなデザイン的狙いがあるのかも知れないが、例えばカメラのグリップ部にゴム巻きされているように、手の触れる部分には手当が必要。それが道具というもの。デザインを施す以前に、道具としての最低要件は満たすべきであろう。