[834] 2014年11月26日(水)
「根性ティルトからの軌跡」
現在、デジタルカメラが全盛の時代。
我輩もテーブルトップスタジオ撮影では、長らく66判フィルムをメインとしてきたものの、最近はデジタルカメラをメインとして使うようになった。
その理由として大きなものは、ティルト撮影の問題である。
ティルトは、大判カメラでは普通に使われる機能である。
なぜならば、フィルムサイズが大きいために長焦点気味のレンズを使うこととなり、レンズの被写界深度が浅くなるからである。それに加え、大判カメラは自動絞りや電気接点などの複雑な連動機構が無いので、単純にレンズボードを傾ければそれでティルトとなる。
一方、35mm判カメラや中判カメラでは、大判カメラほど被写界深度が浅くないものの、テーブルトップ撮影で撮るような小さな被写体を撮るには、最大絞りであっても被写界深度をハミ出すことも多い。
こういう時にはやはりティルト撮影の必要性を感ずる。
ただ、35mm判や中判でティルト撮影をするには高価な専用品を入手せねばならないし、カメラによっては専用品が用意されていなことも多い。
そこで我輩は、中高生時代に使っていた極貧技法「手写(てしゃ)リング」を応用して「根性ティルト」という手法を独自開発、テスト撮影にも成功した(参考: 雑文339)。これは、デジタルカメラだからこそ可能になった撮影法である。
なぜならば、当時はデジタル一眼レフのイメージセンサーは35mm判フルサイズよりも一回り小さなAPSサイズしか選択肢が無く、そのせいで期せずして35mm判フルサイズ用のレンズの大きなイメージサークルを使ってケラれずにティルト出来たからだ。
しかしながら、根性ティルト撮影は二度と同じ撮影が出来ないという欠点がある。手持ちでカメラとレンズの角度を保持しているため、ちょうど良いところで固定出来ないのだ。
ファインダーを覗きながら、手でレンズの角度を変えたり、身体を前後させたりして、ここぞというところでシャッターを切る。こんなことは撮影実験だけの話であり、実用には程遠い。
ところが最近、我輩はミラーレス一眼カメラであるマイクロフォーサーズを導入し、今ではデジタルカメラのメインとして使っている。
ミラーレスカメラは、文字通りミラーボックスが無く、そのおかげでフランジバックが一眼レフシステムに比べてかなり短い。それはつまり、一眼レフ用のフランジバックの長いレンズを、厚みのあるマウントアダプタを介して装着しても無限遠が出せるということである。
もちろん、一眼レフ同士であっても、フランジバックの微妙な差を利用して、例えばCanonEOS(フランジバック:44.0mm)のボディにNikonF(フランジバック:46.5mm)のレンズを使うなどマウントアダプタで装着可能な組合せもあるが、その場合はマウントアダプタの厚みはフランジバックの差分しか許されないため、かなり薄いものとなる。そうでなければ無限遠が出ない。
<CanonEOS-NikonF用マウントアダプタの厚み> |
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その点、ミラーレスカメラに一眼レフ用レンズを使うとフランジバックの差が大きいため、マウントアダプタには充分な厚みが確保できる。
下の写真は、NikonFマウントのレンズをミラーレス一眼のマイクロフォーサーズボディにマウントアダプタを介して装着した状態であるが、一見すると、マウントアダプタが接写リングのようにも見える。しかしこの状態で立派に無限遠が出せるわけだ。
<Micro4/3-NikonF用マウントアダプタの厚み> |
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このマウントアダプタの厚みを利用して、ティルト機構を組み込むことは可能であろう。
そこでインターネットで探してみると、ティルト機構を組み込んだものとして 雑文813でも紹介した「LENSBABYティルトトランスフォーマー」というものが見付かった。接続したレンズをボールジョイントにてティルトさせることが可能である。
これはミラーレス各マウントの対応があり、NikonFマウントの交換レンズをマイクロフォーサーズカメラに接続出来るものもあった。
価格は2万円程度だったので早速手に入れた。
<ボールジョイントのティルトアダプタ「LENSBABY」> (※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
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この「LENSBABY」を使って撮影した作例を下に2点挙げる。
どちらも素人目には何の変哲も無い写真だが、ジックリ見れば「よくここまで隅々ピントが合ってるなあ」と感心するであろう。
「LENSBABY」を使った作例: <南部十四年式> (※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
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OLYMPUS OM-D E-M5/Ai-Nikkor24mm F2.8(ティルトアダプタ装着)/ISO200/F5.6/1/250sec. |
「LENSBABY」を使った作例: <Ai-Nikkor 100-300mm F5.6> (※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
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OLYMPUS OM-D E-M5/Ai-Nikkor24mm F2.8(ティルトアダプタ装着)/ISO200/F5.6/1/125sec. |
当たり前だが、根性ティルト撮影に比べると安定した描写はさすが。
価格については、NikonやCanonの一眼レフ用のティルトレンズは20万円を下らないので、2万円で同じような写真が撮れるのは有難い。もちろん、ティルトを前提とした光学系ではないレンズを使うことで多少のクオリティ低下はあろうが、やはりこの価格差は大きい。
もしクオリティに問題があるならば、これはマウントアダプタ形式なので、ティルトしてもクオリティ低下の少ないレンズを探して装着するのも手である。
なお、「OLYMPUS OM-D E-M1」はペンタ部の前方向の出っ張りが物理的に干渉してこの「LENSBABY」は装着不可能であった。「OM-D E-M5」にはギリギリ装着可能だっただけに残念。
また、ボールジョイントでは縦横どちらかに限定して傾けるということが難しく、目盛りも何も無いので傾きの再現性に難がある。しかも使っているうちにボールジョイントの動きが段々渋くなってきて微調整も難しくなってしまった。
結局はNikon製の20万円以上もする本格的なティルトレンズを入手するしか無いのだろうか?
色々探してみると、マイクロフォーサーズに対応した韓国製のティルトレンズもあるようだったが、安いとは言っても10万円はする。
あるいはまた、根性ティルトに戻るか?
せめて、ティルトの動きがスムーズで、かつ縦横キッチリ限定してティルト可能なマウントアダプタがあればと思う。
そんな時、「KIPON」というティルトとシフトが可能なマウントアダプタに行き当たった。
これはティルトだけでなくシフトも可能で、きちんと目盛りも刻んである。ボールジョイントのように自由気ままに角度が変わらずキッチリ一方向のみしか動かないというのが良い。
価格も3万円程度と、手が届かぬ値段ではない。
しかしマウントアダプタの狭い筐体内にティルトとシフトの両方のメカニズムが入っている欲張りな仕様なのだが、肝心の強度は大丈夫だろうか。また、ティルトの動作は確実であろうか。
商品説明の写真で見ても機構がよく分からない。
ユーザーのWebサイトなどを見て回ったりなどして3日間悩んだ末、思い切って購入に踏み切った。
届いたものを実際に操作してみると、ティルト動作用のノブのように見えるのはロック用のネジで、単純にティルトの状態を固定するためのネジである。専用ティルトレンズのようにノブを回して角度を出していくものではない。
だから、このネジを緩ませると動きがフリーとなってしまい、マスターレンズの自重でゆっくりと下を向いてしまう。
<ティルト状態> |
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<シフト状態> |
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だが、ティルト動作がレール上の1方向にキッチリ限定されており、グリスが効いて滑らかに動くのは良い。また、目盛りと数字が刻んであるのでセッティングの再現性が良い。この目盛りは正確に角度を示すものかは分からないが、目安にはなろう。
<ティルト動作 (ティルト角0°)> |
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<ティルト動作 (ティルト角12°)> |
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もちろんローテート出来るので、それによってティルトの方向は自由に変えることが可能。
ローテート動作はかなり重いが、ロックが無いのでそれくらいでも良かろう。そして、一定角度でのクリックストップが付いている。
<ティルト/シフトの方向はローテート可能> (※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
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ただ残念なことに、「OM-D E-M1」だけでなく「OM-D E-M5」もペンタ部の出っ張りによる物理的干渉で装着出来ない。我輩の手持ちカメラの中ではPENシリーズの「E-P5」で使うしか無い。
<ペンタ部の出っ張りがあると装着不能> (※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
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それにしても、マウントアダプタとして限られた厚み部分にこれだけのメカニズムを組み込んであることには改めて感心した。実際に手に取るまで不安だったが、造りも金属の剛性感が感じられ強度的にも問題は無かろう。
以下、このティルトアダプタ「KIPON」を使って撮った作例写真を掲載する。
<作例 : テーブルトップスタジオ>
手元にあるNikkorレンズの中でティルト用として使えそうなレンズは、マイクロフォーサーズの標準域に相当する「Ai-Nikkor 24mm F2.8」であろうか。このレンズはボールジョイントの「LENSBABY」でも使っていたので、ティルト用としては馴染みがある。
このレンズを用い、今回のティルトアダプタで模型を撮影をしてみた。
この模型はいわゆる「食玩」と呼ばれるもので、7分割されたパーツをコンビニエンスストアなどで買い集めて合体させると1つの船体が完成するものである。しかし食玩と言いながら意外にも塗装など手が込んでおり、せっかくだからとティルト撮影した次第。
作例: <1/700スケール戦艦大和 (ティルトさせず)> (※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
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OLYMPUS E-P5/Ai-Nikkor24mm F2.8(ティルトアダプタ装着)/ISO200/F8.0/1/200sec. |
作例: <1/700スケール戦艦大和 (ティルト角12°)> (※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
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OLYMPUS E-P5/Ai-Nikkor24mm F2.8(ティルトアダプタ装着)/ISO200/F8.0/1/200sec. |
これを見ると、やはりティルト角0°のノーマル撮影では前後が被写界深度から外れてボケており、いかにも模型であるという感じがする。この模型は30cm程度の大きさなので、何も工夫せず撮ればこうなることは道理。
それに対し、ティルト角を最大として模型の傾きとピント面を合わせたものでは、先端部が少々流れているものの、全面にピントが合っており、パッと見た目でスケールが分からない。
この24mmレンズは銀塩時代から15年以上使っている馴染みのレンズなのだが、ふと、「思い切って他のレンズも試してみようか」と考え、我輩の未使用レンズ(参考: F3用アクセサリストック)の中から近似の焦点距離である「Ai-Nikkor 28mm F2.8」を使ってみることにした。
このレンズ、今更ながら24mmレンズよりもかなり寄れることに気付いた。
手元には「Micro-Nikkor 55mm F2.8」もあるが、そちらはマイクロフォーサーズで使うと35mm判換算で110mm相当と画角が狭くなるので、余程の接写が必要でない限りは28mmを使うことにしたい。
以下に、28mmで撮影した作例を掲載する。
作例: <Canon AE-1P (ティルトさせず)> (※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
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OLYMPUS E-P5/Ai-Nikkor28mm F2.8(ティルトアダプタ装着)/ISO200/F11/1/250sec. |
作例: <Canon AE-1P (ティルト角12°)> (※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
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OLYMPUS E-P5/Ai-Nikkor28mm F2.8(ティルトアダプタ装着)/ISO200/F11/1/250sec. |
ティルトしたものについては角度は最大の12°とし、レンズとカメラの上面のラインにピント面を合わせてある。そしてその面の上下方向に被写界深度を取るためにF11まで絞り込んだ。光源はクリップオンストロボなので、逆に言うと光量的にF11が限度ということでもある。
この撮影の狙いは、言うまでもなく100-300mmレンズの迫力を表現することである。そのためにはこれくらい極端な遠近感が欲しい。
ティルトしていないノーマル撮影についてもF11まで絞り込んであるわけだが、それでもレンズ先端に行くにしたがってピンボケとなっている。
28mmレンズでこの状態なのだから、同等画角で50mmレンズとなる35mm判や80mmレンズとなる中判カメラであればもっと大変だったろう。
さて、目一杯ティルトした撮影はそれなりに画質も低下する。何しろ光軸が傾いているのだから、デジタルカメラのイメージセンサーへの入射角やレンズの光学設計としても想定外な使い方であろう。その証拠に、画面端では色ズレが強く出ている。
そこで今度は、ティルト角を緩く設定して撮影した。絞り込みもF8と軽減してある。
作例: <Canon AE-1P (ティルトさせず)> (※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
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OLYMPUS E-P5/Ai-Nikkor28mm F2.8(ティルトアダプタ装着)/ISO200/F8/1/250sec. |
作例: <Canon AE-1P (ティルト角7°)> (※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
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OLYMPUS E-P5/Ai-Nikkor28mm F2.8(ティルトアダプタ装着)/ISO200/F8/1/250sec. |
先ほどよりもズームレンズの迫力が弱まったが、全体としてのバランスが良い。今では準クラシックカメラの「Canon AE-1P」であるが、こうして見ると最新カメラのようにも見えてくるのが不思議。もしかしたら、このカメラが現役時代の記憶が、この写真を見て甦ったかも知れぬ。
いずれにせよ、これくらいのティルト角であれば撮り易い。
<作例 : 博物館撮影>
博物館の展示物撮影は大抵の場合、低照度下での撮影となる。
被写界深度から外れるとその部分の展示物情報が得られないことになるので、なるべく全体にピントを合わせたいもの。しかしそのためには、レンズを絞り込むことになる。そうなると高感度が必要になるので、出来るだけ大きなイメージセンサーのカメラを使いたいわけだが、そうなるとますます被写界深度が浅くなり解決しない。
そこで今回、実験的にティルト撮影してみることにした。
ティルト撮影で画面の全てにピントを合わせることは出来ないが、狙ったものだけでもピントを合わせたい。
なお、28mmでは画角が狭いだろうと思うので、20mm(換算40mm)を使った。これも28mmと同様、未使用Nikkorレンズとなる。
作例: <博物館展示 (ティルトさせず)> (※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
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OLYMPUS E-P5/Ai-Nikkor20mm F2.8(ティルトアダプタ装着)/ISO200/F2.8/1/6sec. |
作例: <博物館展示 (ティルト角10°)> (※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
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OLYMPUS E-P5/Ai-Nikkor20mm F2.8(ティルトアダプタ装着)/ISO200/F2.8/1/6sec. |
この例では、2つの土偶にピントを合わせるべくティルトしてピント面を傾けたわけだが、左端の3体目の土偶がちょうどその延長上にあったため、そちらにもピントが合っていたのは面白い。
こうして2つの作例を見比べると違いがよく分かるが、ティルト写真だけを見せれば一般人ならばその特殊撮影には気付くまい。気付かないがきっちりと情報が写り込んでいる。そういうさりげないところが良い。
もっとも、一般人に2つの作例を見比べさせたならば、「1枚目のほうがボケているから良い」と言うであろうが。
次の作例も、典型的な情報優先描写である。
この場合、説明板も一緒に入れようと考え、このような構図とした。
作例: <博物館展示 (ティルトさせず)> (※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
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OLYMPUS E-P5/Ai-Nikkor20mm F2.8(ティルトアダプタ装着)/ISO400/F4.0/1/8sec. |
作例: <博物館展示 (ティルト角3°)> (※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
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OLYMPUS E-P5/Ai-Nikkor20mm F2.8(ティルトアダプタ装着)/ISO400/F4.0/1/8sec. |
いつもならばこういう撮影では説明板は別撮りするわけだが、今回はティルトアダプタがあるので、ピント面を傾けて撮影することで両方にピントを合わせることに成功した。
ピントの問題は開放絞りでも大丈夫かとは思ったが、レンズの収差を軽減させるために開放値から1段絞っている。
次は、奥行きのある展示物の撮影となる。
通常はこのような極端な撮影はしない。これは展示物の撮影というよりも、展示の様子を撮影したものである。沢山の銅鏡が並んでいる様を表現したかったのだが、実際に現場で見るとすれば1点だけ見るのではなく、舐めるように視線を流すものである。だから、写真でもそのような閲覧が出来るようティルト撮影した。
作例: <博物館展示 (ティルトさせず)> (※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
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OLYMPUS E-P5/Ai-Nikkor20mm F2.8(ティルトアダプタ装着)/ISO400/F4.0/1/6sec. |
作例: <博物館展示 (ティルト角10°)> (※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
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OLYMPUS E-P5/Ai-Nikkor20mm F2.8(ティルトアダプタ装着)/ISO400/F4.0/1/6sec. |
確かに、被写界深度の浅い写真には雰囲気があることは否定しない。しかし実際に博物館で眺めている状態を追体験出来るのは、ティルトしたもののほうであろう。
と言うのも、全面にピントの合った写真では、どこを見るのかを閲覧者側に委ねることになるからだ。
一方、一部しかピントが合っていない写真は、カメラマンの「ここを見ろ」というメッセージが強く込められたものと言える。それは、カメラマン視点として撮られた「作品」としての写真を観るということになる。
さて次は、ミニチュアをミニチュアらしく見せないようにするためのティルト撮影を行った。ここでは2点掲載する。
作例: <博物館展示 (ティルトさせず)> (※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
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OLYMPUS E-P5/Ai-Nikkor20mm F2.8(ティルトアダプタ装着)/ISO400/F4.0/1/15sec. |
作例: <博物館展示 (ティルト角5°)> (※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
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OLYMPUS E-P5/Ai-Nikkor20mm F2.8(ティルトアダプタ装着)/ISO400/F4.0/1/15sec. |
作例: <博物館展示 (ティルトさせず)> (※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
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OLYMPUS E-P5/Ai-Nikkor20mm F2.8(ティルトアダプタ装着)/ISO400/F4.0/1/15sec. |
作例: <博物館展示 (ティルト角5°)> (※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
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OLYMPUS E-P5/Ai-Nikkor20mm F2.8(ティルトアダプタ装着)/ISO400/F4.0/1/15sec. |
造形そのものを見れば、どちらもミニチュアであることは歴然としているが、やはり前後がボケている写真のほうはどうしてもミニチュア然とした印象がある。
それはそれで良いという考え方もあろう。しかしながら、ミニチュアというのは自分がその世界に入り込むためのものである。だからこそ、ミニチュア製作者は見えないところまでこだわって造形するのだ。
当然、そのミニチュアを見ている側も同じことが言えよう。小さな世界に細かい造形が施されているのを見付けると楽しいのは、やはり小さくなった自分をその場所に投影して見るからではないだろうか。
だからこそ、我輩はミニチュアを大きく見せるためにティルト撮影を行った。
ただ今回は、実験的に行った撮影である。実際に博物館でティルト撮影してみてどんなもんだろうかと確認したかった。
その結果、やはりティルト作業には時間がかかることを実感した。最適なティルトとローテートの角度を見付け、遠近それぞれのポイントを画面上で拡大してピント合わせを行う。一発で上手くいけば良いが、手持ち撮影ではなかなか難しい。
それでも数をこなしていくうち、被写体を見ただけで大体のティルト角が予想出来るようになり、また、拡大表示せずともピントの山が強調表示される「ピーキング機能」を使ってピント面の傾きが可視化出来ることも知った。
この後も鍛錬を重ねていけば、意外と実用的に使えるようになるかも知れぬ。
根性ティルトから始まった我輩のティルト撮影、これまではなかなか実用に乗らずに実験運用と試行錯誤の連続であった。
ここにきて、ようやく実用出来るかと期待している。
今年は、ラジオスレーブによるストロボ撮影とともに、我輩の写真活動に大きな転機が訪れたと言える・・・かも知れない(?)
<作例 : 逆ティルト>
さて最後に、ティルト撮影の中で一般ウケが良いと思われる逆ティルト写真を撮ってみた。
逆ティルトとはつまり、通常とは逆の方向にティルトを行い、前後のピンボケを積極的に強調させる手法。それは日常の風景をミニチュアのように見せる効果がある。要するにトリック撮影の類である。
改めて言うまでも無いが、適当に撮っただけのこだわりの無い写真である。
逆ティルトで撮った作例 (※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く) |
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OLYMPUS E-P5/Ai-Nikkor20mm F2.8(ティルトアダプタ装着)/ISO200/F4.0/1/8sec. |
皮肉なもので、我輩がマクロレンズを買う金が無かった中高生の頃、仕方無く手写リングで撮った時に量産された失敗写真そのもの。こんな写真を金を掛けて撮るとすれば滑稽としか言いようが無い。
あの頃は、こんな写真が現像されてきたら悔しかったがなぁ。
写真の楽しみ方は人それぞれというのは頭では理解するが、「ティルト写真」と言うと、こういう写真ばかりな風潮。我輩は好かん。
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