[653] 2009年02月14日(土)
「壁紙決定権を取れ」
我輩が家を建てたのは、3年半ほど前。
賃貸アパート時代に、階下の中国人らとのトラブルが絶えず、その勢いで家を建てることになった。正直言うと、そういう経緯が無ければ今でも賃貸アパートで暮らしていたかも知れぬ。
それにしても、自分自身が家を建てることになるなど、今考えても信じられないことである。それまでは、住宅ローンを抱えることについて漠然とした拒絶感があったのだが、その気持ちが一気に消え去ったのだ。あらためて、「勢い」というものの原動力には驚かされる。
ただし「勢い」とは言っても、家が建つまでには結果的に1年間かかった。
土地を探し、家の設計を建築会社と毎週のように打ち合わせたのち、ようやく建築が開始される。
問題は、設計の段階だった。
設計の打ち合わせには、約半年かかった。
こだわるところはこだわり、こだわらないところはこだわらない。このようなメリハリを付けたわけであるが、我輩一人で決める問題ではないため、どこかでヘナチョコ妻とのこだわりがぶつかることになる。
実は、夫婦の名義割合としては、ヘナチョコのほうが若干多い。つまり、ヘナチョコのほうが金銭的には強いということになる。だから、決定権もその割合分だけ強いのだ。
その象徴とも言えるのが、床板(フローリング)の色である。
床板には幾つかの色味があり、この決定についてはかなり揉めた。
我輩としては赤味のある色が好きなのだが(参考: 雑文639「QP CARD」)、ヘナチョコは地味な色を好む。
最初は、我輩の意見で押し通せるかと楽観していたのだが、意外にもこの点についてヘナチョコもこだわりを持っていたようで、結果的には辛うじて我輩の書斎のみを赤味の床板とすることで落ち着いた。色的には、我輩の書斎は四面楚歌というところか。
我輩の部屋だけは赤味の床板を死守した |
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けれども我輩には、絶対に譲れないものがあった。
それは、壁紙である。
「家を建てるなら、壁紙の色は白とする。」
我輩は、家を建てる必要も感じない独身の頃から、壁紙についてだけはこのように考えていた。
なぜならば、白い壁紙は室内撮影時に良いレフとなるのだ。
我輩は、室内では必ずストロボを使う。しかし、ストロボ光をそのまま直当てすると影が強く出てしまうため、バウンス撮影を行う。
もちろん、明るいレンズや高感度フィルム、そしてデジタルカメラを使えばストロボ無しでも撮れて、室内灯独特の雰囲気が出せるところが良いかも知れない。
しかしそれでは被写界深度が浅くなるし、色調整(フィルター補正やホワイトバランス調整)をしっかりやらなければ後で泣きを見る。また室内灯では意外に陰(影ではない)が強く出るし、ブレ発生率も高くなる。
浅い被写界深度や電球色の暖かみは否定するわけではないが、いつもいつもそのような写真で良いと思えるほどのシロウトでも無い。やはり写真は、キッチリと正確な色で写すのが基本である。それが出来たうえで、写真技法を加えれば良い話。
さて話を壁紙へ戻すが、白い壁紙はわりと一般的と言える。だから、我輩が何も主張せずとも自動的に白色に決まる可能性は高い。
しかし我輩としては、数多くある壁紙のサンプルから、演色性が良くクセの無いものを選定した。そして、リビングからトイレに至るまで全室共通の仕様として我輩の意見を押し通した(特に反対意見が無かったのは拍子抜けだったが)。
あれから3年半。
今思えば、あの決断は正しかった。手元にあるポジやデジタル画像を見ながらそれを実感している。
どの部屋で撮影するにも、クリップオンストロボ1つでキレイに光の回ったバウンス撮影が出来る。
例えば下の写真では、ストロボのストップモーション効果により、落ちる水滴がピタリと止まって写っている。左手による不安定な撮影のため、室内灯撮影だとブレは必至だが、ストロボ撮影ではブレの生じる余地が全く無いのが良い。
<クリップオンストロボでの撮影 (左手による不安定な撮影)> |
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また、さらに強力な光源であるモノブロックストロボを用いれば、被写界深度もかなり深くすることが出来、下に掲載した写真のような、接写に近い撮影でも簡単なセッティングで撮影可能となる。
<モノブロックストロボでの撮影> |
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さらに下の写真は、「昭和テレビジョン」という出来合いのジオラマであるが、ただ単にモノブロックストロボを天井に当てて撮っただけのものである。あまりに単純過ぎて"ライティング"などと言えるものではないが、それでもそこそこキレイに見えるのが白壁紙の威力と言える。
<モノブロックストロボでの撮影> |
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かなりの接写ながらも被写界深度が深いのは、やはりモノブロックストロボの大光量の成せる技。ミニチュア撮影で被写界深度が浅くなってしまうと、いかにもミニチュアっぽく写ることになる。だから、室内灯でこれを撮るのはかなり難しい。
やはり、写真を撮る者の家は、壁紙を白とするしかない。そのためにも、壁紙の決定権は絶対に奪われてはならないのだ。
壁紙は家のインテリアではない。撮影機材の一つである。
我輩は、この点を強調しておきたい。
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