[636] 2008年11月03日(月)
「赤城山」
我輩はこれまで「蔵王のお釜」や「草津白根山」、そして「吾妻小富士」と、火山地形の土地を訪れてきた。
火山は、地球のエネルギーをダイナミックな形で地表に痕跡を残すのが魅力的である。しかも、時が経てば水(河川)によって浸食されていく。その痕跡から想像する水の働きが興味深い。
火山活動による山体の形成、川による浸食・運搬・堆積。
特に川の働きは、大きなスケールから小さなスケールまでとてもよく再現されており、視覚的にも「全宇宙を貫く物理法則が働いている」という実感を持たせてくれる。恐らく、数十億光年離れた別の惑星でも、マグマや水が存在すれば(水が液体として存在するなら空気もあるはず)同じような営みが起こっているだろう。
人間が絶対に関われない遥か遠くの世界のことであっても、その様子を確定的に推測することが出来るのだ。
このように考えると、火山地形の荒野は、遥か昔の、あるいは別の惑星の地表そのものとも言える。
火山は比較的高所にあるし、地質的にも新しいことが多く、その結果植生が少ないことも好都合。
植生の少なさは自然を観察するには重要である。
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もちろん、植生などの生物やそれを取り巻く生態系も一つの自然の姿には違いない。生物の活動によって環境が変わるのも我輩は理解している。酸素やオゾン層の生成、そして石灰岩や石炭、鉄鉱石鉱床の生成には、生物の存在無くしてあり得ない。
しかしそうは言っても、目に見える形で生物が地上を彩り始めたのは、地球45〜46億年のうち、ほんの数億年でしかない。地球スケールで言うと、つい最近まで荒地が広がる静寂の世界だったのである。
やはり本当の意味で「自然」を語るには、地質に視点を置かねば何も始まらないだろう。緑の自然に目を向けるのであればその後である。さもなくば、本当の意味で自然(物理法則)を感ずることは出来ない。
ここで想像してみたい。
風と水の音しか聞こえない誰もいない世界を。
確かに存在していたはずの、遠い昔の遠い距離の世界を。
火山地形に行けば、そんな想像の世界を現実に触れることが出来る。
以上、能書きとしては長かったが、我輩が火山地形を好む理由を書いた。
我輩がこのような火山地形で写真を撮るのは、完璧に自分の興味対象を写真に定着させるための目的である。誰かに認められようとしてキレイな写真を撮るというような不純な動機のためではなく、パンチラ写真を撮る者のように純粋な気持ちで自分の要求だけに応える写真を撮りたい(参考: 雑文487「写真の価値」/ 雑文563「自己満足」)。
さて今回、「OLYMPUS OM-4」のマルチスポット測光についての信頼性を試すために、テスト撮影はぜひとも必要であろう。
テスト撮影にあたって、ある程度本番撮影を想定した使い方をしなければ意味が無いと考え、ならばと火山地形での撮影をする計画を立てることにした。
まあ、「新しい兵器が手に入ったので試し撃ちしたい」という意味合いもある。そしてどうせやるならば、射撃場での試し撃ちではなく、実戦を想定した使い方をしてみたい。
実戦を想定することにより、露出計の精度の確認だけでなく、携行性や操作性、その他の問題点は無いかということを洗い出す。そして問題点があるならば、それを何らかの方法でカバー出来るかどうかを検討することになる。
ただそうは言っても、行くべき火山地形の選定がなかなか難しい。
これまで何度か行った「蔵王のお釜(宮城県)」や「吾妻小富士(福島県)」のような遠い場所だと、費用・時間・疲労がかかり過ぎる。こういう場所に行くならば、労力を最大限に生かすためにも、例えば完璧に晴れるという確証も無くては出発すら出来ないほど。
しかしテスト撮影ならば、多少曇っていようが構わぬ。曇のために地味な写真になろうとも、露出計として問題無く運用出来るかという点を検証出来れば良いのだ。そういう目的ならば、なるべく距離の近い場所にしておきたい。
インターネット上で色々と情報収集したのだが、目的地が決まっていない状況の中で漠然と情報を探すことはなかなか難しい。
結局のところ、赤城山が自宅から現地まで3時間程度と比較的近く、火口湖もあるということで実戦に即した試し撃ちが出来そうに思う。
早速、直近の日曜日の早朝5時に、車に乗って家を出た。
途中でコンビニエンスストアに寄り、昼食として食べるための弁当を買う。
高速料金を低く抑えたいので、高速道路を走る範囲を限定した。ところが途中で複雑な分岐に惑わされて(工事中?)いつの間にか一般道に降りてしまった。結果的に予定よりもさらに安くなったと思う。
東京外環自動車道 |
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[Nikon P5100] 2008/10/26 05:37 |
赤城山のふもとから県道16号線の山道に入ったが、これがまた狭くて難儀した。
対向車が来るとすれ違いが大変。所々に設けてあるすれ違い用の場所でやり過ごせればいいのだが、九十九折り(つづらおり)の道のため、対向車の接近が直前まで判らないのだ。
それでもまあ、朝8時前ということで、すれ違いも3〜4台と少なかったのは幸いだった。
8時過ぎに小沼(この)の駐車場に到着。
外に出ると、少し肌寒い。上着を着てザックを背負った。
午前中のうちに駐車場に戻れるとは思うが、念のために弁当も持って行く。以前、吾妻火山登山時に弁当を置いて行ったため空腹に耐えねばならなかったことを思い出した。
また、家からぬいぐるみも1匹持ってきた。コイツは後に重要な役目を持つため、持って行くのを忘れると後悔を残す。
小沼(この) |
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[OLYMPUS OM-4/28mm] 2008/10/26 09:12 |
小沼は事前に写真で見たとおりの風景だった。
蔵王のお釜や吾妻火山の五色沼に比べると規模が小さいため、水際には簡単に降りることが出来る。ちょっとした公園という雰囲気で、登山という感じでもない。
水に近付いて覗いてみると、特に火口湖特有というような変わったものは見られなかった。全体を見渡しても、水の色は普通の湖沼の色である。
小沼(この) |
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[OLYMPUS OM-4/28mm] 2008/10/26 09:22 |
さて、さっそく新しく買ったOM-4を取り出してマルチスポット測光を行う。
スポットボタンを押すたびにピッと音がして光を拾って行く。その手応えがなかなか良い。
湖面のほうに降りて行くと、ひっそり感はなかなか。
もし2週間くらい前の紅葉の時期に来ていたら、もっと観光客が多くざわざわ感があったかも知れぬ。蔵王でも紅葉の時期はエコーラインはかなり渋滞していたことを思い出した。
それにしても冷える。風が冷たい。手袋があったほうが良かったか。
小沼は周囲を一周出来るという事前情報のため、道を探して歩いてみる。
ケモノ道みたいなものがあるのかと思ったが、意外にもきちんと整備された道があった。これならば登山靴ではない普通の観光客でも歩けそうに思う。
ただ、この日は寒いためか、この道ではそれなりに着込んだ登山者の出で立ちの者しか見かけなかったが。
歩いてきた道を振り返ったところ |
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[OLYMPUS OM-4/28mm] 2008/10/26 09:31 |
しばらく歩くと、お宮さんらしきものが見えてきた。
意外な風景だったためちょっとビックリしたのだが、まあ蔵王や一切経山とかに比べればまだ里山に近いということか。
湖畔のお宮さん |
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[OLYMPUS OM-4/28mm] 2008/10/26 09:41 |
さて、最初に水際に降りたところから見て対岸あたりまでやってきた。
するとそこには、なんと洪水吐(こうずいばき)があった。表向き、自然景観を残した火口湖だと思わせておいて、実はダム湖だということなのか。目で追って行くと、そこから水路が延びており山を下っていた。
洪水吐(こうずいばき) |
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[OLYMPUS OM-4/28mm] 2008/10/26 09:48 |
治水上必要な施設なのかも知れないが、正直言ってちょっと興ざめした。まさか、この辺りで見える風景についても「実は人工的な造形でした」という可能性もあるのか?
まあ、今回は試し撮りで来たのであるから別にいいのだが。
それにしても寒い。鼻水も出てきた。
手袋が欲しい・・・と思っていたら、実はあった。ハンドパペットのぬいぐるみである。これを手に装着すると暖かい・・・、いやそれは冗談。
実は、色の分かってるものを一緒に写真に写し、フィルムの色傾向を見るためやフィルムスキャナーの色調整の参考にしようと思ったのだ。出来れば彩度が高めのものが色の変化が分かり易いと思い、黄色いキリンに登場願ったのである。
黄色いキリンのハンドパペット |
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[OLYMPUS OM-4/28mm] 2008/10/26 |
湖を一周して来たところで、カメラのシャッターが切れなくなってしまった。
見てみると、ミラーアップ状態でシャッター幕は閉じている。シャッターボタンを押そうが、巻上げレバーを操作しようが、どうにも動かない状態。最初は故障したかと思ったのだが、どうやら電池が無くなったようだった。さすがにこの寒さで電池も弱くなったのか。
カメラに入っているボタン電池「LR44」を2つ取り出して手で暖めようとしたが、あいにく手のほうも冷たくなっている。
結局、予備の電池に入れ替えると生き返った。
OM-4は、チタンボディでなくても後期バージョンならば省電力タイプとなっているらしいが、このOM-4は前期バージョンのため電力消費は多めかと思う。
OLYMPUS OM-4 |
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[Nikon P5100] 2008/10/26 10:38 |
ところで実は、持参したフィルムの感度がISO100とISO200の2種類あり、100のほうを使い終わったため200のほうをカメラに装填した。当然ながら、カメラのほうもISO200にセットした。
ところがなぜか測光値が先ほどと変わらないように見える。念のためにデジタルカメラ「Nikon P5100」の感度設定をISO200にしてからその露出値で撮ってみたが、どうも露出オーバーに見える。
「なんかおかしいな・・・。」
改めてカメラのISO設定値を見てみたが、間違いなくISO200になっている。
もしかして、マルチスポットのポイントを見誤ったか? もしそうなら、我輩がマルチスポット測光を使いこなせていないことになる。そうなると根本的な問題である。マルチスポット測光機能を持ったカメラを作れと言っておきながらそれを使えないなど、笑い話にもならぬ。
結局、デジタルカメラの液晶表示が当てにならぬと無理矢理自分を納得させた。恐らく、フィルムのほうは現像すればうまく写っているのが判るだろう。心配はいらん。
さて、そろそろ駐車場に戻ることにした。もう、寒さは限界。駐車場に戻り、トイレで用を足して車に戻った。
環境には悪いとは思ったが、少しだけアイドリングさせてもらい手を暖めた。
時計を見ると、時間は11時。1時間ほど早いが昼食とした。
食後はエンジンを停め、席を倒して毛布を敷き横になって仮眠した。
こういうのはこの季節だから可能である。少し前までならば車内が暑くなり過ぎ、とてもじゃないが車内で寝ることは難しい。
1時間くらいして何となく目が覚めた。少しは疲れも取れたように思う。
またトイレに行き、今度は少し道を下って覚満淵というところに行ってみようか。
覚満淵の駐車場に車を停め、木道を歩いて行った。
木道から覗いて見たところ、足首が浸かる程度〜膝下くらいの水深だろうか。いつかそのうち消滅する湖という感じである。
現在は湿原化している状況で、湖の一生を垣間見るような気がした。
この覚満淵も周囲を一周できるルートがあり、さきほどの小沼よりも開けているせいか一般観光客も歩いていた。公園の散策路のような感じである。
覚満淵 |
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[OLYMPUS OM-4/28mm] 2008/10/26 13:34 |
それにしても、なぜかここでもOM-4での露出値がデジタルカメラのほうで確かめると明るく写る。本当にこれで良いのか?
そう思ってよくよくOM-4のほうを見てみたところ、なんと露出補正ダイヤルが+1の位置になっていた。これなら明るく写っても仕方無い。
しかしなぜ露出補正ダイヤルが動いたのか? OM-4を色々といじってみたところ、ISO感度を変えるとその操作は同軸の露出補正ダイヤルも動かす構造になっていることが判明。ズレた露出補正ダイヤルを戻さなかったことが原因であった。
そういった操作法は、後日OM-4の取扱説明書に書いてあるのを確認した。
さて、覚満淵を一周した後、そこから少し先にある大沼(おの)に行ってみることにした。
道の途中、「赤城公園」という広い駐車場があったので、ついでに寄ってみることにした。
赤城公園 |
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[OLYMPUS OM-4/28mm] 2008/10/26 13:55 |
そこにはほとんどクルマが停まっていなかったが、時々、観光バスが来てトイレ休憩している。
木々が邪魔ではあったが、一応、大沼が見渡せる位置にある公園のようだった。
さてそろそろ大沼へ・・・と思ったところ、山々に響く轟音が近付いて来る。こ、これは何なんだ??
しばらく様子をみていると、前の道路を珍走団(暴走族)がブォンブォンさせながら何台も走って行く。どれもこれも背もたれの部分が長くそびえており、珍走団であることは明らかだった。
思わずデジカメの動画機能で撮影したのだが、70〜80台くらいは走っていたように思う。一団が通り過ぎるまで他の車も待ってるしかない状態。
さすが群馬県であると実感した。
珍走団 |
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[Nikon P5100の動画撮影機能] 2008/10/26 13:59 |
珍走団が過ぎた後、大沼のほうに降りてみることにした。
公園を出てすぐ脇にちょっと細い坂があるのだが、車はみんなそこに入って行くのが見えたのでその後に続いて降りた。すると、大沼湖畔の土産物屋や食堂などが何軒も見えてきた。
大沼(おの) |
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[OLYMPUS OM-4/28mm] 2008/10/26 14:10 |
ただし土産物などは買う気も無く、ちょっとばかり風景を撮影してすぐに引き上げることにした。そろそろ家路についたほうがよさそうな時間である。
帰りはまた小沼の駐車場に行き、そこでトイレを済ませてから山を下る。
時間帯の問題なのか対向車が多く、細い県道16号の坂道は往生した。
それでも何とかふもとまで下り、市街地を通ったのだが、夕方の渋滞にハマッてしまいノロノロ運転。
3時間かかる距離を4時間かかって18時半頃自宅に到着。
それなりに疲れたが、やはり疲れの7割くらいが渋滞の疲れという感じがする。
さて、撮影した写真を早速ラボに出してみた。
すると、ほぼ全コマの露出が思い通りのものになっていた。露出補正ダイヤルのズレたものは残念ながら少し明るくなってしまったが、それ以外のものは完璧である。
あまりにも完璧過ぎて、スリーブを切り分けてマウントにセットする気力も無くなった。何しろ、いつもは採用コマだけ切り分けてマウントしていたのだが、今回は全コマをマウントする手間があるからな・・・。
以上、今回の新しい兵器「OLYMPUS OM-4」の試し撃ちとしての実戦投入を経験したわけだが、今回下記2点を教訓として得た。
(1)電池が切れるとミラーアップして動かなくなる
(2)ISO感度設定を変えると露出補正ダイヤルがズレる
これらはいずれも写真の成否に大きな影響を与えるものとして、本番撮影前に経験出来たことが有意義であった。
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