2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
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7.テーマ別写真
8.リンク
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カメラ雑文

[635] 2008年11月02日(日)
「OLYMPUS OM-4」

我輩は現在、中判撮影用の露出計として、デジタルカメラを使う方法と、マルチスポット測光で測る方法の2パターンを使い分けている。
両方とも、露出決定を行うには有用であるが、それぞれに長所・短所がある。それについて、下記にまとめてみた。

<デジタルカメラ測光法>
長所 短所
仕上りイメージがその場で分かる
ストロボ撮影でも問題無いばかりか、定常光とストロボ光の微妙なミックスでも何ら問題無くイメージを再現出来るため、ポラ切り感覚で使える。

撮影情報が残せる
測光の副産物としてデジタル画像も得られるため、その画像のExif情報が記録されることになる。また、マルチユースとしてデジタル画像が必要な時は、わざわざフィルムをスキャンしなくともデジカメ画像で足る場合もある。

露出計として使える機種と使えない機種がある
仮に露出計として使えるカメラを見つけ出しても、デジカメは製品寿命が短いため、カメラが壊れても同じ製品の買い替えが出来ないこと多い。そうなると新たにカメラの選定をせねばならない。露出計として作られてはいないため、後継機は露出計としての使い勝手が悪くなる恐れもある。

適正露光を見付けるまでが時間がかかる
撮影前に、設定値に応じてリアルタイムに液晶画面に反映される機種もあるが、たいていの機種は撮影するまでイメージが分からない。そのため、何度か撮影を繰り返して適正値を追い詰めるしか無い。

製品の耐久性が無い・起動が遅い
特にコンパクトタイプの場合、沈胴式のレンズが華奢で壊れ易く、取扱いに注意を要する。また起動が遅く撮影の邪魔にすらなる。

<マルチスポット測光法>
長所 短所
自分で重点部分を選択出来る
画面上のどこを再現したいかという意志を以て光を拾うことが出来る。いわば手動の多分割測光である。
何を考えどこを測っているか解らないコンピュータまかせのブラックボックスよりも確実性を持つ。

仕上りイメージとしては確認出来ない
デジタルカメラとは違い、その場で映像を確認出来ないため、測光値から仕上りイメージを想像出来るようになるには慣れが必要。色の出具合などは微妙な露出によってかなり変化するためである。定常光とストロボ光とのミックスの場合は特に難しい。


対応製品が少ない
現行品としては、MINOLTA製品を継承したKenkoの単体露出計か、あるいはCanon EOS-1D系デジタルカメラしか無い。
対象範囲を中古まで広げると、「MINOLTA FLASHMETER VI」、「カード機能を持つMINOLTA αシリーズ」、「OLYMPUS OM-3/OM-4系」、「Canon T90」、「Canon EOS-3」、「Canon EOS-1系」と増えるが、操作性の良いものや中古程度の良いものは限られる。

この比較は、項目の数の多さを比較するものではない。たった一つの短所が致命的だったり、同じくたった一つの長所が決定的だったりすることも有り得るため、内容を一つ一つ吟味する必要がある。

我輩としては、仕上がりイメージが掴めるデジタルカメラ測光法を全面的に採用したいのだが、短所が思いのほか足を引っ張るのでそうするのも難しい。
それに、永遠に最適な機種を追い求めて金策に悩んでいる自分自身に気付いてバカバカしくなってきた。

一方、マルチスポット測光では、「MINOLTA FLASHMETER VI」は基本的に入射光式露出計であるため、スポット測光とメモリー動作の操作性が良好ではない。
それに代わるものとしてマルチスポット機能を有するカメラ「MINOLTA α-707si」を使ってはいるが、少々ボタンの反応が悪い。プラスチックの擦れるギシギシ感としなりが強くて操作しづらい。そもそもカメラの図体がデカくてゴロゴロする。

もっと洗練された、安心感のある操作性を持つマルチスポットカメラは無いのか?
我輩が測光に求めるものは、「露出値に関して安心感を得る」ということに他ならぬ。

そんな背景があり、先日の雑文634「見えない独占市場」にて、マルチスポット測光機能搭載カメラの選択肢の少なさについて書いた。現状、マルチスポット測光機能を有するカメラは、デジタルカメラのCanon EOS-1D系のみである。

この状態を打破すべく「次のカメラにはマルチスポット測光機能を搭載しろ」とNikonへ勧告したわけだが、NikonはRGBセンサーのマルチパターン測光に自信を持っているようであるから、今さらマニュアル色の強いマルチスポット測光など手を染めるとは考えにくい。

「いっそのことマニュアル的に露出を決めるのは諦め、Nikonが自信を持っているRGBマルチパターン測光に任せてみるか」とも思った。本当に信頼出来るならば、難しいことを考えずにカメラの言う通りにすれば楽かも知れぬ。

いや待てよ、我輩が現在使っているデジタル一眼レフはNikon製の「D200」である。
これこそ、1005分割RGBセンサーを搭載したマルチパターン測光を行う、まさにそのカメラだった。

しかしこれまで2年ほどD200を使ってきたが、正直言って、D200の露出計は当てにならない。どうも露出アンダーが過ぎる。もしかしたらこの個体の不具合かも知れないが、Nikonのデジタル一眼レフは白飛びを恐れてこのようにチューニングされているのではないかと思ったりもする。

そもそもデジタル画像の場合、少々のアンダー露出の画像はレタッチで調整可能だが、白飛びが少しでもあるオーバー露出の画像はレタッチが効かない。いったん白飛びした部分はいくら暗く調整しようとも、階調を失ったベタ状態は回復不可能。
だからD200では、白飛びをさせないよう、極端に言えば"常にハイライト基準測光している状態"にしたのかと想像する。

そう言えば、背面液晶表示もそれに合わせるかのように明るく表示される。だから、液晶表示を目安にしてマニュアルで露出値を決めると、完全な露出アンダーの写真が出来上がることになる。バックライトを暗く調節しようとも単純に透過する光の輝度が低くなるだけで、そもそもの液晶階調が白めに表示しているのだから、見た目の"露出感"に変化は無い。

もしNikonの方針として、デジタル一眼レフカメラをこのようにチューニングしているのならば、他社のデジタル一眼レフを選ぶか、あるいはいっそのこと、フィルムカメラのほうに目を向けてみるか。
フィルムならばレタッチが効かぬゆえ、暗めのチューニングをしてしまうとそれこそ露出アンダーの写真しか生まない。だから、フィルムカメラのほうが写真としての露出は正確だろうと勝手に推測する。

Nikonの最新のフィルムカメラと言えば「Nikon F6」ということになる。
「Nikon F6」については、以前雑文511「あれは本当にNikon F6だったのか」で触れただけであったが、ここに来て急に購入対象になったのは自分でも驚いた。
しかし、フィルムカメラ最後のフラッグシップゆえに、購入動機さえ生まれれば全力で関心が向く。

ただそうは言っても、現代のフラッグシップカメラだけに価格もまた高い。まさにデジタルカメラ並みである。
中古でも探してみたのだが、安くともボディのみで10万円だった。レンズを揃えると15〜20万円は必要だろう。もちろん、我輩はNikon用レンズは数多く所有しているが、それらのほとんどはマニュアルフォーカスレンズであり、そうなるとマルチパターン測光が活かされないため、F6を導入した意味が無くなってしまうのだ。
また当然ながら、D200に装着しているAFレンズはAPSサイズ用のため、そもそも問題にもならぬ。

さらに、インターネット情報を見ていくと、F6であっても逆光のシチュエーションには弱いらしい。Nikonによれば、逆光らしさが出るようにしてあるとのこと。なんだ、それならば他のカメラと大差無いじゃないか。アホらしい。
結局、「Nikon F6」との縁はその時点で断ち切れた。

考えてみれば、いかに優秀な多分割測光であろうとも、仮に人工知能を持ったカメラがあったとしても、そのカメラが出す露出値が自分自身の意図と同じとは限らない。そのことは雑文111「適正露出は1つではない」にも書いた。
やはり、どうしてもマルチスポット測光機能を有するカメラが無くてはならぬ。

そうなると、選択肢は下記のとおり。

Canon EOS-1D系
デジタル画像が残せるという利点は大きいものの、ネックは価格の高さとボディの大きさ。それに、マルチスポット測光の操作性は不明。
Canon EOS-1系
中古での価格は安いが、やはり大きさがネック。EOS-1D系と同様に、マルチスポット測光の操作性は不明。
Canon T90
古い電子カメラのため信頼性が不安。シャッターの不調もよく聞かれる。スポット測光には切り替え操作が必要。
OLYMPUS OM-3/OM-4系
OM-4系はコンパクトで、マルチスポット測光にも定評がある。しかし現代的なズームレンズがあまり無い。また、OM-3はプレミアム価格のため論外。
カード機能を持つMINOLTA αシリーズ
707si以外のαでも、あまり操作性の良いカメラは無い。むしろ今使っている707siがまだマシと言えるか。

結局のところ、携帯性を考えると小型のOM-4しか選択肢は無い。
それに、OM-4は新品で販売されていた時からマルチスポット測光の操作性の良さには定評があった。マウント部のシャッターダイヤルが気に入らないが、マルチスポット測光ならば絞り優先AEで使うことになろうから、あまり意識することも無いか。
ズームレンズの少なさは、いっそ広角レンズだけで割り切ることにする。その分、スポットエリアの調整が難しくなるが、念のために50mmレンズでも買い足しても良かろう。

中古相場を見てみると、2万円くらいからあるようだ。チタンボディでも3万円から出物がある。
安いことは安いが、それでも手持ちの金が無いため、家計から出してもらうように交渉し、何とか5万円ほどの予算を獲得した。名目は豚児撮影用としての露出計用途。このカメラを活用すれば、露出ずらしをすることなく決め撃ちが出来るため、フィルム消費量が1/3になると説得したのである。

さて、狙うはOM-4と広角28mmレンズ、標準50mmレンズであるが、ボディはどうせならばチタンのほうが良かろう。チタンボディならば節電回路を搭載し、電池消費も抑えられるとのこと。

しかしネット上で探してみると、グリップの付いていないボディがかなりある。グリップ無しではホールドしにくい昔ながらのボディ形状のため、やはりグリップは欲しい。
と言ってもグリップ単体での入手は難しく、ネットオークションでも5千円前後、出品者によっては8千円などという値も付いている。グリップ単体でこれほど払うならば、むしろ2万円でグリップ付きのOM-4を買ったほうが得であろう。
チタンボディは、それとは別にバックアップとして購入することにした。少なくともグリップが1つあれば、2台で共用出来る。

グリップ付きOM-4ボディのほうは、マップカメラにて2万円で購入。ペンタ部にアタリがあるが、動作に問題無ければそれでいい。
28mm広角レンズはカメラのキタムラで8千円で購入。程度はなかなか良い。
携帯性を考えると40mmパンケーキレンズも欲しかったが、相場が高く新品時の価格を超えて5〜6万円もするため断念。50mmF1.8をネットオークションで5千円にて入手した。

さてチタンボディのほうは、ネットオークションで幾つかあったが、白ボディの50mmマクロレンズ付きというのが目に止まった。
見つけた時は2万円台であったのだが、我輩が入札して最終的に31,500円で落札した。ボディ単体の値段ではなくマクロレンズ付きなのだから安く手に入ったと言える。
ただ、全体の予算が少しオーバーしたのは残念。

OLYMPUS OM-4/OM-4 Ti
OLYMPUS OM-4/OM-4 Ti

モノが揃って、改めてカメラを操作してみたが、まず第一に、ファインダーがクリアで見易い。これには驚いた。
小さなペンタ部からは想像出来なかったため、意表を突かれた。

それから、やはりグリップの有り無しの違いは大きい。
普段使う予定のOM-4に付けておき、それが故障すれば予備のチタンボディに付け直すことにする。

OLYMPUS OM-4
OLYMPUS OM-4

OLYMPUS OM-4 Ti
OLYMPUS OM-4 Ti

さてスポットボタンについては、よくあるボディ背面にではなく軍艦部にあるため押し易いのが良い。シャッターボタンの近くにあるため、同じような感覚でボタンが押せる。もちろん、シャッターボタンとは大きさが異なるため、間違えることも無い。

スポットボタンを押せば、直ちにスポットモードになり、その状態から何度もスポットボタンを押せばマルチスポット測光になる。モードを切り替える必要も無く、とても使い易い。しかもスポット測光するたびに小さな電子音がピッと鳴るので動作のフィードバックも確実。

また、測光値のメモリーやメモリーのクリア操作はシャッターボタン周りのレバーで行う。こちらも操作すると電子音が鳴り、しっかりした手応えのあるレバーのため使い易い。

軍艦部のスポットボタンが特徴的
軍艦部のスポットボタンが特徴的

ところで、OM-4Tiに付属していたレンズ「ZUIKO Macro 50mm F3.5」について、一見状態が良さそうに見えるのだが、唯一、絞り羽根が油濡れしているのが難点だった。これはネットオークションの状態説明として記述は無かった。

ZUIKO Macro 50mm F3.5
ZUIKO Macro 50mm F3.5

現時点では動きに問題は無さそうだが、そのうち羽根が固着して動作不良、つまり露出の過不足が起こってしまう恐れがある。
クレームを出そうにも、取引そのものが無かったことになりOM-4Tiそのものまで失っては困る。何しろ、このレンズが欲しくて落札したのではないのだ。

結局、ダメ元でレンズを分解し絞り羽根を清掃することにした。
絞り羽根1枚1枚をバラして洗浄出来れば一番確実なのだろうが、我輩の技術では再度組み上げるのは難しかろう。と言うのも、実は同じくOLYMPUSのPENーFTの広角レンズの絞り羽根をバラしたことがあり、結局は自分で組み上げることは出来ずに修理に出した苦い経験がある。
だから今回、絞りユニットに到達するところまでの分解にとどめ、その状態で油を拭き取る程度で済まそうと思う。

絞りユニットの前後はレンズで挟まれているため、前部と後部それぞれに分解作業が必要となろう。
まずはマウント側から外していった。

少しずつ構造を見ながら分解していくのだが、不用意にバネなどが外れてしまうと、元々どういう状態だったかが分からなくなるため慎重さが必要。
そうしてようやく後部から絞り羽根に到達出来た。
細い棒の先にティッシュペーパーを巻いて絞り羽根を拭いてみたが、絞り羽根を動作させるとまた油が付着する。絞り羽根が重なっている部分までは拭けないのが原因か。それに、絞り羽根が待避する部分にも油が溜まっているだろう。
全体の油を拭ければ気分もスッキリするのだが・・・。

何度か拭いても完全に絞りがキレイになることは無かったため、あるところで見切りを付けてレンズを組み上げた。
幸いにも、レンズは元通りに組み上がった。

次はレンズ前部からの分解。
こちらも慎重に作業を行ったのだが、思ったほどの苦労も無く絞りユニットに到達した。絞り環とレンズ前群がスッポリ抜けたのだ。
同様にティッシュペーパーで拭いたのだが、やはり完全には拭ききれない。仕方ないのでこちらもある程度の見切りを付けて元に戻した。

レンズ前部から絞り環とレンズ前群を抜いたところ
レンズ前部から絞り環とレンズ前群を抜いたところ

改めて絞りを動作させてみたが、見た目上、わずかに絞り羽根に油のスジが見えるが、これくらいならば大丈夫だろう。
ところが次の日にもう一度見てみると、油がまた大量に付着した。やはり奥の方にある油が時間とともに滲んでくるのだ。

再び前後を分解して拭いてみた。
今度は2度目であるから、分解も早い。このレンズの仕組みもだんだん分かってきた。
「もしかしたら、完全分解も出来るかも知れんな・・・。」

前部を分解した状態でジックリと構造を見てみた。
OLYMPUSのレンズは先端に絞り環があるため、その動作を絞りユニットまで繋げるようになっている。その仕組みは理解した。
次に、マクロレンズ特有の長いヘリコイド移動があるが、そのための長い連動棒の位置関係も理解した。
また、レンズ後部からは何を固定しているのか分からないビスがあったが、実はこれは絞りユニットを裏から固定しているものということが分かった。

そこで思い切って、絞りユニットを外してみることにした。
うまくいくかどうかは分からなかったが、連動部を外し固定ビスを外すと本当にユニットが外れた。ここまで来たら、もう後戻り出来ない。ユニットがどのようにレンズにハマるのかは後で考えるとして、とにかく絞り羽根を洗浄するのが先。

絞り羽根は薄く細かいパーツだが、慎重に外して石けん水で油を洗い流した。支持体のほうもかなり油で濡れていたため拭き取った。新品で組み上げる際に注油し過ぎるということも考えられないし、なぜこのようになるのかは不明。
いずれにせよ、根本から油を絶ったことで気分も晴れ晴れスッキリする。

絞りユニットを取り外し絞り羽根をバラす
絞りユニットを取り外し絞り羽根をバラす

キレイになった羽根を再度組み上げ、ユニットを元通りにした。
ユニット単体での動作を見てみたが、何ら問題無く動いている。これならばもう油濡れは再発することはあるまい。

洗浄した絞り羽根を組上げ動作を確認
洗浄した絞り羽根を組上げ動作を確認

絞りユニットのレンズへの取り付けは1度は失敗して絞りの連動機構が不完全な状態で組み上げてしまったが、再度分解して組み直すことで動きは完璧となった。もはや、この「ZUIKO Macro 50mm F3.5」についての分解修理に不安は全く無い。
少しずつ分解・組み上げを繰り返しながら深部まで到達したのが良かったと思う。

さて、次回はこれらのOMシステムを使って試し撮りをしてみようと思っている。
マルチスポット測光機として、操作性は良いのか、測光の信頼性はあるのか、その他様々な問題点を実戦投入で洗い出しする予定。