この比較は、項目の数の多さを比較するものではない。たった一つの短所が致命的だったり、同じくたった一つの長所が決定的だったりすることも有り得るため、内容を一つ一つ吟味する必要がある。
我輩としては、仕上がりイメージが掴めるデジタルカメラ測光法を全面的に採用したいのだが、短所が思いのほか足を引っ張るのでそうするのも難しい。
それに、永遠に最適な機種を追い求めて金策に悩んでいる自分自身に気付いてバカバカしくなってきた。
一方、マルチスポット測光では、「MINOLTA FLASHMETER VI」は基本的に入射光式露出計であるため、スポット測光とメモリー動作の操作性が良好ではない。
それに代わるものとしてマルチスポット機能を有するカメラ「MINOLTA α-707si」を使ってはいるが、少々ボタンの反応が悪い。プラスチックの擦れるギシギシ感としなりが強くて操作しづらい。そもそもカメラの図体がデカくてゴロゴロする。
もっと洗練された、安心感のある操作性を持つマルチスポットカメラは無いのか?
我輩が測光に求めるものは、「露出値に関して安心感を得る」ということに他ならぬ。
そんな背景があり、先日の
雑文634「見えない独占市場」にて、マルチスポット測光機能搭載カメラの選択肢の少なさについて書いた。現状、マルチスポット測光機能を有するカメラは、デジタルカメラのCanon EOS-1D系のみである。
この状態を打破すべく「次のカメラにはマルチスポット測光機能を搭載しろ」とNikonへ勧告したわけだが、NikonはRGBセンサーのマルチパターン測光に自信を持っているようであるから、今さらマニュアル色の強いマルチスポット測光など手を染めるとは考えにくい。
「いっそのことマニュアル的に露出を決めるのは諦め、Nikonが自信を持っているRGBマルチパターン測光に任せてみるか」とも思った。本当に信頼出来るならば、難しいことを考えずにカメラの言う通りにすれば楽かも知れぬ。
いや待てよ、我輩が現在使っているデジタル一眼レフはNikon製の「D200」である。
これこそ、1005分割RGBセンサーを搭載したマルチパターン測光を行う、まさにそのカメラだった。
しかしこれまで2年ほどD200を使ってきたが、正直言って、D200の露出計は当てにならない。どうも露出アンダーが過ぎる。もしかしたらこの個体の不具合かも知れないが、Nikonのデジタル一眼レフは白飛びを恐れてこのようにチューニングされているのではないかと思ったりもする。
そもそもデジタル画像の場合、少々のアンダー露出の画像はレタッチで調整可能だが、白飛びが少しでもあるオーバー露出の画像はレタッチが効かない。いったん白飛びした部分はいくら暗く調整しようとも、階調を失ったベタ状態は回復不可能。
だからD200では、白飛びをさせないよう、極端に言えば"常にハイライト基準測光している状態"にしたのかと想像する。
そう言えば、背面液晶表示もそれに合わせるかのように明るく表示される。だから、液晶表示を目安にしてマニュアルで露出値を決めると、完全な露出アンダーの写真が出来上がることになる。バックライトを暗く調節しようとも単純に透過する光の輝度が低くなるだけで、そもそもの液晶階調が白めに表示しているのだから、見た目の"露出感"に変化は無い。
もしNikonの方針として、デジタル一眼レフカメラをこのようにチューニングしているのならば、他社のデジタル一眼レフを選ぶか、あるいはいっそのこと、フィルムカメラのほうに目を向けてみるか。
フィルムならばレタッチが効かぬゆえ、暗めのチューニングをしてしまうとそれこそ露出アンダーの写真しか生まない。だから、フィルムカメラのほうが写真としての露出は正確だろうと勝手に推測する。
Nikonの最新のフィルムカメラと言えば「Nikon F6」ということになる。
「Nikon F6」については、以前
雑文511「あれは本当にNikon F6だったのか」で触れただけであったが、ここに来て急に購入対象になったのは自分でも驚いた。
しかし、フィルムカメラ最後のフラッグシップゆえに、購入動機さえ生まれれば全力で関心が向く。
ただそうは言っても、現代のフラッグシップカメラだけに価格もまた高い。まさにデジタルカメラ並みである。
中古でも探してみたのだが、安くともボディのみで10万円だった。レンズを揃えると15〜20万円は必要だろう。もちろん、我輩はNikon用レンズは数多く所有しているが、それらのほとんどはマニュアルフォーカスレンズであり、そうなるとマルチパターン測光が活かされないため、F6を導入した意味が無くなってしまうのだ。
また当然ながら、D200に装着しているAFレンズはAPSサイズ用のため、そもそも問題にもならぬ。
さらに、インターネット情報を見ていくと、F6であっても逆光のシチュエーションには弱いらしい。Nikonによれば、逆光らしさが出るようにしてあるとのこと。なんだ、それならば他のカメラと大差無いじゃないか。アホらしい。
結局、「Nikon F6」との縁はその時点で断ち切れた。
考えてみれば、いかに優秀な多分割測光であろうとも、仮に人工知能を持ったカメラがあったとしても、そのカメラが出す露出値が自分自身の意図と同じとは限らない。そのことは
雑文111「適正露出は1つではない」にも書いた。
やはり、どうしてもマルチスポット測光機能を有するカメラが無くてはならぬ。
そうなると、選択肢は下記のとおり。