"だがちょっと待って欲しい"
上記の言葉は、某新聞社がコラム欄で多用されるフレーズとして有名である。
世の中の風潮に対して異を唱え、コラムニストが自身の主張割り込ませるために使う、非常に都合の良い言葉である。
我輩は今回このフレーズを借り、本雑文にてコラム風にまとめてみようと思う・・・。
NikonとCanonから、ビデオ撮影可能なデジタル一眼レフカメラがそれぞれ登場した。
この話題については以前から書いているのだが、スチルカメラユーザーとして見ればビデオ撮影機能など、カメラを買い換えるまで使わないような、いわゆる"おまけ機能"だという認識が正直なところだろう。「そんなムダな機能を入れるくらいならば、例えばマルチスポット測光機能など入れてくれ」という話も出よう(それはそれで賛否両論あろうが)。
そもそも、現段階ではビデオ撮影中のAFが使えないとか、長時間撮影が出来ないとか、他にも様々な問題点もあるようだ。
だがちょっと待って欲しい。
我々は、こういったカメラの将来性という小さな芽を摘み取らぬよう、暖かく見守ることが必要ではないだろうか。
いかに使いづらいとはいえ、従来のアマチュア向けビデオカメラでは到底撮影不可能な映像が撮れる可能性を持っていることは事実。
ビデオ撮影機能が否定されない限り、技術的問題点も代を重ねることによって改良されていくことだろう。
我輩がこのように主張するのも、もちろん理由がある。
現在我輩は、ビデオ撮影及び編集作業をする機会を持つ。
かつては、ビデオはやらないと決めていたのであるが、状況変化のため、やむを得ずやることになってしまった。このことは
雑文328にも書いた。
ここで我輩は、「どうせやるなら本格的にやろう」という気になった。
元々我輩は凝り性の性格であるため、生半可にやるだけ疲れにしかならぬ。趣味として突き詰めるからこそ、苦労がやりがいに昇華するのだ。
そのため、まずはビデオ関連の本を買い、編集のイロハを勉強した。
この内容は基本中の基本というものであり、テクニックと呼べるようなものではない。しかし基本を知らねば、自分には何が必要で何が足らないかということが分かるまい。
まず幸運だったのは、凝った編集がパソコン上で行える時代になったということだ。
一昔前ならば、凝った編集作業は高価な機材を必要とした。そして、そういった機材的な限界がアマチュアっぽさを隠せない一因だったのだ(例えばタイトル文字のジャギーや稚拙なエフェクトなど)。
それがパソコン上では、タイトルも様々な書体が使え、自由に位置やタイミングを指定出来るし、そもそもソフトウェアの入れ替えでどうにでもなる。ソフトウェアの値段も1万円前後と、専用機材に比べれば断然安い。
ところが問題は撮影機材のほうだった。
ビデオカメラもデジタル化されパソコンとの親和性も向上したものの、撮影機能については我輩の求める製品が無いのである。
と言うのも、ビデオカメラは一般ユーザー向けの機材とプロ向け(業務用と言うべきか)の機材とで完全に二極化しているのだ。
一般的なアマチュア向けビデオカメラとは、「AFのみMFなし」、「露出固定不可能」、「ズームは電動のみ」、「レンズ交換不可能」というもので、基本的にはカメラ任せで使うことが前提となっている。
多少の高級機ではあってもこの枠内から外れることはあまり無い。オート機能を解除出来たとしても、とても実用出来るような使い易さではない。
もしこの制約から解放されたくば、業務用としても使える100万円クラスのタイプか、あるいは肩乗せタイプのそれこそ数百万円もする本当の業務用にするしか方法は無く、実質的には、趣味の撮影で凝った撮影をしようにも不可能と諦めざるを得ない。
スチルカメラの場合、フィルムカメラは除外してデジタルカメラに限って見たとしても、今や5〜6万円クラスのビギナー向けデジタル一眼レフカメラですら上記縛りが無い。レンズ交換が出来る出来ないということなど、最初から考えるまでもない話。レンズ交換出来ぬ一眼レフカメラのほうが斬新なくらいだ。
もちろん我輩自身、アマチュア向けビデオカメラの不自由さは以前から認識してはいたが、これまでは他人事であったためどうでもよいと思っていた。ところが一転、我輩自身の問題となってしまったのである。
スチルカメラでは当たり前のように出来るような手動操作や背景ボカし撮影が出来ないもどかしさ。ただレンズを換えたいだけなのに100万円のカメラしか用意されていないとは・・・。
そんな時に現れたビデオ撮影可能なデジタル一眼レフカメラ。
そこに大きな可能性を見るのは我輩だけだろうか。
現時点では、全てのシーンでこれらのカメラが使えるとは思わないが、従来のアマチュア用ビデオカメラでは絶対に撮れないようなビデオ映像が一部でも撮れるとするならば、それはそれで大きな価値があろう。
もし今後、ビデオ撮影機能でも全ての撮影シーンで対応出来るようになれば、ゆくゆくはスチルカメラユーザーとビデオカメラユーザーの統合を果たす革命に発展するに違いない。
それが実現した時、世界に真の平和がもたらされることだろう。