先日行われた北京オリンピックでは、開会式で9歳の少女が革命歌曲を歌う場面で、別の7歳の少女が歌った口パクが発覚、大きな問題となった。
これについて中国は「対外的な印象を考え、国家利益のためにやった」と弁明したのだが、中国としては、最高の歌声と最高の外見の2つを組み合わせた最高の演出だったのだろう。
最高を求める気持ちは解るのだが、結局のところ、1人の完璧な少女を造り出すことは不可能だった・・・。
さて先日、Nikonから動画撮影可能なデジタル一眼レフカメラ「Nikon D90」が登場した。
デジタル一眼レフとしては世界初だそうだ。
この製品、我輩としてはどう評価すべきか迷うものである。
デジタルスチルカメラは元々、アナログの電子スチルカメラ(マビカなど)がデジタル化したものだ。
そしてそのアナログ電子スチルカメラは、ビデオカメラから派生した技術である。
つまり現在のデジタルカメラは、ビデオカメラの技術を主軸として発達してきたと言える。外見がどれほどフィルム式のカメラに似ていようとも、パーツ要素はビデオカメラそのものであり、より高画素高画質の静止画を撮るために特化されたに過ぎぬ。そのため、デジカメは初期の頃から動画撮影可能なものがあった。
もちろん、当時はメモリ容量も4〜8メガバイト程度と小さく、動画撮影機能としてはかなり貧弱だった。せいぜい「モーションJPEG」などの簡易的なものでパラパラマンガを見るような感じでしかない。
ところが、ここ最近はメモリもギガバイト単位は当たり前となり、フルモーション動画が楽に扱えるようになった。
またそれとは逆に、ビデオカメラのほうも記録媒体がメモリタイプのものが増え、もはやデジカメとビデオカメラを製品として分ける意味があるのかという疑問すら湧いてくる。
我輩は個人的にビデオ撮影を必要とする。
それは主に豚児成長記録のためであるが、我輩としては66判を公式記録媒体としているためこれも外せない。また、66判カットの間を埋める補佐及び露出計用途としてデジタルカメラも同時に使う。
そういうわけで、首にはブロニカ一眼レフ、肩にはニコンデジカメ一眼レフ、そしてポケットにはビデオカメラ、というのが我輩の標準スタイルとなってしまった。
ビデオカメラはメモリ式の小型のもののため(参考:
雑文604「スチルとムービー」)、他の機材の邪魔をしないのだが、それでもポケットから取り出す煩わしさや、デジタルカメラとは別に必要な予備バッテリーと予備メモリの管理が負担となる。コンパクトな分だけ電池の保ちも悪いのだ。タイミングが悪いと、例えばビデオカメラのバッテリーを入れ替えた直後にデジタルカメラのバッテリーが切れ、そちらを入れ替えると今度はビデオカメラのメモリが一杯になり・・・ということが起こる。
そこで、「デジタルカメラとビデオカメラが1つの機材としてまとまらないか?」という気持ちになる。
今のところ、我輩所有のデジタルカメラで動画撮影が可能なものは「Nikon COOLPIX P5100」である。レスポンスが異常に遅く、ズーム倍率(変化量)もビデオカメラに及ばない。カメラ機能にしても、コンパクトタイプのデジタルカメラということで、期待すべくも無い。
そんな時、一眼レフで動画撮影可能な「Nikon D90」が発表された。
いくら一眼レフカメラであろうとも、デジタルカメラである限り、ビデオカメラの構成要素を持っている。だから理屈の上では、これまでビデオ撮影が可能なデジタル一眼レフカメラが無かったことが不思議であった。
ここにきてようやく、デジタル一眼レフカメラが自分自身ビデオカメラの末裔であることを思い出したかのようだ。
一眼レフカメラがビデオ撮影可能となれば、交換レンズが自由に使えるということが武器になる。ズーミングも手動操作のため素早く行えるのが良い(ズーミング中の動画は通常はカットしてしまう)。
何より、ムービーとスチルの機材が共用となることで、予備バッテリー及び予備メモリを減らすことが出来る。余裕を持たせて予備としていることを考えると、カメラ2台の余裕分とカメラ1台の余裕分とではそれなりの差があろう。
ただ我輩の懸念は、「果たしてこのような動画撮影機能を、Nikon D700やD3レベルの製品にまで展開出来るだろうか?」というものである。
もし動画撮影機能が、今回のD90レベル、つまりAPSサイズの普及機レベルでとどまるのであれば、少なくとも我輩のスチルカメラとしてのニーズには合わない。何しろ、我輩はフルサイズのデジタル一眼レフカメラの導入を考えているのだから。
普通に考えると、このようなビデオ撮影機能はなかなか上級機には組み込みにくいだろうとは思う。内蔵ストロボさえプロ用カメラには搭載されないくらいなのだから。
そもそも、写真を趣味としている層とビデオ撮影を趣味としている層は異なると思われる。確かに、動画撮影機能によって撮影の範囲は広がるには違いないが、積極的に活用されるかどうかは微妙といわざるを得まい。
技術的には同一の骨組みを持つデジタルカメラとビデオカメラであるが、どちらかの一方の機能が要求仕様に満たなければ、デジタルカメラとビデオカメラが1つになることの意味は薄い。
そうなると結局、2台別々に機材を持つことになろう。
そこが難しいところなのだ。
考えてみれば、我輩がデジタルカメラを買う時、そしてビデオカメラを買う時、それぞれに多くの製品の中から吟味して選び抜いた1台であった。デジタルカメラのみ、そしてビデオカメラのみで選ぶならば、その選択肢の中にどれかは自分の要求に適うものが見つかろう。
しかし、デジタルカメラとビデオカメラの2つの機能が組み合わされた1つの製品を選ぶ場合(現時点ではD90の1機種のみだが)、両方の機能が自分の要求に適う確率はかなり低くなるに違いない。
まさに、北京オリンピックの開会式で歌った少女のように、2つの要素どちらも最高のものを兼ね備えた1つの製品というのはなかなか無いのである。
何とも悩ましい話だ・・・。
ただし我輩の場合、ビデオ機能よりもカメラ機能のほうが要求仕様が高いため、少なくとも「Nikon D700」クラスのカメラに動画撮影機能が付いてくれればば、十分に選択肢に入るだろう。
Nikonの今後に期待したいと思う。