2000/04/05
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表紙

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カメラ雑文

[604] 2007年06月25日(月)
「スチルとムービー」

ここ最近、豚児の幼稚園行事に行くことがあるが、父兄の撮影の様子を見ていると、ビデオ派とカメラ派がいる。
注意深く見ていると、父親はデジタルカメラ、母親はデジタルビデオカメラ、というような役割分担の家庭もある様子。我輩とヘナチョコ妻もそういう役割分担をすることがあるが、たまに「付き添いは父か母のどちらか1名」というイベントもあり、そういう時は「スチルかムービーか」という二者択一を迫られることになる。

考えてみればスチルとムービーは、「映像」という意味では同じものである。動くか動かないか。ただそれだけの違いしか無い。


デジタルビデオカメラ(Mini-DV)が一般向けに発売されるようになった頃、我輩もそれまで使っていた8mmビデオを捨てて「Victor GR-DV1」という機種を使い始めた(参考:雑文470「次のデジタルカメラ(前編:それまでの遍歴)」)。



Victor GR-DV1

このビデオカメラにはスチル撮影機能があったのだが、単純に静止画を一定時間だけテープに書込むというだけであり、静止画データをファイル化してパソコンに転送するなどということは出来なかった。
そもそもこのビデオカメラにはパソコンに繋ぐためのI/O(インターフェイス)が全く無く、出力はアナログのピンコードだけであったため、画像をパソコンで取り扱うためにはアナログキャプチャしか方法が無い。それならば、動画で撮影したものをキャプチャして、その中から最適な1コマを選び出せば良い話。わざわざスチル撮影するメリットが無い(参考:雑文560「デジカメ=デジカム」)。


その後、デジタルカメラのほうでムービー撮影可能な機種が現れてきたが、こちらはこちらでフレームレートが粗く、とてもビデオカメラの代用として使えるものでは無かった。恐らく、10fps(1秒あたり10コマ)程度ではなかろうか。
そもそも画面が小さく臨場感の欠片も無い。

デジタルビデオカメラもデジタルスチルカメラも、どちらもCCD/CMOSという電子撮像素子を使い、デジタル化された映像を扱う。それなのに、ムービーもスチルも同じように扱える統合したカメラが存在しない。 もしそのような製品があれば、機材を減らすことが出来て好都合なのだが。


それからしばらく経ち、我輩が使ってきたデジタルカメラも結構な数になってきた。
現在使っているのは一眼レフ形式の「Nikon D200」とコンパクトタイプの「RICOH GR-D」だが、「RICOH GR-D」のほうは動画撮影が可能である。しかし購入後しばらくは動画機能を使うことは無かった。頭から「デジタルカメラの動画機能は使えない」と思い込んでいたためだった。


RICOH GR-Digital

ところある時、遊び半分で動画を撮ってみて驚いた。動きが滑らかで違和感が無い。
撮影した動画はAVI形式に出力されたため、試しにそれをDVD編集ソフトで加工してみると、ファイル形式としてはDVD-Video化が可能なMPEG2となった。画面サイズも問題無い。
素晴らしい。

だが惜しいことに、画質がかなり悪い。
暗い場所ではノイズが激しく、またスミアがかなり強く発生してしまう。シーンによってはほとんど画にならないほど酷い。


RICOH GR-Dによる動画撮影(縮小)

また、音声がモノラルで音がこもっている。せっかくの動画であるのにステレオの臨場感が無いのが残念。
しかもGR-Dは単焦点レンズである。ズームの無いビデオほど使えないものは無い。やはり、デジタルカメラ側でビデオ機能を持たせることは難しいのか?
せっかくの小型サイズであるから、動画の画質が良ければ無敵だと思ったのだが・・・。


それからまたしばらく経ち、今まで使っていたビデオカメラ「SONY DCR-HC30」が故障した。液晶パネル側の録画ボタンとバックライト消灯ボタンが利かなくなったのだ。
修理の見積りに出すと、1万数千円とのこと。元々新品価格5万数千円だったものを1万数千円出して修理する価値があるかどうか。1年前にも別の故障で既に1万数千円かかっている。
しかも中古販売やオークション落札記録を見てみると、1万円〜2万円で手に入るようだ。


故障してしまったSONY DCR-HC30

まあ、ビデオの中古品は可動部が多い製品ゆえに手を出すのは避けたい。この際、新品で安いビデオカメラを導入しようか。
もちろん、2年前に購入した同じ機種のビデオカメラが今も新品で売られているわけがない。似たような価格帯の、似たような大きさの製品を探すことになる。

ところが現在、ビデオ界ではハイビジョン化の流れが大きくなっている。ヨドバシカメラへ行っても、ハイビジョンの画質を比較するコーナーがあり、販売員もハイビジョンのビデオを強く勧めてくる。
見ると、機種によっては5万円台のものすらあるではないか。

ところが調べてみると、今のところハイビジョンの再生環境は整っておらず、将来的にもどうなるか不透明だという。現在、「ブルーレイディスク」と「HD-DVD」の2つの方式が次世代ビデオ規格として争っている。この選択を誤れば、再生環境を失ったハイビジョンビデオが残されることになる。
もちろん、両方式が共に廃れて全く新しい別な方式が登場する可能性もある。LD(レーザーディスク)などはその良い例である(LDはVHDに勝ったかのように見えたが、結局は広く普及する前にDVDに置き換わってしまった)。

また、ハイビジョンビデオの編集については、パソコン側にかなりのパワーを必要とする。我輩のCore2のCPUでもかなり厳しい。ハードディスクも相当な容量を用意しておく必要がある。もちろん、次世代ディスクのドライブや生ディスクも当然必要。
そうなると、出費はビデオカメラ本体分だけでなく、その何倍もかかることになる。どう考えても現実的な選択ではない。
そういうわけで、結局は従来方式のビデオカメラを探すことになったが、ハイビジョンカメラを候補から外すと選択肢が少なくなるのが悩みである。

カタログを集めて調べてみると、どうもMini-DVテープを使ったもの以外に「8cm DVD方式」や「HDD方式」があるようだ。これらのカメラの最大の特長は、カメラをパソコンに接続するとストレージとして認識され、動画ファイルのコピー作業で済むという点である。特にDVD方式の場合は、カメラをパソコンに接続せずとも撮影したDVDをパソコンのドライブにセットするだけで良い。

ただ、DVD方式は容量がかなり小さく、一方HDD方式では振動に弱い。
振動に弱いというのは、HDD方式は落下に備えたHDDヘッド待避機能が組み込まれており、小さな揺れであっても大きな衝撃の前兆と判断されてHDDヘッドが待避する。もちろん、バッファによって数回の待避は補償出来るようだが、連続した振動には無力とのこと。
この問題はWeb上で知ったのだが、それによると車載カメラとして使うには無理があるようだ。例えば高速道路の繋ぎ目を跨ぐ時の振動で記録が出来なくなるらしい。ユーザーがメーカーに問合せたところ、そういう使い方は想定していないとのことだった。
我輩は車載カメラとしてもビデオカメラを使っているため、HDD方式は用途に適さないと言えよう。

結局、実用的なのはMini-DVテープを使う従来のものかと思い始めた。
しかしテープを使う機種は、パソコンに取り込むのがネックである。1時間の映像をパソコンに転送するには1時間かかるのだ。しかも、ヘッドが汚れていたりテープがヘタっていたりしてノイズが入るとエラーになることがある。そういう場合は最初からやり直しである。

あらためてビデオカメラのカタログをめくってみると、メモリ記録方式のビデオカメラが目に入った。DVD方式やHDD方式と同じくMPEG2で記録するタイプである。
こちらはSDカードメモリを使っているため、現時点では最大4GBの記録容量である。それでもDVD方式に比べれば大きく、また可動部が無いためHDD方式のような悩みも無い。そして何よりカメラの大きさが非常にコンパクトである。

ただ、このタイプはあまり種類が無く、Panasonicから1タイプあるのみ。他のメモリ記録方式では、ハイビジョンタイプか「MPEGカメラ」と呼ばれる簡易ビデオタイプしか無い(簡易タイプではビデオカメラとしての基本的な仕様がどこか欠けている)。

唯一の選択肢であるPanasonic製「SDR-S200」だが、驚いたことに3CCDである。確かにPanasonicは3CCDがお得意なのだが、このようなメモリ記録方式のものまで3CCDとしているあたりが、簡易タイプとは一線を画す、ビデオカメラとしての生い立ちを示している。

また、200万画素程度(1920x1080ドット)のスチル撮影も可能で、そのためにストロボもポップアップで使えるようになっている。200万画素と言えばハイビジョンと同じくらいの解像度であるから、もしかしたらCCDはハイビジョン機と同じものを使っているのかも知れない。
いずれにせよ、3CCDのデジタルカメラは存在しないため(昔のMINOLTA製ではあったようだが)、どんな画が得られるのか非常に興味深い。

色々と悩んだ結果、この「SDR-S200」を購入。通販で6万5千円だった。
ちなみに、ヘナチョコ妻を説得するのに要した時間は1週間ほど。


Panasonic SDR-S200(ストロボをポップアップした状態)

ネックは、コンパクトボディによるバッテリーの制限である。
通常のビデオカメラは、ボディが小さくともバッテリーは外側にハミ出しているため、バッテリーの大きさに制約は無く、長時間バッテリーも用意されている。我輩が今まで使っていたビデオカメラも長時間バッテリーを常用していたのだが、それを使うと4時間くらい平気で保つ。
ところがこの「SDR-S200」はバッテリーを本体内部に格納するタイプのため、バッテリーの大きさは1種類しか許さない。そのため1時間程度しか保たないのである。

しかしバッテリーの大きさとしては、デジタルカメラであるRICOH GR-D用のものよりも一回り大きい程度。これでビデオカメラを1時間駆動させるというのは、それなりに凄いことなのかも知れない。

それにしてもこの機種はあまり主流ではないため、そのうちラインナップから外れるらしい。メーカーのほうでも「在庫僅少」となっている。
メモリについては待てば待つほど値段が下がっていくため焦って買う必要も無いが、予備バッテリーのほうは早めに確保しておかねばなるまい。


左:RICOH GR-D用/右:Panasonic SDR-S200用

操作系について、元々ビデオカメラというのはスチルカメラのように標準的な形状があまり無いため、同じメーカーの製品でもスイッチ類の統一性は無い。そのため、機種ごとに操作性も異なると考えた方が良い。
SDR-S200では、その形状から拳銃のように持つことになるが、人指し指の辺りに録画ボタンがあると自然に操作出来そうに思うが、実際には録画ボタンは背面にあり、人指し指の辺りには指当てがあるのみ。
もっとも、拳銃には暴発を防ぐためのトリガーガードがあるが、ガードが付いていないこの製品では誤作動を防ぐ意味でもこの部分にはボタンが付けられなかったのだろうと思う。


SDR-S200の背面

今まで使っていた「SONY DCR-HC30」もテープを使うビデオカメラにしてはかなりコンパクトだったためか、今回購入した「Panasonic SDR-S200」がコンパクトであるという実感が無い。しかし、ホールドした時に指が余ってしまうことからその小ささが分かる。少し余裕のあるズボンのポケットにも入る。

ちなみに、ファインダーは液晶パネル式のみで、接眼式のファインダーは無い。そのためか、液晶パネルを畳むと電源が切れてしまい、録画ボタンを押しても動作しない。ただし、録画している状態から液晶パネルを畳むと、録画はそのまま続行される。


ホールドの例

画質は3種類用意されており、4GBメモリカードを使用した場合には、高画質モード(XP)は50分、標準モード(SP)は100分、長時間モード(LP)は200分撮影可能である。しかしバッテリーの限界のため、200分の連続録画を実現するにはACアダプタを使用することになろう。

付属ソフトをインストールしたパソコンにSDR-S200を接続すると、動画ファイルをパソコンに取り込むことが出来る。もちろん、そのままカット編集も可能である。
また、付属ソフトを使わない場合はエクスプローラー上からストレージとしてアクセス出来るため、ファイル操作でコピーも出来る。その場合は動画ファイルの拡張子が「.mod」となっているが、これを「.mpg」に書き換えれば問題無い。
ただし、パソコン上からメモリ上のデータを消したりするとおかしなことになるらしく、その点は気を付けたい。
それにしても、これまで1時間の動画をパソコンに取り込むには1時間かかっていたのだが、今回からファイルコピーの数分で済むようになったのは大きな進歩と言える。

付属ソフトではあまり細かい作り込みが出来ないため、「Video Studio Ver.11」を用いてMPEGファイルを編集してみた。
録画時に一時停止や停止した時点で1つのファイルが生成されるため、細かく撮っているとファイルも細かく分かれてしまう。まあ、シーンごとにファイルが分かれるのは好都合ではあるが、「Video Studio Ver.11」で編集して1つのMPEGファイルに出力したところ、音声がズレた動画が出来てしまった。
調べてみると、最初は音声のズレが無いが、後になるほどズレが大きくなる。どうやら、ファイルの切れ目で映像が少し止まってしまい音声から遅れてしまうようだった。これを防ぐには再レンダリングをすると良いようだが、再レンダリングをすると画質がかなり落ちてしまうため、それはやりたくない(静止画でもJPEG圧縮を何度も繰り返すと画質が低下するが、動画でも同じことが起こる)。
色々と試行錯誤した結果、付属ソフトで動画をいったん1つのファイルにまとめた後で「Video Studio Ver.11」で加工すれば、再レンダリングせずとも音ズレが発生しないことが判った。

動画としての画質は、やはり3CCDのためか色乗りが良く感じられる。その分、ホワイトバランスがズレると目立つが、すぐに立ち直るので問題は無い。車載カメラとしても使ってみたが、空の明るさに影響されず適正な露出で見易い映像が得られた。
MPEG圧縮特有のノイズがあるものの、どんなビデオカメラを使おうとも結局はDVD-VideoとしてMPEG化することになるため、今回問題となることではない。

さて、気になるスチル撮影機能のほうだが、実際に使ってみたところ、期待したほどの画質が得られずデジタルカメラとしての利用は諦めざるを得なかった。
画像サイズはそれなりにあるが、どう見てもビデオ映像からのキャプチャーという感じがする。実際のところ、ハイビジョンの映像からキャプチャーした画像がこんな感じだろう。デジタルカメラという見方をすれば画質が悪く感ずるが、ビデオからのキャプチャーとして見ればそこそこか。


Panasonic SDR-S200によるスチル撮影(縮小)

Panasonic SDR-S200によるスチル撮影(部分原寸)

スチル機能を全面的に期待していたわけではなかったが、もしこの製品でデジタルカメラが代用出来るのであれば、撮影機材を少なくすることが出来たわけで残念ではある。

デジタルカメラ側からのアプローチもダメ、ビデオカメラ側からのアプローチもダメ。
いつになったら両者の機能が融合する時が来るのだろうか。

次にデジタルカメラかデジタルビデオを買い換える時には、そんな悩みも無くなっていることを祈る。



(2007.06.29追記)
修理費用の見積り連絡が来た時に修理キャンセルとした「SONY DCR-HC30」について、"未修理"と記載された伝票が貼られて手元に戻った。しかしながら、動作させてみるとなぜか機能が回復していた。どんなに力を入れて押しても反応が無かったボタンが、普通に反応するようになったのだ。
SONYの修理屋さん、ありがとう。


(2007.06.30追記)
本文中にも書いたとおり、画像と音声のズレは付属ソフトを使うことによって起こらなくなったものの、作成したMPEGファイルをDVD-Videoとしてオーサリングすると再びズレが発生するようになった。
そこで、これまで使っていた「Ulead DVD Workshop 1.2」の代わりに「TMPGEnc DVD Author 3」を使ったところ、ズレの問題は解消された。ちなみにこのソフトはSONY VAIO優待価格があったため、そちらで7,920円にて購入。