雑文に書いた撮影記録は、我輩自身の今後の撮影計画に大いに参考になっている。
九州帰省はその一つの例で、カメラ・写真とは直接関係無いと思われるような細かい記述まで意外と役に立つ。
先日は蔵王のお釜に行ったのだが、これも去年行った時の記録が大いに役に立った。
もちろん今回も、今後のために同じようなパターンで蔵王のお釜へ行った記録を残すことにした。
さて、今年は梅雨明けが遅く、蔵王のお釜に行くタイミングを見ていたがなかなかチャンスは巡ってこなかった。
何しろ片道5時間の距離であるから、事前に天気予報が「快晴」とならなければ動けない。
しかも1500メートル以上の場所であるから、完璧に晴れている状態でなければ下界で晴れていようとも山では雲に没していることも十分あり得る。
行き帰りに3万円ほどのコストがかかり、さらには運転の疲労も加わるため、行ってみてダメでしたというのは絶対に避けねばならぬ。
今回は蔵王のお釜だけでなく、吾妻小富士や一切経山のある浄土平にも寄る計画とした。
浄土平は福島県にあるため、蔵王への行き帰りの途中に寄れると考えた。
そうなると1泊2日で行動したほうが良いだろう。1日目を蔵王のお釜、2日目を浄土平にすれば、帰りが1時間ほど短くなり運転も楽になる。
しかしながら7月はチャンスが無く、8月は九州帰省のためしばらくは運転を休み、9月からの晴れを狙っていたが、これがまたタイミングが合わなかった。
やはり、2日間に渡って晴れが続くような状況は難しい。まさか、日帰りで2箇所巡るか?
週間天気予報を見て計画を立てるのだが、1週間も経つと予報が全く変わってくるのが痛い。これはもう、直前に決断するしか無い。
そう思って待ち構えていたのだが、金曜日に同僚と飲みに行って遅くなり結局快晴にも関わらず行けなかったこともあった。
そして9月も終わりに近付いた頃、ようやくチャンスが巡ってきた。
我輩は9月22日(金)に休暇を取って土日と合わせて3連休とする予定だった。どれか連続2日間の晴れを期待していたのである。
ところが例のT課長がまた「23日のソフトボールの試合に来てちょんまげ!」と言ってきた。
前回は予選敗退したはずだったが、勝ったチームが選手のやりくりが出来なくなってしまい、繰り上げでT課長のチームが大会に出場することになったそうだ。
23日に行くと、3連休が真ん中で分断されてしまう。
「みんなにも撮影に来るからって言ってあるし、バイト代5千円出すから、ヨロピク!」と押し切られ、結局23日は午前中限定の約束でソフトボールの試合に行くことになってしまった。
そこで我輩は、悩んだ挙句に22日(金)の休暇を25日(月)へシフトさせることにした。これで少なくとも2連休にはなる。
T課長は、休暇の変更に対しては最大限の配慮を示した。まあ、当然と言えよう。
23日は雲が多いながらも晴れ、ソフトボールの大会は予定通り行なわれた。
成り行き上、豚児も連れて行ったのだが、重量級望遠レンズを着けた「Nikon D200」をずっと構えて撮影したため疲労はかなり大きかった。しかも、豚児がおんぶをせがんだりして余計な負荷もかかることもあった。
さて、帰宅後に天気予報をチェックすると、翌24日(日)の蔵王の天気は快晴のようだった。
一方、浄土平のほうは25日(月)が快晴らしい。
これほど条件が揃った天気は珍しい。これを逃すともうチャンスは無かろう。
しかしながら、浄土平の情報収集などで余計な時間がかかり、就寝時間が22時くらいになってしまった。
また、昼間のソフトボール大会の疲れもあったため、午前2時に起きるつもりが寝過ごして4時に起きてしまった。
高速道路のETC深夜割引も狙っていたため、この時間ではもう遅い。
結局この日は諦めた。
そうなると1泊2日の計画が立たないため、次の25日(月)も中止である。
夕方、少し考えた。
「もう少し早く出発して蔵王登山を午前中に終わらせれば、午後は浄土平に行けるのではないか?」
実際、去年は午前中までに終わっている。
急遽、25日(月)に出発することとした。
再び情報収集し、荷物をまとめた。
カメラは当然ながら「BRONICA SQ-Ai」。露出計として「MINOLTA α-707Si」でマルチスポット測光を行なう。
また、車の走行距離記録のためにデジタルカメラ「RICOH GR-D」、そして走行シーンの撮影のためにソニーのデジタルビデオカメラを使う。
さらに今回は、蔵王の五色川の水を沸かしてカップ麺を食べる計画を立てた。
アルコールバーナーとケトル(やかん)を用意してある。意外と忘れがちなフォークも荷物に入れた。
もっと早く寝るつもりだったが、布団に入ったのは21時過ぎになっていた。
起床目標は午前1時。
しかし、目が冴えて眠れない。というのも、まだ蔵王と浄土平のことを迷っていた。どちらか一方だけにしたほうが無理が無いというのは分かっている。しかし、蔵王にも行きたいが、浄土平も初めてであるからぜひ行きたい。
やはり無理を承知で両方行くか・・・?
思考が堂々巡りして結論が出ない。そして、眠れない。
時計を見ると、もう23時にもなっていた。
我輩は、布団を出て着替え始めた。
「どうせ眠れぬのならば、もう出発したほうが良かろう。早めに出ればそれだけ行動の選択肢が広がる。昨日のように出遅れれば、結局何も出来ずに終わってしまうからな。」
車に乗った時、23時半だった。後で知ったが、それはちょうど、丹波哲朗氏が臨終した時刻だった。
車外温度計を見ると、23度を表示している。
片道5時間のドライブであるから、運転中はいつも回しているビデオカメラは、宮城県に入ってから撮影を始めることにした。
車のエンジンを始動させ、カーナビゲーション画面で目標を設定。ETCにカードを挿した。
ビリージョエルの曲をかけ、ライトオン。やはり暗い中での出発は気分が盛り上がる。
夜中とは言え23時半であるから、まだそれなりに交通量はあった。
高速道路に乗り、速度を上げた。
夏の九州帰省の時は、山陽自動車道を走っていると追い越し車線を走行中に割り込みをしたり、追い越し車線を低速のまま走り続ける車が無数に存在し、減速・加速を余儀なくされたものだが、今回はそういうことは皆無だったためスムーズに走ることが出来た。
車外温度計を見ると、北上するにつれてどんどん温度が下がってくる。
真夜中のためか、ほとんど大型トラックと長距離バスしか走っていない。
宮城県に近付くと、霧に包まれることが多くなり、フォグランプを点灯しスピードを落とした。トラックとの事故になれば大変なことになるため注意が必要。
白石インターチェンジで降りたのは4時頃であったが、まだ夜中のような暗さであった。
出発時には満タンだったガソリンも半分になっている。帰る前には給油が必要。
去年は、蔵王のお釜が見渡せる刈田岳山頂までは車で登らず、手前の刈田駐車場に停めてそこから足で登った。なぜなら、山頂まで車で行くと料金ゲートを通らねばならないばかりか駐車場も未舗装で狭い。
しかしこの有料道路(蔵王ハイライン)は夜から早朝にかけては無料になるため、今回は車で上まで登ることにした。
この時間では、車がほとんど走っていない。
街灯も少なく、景色が全く見えないため、どの辺りまで走ったかというのが分かり辛い。
真っ暗な中に自分だけが車を走らせている。ただ、ビリー・ジョエルの音楽が聞こえるのみ。
刈田岳山頂の駐車場に着くと、空が微妙に明るくなっているような気がした。時間は4時55分。
車外温度計を見ると、7度と表示されている。ドアを開けると冷たい空気に触れた。
意外にもこんな早朝であっても、数台の観光バスが入って賑やかになった。