現像上がりのビニール製スリーブシートのままにしておくと、長い年月が経つと乳剤面がビニール面と固着してしまうことがある。そうなってしまうと、ビニールを剥がしても固着した部分としていない部分の境界がクッキリと痕を残す。
現像済みフィルムは、極力どこにも接触させず浮かせておくべき。
そういう意味で、現像したリバーサルフィルムは、成功カットを切り出してマウントにハメるのが最も保存性が良い。
マウント枠が物理的ガードとなるばかりでなく、撮影データの記録枠としても重宝する。
(ただし、あまりキツくフィルムを挟むと湿度変化によるフィルムの微妙な伸縮で平面性が悪くなるため、少し手加減する必要はある)
さて、先日現像したブローニーフィルムを整理するため、1コマ1コマ切り分けてマウントにハメていた。
ところがあと数コマというところでプラスチックマウントが足りなくなってしまった。
翌日、会社帰りに久しぶりにヨドバシカメラ上野店へ寄った。
しばらく見ないうちに、売場レイアウトがかなり変わっていた。フィルム売場は1/4くらいに縮小しており、我輩がいつも買っていカートン単位のものは店員に言わなければ取れないところにある。
一方、写真整理用品も同じように売場が大幅に縮小され、アルバムや写真台紙などは消えている。
焦った我輩は、66判のマウントを探した。
我輩が長年愛用しているのは、ドイツ製のhamaプラスチックマウント「1162」である。
これは平面性が高く、マウントを積み重ねてもまっすぐに積み上がる。
フィルム位置を固定するためポッチがあるが、フィルムに小さな穴が空いてしまうため、このポッチは小型のニッパーで切り取って使っている。
ただ価格は高めで、ヨドバシカメラでは50枚入りで¥2,793となっている。
5年くらい前には、韓国製のスライドマウント「MATIN」が店頭に置かれるようになり、値段もhamaマウントの半額であったため、試しに買ってみたことがある。
しかし、マウントが歪んでおり平面性は最悪。フィルムをハメてみたものの、積み重ねてみるとグラグラして倒れそう。一つ一つが平面性を保っていないため、積み上げた全体がバネのようになり、上から押さえると縮むものの、手を離すと元の高さに戻る。
また、プラスチック樹脂に時々黒い油が付いていることがあるが、これは恐らくプラスチック樹脂を金型から外し易くする離形剤ではないかと思う。離形剤を使うのは、金型の精度の悪さを証明している(やむを得ず離形剤を使うことがあっても、洗浄を行えば目に余るようなことは無くなるはず)。
まさに、安物買いの銭失い。¥1,200程度のものではあったが、用を為さぬ物ほど無駄な物は無い。
それ以来、我輩は制式フォーマットである66判では決して「MATIN」を使わず、645判のメモ用途でのみ使用している。
さて今回、売り場面積が大幅に狭められたヨドバシカメラの写真整理用品コーナーのスライドマウントだが、無惨にも各種マウントがゴッチャになって置かれていた。まるで子供が片付けたオモチャ箱のよう。
我輩は、その中からhamaスライドマウントの66判用を2箱探し出した。
しかしそれにしても、この売場の様子はまさに在庫処分である。ここで2箱手に入れたものの、もう入荷されないのではないのか?
そんな不安が過ぎったため、近くにいた店員に、我輩がマウントを買った後に補充されるかを訊いてみた。
店員は在庫管理のパソコンを操作した後、我輩に向き直って言った。
「これは、補充されませんねぇ。」
何ということだ・・・。
やはり写真整理用品コーナーは潰されることになっているのだ。
デジタルカメラを含むデジタル家電の売場どんどん大きくなり、フィルムやプリント関係のものはこのまま消えるのか?
我輩は過去15年間に、ヨドバシカメラで数百万円は使っている。そういうユーザーを軽んじて売場を塗り替えるとは何事か。
別に、製品の供給が止まっているわけではない。幾社もある写真用品関係の販売会社が一斉に販売を止めたのならばともかく、今回の件は小売り店が勝手に売場を潰しているのである。
確かに、売場面積を縮小するのは仕方が無い。だが、完全に無くすようなことはするな。
いくら儲かる売場を大きくしたいからと言っても、売り上げが小さくとも必要とされている売場は残すべき。
そうは思わんのか? ヨドバシカメラよ。
結局、売れないから売場を小さくする、売場が小さくなるからその分野の集客力が低下する、そうなるとますます売れなくなる・・・。
これはまさにスパイラル。
ポリシーも無く流されたような商売をしていれば、その時は良いだろうがいずれは身を滅ぼすぞ。
まあそうは言っても我輩は我輩で対策を考えねばならぬ。
店員によれば、ヨドバシカメラ全店で探せば幾らかの在庫はあるだろうと言う。しかしそういう問題ではない。これから数年間に渡って安定した供給が出来るかどうかということが問題なのである。
とりあえず、手元には2箱のhamaマウント。あとはどうする?
改めて売場を見てみたが、66判用のマウントは韓国製「MATIN」のみ。
このマウントだけは、死んでも買いたくない。
帰宅後、ウェブ上で検索してみた。
すると、ヨドバシ価格よりも273円安いものがあった。しかも送料無料。ここでまとめ買いするか。
もしここで50箱買えば、ヨドバシカメラで50箱買うより1万3千円も安く手に入る。
我輩は、緊急事態ということでヘナチョコ妻に頭を下げ、家計から借金をして買うことにした。何しろ手元には、千円しか金が無い。
それにしても、50箱は10万円を越えるのでさすがに無理。せめて20箱くらいは欲しい。となると5万円・・・。もうちょっと借りても良いか。25箱で6万円・・・。切りの良いところで30箱、7万5千円かっ!
今月の給料明細によれば、いつもより7万5千円も多く振り込まれている。その分が使えるのではないかと考えた。
・・・しかし先月そんなに残業したか? まあ細かいことはいい。
(後になって、それは4月以降の定期券代の支給であることが判明。マズイな。)
最初、在庫が30箱もあるかと心配したが、このネットショップはメーカーや代理店からの直送だそうで、それならば大丈夫だろう。
数日後、大きなダンボール箱が届いた。hama代理店のエツミからだった。
我輩は急いで梱包を解き、山のようなhamaマウントを手に入れた・・・と思ったその時、予想外のものが目に入った。
「MATIN」
見るのもイヤなあの韓国製粗悪マウント。それが、30箱届いたのだ・・・。
今後はこの在庫を使っていこうと思っていたが、よく考えると、50枚入りが30箱ということは1,500カット分(現在までの豚児写真でちょうどそれくらいの数)。この程度の数であれば数年で無くなってしまう。
ならば、この在庫は手元に置いておき、当面はヨドバシカメラやウェブから1〜2箱単位で注文して使うことにしよう。
そして、いよいよ本当に手に入らなくなったその時に、30箱の在庫を使い始めるのだ。
ただ、その前にフィルムの生産が終わるかも知れないという不安もあるが、そういう心配は手を尽くしてからすれば良い話。
フィルムが先に無くなるか、用品が先に無くなるか、そんなことを考えているうちに、本当にどちらも失ってしまうぞ。
フィルムは生ものであるから、そればかりは買い貯めがきかぬ(現像処理も同様)。兵糧責め(参考:
雑文355「気概ある者、闘いに備えよ(2)」)に備えるために、まずは日持ちする乾物を備えたのである。
それだけでは備えにならぬが、それ無くして備えにならぬ。
(2006.04.12追記)
仮に、銀塩写真が絶滅するとしても、これまで撮り貯めた高画質のポジが失われるわけではない。むしろ、容易に得られぬ貴重な遺産となる。
また、デジタルカメラの性能向上と価格低下は、時が経つほどに大きくなる。
以上のことを考えると、デジタル移行を急ぐ必要は無く、完全にフィルム供給が止まるその瞬間まで銀塩システムを利用し続けることが最も良い方法だと断言する。
ちなみに我輩としては、フィルム(ポジ)供給がすぐに無くなるとは思っていない。ポジの消費量はそれほど低下していないという情報や、富士フィルムから新しいプロビア400が発売されたニュースもある。
ただやっかいなのは、画素数だけが画質であると考えているシロウト集団である。この勢力は数が多いだけに影響力も大きいため油断は禁物。
(2006.06.15追記)
マウント30箱の在庫は、本当に手に入らなくなった時に初めて使い始めるという位置付けのため、日常的に使うものが別途確保する必要があると書いた。
この辺で一番大きな店である「ヨドバシカメラ秋葉原店」で探したが、hamaマウント6x6用は2箱しか無く、このうち1つを購入したがその後一向に補充する気配が無い。
そのため、再び通販で12箱入手。
この12箱を日常的に使うことになる。
(2007.06.06追記)
マウント15箱使ってしまったため、再度通販で14箱購入。
このペースで考えると、30箱の在庫というのは2年分しかないということになる。100箱くらいでないと在庫の意味が無い気がしてきた・・・。