2000/04/05
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カメラ雑文

[413] 2003年04月09日(水)
「ダイヤルのアナログ性」

「シャッターダイヤルはアナログ的か、それともデジタル的か」
このような命題が与えられたとしたら、どう考える?

これは、我輩が当サイトを立ち上げるよりも前に、どこかの掲示板で議論されていた話題である。
そこでは、「シャッターダイヤルの数値はあくまでも不連続な数字のプロットであるから、これはデジタルである」とする意見があった。

確かにシャッタースピードは、絞りのように連続的に可変出来るバリューではない。いくら細かく中間シャッターが設定出来たとしても、不連続なバリューであることに変わりない。
辞書には、「アナログ=連続的な物理量の変化での表現」「デジタル=不連続な数字による表現」と記載されている。
・・・となると、シャッターダイヤルはデジタル的と言うべきなのか?


雑文066でも書いたが、「シャッターダイヤルは入力装置でありながら同時に表示装置でもある」。ダイヤルには、こういった二面性があることをまず念頭に置かねばならない。

まず入力装置として見た場合、シャッターダイヤル上には段階的な数字が刻まれているが、それらは順列を以て並んでいる。決して中間を飛び越えて目的の設定値に到達することは出来ない。
それはまさにアナログ的と言える。

もちろん、シャッター値の順列については、デジタル液晶表示でも同様に設定値が順列を持っているが、これはダイヤル式の概念を踏襲しているためにそうなっているに過ぎない。
デジタル液晶表示であれば、テンキーによって数値をダイレクトに入力するほうがデジタル的と言える。ダイヤル式カメラが存在しなければ、もしかしたら順列式の概念は生まれず、携帯電話の操作感を売りにしたテンキー設定方式のカメラが最初に現れたかも知れない。


次に、表示装置として見た場合、ダイヤルでは数字が消えたり現れたりするわけではなく、いつも同じ印刷面が見えており、単にその回転角が変わるのみ。角度の度合によって表示の意味が変わることになる。
それはまさにアナログ的と言える。


何よりダイヤル式は表示に一覧性があり、数値の相対的な量が直感的に伝わってくる。デジタル液晶表示の、次々に現れては消えて行く方式とは明らかに異なる。
1/2000秒の次には何が出るか。1/4000秒か?それとも1/3000秒か?あるいはそこで行き止まりか?
デジタル液晶表示では、平時は分かっているつもりでいても、他のことに気を取られていると案外戸惑う。

その点は絞り環も同じことで、絞り環を廃したミノルタαレンズなどは絞り値の一覧性までも失い、最小絞り値をわざわざレンズ前面の記述に追加せねばならなくなった。


ミノルタαレンズには、開放F値のみならず最小絞りの値までも記述されている。

逆に、同じダイヤル式であっても、「Canon A-1」や「FUJICA AX-5」、「MINOLTA X-370S」のように一覧性を持たぬものもあり、アナログ性を排除しデジタル性を強めたという意味で微妙な存在と言えよう。
(もっとも、「Canon A-1」と「FUJICA AX-5」に関しては、敢えて技術の先進性を強調しようとした目論見もあろうかと思う。)


・・・以上のことを総合的に(恣意的に?)考えると、ダイヤル式というのはカメラ側から見れば確かに不連続な数値を設定するためのデジタルなデバイスではあるものの、使う側にとってみれば、それはまさにアナログであると我輩は断言する。