[388] 2002年12月28日(土)
「新タイプと旧タイプ」
ロシアカメラKiev6Cを購入するために、インターネット上のオークションで バックアップ用Nikon F3を出品したという話をした。
だが、ロシアカメラ購入だけが目的ではない。ロシアカメラごときでNikon F3を手放すわけが無い。
我輩は用心深い性格であるが故に強迫観念に囚われ、Nikon F3関連のアクセサリ収集には力を注いだ。しかし、それでもブロニカのフィッシュアイレンズを入手し損ない悔しい思いをさせられた。
最終的には海外から探し出してようやく取り寄せることが出来たものの、この事件は我輩の強迫観念がまだまだ甘いということを認識させた。
そういう訳で、バックアップ用Nikon F3を手放した真の理由は、ゼンザブロニカのアクセサリ類をまとめ買いするためである。
ブロニカでは、既に67判のGS-1は生産終了。在庫販売となり間もなく消え失せる。このカメラを欲している者は、今を逃せば後は無い。
(中古に期待しようにもGS-1の流通は少なく、中古購入の基本原則「複数から選んで買う」ということは難しい。ましてや、特定のアクセサリなどは気長に探し続ける覚悟が必要。)
中判カメラで一番人気があるのは645判であることを考えれば、次に消えるとすれば、我輩の主力機でもある66判の「SQ-Ai」となるのは明らか。必要と思われるアクセサリ類は今のうちに確保しておく必要があると考えた。
このような心配が杞憂であり無駄な出費に終わるのならばまだ良い。だが生産終了となれば、どんなに金を積もうがモノが無ければ手に入らない。こうなるとかなり惨めである。
今回、必要と思われるアクセサリは以下のとおり。
- フィルムバック(新品を使ったことが無いため)
- ファインダー類(スペアを確保)
- フォーカシングスクリーン(在庫としてとりあえず確保)
- 新型マクロレンズ(単体で等倍撮影可能なレンズは利用価値大)
元々、フィルムバックは3個持っていたが、1つは魚眼カメラとして改造してしまったので補充させたい。しかも新品でフィルムバックを使ったことが無かったため、是非とも新品から使いたいと思っていた。
実際、新品のフィルムバックを使ってみると、想像通り新品はパーツの動作がカッチリとして気持ちが良い。今まで使っていた中古バックがどれほどくたびれていたかを再認識させた。
ファインダー類については、ウェストレベルファインダーはかなり衝撃に弱く、以前、三脚に乗せた状態のカメラを倒してしまいウェストレベルファインダーが歪んだことがあった。手で曲げて元に戻そうとしたのだが、見えない部分で引っ掛かるらしく元通りに畳めなくなってしまった。そういうことを考え、スペアとしてウェストレベルファインダーを余分に在庫しておくことにした。
また他にも、45度の角度から覗くことの出来るプリズムファインダーもこの際購入する。これは視度補正がノブによって調節することが出来るため有用である。
フォーカシングスクリーンは、Nikon F3の時と同様の考え方(使うか分からないがとりあえず在庫しておく)による。
マクロレンズについては、は旧モデルのマクロ110mmを所有してはいるが、これは1/4倍までしか接写出来ない。ところが、ブロニカがタムロンの傘下となってすぐ発売された新タイプのマクロ110mmレンズでは、レンズ単体で等倍撮影が可能となった。
旧タイプのマクロレンズを使っていると、もっと近付いて撮影したいと思う場面がある。だが、それ以上のマクロ撮影は接写リングを必要とする。そうなると露出倍数の計算が面倒。何より、一旦接写リングを取り付けてしまうと、しばらくは引いて撮影が出来なくなる。
これが新タイプのレンズならば、無限遠から等倍まで、動作が途切れること無く自由に撮影出来るのだ。これは何としても手に入れたい。
ちょうど良い具合に新タイプレンズを新品50%引きで売っている店をインターネット上で見付けた。ここで一括して注文することにしよう。
新タイプレンズを導入するならば、手元にある旧タイプは手放すしか無かろう。わざわざ不便なほうを使う理由が無い。
購入資金の足しにするために、オークションに出品することにした。
このレンズ、光学系はキレイであるものの鏡胴には擦れ傷が無数にあったため、それほどの高値は期待出来まい。しかも旧タイプのレンズである。
Nikon F3を出品した時は\9,000での開始価格であったが、今回は入札が競合せず開始価格のままで落札される可能性がある。
高く設定すれば入札は望めず、安く設定すればその価格で落札される・・・。値段の付け所が難しいところ。
しかしこの時点で既に新タイプマクロレンズの注文・入金は済んでおり、別段急いで売る気も無かった。数週間かかっても\30,000くらいで売れれば御の字。気持ちの上では即決価格という意味合いで開始価格\30,000で出品した。
当初、アクセス数は増えていたがウォッチ数は増えなかった。だが、このレンズの作例として画像ファイルを追加した直後、ウォッチ数が徐々に増えてきた。ただ、初日の入札は無かった。
そこで、このレンズの売り文句を考えて追加しようと思った。新タイプと比較してどの点が劣っているのかということを明確にしておきつつ、それでも旧タイプならではの利点があるということを書いた。
「安価」、「新タイプのレンズよりも軽量」、「新タイプは接写リングやテレコンバータと組み合わせることを前提に造られていない。等倍以上の撮影を望むなら旧タイプがお勧め」など。
皮肉なことに、旧タイプレンズの利点を謳えば謳うほど、段々と売りたくないという気持ちが出てきた。
そうこうしているうち、注文していた新タイプのレンズが到着した。それはズシリと重く、カタログで見るよりも大柄に思えた。
しかも説明書を読むと、このレンズは撮影距離によって露出倍数が掛かるとのことで、撮影距離ごとの補正量が一覧表として記載されていた。
「こんな表をいちいち持ち歩き、距離を見て補正するのは面倒だな。表を紛失してしまえば1メートル以下の距離では撮れない。」
新タイプ(左)と旧タイプ(右)の110mmマクロレンズ
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旧タイプレンズには、露出倍数についての記述は全く無い。接写リングやベローズを使うことで露出倍数を加えるということになっているが、少なくともレンズ単体では、最短撮影距離である0.66メートルまでは補正が要らない。
仕方が無いので、新タイプレンズには距離目盛りに補正値を書いたシールを貼って使うことにした。
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旧タイプ(PS110mmF4.0)
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新タイプ(PS110mmF4.5)
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レンズ構成
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4群6枚
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8群9枚
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絞り値
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4〜32(半絞り付)
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4.5〜32(半絞り付)
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最短撮影距離
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0.66m
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0.37m
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最大倍率
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1/4
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1/1
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フィルター
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径67mm
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径72mm
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サイズ
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高79x径83mm
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高107x径86mm
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重量
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685g
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940g
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新旧2種類のレンズをその場に並べると、これらのレンズが全く別のものであることを実感した。サイズや重量、使い勝手が全く違うため、単純に旧タイプを新タイプに置き換えることに無理を感ずる。
そう悟った瞬間、「しまった、オークションに出品している旧タイプレンズを引き上げねば」と思った。
急いでパソコンでアクセスすると、出品物にはウォッチリストは18件あったが、幸いなことに入札者は1人もいない。すぐさま中止処理を行った。
現在手元には、2種類のマクロレンズがある。
主に室内では新タイプを、野外では旧タイプを使うことになろう。それぞれに長所・短所があるためこのようなことになったが、取り立てて今必要を感じて購入したわけではない。これは、将来を見越した買い物である。
重要なのは、手に入らなくなる前に手に入れること。
マイナーな製品を愛するならば、そして後悔無く写真趣味を続けるならば、新・旧二種のレンズを同時に持つことになろうとも仕方あるまい。
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