2000/04/05
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[378] 2002年10月13日(日)
「職場写真」
NHKで「プロジェクトX」という番組がある。
広く使われている製品、ヒット商品、大規模建築、様々な偉業・・・。それらを生み出した人物や企業に焦点を当て、当時のエピソードをドラマチックに描く番組。
最近は、VHSビデオの開発ストーリーが映画化されたと聞く。
この番組では再現シーンが幾つか挿入されるが、それ以外は当時のスナップ写真をストップモーションで映し出し、それに淡々としたナレーションを被せている。それらの写真は、開発者それぞれのスナップであったり、メンバーの集合写真であったりする。中には、開発中と思われるような臨場的スナップもあった。
それにしても、番組を観ていつも思うことだが、登場する人物たちの写真がよく存在するものだと感心する。これらスナップ写真はどのようにして撮られているのだろうか。
我輩の場合、振り返ってみると職場関係のスナップのほとんどが飲み会等のシーンである。職場の日常スナップや集合写真などは全く無い。仕事をしていて写真に撮られるような機会など、どう考えても滅多に無かろう。
万一、何かの巡り合わせで我輩が偉業を成し遂げることになり、さらに「プロジェクトX」で紹介されるとしたら、我輩が用意出来る職場の写真など全く無い。これでは番組編集スタッフも苦労することだろう。
それにしても、我輩が偉業を成し遂げるかどうかはともかく、果たして本当に職場の写真は無いのか?それは多少気になる。もしかしたら、忘れられた写真がどこかにあるかも知れない。
そこで、久しぶりに写真の整理をすることにした。
昔はデジタルカメラも無く、またポラロイドパックも10枚撮り3千円と高価であるため、当時は手軽な撮影にはモノクロ写真を多用した。モノクロならば自家処理が原則であり、低コストで自分の思い通りに写真をコントロール出来る。
当時はT粒子というものを使った新モノクロフィルム「Kodak T-MAX」が目新しく、我輩もこのフィルムで高精細写真を追求していた。
当時、我輩は画質のみが写真の全てだと信じており、細かい描写が出来ているかどうかそればかりを考えて焼き上がった印画紙を隅から隅まで眺めていたものだった。
(もちろん、それはそれで写真の愉しみ方の一つと言える。粒状感の無いヌメッとした描写を見ると頭の中がスカッとした。実に気持ち良い。)
画質のみが写真の全てだということは、つまり被写体は何でも良いということでもある。
もっとも、被写体にこだわる時は本気の撮影であるから、モノクロなど使わずカラーリバーサルフィルムを使うだろう。モノクロであるから近所で目に付くものを撮影するのである。そして、すぐに帰って現像をした。
しかし近所の被写体など面白みも無い。すぐに飽きてしまい、次の身近な被写体を探していた。
「職場の写真でも撮ってみるか。」
当時、我輩はホストコンピュータのオペレータをやっていた。つまり、我輩の職場とはホストコンピュータのマシンルームのことである。滅多に撮るような場所でもないため、良い機会かとも考えた。何より、ゴチャゴチャ写って面白そうに思う。
だが、いくら大型エアコンやハードディスクの稼働音が響いていようとも、ゼンザブロニカの大きなシャッター音が皆の注目を集めるだろう。狙うなら、休日の当直日か。
当直日、我輩はカメラを持参しマシンルームに入った。当然ながら誰もいない。
コンソールからメインスイッチを入れる。ハードディスクを1基ずつ始動させると、段々と回転音が高まって行く。オペレーションマニュアルを見ながら起動プロセスを1つ1つ実行した。
全ての準備が揃いジョブが実行出来るようになるまでには暫く待たねばならない。
その間にカバンからゼンザブロニカを取り出し、40mm広角レンズを装着した。
ウェストレベルファインダーを上から覗き、左右反対に見えるその風景に向かってシャッターを切った・・・。
今思うと、この写真は懐かしい職場の風景を収めた貴重なカットである。
人こそ写っていないが、我輩の
記憶を補強するためのインデックス
となった。
「プロジェクトX」のような派手なプロジェクトとは全く縁が無いが、自分の辿った道というものは、あくまで本人にとっては1つのドラマである。
現在は装置全体が更新され、この風景はもはや無いと聞く。
我輩にとって貴重な職場の写真。
「プロジェクトX」のナレーションが聞こえてくるような気がした・・・。
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