2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
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10.アンケート
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カメラ雑文

[361] 2002年07月08日(月)
「長期休暇撮影2(別府撮影日記)」

昔々、大分別府の熱泉噴出地帯は「地獄」と呼ばれ恐れられていた。至る所で噴気が昇りグツグツと湯が沸き立つその光景。それはまさに、地獄絵に見るような光景として感じられたろう。
現在はその名残りとして、温泉噴出口は「地獄」と呼ばれている。
地下熱水が触れる地層の種類により、赤や青などの様々な色を呈する地獄。地獄の見本市の名に相応しく、見る者を飽きさせない。

●前準備
さて今回、長期休暇の撮影目標は、別府地獄巡りで知られる「龍巻地獄(間欠泉)」、「血の池地獄」、「白池地獄」、「金竜地獄」、「鬼山地獄」、「山地獄」、「海地獄」、「坊主地獄」の8ヵ所。となると、必要フィルム本数はどれくらいか。
120フィルムは、6x6サイズでは12枚撮りとなる。もし1カットにつき平均3枚の段階露出を行うとすれば、1本のフィルムでは4シーンしか撮影出来ない。仮に、地獄1つにフィルムを5本割り当てるとするなら、単純計算で40本必要か。手に入りにくいフィルムであるから、多めに60本用意した。それだけでもそこそこの重量になる。

さて、人の少ない平日に撮影を行う計画であるから、まずは日曜日である6月9日に新幹線で小倉へ向かうことにした。そしてそのついでに、新大阪駅で途中下車して1ヶ月後に撤去されるという大阪万博エキスポタワーを撮影しようと目論んだ。太陽の塔も撮るつもりである。'70年代フリークとしては、これは外せない。

今回の撮影では、移動時間を除いた3日間を撮影に割り当てている。
別府地獄巡り自体は1日あれば撮影可能であるが、天候に左右される撮影であるから、一応、予備日を2日間としている。もし順調に1日で撮り切れれば、あとの2日間は平尾台カルスト地形の撮影に使ってもいい。


●移動日
出発予定の日曜日の朝、目覚まし時計の音で起きると、時間は午前7時だった。安心した。これならばエキスポタワーに寄る時間がある。安心したら、フッと意識が遠退いた。
次に目が覚めると、もはや午前9時半だった。焦った。まだ準備さえ完全ではないのだから、家を出るまでに1時間半は掛かろう。
この日はエキスポタワーを諦めた。帰りに途中下車するしか無い。

さて、撮影に必要な機材は以前秩父鉄道撮影した時とほぼ同じ。ただし、フィルムが手に入る場所が未確認な為、多めに60本持って行くことにした。以前のように弾切れになると、今度は本当に取り返しがつかぬ。
着替えやら何やら細かいものが多いため、それだけのフィルムを入れるとカバンがかなり膨らむ。そして重さもバカにならない。

他にも、車中で食すためのサンドイッチを作ったり、茶を用意したりと時間が掛かり、結局家を出たのは昼近く。
新幹線は東京駅から乗るため自由席でも必ず座れるので良いのだが、気が急いていたためか間違えて喫煙車両に乗ってしまい、かと言って今さら席を明け渡すことも出来ず、小倉までの6時間はグッタリとした状態だった。

●撮影1日目
さて、次の日の撮影日は快晴。
「これは良い撮影になるな」と心躍る心境だった。
小倉駅から特急ソニックに乗ろうとしたが、毎度のことながら狙った列車には乗り遅れ、1時間遅れの出発となってしまった。
その1時間は小倉駅を撮影したり、ホームに停まっている列車を撮ったりして暇を潰した。余談だが、JR九州の車両は斬新なデザインのものが多いと感ずる。「特急ソニック」はもちろん、「コミュータートレイン(通勤型)」などもなかなかSF的で、特に「特急カモメ」は「銀河鉄道999」に登場する最新型ローカル列車のような雰囲気を感じた。


−コミュータートレイン−

さて、別府駅に着くと早速バスに乗り、まずは1つ目の地獄「龍巻地獄(間欠泉)」へと向かった。
現地に着いた時、時間は既に午前11時を回っていた。小倉駅で1列車乗り遅れたことが悔やまれた。
昔、オフシーズンにここを訪れた時は、観光客は4〜5人しかいなかった。今回もそうだと思っていた。
ところが入ってみると意外にも50人はいる。そのほとんどは外国人である。
その時、我輩はやっと気付いた。サッカーのワールドカップが隣の大分市で開催中なのだ。メキシコやイタリアのサポーター達が試合の無い日に隣の別府まで遊びに来るらしい。これは計算外・・・。
龍巻地獄は間欠泉であるから、タイミングが全て。30分くらい待って熱泉が吹き出し始めるが、それは数分で収まってしまう。
案の定、吹き出しが始まると多くのギャラリーが人垣となって吹き出し口周辺を固めた。我輩はヤキモキしていたが、それもしばらくの辛抱。恐らく噴出を2分も見ていれば飽きてくるはず。いつもならば、その後はギャラリーがベンチのほうに下がってくれる。その後の1〜2分が勝負となる。ただし、外国人の行動は読めないので、今回はどうなるかと少し心配であった。
とりあえず待ち時間にデジタルカメラ「CAMEDIA C-700 Ultra Zoom」を使って測光。ビューファインダー形式の液晶モニタは強い外光に惑わされないのが良い。設定値は迷い無く決まった。
さて、肝心の撮影については特に問題も無く完了。噴出が収まれば長くとどまる理由も無い。

次はその隣にある「血の池地獄」。
ここは、水底に積もる酸化鉄の泥によって赤みが現れている。前回訪れた時よりも一層赤みが増していたのは好都合であった。
しかし、ここでも20人くらいの外国人サポーターがおり、派手なお揃いのシャツと帽子で記念撮影をしていた。なぜか、シャッターを切るときに「ガンバレ、ニッポン!!」と叫んでいた。
10分くらい待機していると外国人たちは引き上げて行ったため、我輩は撮影を始めることが出来た。

次は「白池地獄」であるが、現在地点の龍巻地獄や血の池地獄は他の地獄とは離れており、そこに行くためにバスに乗って移動した。
白池地獄では、文字通り白い地獄で、デジタルカメラでの撮影画像を見ると色乗りが悪そうだった。・・・と思っていると、雲も出てきてコントラストも低下して画面のメリハリも無くなった。
ここはあまり派手でもなく、通路も狭いためか、入った人も長く居ない様子。ここでは外国人サポーターは全く見なかった。

次に、向かいの「金竜地獄」へ行く。
ここには12体の守護神が祀られており、地獄に神という妙な取り合わせとなっている。
ここでは、我輩の守護神である不動明王像を正面から撮影した。この像はここへ来ると必ず撮影している。
近くには龍の像が立ち上がり、口から白い蒸気が噴き出てていた。心なしか気温も下がってきたようで、どうも蒸気の量が多い。写真を撮ろうとしても画面内が真っ白に見えることがあり、ヘタをするとフィルター面が蒸気にまといつかれ結露する。風向きが変わるまで暫く待つことが多くなった。

その次は「鬼山地獄」。
ここでは温泉の湯を用いてワニが飼育されており、冬でもワニが快適に過ごしている。我輩の注目するのは、その中に1尾、古代ワニである「ガビアル」がいることだった。ガビアルは、口先が他の種類のワニよりも細長くなっており、一目でそれと判る。だが、危険動物であるから柵が厳重で、撮影アングルは上から撮るだけの単調なものにならざるを得なかった。
デジタルカメラでその画像をチェックしていると、ワニ水槽の水面に上空の雲が映っているのに気付いた。妙に雲が多いな。

次は「かまど地獄」。 外観の撮影をしていると、ポツリポツリと雨が降ってきた。急いで外観の撮影を済ませ、かまど地獄の建物の中に入った。
雨は最初、小雨程度であり、暫く待っていればやむのではないかと期待した。しかし、期待に反して空が暗くなり、雨の降り方が安定してきた。
仕方無く雨も構わずに撮影をしたが、デジタルカメラの映像を見るとあまりパッとしないので気持ちが沈む。しかしそうは言っても、このまま梅雨入りし予備日も含め雨天となることもあり得る。そのような最悪の事態を予想し、とりあえずこの天候の下でも撮影は続行する事にした。

次の「山地獄」では、広い駐車場からまず外観を撮影。しかしカメラが雨滴で濡れるので、撮影するごとにタオルで拭く。Newマミヤ6は水には弱そうに見えるので少し不安になる。
雨は時間とともに本降りとなり、山地獄の売店でビニール傘を買った。
山地獄では、岩肌からは蒸気が噴き出している。だが、雨で気温が低下したためか、辺り一面真っ白になるくらいの蒸気が立ちこめ、写真を撮る対象が見通せない。しばらく待っていると、風向きによっては蒸気が晴れることがある。そういう瞬間を狙ってシャッターを切るのだが、段階露出の3枚撮るのは難しい。1枚撮っては数分待ち、また1枚撮っては数分待つ、ということを繰り返す。根気との勝負。
ふと気付くと、後ろに回したカメラバックが雨に打たれていた。傘が小さいから、カメラのほうをかばうとバッグが濡れてしまうのは仕方無い。さすがにバッグの中身までは浸水すると一大事だが。

山地獄を抜けると、今度は「海地獄」の入口が雨に霞んで見えた。入口前の広い駐車場には水流が現れていた。もはや、にわか雨や夕立ちというレベルではない。
露出計代わりのデジタルカメラの映像を見ても、映像のコントラストが低くなっているのが判り、自分自身のテンションも下がっているのを感じた。
「こりゃあ、シャッターのムダ切りかも知れん・・・。」 それでも我輩は海地獄の入口を抜け、写真を撮った。今日よりも明日、明日よりも明後日のほうが雨が激しいかも知れない。もしそうだとしたら、今日のうちに撮影せねば後悔を残す。我輩を支えるのは、ただその想いだけであった。
しかしその想いも、海地獄の水面を見て潰(つい)えた。最も海地獄らしいコバルトブルーの色が伝わってこない。硫酸鉄に由来する鮮やかなブルーの水面が、モヤの中でかろうじて見えるのみ。
「もはや、これまで・・・。」
無念であるがカメラをしまい込み、力無く帰り支度を始めた。

実家に帰り、天気予報を見ると、台風が沖縄に近付いている影響で雨が続くという。ただし、2日後はなぜか快晴の予報。何かの間違いではないかと思うものの、それに望みを賭けてその日まで待つことにした。

●撮影2日目
2日後、予報通り晴れた。多少、青空にうっすらと雲が被っているような気がする。まあ、陽が高くなって気温が上がればそれも消えよう。
今度は前回よりも早く家を出た。

さて、雨が降り出したのは「かまど地獄」からだった。今回はそこからやり直すことにした。順調に「山地獄」、「海地獄」と進んで行く。このペースでは午前中に撮影が終わるかも知れない。
ところが、海地獄のコバルトブルーを撮ろうとした時、どうも様子がおかしいことに気付いた。
そこには外国人が20人ほどいて何やら業務用ビデオカメラを回している。カメラの数も1台だけでなく4〜5台もあろうか。何だ、コイツらは?

我輩はとりあえず、コバルトブルーの水面を撮影しようと手すりに寄りかかってカメラを構えた。すると、1人の外国人が我輩のほうにやって来て「スミマセン」と言うではないか。彼はビデオカメラを指さし、そして我輩に手を合わせている。直訳すると、「我々ハ取材ヲシテイルノダガ、アナタガ邪魔ニナッテイル。スマナイガ退イテモラエナイカ?」という感じか。
仕方無いので下がった。

暫く待っていると、探検隊の格好をした変なヤツが現れ、ビデオカメラの前に立った。ナイロン的光沢の金髪に、バスケットボールが入っているかのように巨大で真ん丸い胸。これは女装なのか?しかし本物の女性だとしても、どう見ても真面目な格好では無い。


途中、打ち合わせか何かだろうか、スタッフらしき1人が「ナオミ!ナオーミ!」と誰かを呼んでいる。すると、日本人の小柄な女性が走り寄り、通訳を始めた。ナオミの話によると、どうやらその金髪野郎はメキシコで有名なコメディアンらしい。ワールドカップの取材の一環として、別府の地獄巡りの紹介をしているそうだ。

まあ、取材とは言ってもこちらも金を払って海地獄を観覧している。あちらが邪魔だと主張するならば、こちらも邪魔だと主張したい。
しかし我輩は、おとなしくベンチに座って待つことにした。持ってきた弁当など食べながら見ていたが、テレビクルーというのはどの国でも自分勝手だな。他の観覧者たちの流れを遮って取材を続けている。しかも金髪野郎のカットがなかなか納得行かないらしく、30回以上も撮り直しをしているのが正直ムカついた。コイツらを写真に入れるのは死んでも避けたい(デジタルカメラのほうには収めたが)。
待っている時間を他の地獄で撮影したかったのだが、せっかく海地獄の入場料を払っているのがムダになる。

2時間半後、やっと撮影クルーの撤収が始まった。近くに設置してあったパラボラアンテナも解体されて撮影機材とともに運ばれて行った。
「やれやれ、やっと撮影が出来る。」
我輩はデジタルカメラで露出を測り、入射光式露出計で最終確認をした。そして、お待ちかねのNewマミヤ6を構えてピント調整をしている時、ビデオカメラを担いだ野郎がフレーム内に入ってきた。そいつは、あろうことか我輩がカメラを構えている真ん前で我輩と同じアングルでビデオ撮影を始めた。まるで、「おっと、撮り忘れたカットがあった」とでも言うかのように。
人が撮影している前で割り込んで撮影を始めるというのは、悪行以外の何ものでも無い。思わずソイツのケツを蹴り飛ばしそうになったが、国際問題に発展すると面倒なので、上げた片足を静かに下ろした。

(1)
(2)
この構図で撮ろうと考えていたら・・・ このバカタレが割り込んできやがった。

そもそもテレビ撮影クルーというのは、どうも「自分の仕事が全てに優先する」と勘違いしているようだ。昔(独身時代)、池袋や渋谷で遭遇した撮影クルーでも、その図々しさは度を超していた。いきなりカメラを向け、くだらないクイズを出してくる。我輩は女性と歩いているところをテレビ放送されたくなかったので、「何を勝手に撮影するか」と言うと「バラエティ番組の撮影です」と今更ながらに言う。そういうことは撮る前に言え。「名刺を渡せ」と言っても「持っていない」と逃げる。おまえら、我輩がノリを合わせて応対するとでも思ったか?カメラを向けられれば愛想笑いの1つでもすると思ったか?
結局その場面は、放送しないという口約束させるだけで終わった。

・・・閑話休題。
結局、この海地獄だけで3時間近くの時間を浪費した。
急いで撮影を済ませ、次の目的地を目指す。

最後は、泥を噴き出す「坊主地獄」。
暑い日差しの中、坂道を上って行く。先ほどの待ち時間が精神的に影響を与え、何でもない坂道が非常に重い。まさか、次の坊主地獄でもテレビ撮影クルーが待ち伏せして我輩に嫌がらせをしようと企んでいるのでは・・・?
しかし、それは杞憂だった。我輩の他に観光客は2〜3人しかおらず、少し待っているだけで視界から人がいなくなる。この調子では、15分もあれば撮影が終わろう。あとはバスで駅まで戻り、いつでも撮ることの出来る「別府タワー」でも撮影するか。

そんな時、カメラバックの底を探る手に触れるフィルムの少なさに気付いた。最初、10本入りのカートンが他にあると思っていたのだが、よくよく探してみると、本当にフィルムがあと数本しか無いではないか。そこでハッと気付いた。
「しまった、雨天での撮影分が今日の撮影分とダブってたのを忘れていた。」
ムダだと思いながらも雨天で撮影した分、フィルムを余分に消費していたのである。
「ウーム、別府タワーの撮影はいつでも良いのだから、大阪の撮影のために今回は止めておくか。しかし、今止めたところでフィルム1〜2本節約するくらいにしかならぬ・・・。」
暫く悩んだ末、別府タワーの撮影は予定通り行い、足りないフィルムについては小倉で調達することにした。さすがに、北九州の中心都市小倉ならばフィルム入手は問題無かろう。

別府タワー撮影後、我輩は別府から特急ソニックに乗り、小倉に向かった。
席は空いており、2人掛けシートに一人座り、車窓から見える青い空を眺めながら「今頃、会社の同僚は仕事をしているかなあ」などとボンヤリ考えたりした。
それにしても、小さなハプニングが続いたことにより、事前の覚悟を上回る疲労があった。
別府での撮影が終わったということで、多少、気も抜けていた。
次の日は万博記念公園での撮影が待っている。こんな気持ちで、果たして途中下車して撮影することが出来るだろうか・・・。

この写真を撮るだけで3時間も掛かったわけだ