2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
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5.カメラ雑文
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カメラ雑文

[254] 2001年04月14日(土)
「ジンクス」

他の者はどうか知らないが、我輩は子供の頃から下らないこだわりを持っていた。
例えば、「横断歩道の白いラインを踏み外してはならない」とか、「ゴミ箱に投げ入れようとしたゴミが外れたら、もう一度同じ場所に戻って投げ直す」とか・・・。
そういうのはこだわりというよりも、一種のジンクスと言ったほうがいいかも知れぬ。
そして大人になった現在でも、我輩はジンクスをいくつか持つ。その中には当然、写真に関するジンクスもある。

「トリミングしなければならない写真は失敗である。」
これもそのジンクスの1つだ。
ジンクスというのは、端から見ると実に滑稽なことだろう。当の本人でさえも、そのジンクスが本当に影響あるものとは思っていない。だが、そのジンクスを破るのはどうにも気持ちが悪い。だから、ジンクスが継続してしまう。

ジンクスには理由など無い。「ただ、そう思っただけ」ということでしかない。これは右脳的判断(感性と無意識の感情)に基づいた行動である。
一方、左脳的判断(論理的思考)に基づいた行動が強い人間には、恐らくはジンクスなど笑い話に過ぎないだろう。理屈に合わないことでなぜ行動を制限されるのかと考える。

普通に考えると、トリミングすればそれだけ写真の拡大率が大きくなるために画質が粗くなる。しかしフィルム性能の向上した現代、過去に撮影したノートリミングの写真よりもトリミングした現代の写真のほうが圧倒的に高画質な場合がある。だから、単純に画質の問題ではないことが解る。
これは、完全に我輩のジンクスなのだ。

もっとも、リバーサルフィルムの場合では、マウントして鑑賞(スライド映写)することが前提となり、ノートリミングは当たり前のことと言えるだろう。
しかし今では、パソコンへの写真取り込みが手軽に出来るようになり、そのような簡易的用途ならばトリミングも納得出来るようになってきた。
だがそれでもまだ、理屈でムリに納得させられているような気持ちがあり、やはりトリミングせねばならぬ写真はどうにも悩ましい存在だ。
もし同じ撮影シチュエーションを与えられたならば、もう一度撮り直したいと思う。

(例外的に、6x6サイズで撮影した写真は、真四角な写真をトリミングする前提で使うこともある。例えばカメラを写した写真などは、カメラの横長に合わせたトリミングをするつもりで撮影した。)


さて、我輩は先日、心霊騒動がらみで二枚ほど写経をした。
写経というのは、言わずと知れた、「般若心経を書き写す作業」である。

写経は、一気に書き切らねばならぬ。途中で筆を置けばそれで終わりだ。その後用事を終え、続きを書き始めたとしても、それはもはや写経ではない。仕上がりが同じに見えても、書いた本人が中座したことを自覚している。その心が違う。
自分が妥協無く書いたかどうか。妥協しない姿勢を自らに問う行為、それが写経の真の意味である。その心を以てして初めて、先祖霊の成仏が叶うのだ。

写経などは、書くこと自体がジンクスと言えなくもない。だから、書く者の心が一番重要なのは当たり前と言える。
「ちょっと間違えたくらいならいいか」と思うこともあるが、書き進めていくうちに、だんだん気持ちが落ち着かなくなる。気になって仕方がない。自分を誤魔化すことは、写経というジンクス自体の意味を失わせることに気付く。だから、誰も見ていなくても最初からやり直すのだ。

我輩は、写真も写経のように考えることがある。
何でもないことであっても、自分のジンクスに触れている部分については、自分を許すことが出来ない。それを許してしまえば、自分のやっていることの意味を失ってしまうことだろう。

他人から見れば下らないジンクスに囚われた哀れなバカ者と映っても、我輩はジンクスに無理な理由を求めない。それは、続けることに意味を持つ。
ジンクスを破ってしまえば、今までの努力は無となるしかない。無にしないために続ける。それがジンクスである。

ダイヤル式カメラを使うのは決してジンクスじゃないぞ。確たる意味を持ち、信念を以て選び使う。