2000/04/05
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カメラ雑文

[847] 2015年08月16日(日)
「セミの撮り方」


セミを撮る方法は、「ゆっくり静かに近付いて撮る」ということ。
以上。
話はこれで9割方終わってしまったが、これは我輩の得た結論である。

去年の夏、雑文821「予定外にセミを撮る」にて、セミを撮ったエピソードを書いた。
この時はたまたまセミを撮る状況に遭遇したため、当初は撮る予定が無かったセミだったが、せっかくだからと撮影したものであった。動かない静物をテーブルトップスタジオ撮影のように撮ったに過ぎない。

低い木々が生い茂った野道を歩くと、セミたちが次々に飛んで逃げていく。我輩の気配が近いからである。つまり、セミは人間が近付くと逃げるのだ。
そんなセミを間近に撮影するのは難しく、ジックリと撮るとすれば力尽きる直前か、あるいは羽化直後しかあるまい。
望遠レンズで遠くから狙う方法もあるが、遠近感が圧縮されるので、肉眼的感覚から離れて臨場感は乏しくなる。

ある時、公園の野道を歩いていると、例のように我輩の気配を察知したセミたちが乱舞した。セミの最盛期らしくその数はすさまじく、中には我輩めがけて飛んでくるセミもいる。だから両手を振ってセミを防ぐしかない。 ところがふと気付くと、胸元にセミが1匹留まっているではないか。
そこで我輩は思った。
「こいつら、実はバカなのか?」

当初、セミは人間から逃げようとして飛んでいるのかと思っていたが、実は水をかき回して濁らせるかのように、ただ単純に物音や大きな動きに驚いているだけなのだ。そして濁りが沈殿してたまたま留まったのが我輩の胸元だったということである。それはつまり、人間から逃げるという発想ではない。

ならばと、試しにゆっくりと音を立てずに近付いてみたところ、セミは全く気にする様子も無いではないか。
なんとこれには我輩も驚いた。
そこでゆっくりとカメラを構え、そしてストロボも向けた。ちょうど、セミを取り囲むようにしているわけだが、セミはそれでも逃げない。

「しかしさすがにストロボの強い閃光で驚いて1枚しか撮れないだろう」
そう思いながらシャッターを切ったが、セミはストロボ光に驚く様子も無く、ジッとそこにいる。

<アブラゼミ>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
アブラゼミ
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark2/12-40mm F2.8/ISO200/F9.0/1/200sec./FLASH

その後、我輩は50枚近くストロボ撮影したわけだが、セミは全く気にすること無く、目の前で大きな音で鳴き始めた。
この時初めて、我輩は「セミを制した」と感じた。

もちろん、長年セミを被写体にしているカメラマンや、セミの研究者から見れば今さら感が強いだろうが、我輩の撮影常識が覆ったという意味では大きな発見であった。

次の写真は、外光が強過ぎてストロボ撮影時に絞りが大きくなることを防ぐためにND8減光フィルターを使ったものである。
そのためストロボ出力は比較的大きく、人間相手ならば目が眩むであろう。

<ND8減光フィルターで撮影したアブラゼミ>
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ND8減光フィルターで撮影したアブラゼミ
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark2/12-40mm F2.8/ISO200/F2.8/1/250sec./FLASH

ところがこの大光量撮影でもセミは全く動じない。もしかしたら閃光が早過ぎて知覚出来ないのだろうか。

その後、セミを替えて撮影していったが、どのセミも、ゆっくり近付けばどれほど囲まれようとも気にしないようだった。

<ストロボとカメラで囲んだ状態で撮影>
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ストロボとカメラで囲んだ状態で撮影
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark2/12-40mm F2.8/ISO400/F10/1/100sec./FLASH

ただし、クマゼミはちょっと挙動が違っていた。
我輩がゆっくりと近付くと、クマゼミは鳴きながらもゆっくり我輩から遠ざかるように移動していく。つまりクマゼミは我輩のことを認識しているらしい。
しかしそれでも飛んで逃げないのは、ゆっくり近付けば脅威とは思わないということか。

<クマゼミは近付き過ぎると移動していく>
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クマゼミは近付き過ぎると移動していく
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark2/12-40mm F2.8/ISO400/F9.0/1/250sec./FLASH

この移動していく挙動は、もしかしたらクマゼミだからという話ではなく、個体差か、あるいはその場の状況の違いによるのかも知れないが、いずれにせよ、セミを撮るのに支障があるような問題ではない。なぜならば、しつこく追っていくとクマゼミのほうも途中で諦めて定位置に留まったからである。

<定位置に留まったクマゼミ>
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定位置に留まったクマゼミ
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark2/12-40mm F2.8/ISO400/F13/1/250sec./FLASH

ちなみに、ISO400で撮影しているカットがあるが、それは前の日に夜景を撮影した際に感度を上げたままの設定ミスである。日中シンクロ撮影で高感度は禁物であることは言うまでも無い。そうでなくば、ND減光フィルターを使うはずもない。

<ND8減光フィルターで撮影したアブラゼミ>
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ND8減光フィルターで撮影したアブラゼミ
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark2/12-40mm F2.8/ISO200/F2.8/1/250sec./FLASH

アブラゼミのほうは、当初は我輩の存在を認識していないのかと思っていたが、調子に乗って近付き過ぎたり、あるいはちょっと動きが大きくなり過ぎると、鳴き声が急に止まることがある。そういう時はジッと動かないでいると、また再び鳴き出す。
オスの撮影限定ではあるが、鳴き声でボーダーラインを判断するのも良いだろう。

<アブラゼミ>
(※画像クリックで長辺1200ドットの画像が別ウィンドウで開く)
正体不明の不気味な植物の実
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark2/12-40mm F2.8/ISO200/F4.0/1/250sec./FLASH