[749] 2012年03月08日(木)
「わらしべ長者」
貧乏人がわらしべをスタートにして、出会う人たちと物を交換していき、最後には長者にまで行き着くという有名な昔話がある。いわゆる「わらしべ長者」である。
我輩は長者になったわけではないが、最初の品物が価値の違う物へ換わっていくことはよくあること。
例えば、これは「逆わらしべ長者」とでも言ったほうが良いのだろうか、交換していくうちに価値がどんどん落ちて行くような状況がある。
「Nikon F3H+MD-4H」(約63万円)から始まり、それを10年後に売却して33万円を得て「Canon EOS5D Mark2レンズキット」を約32万円でを購入。
そして1年後に約23万円で売却し、「Nikon D700ボディ(中古)」を約15万円で購入した。
この価値の低下には目を覆いたくなるほどであるが、これは銀塩カメラの暴落のために起きたことで、似たような事はどこでも起きていることではないかと想像する。
しかしながら、物の価値というのは人によって異なる。だからこそわらしべ長者の物語が成立するのであって、必要とする者がいれば価値が高くなるということがわらしべ長者の本質であろう。
この場合、我輩が「Nikon F3H+MD-4H」に対して初期の値段である63万円の価値を認めている限りは、ずっとその価値を持ち続けていることになる。他の誰かが「そのカメラは30万円の価値しかないから30万円で売ってくれ」と言われても、我輩自身が63万円の価値があると思えば、それ以下の提示価格では売ることは無い。
ところが問題は、当時の我輩がフルサイズデジタルカメラを欲していたということだった。
その金策のため、「F3H」を市場価格に合わせて価値を下げて現金化したことで、結果的に銀塩カメラの暴落の流れに乗ってしまったということなのだ。
さて、もう1つ別の話だが、こちらは普通のわらしべ長者的な話と言える。
まず最初は3,500円のコンパクトデジタルカメラ「PENTAX Optio E40」であった。
これは豚児に使わせるためのカメラとして「カメラのキタムラ」で中古購入したものだが、その後「PENTAX istDS」を与えたことにより、「Optio E40」の用途が完全に無くなってしまった。ヘナチョコ妻に使わせてみようと思ったが、ほとんど机の引き出しに仕舞い込んでいる状態だった。
単3電池2本で動くデジタルカメラはいつまでも使えるのでもったいない。
<PENTAX Optio E40> |
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そんなある日、勤務先のオイちゃん(再雇用社員)が我輩に訊いてきた。
「知り合いからもらったカメラがあるんだけど、どれくらい価値があるのか見てもらえる? 一眼レフなんだけどね、CanonとNikonのやつ。」
「一眼レフって、フィルム使うやつですか? ああそうですか。でもフィルム使うやつは暴落してますからねー。」
「ああ、そうなんだ。2台あるんだけどね、今度持って来るから見てもらえる?」
どんなカメラなのか興味があるが、まあ、タダでもらったというならそれほど高価なものではあるまい。そもそも、シロウトの言う「一眼レフ」ほど当てにならぬものは無い。まさかの「Canonオートボーイ」というオチだったら笑える。まあせいぜい「Canon T50オートマン」くらいか。
次の日、オイちゃんがカメラを持って来たので見てみると、それは「Canon A-1」だった。
驚いたことに、ほぼ無傷のピカピカであった。
<ピカピカのCanon A-1> |
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「これは・・・すごいなぁ!」
「えっ、価値があんの?高いの?」
「あ、いや、電気式カメラは修理不能だからそんなに価値は無いんでしょうがね、でもこんなにキレイなのは珍しいなぁと。」
オイちゃんは少々ガッカリした様子だった。
「あそう、じゃあこれは自分で使おうかなぁ。それからもう1台あるんだけどこっちも安いかなぁ?」
そう言いながら2台目のカメラを出した。
それは、「Nikon F2アイレベル」であった。
ペンタ部にヘコみがあり、モルトプレーンがボロボロ、そして全体的にホコリを被っていたが、機械式カメラならばそれなりに価値はある。しかも腐ってもフラグシップカメラ。
「F2とはすごいなぁ、こっちはA-1よりは高いんじゃないですかね。メンテが必要ですけど。」
「え、そうなの? こっちのほうが安いと思った。」
シャッターの感触はシャキンとして気持ち良い。巻き上げもスムーズ、ガバナーの音も滑らかである。劣化したモルトプレーンを除去すればすぐにでも使えるのではないかと思った。
「だったらこっち使ってみようかなぁ」とオイちゃんは興味を持ったようだ。
しかしこちらは露出計の付いていないアイレベルファインダー。そのことを伝えると、「あー、じゃあオレには使えんなぁ。」と諦めた様子。
そこで我輩から、インターネットのオークションに出せば数万円で売れるのではないかと提案したところ、そういうのはとてもじゃないが難しいということで、色々と話した結果、我輩の「PENTAX Optio E40」と交換することで話がついた。
我輩としては、3,500円の安物との交換は気が引けたが、オイちゃんによれば「どうせ使い道が無いのでタダであげてもいいくらい」とのこと。むしろデジタルカメラが手に入るということで喜んでいた。
思いがけず手にした「Nikon F2アイレベル」。
自宅に持ち帰り、モルトプレーン除去と外装のホコリ拭きをしたところ、なかなか程度の良い状態になった。さすがに往年のフラグシップだけあり、その存在感は特別なものがある。
<Nikon F2アイレベル> |
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だが35mmフィルムを使う機会がめっきり減った現状では、「F2」の順番はまず回ってこない。
我輩の場合、35mmフィルムのメインは「F3」、そしてサブも「F3」である。恐らく「F2」はそのまま使わずに終わるだろう。
結局、「F2」はネットオークションに出品することにした。やはり使ってもらえる環境にいたほうが良いだろう。オイちゃんも、我輩ならばこのカメラを活用してもらえると思ったであろうから、我輩もその気持ちを大切にして、このカメラを活用出来る者の元に贈りたい。
・・・いや、本音はただ換金したいだけだが。
ちょうど、「OLYMPUS OM-D E-M5」の金策に悩んでいた時と重なり、少しでも足しになればという気持ちもあった。
結果的に、「F2」は2万数千円で落札された。同時に出品した「PENTAX K-x」と交換レンズの落札金額と合わせると11万円。これで「OLYMPUS OM-D E-M5」の購入の足しにすることが出来た。
最初は3,500円の安物が、最後には「OLYMPUS OM-D E-M5」になったわけである。もちろん全てが賄(まかな)われたわけではないが「OM-D」の一部にはなったことは確か。ボディ価格9万円とすると3割くらいの充当率か。
いずれは忘れられ消え去るはずの3,500円のわらしべが、「Nikon F2」を経由し「OM-D」に姿を変えて我輩の元で活躍することを考えると、わらしべ長者の気分を少し味わえたような気になった。
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