[716] 2011年02月09日(水)
「PENTAXのデジタル一眼レフ導入記(その3)」
我輩は小学生の頃、幾つか習い事をした記憶がある。確か、1年生くらいの頃は筆習字で、3〜4年生くらいの頃はピアノを習った。
しかし我輩は習い事というものが馴染まないようで、どちらもすぐにやめてしまった。
最近見たウェブ記事によれば、子供の習い事では水泳・英会話・ピアノが定番らしい。そういえば豚児も水泳を習っているし、近所の子供はピアノを習っていると聞く。
親の立場としては、将来役立つような習い事であれば大いに結構だと思うが、もしそうでない習い事ならば、費用もかかることでもあるし考え直したいところ。
元々我輩は、学生の教育というのは広い知識を得て人間を形成させることが主であるという考えを持っている(参考: 雑文255)。だから、職業訓練的な意味の習い事はさせたくはなかった。
しかし未曾有の不景気と就職難を前にすると、さすがに将来役立つかどうかというところを気にするようになった。
今やっている水泳が将来役立つかどうかは分らないが、あまり具体的なイメージは涌かない。根気や根性が身に付いたようにも見えず、ならば他の習い事をさせるべきだろうかと考えたりもする。
ピアノも同じく将来役立つかどうか分らないし、周囲の子供も多くやっているので、相当努力しなければ技能と言えるくらいまで突出することは難しい。もちろん、本人がやりたいと言えばやらせてやっても良かろうが、豚児にはそういう雰囲気も無い。
英会話などは将来大いに役に立つだろうとは思うが、英語というのは使う環境が無ければすぐにサビ付く。だから日本語の環境にいる限り、英会話はずっと習い続けねばその能力を維持することは難しい。もちろん本人がやりたいと希望すれば検討しないでもないが、今のところ、自宅でアルファベットと簡単な単語を勉強をさせて様子を見ている状況。
そんな時、豚児が書いたカードが落ちているのを見付けた。それは「ねがいごと」というカードで、記入欄には豚児の字で「カメラマンになる」と書かれていた。
「おまえはケーキ屋さんになるんじゃなかったのか?」と聞いてみると、ニヤニヤ笑っていた。
以前、授業参観で算数の問題が解けなかった豚児に対し、「お金の計算が出来ないとケーキ屋さんにはなれないぞ」とからかったことがあったのだが、それでケーキ屋になることを諦めたか?
<豚児が書いたカード> |
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ただ、カメラマンになるのは無理だとしても、カメラ・写真に関する勉強も習い事としては面白いかも知れない、とその時初めて思い付いた。
恐らく、習い事としては誰もそんなことをやっている子供はおるまい。なぜなら、写真などシャッターボタンを押すだけで簡単に写るのであるから、一般的には習い事して教わるという発想は無いからだ。
もちろん、巷には写真教室というものもあるが、それはカルチャースクールのように主婦・高齢者向けのものが多いし、教える内容も趣味的なものでしか無い。子供に対して基本を厳しく叩き込むような、そんなガチンコ塾的な気合いの入ったところなど聞いたことが無い。
だが我輩ならば、それが可能である。我輩が直々に豚児に教えるのだ。
今は銀塩カメラを使ったこともない若造がデジタルカメラで写真を始める時代。適当に撮れば写る。
思い通りに写っていなければ、結果を見ながら調整していくだけ。「思い通りに写ったか?」のYes/No判定で、Yesになるまで繰り返せば良い。まさに、単純なフィードバック制御。写真の基本理論すら必要としない。
昔は、撮影した結果はポラロイド写真でもない限り、すぐその場では分からなかった。だから、結果を見ぬまま撮影を進めねばならなかったという事情がある。思い通りの写真を写すためには、「こうやればこういう結果になる」という予想が立てられるよう、カメラと写真の基本理論が絶対に必要だったのだ。
そしてその基本理論があるからこそ、自分の写真哲学を形成するための土台とすることが出来るのである。
とはいえ、豚児はまだ難しい漢字は読めず、横文字はおろかアルファベットすら最近教え始めた程度であるから、言葉で教えてすぐに理解出来る段階ではない。
だから今は、写真撮影の基本動作習得から始めることになろう。
そう言えば去年、職場の日帰り社員旅行に豚児を連れて行く際に、豚児が自分で写真が撮れるよう3千5百円の中古コンパクトデジタルカメラを買って与えてやった。
<3千5百円の中古コンパクトデジタルカメラ> |
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その時は、写真を学ばせようという意識は無く、ただ単に「自分で写真を撮って楽しめ」という程度であった。
しかし今考えると、そのカメラはコンパクトタイプのため起動や撮影動作が遅く、かなり使い辛い。そんなカメラでは、豚児が写真を撮る楽しさに到達出来ないかも知れぬ。
そうでなくとも、写真を学ぶには一眼レフでなければならない理由がある。
世間一般には"一眼レフカメラ"と言うと「高級な」とか「本格的な」という印象があるかも知れないが、それは一眼レフカメラの本質ではない。
一眼レフカメラは、コンポーネントによる汎用性が銀塩時代から続く大きな特色だった。カメラボディ、レンズ、ストロボなどのコンポーネントが明確に分かれており、それぞれに分かれた役割が理解しやすい。
そして、機能や特徴の異なるコンポーネントに取り替えることにより、場面ごと撮影に適した形態を持たせることが出来る。それは、各コンポーネントの性格や役割を正しく理解していなければ適切に組み合わせることは出来ず、そこに使い手の知識と経験が求められるのである。それ故、知識が無くても使える一眼レフカメラというのは存在し得ないということになる。
そういうわけで今回、安価な一眼レフカメラを豚児に買い与えてみることにした。
本当はフィルム式のカメラを使わせたいところだが、コストがかかり過ぎるので今の時代では難しい。そこで、最近気になっていた1万円未満の中古デジタル一眼レフカメラを買おうと思う。
一応念のため、豚児に聞いてみた。
「本格的なカメラ買うてやろう思うんやけんど、使いきるか?(手に負えるか?)」
すると、豚児は目を大きく見開き「使いきる!」とうなずいた。
ならば、買ってやることにするか。
中古カメラ検索では、昔のデジタル一眼レフカメラが安く出ている。
その多くが、600万画素クラスの「Canon EOS Kissデジタル」か「PENTAX ist Dシリーズ」である。モノによっては6千円くらいで出ていることもあるが、さすがにその値段ではすぐに売れてしまう。
それよりも前の世代のカメラならばもっと安いのではないかと思ったりもするが、その時代はデジタル一眼レフカメラが本当に高価だった頃なので、そもそもタマ数が少なく今となってはなかなか見付けられない。
そういうわけで、安定して手に入る最安値としては、やはり1万円前後となる。
その価格帯の中には数種の機種があるわけだが、PENTAXで限定すると「*ist D」、「*ist DS」、「*ist DL」などが見付かる。
ちなみにそれぞれの機種を調べてみたところ、「*ist D」が初代、そしてその後継機が「*ist DS」と「*ist DL」という位置付けで、「DS」のほうは ペンタプリズム式ファインダー、「DL」のほうは ペンタミラー式ファインダーとなっているらしい。
まあ、我輩の「K-x」がペンタミラーであるから、豚児用のカメラがペンタミラーでも別に気にする必要はあるまいと思ったが、やはり最初はマニュアルフォーカスを練習させたほうが良かろう。
ならば、少々重くなるがファインダー像の大きい「*ist DS」が適当かと思う。
そこで早速、 中古カメラ検索でヒットした中から、マップカメラの「*ist DS」を注文した。値段は8千8百円。2004年発売当時には10万円くらいだったそうなので、タイムスリップしたと思えばかなり安い。
カード決済としたので発送は早く、注文受付翌日に届いた。
レンズについては、ちょうどAFズームレンズ「DA18-55mm」が余っているのだが、マニュアルフォーカスを練習させるという趣旨から言うと、マニュアルレンズを着けてやったほうが良かろう。
手持ちにシグマの単焦点24mmレンズがあったので、これを着けてやった。
<8千8百円のPENTAX *ist DSとシグマ24mmレンズ> |
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やはり、マニュアルフォーカスの練習をさせるならばマニュアルレンズ、しかもズームレンズではなく単焦点レンズのほうがいい。ズームレンズではズーミングとフォーカス操作の両方が必要となってしまい、忙しいばかりでなく練習テーマが曖昧になってしまうが、単焦点レンズならばフォーカス操作に専念出来る。
ズームを使ったフレーミングの調整は、ある程度写真の知識が増えて作画を意識するようになってからのほうが良かろう。まずは、機械操作としての基礎知識を身体で知ることが大切。
現代では、自動化によってシャッターを押すだけで簡単に写真が撮れるようになった。
我輩の世代では、最初は巻き上げやピント合わせ、露出調節などを全て手動で行なっていたため、自動化の意義やメリットが理解出来る。しかし、生まれた時から自動カメラが当たり前の世代では、何を自動で行なっているのかすら分らないだろう。
何のためにピントを合わせるのか、何のために露出を調節するのか。
そういうことを知って初めて、自動化の意味が解り、それを使いこなすことが出来るようになるのだ。
それでは、今週末の土曜日に近場で撮影を始めてみようか。豚児と2人で動物園か植物園・・・、いや、動物は動くから植物のほうにしよう。
それを聞いた豚児は、テンションが上がったためか小躍りを始めた。
・・・ところでこの「*ist DS」、写真表示で電子ダイヤルを回してみても、縮小タイル表示は出来るものの拡大表示が出来ない。やはり昔のカメラだとこういう操作性が洗練されていないのか。
しかしよくよく考えてみると、拡大表示出来なければピントチェックはどうやれば良い?
ふと思い、マニュアルモードにして電子ダイヤルを回してみた。
シャッタースピードの数値が遅くなっていく。どちらに回しても、数値が遅くなるだけ・・・。
「なぜだ??」
そのうち「30秒」まで行き当たって、それ以上数値が変わらなくなってしまった。
結局それは、電子ダイヤルの不良であった。
「くそ、この程度の不良、中古検品で分りそうなものを・・・。」
急いで購入店のマップカメラにメールを打った。
この時点で、水曜日の夜9時。時間的にはもう営業時間を過ぎているため、恐らく明日木曜日の対応となろう。
メールの内容としては、「土曜日に撮影に使いたいため、もし代替品交換となった場合には金曜日の夜までに間に合うか?」というものである。
日曜日は画像処理の時間に充てたいため、土曜日には撮影したい。それを逃すと1週間先延ばしとなってしまい、豚児のテンションも下がってしまう。
パソコンの横で豚児が不安そうに「土曜日に間に合うかなぁ?」と聞いてきたので、正直に「分らん」と答えた。
世の中、ハプニングというものがあり、その結末は予測がつかないもの。そして、そういうハプニングにどのように対処して目的を達成するのか、そういったところから含めての勉強である。
翌日の木曜日、マップカメラのネットショップ部門は10時半からの営業ということで、メール返信は11時過ぎに着た。
それによれば、「通常であれば不具合品が返送されてから代替品を送ることになっているが、急ぎ使用予定とのことで同時交換引換便で代替品を送る」とのこと。つまり、代替品が届いたらその場で箱の中身を不具合品と入れ替え、配達員にそのまま渡して返送するというもの。これならば、金曜日の夜には間に合う。ありがたい。
ただし、このような特殊な返送は我輩の留守中にヘナチョコ妻に頼むわけにもいかず、我輩の帰宅した時間帯として20〜21時の指定としておいた。
金曜日夜、勤務先から帰宅した我輩は、返送予定の「*istDS」のストラップを外し、そして忘れがちだが電池及びメモリカードを抜いた。そしてカメラを緩衝材に包み、荷物が到着したらすぐに入れ替えられるよう玄関に置いておいた。
とりあえず夕食を摂り、風呂に入らず待っていたが、なぜか21時を過ぎても来ない。
ウェブ上で荷物確認したが、宅配業者の新宿営業所から先の情報が取れない。配達指定時刻の表示「金曜20-21時」のまま。このシステム、配達予定時刻を過ぎても未配達状態なのにアラートを出すことは無いのか?
とにかく、21時というのはこの宅配業者の営業終了時間なので、もうこの日の動きは無かろうと諦め風呂に入った。
風呂に浸かりながら、明日の土曜日をどうするか考えた。
豚児には、我輩の「K-x」を使わせて練習させるか?
しかし、微妙に使い勝手が違うし、それに自分のカメラだという愛着が無いと、やる気に影響するだろう。
それにしても、単なる荷物遅延という感じがしない。恐らく明日になっても届くまい。
マップカメラには、「送付先を間違えていないか?」とメールを出しておいた。
翌朝、とりあえず行き先を決めて自分の機材の用意をした。
用意の途中でふと、思い付いた。
「不具合品とは言っても、電子ダイヤルが死んでいるのみで、他は問題無い・・・と言うことは、プログラムAEで撮れば電子ダイヤルを操作することも無く、普通に使えるか。」
交換品と同じ機種ならば、そのカメラに対する豚児の愛着も継続されるだろう。
10時の時点で荷物が届かないため、マップカメラに再度メールして「不具合ボディを使わせてもらう」と伝えておき、そのまま豚児をクルマに乗せて家を出発、撮影目的地の植物園へ向かった。
目的地の植物園には自然観察園が隣接しているのだが、まず最初にそこで豚児にカメラの構え方から教えようと思った。
「カメラ構えてみろ。」
すると、いつもは何やらせてもどこか奇妙な豚児が、カメラの構え方だけはピシッと決まっているではないか。
「オ、オイ、なかなか良い構え方やけど、そんなのどこで覚えた・・・?」
「前からそうやってた。」
にわかには信じ難いが、とりあえず写真を気ままに撮らせることにした。
しばらくすると、池に鴨が泳いでいたところを撮り始めたので、望遠ズームレンズを渡してみた。
これまた、望遠ズームによって前に延びたレンズの重心移動を打ち消すべく、少々後ろに身体を反らせて安定を図ったではないか。
<*ist DSを構える豚児> |
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[PENTAX K-x/15mm] 2011/02/05 11:48 |
こういう場合、「お前は才能がある」などと親バカ的にホメたくなるものだが、努力もせず大したことが出来ると勘違いされても困る。
たとえ本当に才能があったとしても、人生を舐めてかかったらロクな人間にはならんのだ。
どのみち、これはたまたまであろう。カメラの構え方など、誰がやろうとも安定性を重視すれば一つの方法に収斂(しゅうれん)するもの。きっと、遠く離れた異世界の宇宙人でも、同じ構え方をしているはずだ。だから、豚児がたまたま正しい構え方をしても、「それがどうした」という程度の話。
さて今回、我輩は我輩で「K-x」の試し撮りを行なうつもりである。
また同時に、豚児を撮影するためとして66判の「New MAMIYA-6」を持ってきている。
ちなみに、「K-x」のほうはネックストラップではなくハンドストラップなので、「K-x」から手を離す時のために、ベルトに着けたカナビラに掛けられるようにしておいた。
<ベルトのカナビラで一時吊り可能> |
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[PENTAX *ist DS/24mm] 2011/02/05 14:10 (※豚児撮影) |
ところで豚児の撮影を見ていると、マニュアルレンズ24mm使用時にも「ピピッ」と合焦音が聞こえてくる。フォーカスエイドとして、一応はピント合わせもうまいくっているのか。これで結果を見て、本当に合っているようならば少しはホメてやろう。
ただし、今は電子ダイヤルが利かないので拡大ピントチェックは出来ない。家に帰るまでの辛抱となる。
植物園に行くと、先ほどよりも更にプロっぽい構え方をするので目を疑った。
しかも、「顔が近付けないところで写真を撮る時に、カメラを持った手を伸ばしてノーファインダーで撮ることがある」と説明してやったところ、すぐその場でやり始めたのには驚いた。
<*ist DSを構える豚児> |
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[PENTAX K-x/15mm] 2011/02/05 12:40-13:09 |
さすがに、ピントを合わせるために我輩が目測してレンズにセットしてやったが、液晶画面に表示された撮影結果を見ながら徐々にカメラの位置を修正して目的の画を得ようとしている様子はそれなりにカメラマンという感じだった。
「やっぱりお前はカメラ操作的センスがあるんかのぉ・・・?」
豚児は、植物園の次は隣の動物園に行きたいと言い始めた。
動くものはまだ無理だろうとは思ったが、もしかしてコイツならまたプロの技をさりげなく繰り出すのではないかと少し思った。
植物園は入園料がタダだったものの、動物園のほうはそれなりに金がかかる。だが仕方が無い、豚児に期待して入ってみるか。
動物園内では、動物を見てテンションが上がったせいか、やたらとシャッターを切りまくっていた。
「少しは考えてシャッターを切れ。」
我輩が注意するまで、ほとんどロボコップ撃ち(射撃中、顔は既に次のターゲットに向いている)になっていた。調子に乗るにもホドがある。こんな撮り方は騒乱・暴動の体当たり取材くらいにしか使い道は無いわ。
帰宅後、早速豚児の撮った写真をチェックしてみたところ、ほとんどの写真がピンボケ状態。合っているものは1割にも満たなかった。
それはそうだろう。最初から全てが上手くいくはずがない。これで豚児には写真の難しさが解ることだろう。そしてこの時点で、ピント合わせの目的が明確になったと言える。
「写真がボヤけている、どうすれば良いのか」・・・と。
そういうわけで、次の撮影ではピント合わせのコツを教えてやることにする。上手くやれるまで、次のステップには行けんぞ。
さて、気になるカメラ代替品宅配物のことだが、マップカメラが問合せたところ、宅配業者が荷物をセンターに置き忘れて取り残されていたとのこと。同時交換引換便だったせいで他の荷物とは別にしていたのがアダになったということか?
結局それは、その日の夜に届けられた。
まあいずれにせよ、中古検品の問題以外は、マップカメラの対応には満足した。というのも、世の中には「商品を発送した後は配送業者の責任だからウチは知らん」というショップはたまにあるからな。以前エアコンを購入した「タンタンショップ」というところもそんな状態だった。
今後、同じような商品がマップカメラと別のショップの両方にあった場合、我輩はマップカメラのほうを選ぼうと思う。
(その4へ続く)
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