2000/04/05
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カメラ雑文

[648] 2009年02月09日(月)
「資料収集用途のレンズ」


先日手に入れた超広角ズームレンズ「AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G ED」。
このレンズはGタイプレンズのため絞り環が無く、ボディ側から絞りをコントロール出来ないカメラボディでは使えない。
またさらにAF-Sレンズということで、レンズ内モーターでのAFが可能なカメラボディでなければAFは出来ない。
つまり我輩の現状では、このレンズはデジタル一眼レフカメラ「D200」でしか使えないということである。「F3」などのAiタイプのフィルムカメラではMFでの使用であっても使えないレンズなのだ。

<AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G ED>
AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G ED

以前、同じくGタイプでAF-Sの「AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)」を導入しているが(参考:雑文614「2本のAFレンズの購入」)、こちらはよくある望遠ズーム域で、しかも6万円前後と比較的安価なことから、思い切って「D200」専用とすることにした。
ところが今回の14-24mmレンズは15万円ほどの高価なレンズであり、焦点距離も我輩の機材の中では例を見ないもの。そんな主力級レンズを、たかだか1,000万画素程度でしかもAPSサイズの「D200」専用とするのはかなり贅沢な話と言える。

しかし、我輩はこの14-24mmレンズを明確な目的のために導入した。
それは「資料収集用途(メモ用途)」である。

デジタルカメラは導入コストが高いものの、いったん導入してしまうとランニングコストが低く資料収集用途には最適となる。
(※逆に言えば、いったんデジタルカメラ機材を導入したならば、1カットあたりの単価を下げるために枚数を多く撮ることが宿命となる。)

資料収集用途としては、前回の雑文でも触れたが、「博物館展示物撮影」などは大きな役割を持つ。
何しろ、国立博物館のような大規模な展示では、その場で全てを見て理解することはまず不可能。後半になると疲労も重なり、目で見ても見えていない状態にもなる。
そんな時、デジタルカメラで撮影したものを家に帰ってからジックリと時間をかけて見ることが出来れば非常に有用である。
(※この用途については、デジタルカメラの黎明期では考えられぬことであった。何しろ当時はメモリカードも低容量で画素数もビデオカメラ並みと、単に「即時性」というだけがウリの代物だった。)

前回は千葉県の「国立歴史民俗博物館(れきはく)」にて撮影したが、今度は上野公園にある「国立科学博物館(かはく)」にて撮影した。そこでは展示物の性格上、見上げるような被写体が多く、超広角レンズの画角の広さが大いに役立った。しかも歪みが少なく不自然にならないのが資料収集用として素晴らしい。

また当日は特別展「1970年 大阪万博の奇跡」が開かれており、ジオラマやパネルの展示なども多く、このレンズの特性が大いに役立った。
ジオラマでは、広角レンズにて接近して撮影するのがリアルに見せるためのコツである。そういう意味では14mmの効果は絶大。

<ジオラマ撮影>
ジオラマ撮影
[AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G ED/国立科学博物館]

またパネルの撮影では、近距離で全体を歪み無く撮影出来るレンズが不可欠となる。我輩一人ではないのだから、距離を空けると間に人が入ってくるためだ。だから、肉眼ですら全体を見渡すのが難しい距離でも撮影出来るこのレンズはスゴイ。

また展示位置の関係で斜めからパネルを撮らねばならぬこともあるが、並のズームレンズならばこういう場合、四隅を合わせても湾曲収差のため四辺が膨らむかヘコむかして真っ直ぐな線にはならないのが普通。しかしこのレンズは湾曲収差が目立たず線がまっすぐに写り、単純な画像処理のみで正面の状態に変形させることが出来る。
もちろん中央部のAPSサイズの範囲に限定したものであるため、フルサイズでの周辺部まで含めた評価ではないが、それでも手元の標準ズーム「AF-S NIKKOR F18-70mm 3.5-4.5G」と比較するとその違いは一目瞭然で、感動にも値する。この点は、資料撮影用途としてかなり有用と言える。

さすがにこのパネルは正面からは撮れない
パネルの撮影
[AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G ED/国立科学博物館]

元画像
パネルの撮影
−>
画像補整を加えたもの
パネルの撮影
[AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G ED/国立科学博物館]

そもそも開放F値が2.8と明るく、暗い展示の多い博物館では重宝するし、開放でも描写が甘くないのが嬉しい。
そうなると、やはりネックは「D200」の画素数の少なさ・・・。

もちろん、いずれはフルサイズの2,000万画素以上のカメラを買うつもりであるのだが、ただそれにしても、我輩が求めるフルサイズデジタルカメラがいつ発売されるのかは分からない。
根拠の無い予想だが、少なくともあと半年は先になるという気がする。そしてそこから価格が落ち着くには更に半年かかるであろうから、結局のところ、1年は先になろうかと思う。

さすがに1年間我慢するのはツライので、せめてフルサイズでの画角の広さを実感するためにフィルムで撮影してみようかと思う。
もちろん手元の「F3」では撮影不可能なことから、Gレンズが使えるフィルムカメラを中古で探してみた。レンズ内蔵モーターでもAF可能なF80あたりを検索してみるか。

しかしF80での中古最低価格は6,000円程度。「試しでフルサイズを使いたい」というオモチャ感覚の動機だけで買うには少し高く感ずる。
もっと安いものは無いかとさらに検索を続けていたところ、なんと2,100円の「Nikon U」が三宝カメラにあった。フィルム2本買って現像に出す程度の値段。
この値段なら、遊び用途で買うには良かろう。

手元に届いたこの「Nikon U」、中古とは言ってもほとんど使用感が無く、箱と取扱説明書が無いことを除けば新品と言っても分からないほど。これが2,100円というのは驚きに値する(新品時の定価は64,050円)。我輩が購入時点で、同じ値段の「Nikon U」があと2台もあった。
あらためてフィルムカメラの暴落を実感させられた。

<2,100円のNikon Uと14-24mmレンズ>
2,100円のNikon Uと14-24mmレンズ

取扱説明書が無いため色々といじってみたところ、なんと、このクラスのカメラとしては珍しい段階露出機能やプレビュー機能もあるようだ。ビギナー向けのカメラとは言え、案外真面目に作られたカメラのように思う。「Nikon U」は現役当時はノーマークだったため、このことは意外だった。
重量は非常に軽く、14-24mmレンズを装着してもレンズだけの重量しか感じない。

ただ、さすがにファインダーは小さく見える。比較すると、フルサイズでありながらAPSサイズの「D200」と同じくらいに感ずる。
だがそれでも14-24mmレンズの広々とした視野に目が覚める。試しに、自家現像で結果がすぐに判るモノクロで撮影してみた。

使ったフィルムは、10年くらい前に消費期限の切れたKodak T-MAX400。レンズの画角と周辺部の描写を確認出来ればと思ったので敢えて使った。
現像してみると、10年前のフィルムでも特に問題無く画像が現れたので結果オーライというところ。

<Nikon Uでの14-24mmレンズ撮影(14mm側)>
Nikon Uでの14-24mmレンズ撮影
[Kodak T-MAX400]

問題の描写については、とにかく画角の広さが尋常ではないと表現するに尽きる。
ほとんど引きの無い狭い車庫の中で、鼻先にある自動車が1フレームに収まった。フィルムスキャナで取り込んだために周辺部が微妙に流れているのだが、ネガをルーペで確認すると流れは全く無かった。

これまで魚眼写真などは撮ったことはあったが、それは構図としては正方形的であった。ところが今回のレンズは、遠近感に起因する歪みはあるとはいえ収差による歪みはほとんど目立たず直線が直線として写っている。四角いフレームいっぱいに広がる広角映像で、決してワイドと言えるような縦横比ではないはずなのに横に広がるワイド感を非常に大きく感ずる。
さすがはフルサイズ。
そうなると、2,000万画素の新製品を待たずにフルサイズ「D700」を購入したい衝動に駆られる。しかしそれでは、死ぬ気でこのレンズを買った意味が無い。資料収集用途のこのレンズには、2,000万画素以上のデジタルカメラがよく似合う。

ところで、ナノクリスタルコートということで逆光での強さを謳っているが、驚くことに、今まで「D200」に付けっぱなしで使っていた標準ズーム「AF-S NIKKOR 18-70mm 3.5-4.5G ED」と撮り比べてみてもゴーストの出方には差が感じられない。さすがに直射日光のような強い光源がレンズ面に入ると、いかにナノクリスタルコートであってもゴーストは防げないということだろう。
むしろ、逆に言うと18-70mmのほうがスゴイと言うべきか・・・。

<ナノクリスタルだろうが逆光では普通にゴーストが出る>
ナノクリスタルだろうが逆光では普通にゴーストが出る
[AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G ED]