最近、デジタル一眼レフカメラのネーミングについて理解に苦しむ点があり、我輩なりにメーカーによるネーミングルールやネーミングの経緯を想像してみた。
今回、Canonのデジタル一眼レフカメラについて書くことにしたい。
なお、ここでの記述はあくまで我輩の勝手な想像であり完全なるフィクションであることを強調しておく。
−Canonの場合−
当初はコダックと協業してデジタル一眼レフカメラを開発したが、2000年になって初の自社ブランドのデジタル一眼レフカメラ「EOS D30」を発売した。
業務用が主となるフラグシップから切り込むNikonとは対照的に、Canonは一般向けから始めたわけだが、フィルムカメラに倣い一般向けのネーミングは二桁番号とすることが決まった。ただデジタルカメラの場合、当時の最大の関心事が画素数であり、世代交代はすなわち画素数アップそのものであった。Canonとしては、この特徴が型番と関連付けしやすいよう、約300万画素の機種には「30」とした。「300」としなかった強い理由は無いが、しいて言うならばメルセデスベンツがCクラス2,000ccのモデルを「C200」と呼んでいることを参考にしている。また数字の前に「D」を冠したのもメルセデスベンツにあやかったものである。
その後2002年に約600万画素の機種が出たが、当然ながらその型番は「D60」となった。マイナーチェンジのため、デザインは「D30」とほとんど変わらなかったが、それでも多少なりとも意匠を加えなかったのは、シリーズとしての統一感を持たせるという強いコンセプトがあったからに他ならない。
ところが次の機種では画素数が向上しないことが決定され、画素数を基にしたネーミングルールがいきなり破綻してしまうことになった。社内では「EOS D65」や「EOS D60 Mk2」とする案が出たが、結局は画素数由来のネーミングは無理があるとの判断によって、ここで仕切り直しを図ることとした。
新たな決定事項は、「二桁」シリーズは10から始まる世代交代カウントアップ制とし、そのカウント単位は10とする。また、Dは末尾に変更する。」というものであった。Dを末尾に変更した理由としては、2001年に発売されたフラグシップが「EOS-1D」であったため、この機会に統一することにした(なぜ「EOS-1D」のDが末尾になったのかは後述)。
その結果出たカメラが「EOS 10D」であり、Canonではこれが事実上の「二桁」シリーズのスタートであると考えている。
そしてその後、「20D」、「30D」・・・と順調にカウントアップをしているのは現状を見れば分かるとおり。
一方、フラグシップカメラには、フィルムカメラと同様に「EOS-1」の名前を与え、カウントアップは別途行うことにした。フラグシップの数字"1"は「ナンバーワン」という意味を込めたものであり、「EOS-1」というのはカウントアップとは関係の無い、ひとまとまりの名前なのだ。これはF-1時代からの伝統であった。
そこで今回、これにデジタルカメラという意味の「D」を付加したいが、最初に発売した「EOS D30」に倣うと「EOS-D1」になってしまう。これではフィルムカメラ「EOS-1V」との統一感が無くなるため、「EOS-1D」とした。Canonとしては、一般向けモデルとの統一よりも、現行フラグシップカメラ同士の統一を優先させねばならなかったのだ。
さて、NikonでもそうだったがCanonでも業務用以外でのフルサイズの投入はネーミングに関して微妙な問題を投げかけた。
フルサイズということで当然ながらAPSサイズよりも高価となる。そうなると「二桁」シリーズよりも上位に位置付ける必要があり、どうしても「一桁」シリーズとせねばならない。しかし今後、フルサイズが廉価となりエントリー機でもフルサイズ化された場合の混乱が予想されるため、Canon社内でも「フルサイズだからという理由だけで一桁とするのはいかがなものか」という意見が上がった。
そのため妥協案として、当初は「3D」とされるはずだったネーミングが「5D」へと格下げされることとなったのである。そして当面は、フルサイズは「5D」の名称の中でカウントアップしながら様子を伺い(2009年現在はMark2)、フルサイズが廉価になった時にAPS「二桁」シリーズを廃止して「3D」と「7D」のクラスを登場させ、それぞれのカウントアップを図るつもりである。
こういうところはさすがにNikonとは違い、先を見越した考えのあるCanonと言わざるを得ない。(参考:
雑文236「何も考えてないんだから」)
ちなみに「Kiss」については、想定ユーザーがコンパクトデジタルカメラからのステップアップであるから、他のイオスとは異なりネーミングルールという縛りが無い。