学生時代の記憶がふと、蘇った。
我輩が受験生だった頃、国公立の大学入試は「共通一次試験」というマークシート方式の五教科試験があり、それを受けた後に各大学での二次試験を受けることになっていた。
マークシート方式は、解答用紙の選択肢を塗り潰す機械読み取り式であり、それにより全ての問題が選択式となっている。
そのため、設問も読まずにデタラメに回答欄を塗り潰したとしても、確率的にどこかが当たる。そう言えば、時間が足りずに運任せにした問題もあった。
試験が終わって会場を出ると、会場正門前でなぜか大手予備校から模範回答集を配布しており、それを持ち帰って自己採点するとその日のうちに結果が判る。
「問1正解、問2正解、問3ダメ、問4正解、問5・・・。」
選択式のため採点は淡々と進む。
設問によっては関連した問題が幾つか続くこともあり、最初を間違うと連続して5問ほど不正解という結果があったりする。
「くそ、ここ全滅やわ。稼ぎ所やったそに・・・。」
独りで採点しながらも思わず声が出る。
また、さんざ迷った挙げ句に選んだ答えが不正解だったりするとショックが大きい。貴重な時間を費やした甲斐が無いのである。
「こんなことなら早めに見切りを付けて次の問題に注力すべきだった」と悔やまれるが、次の問題も似たような状況であるからあまり意味は無かったりする。
さて、なぜこのような記憶が蘇ったかと言うと、写真趣味の活動でも似たようなことを経験するからである。
つまり、現像済みのリバーサルフィルムをスリーブ状態でイルミネータ(ライトボックス)にかけ、そこから合否を判定する作業が共通一次試験の自己採点作業に重なるのだ。
「くそ、このコマはピントが微妙に合ってない、次は大丈夫か、う、これはさすがにボツ・・・。」
例えば中判の暗いレンズでは室内撮影はピント合わせがツラい。それでいて被写界深度が浅いものだからピンボケが頻発する。特に豚児撮影の場合などの動体撮影ではAF機能があればどれほど助かることか。
また露出過不足もストロボ撮影ではかなりある。被写体までの距離が変化すれば当然ながら適正F値も変化する。事前にデジタルカメラで露出を確認しようとも、本番撮影時に条件が変わればどうしようも無い。
さんざ迷った挙げ句に決めた露出値が間違っていた時には、しばらくの間立ち直れない。
現像済みのスリーブをルーペで見ながら、「次、次、ハイ次」と繰って行く。
チェックが早い時は明白な失敗が続いている証拠。あまり見たくないので次へ次へと移る。成功カットに当たったらジックリと眺めようと思うのだが、なかなか止まらない時は焦る。
そんな時、ふと「偏差値のボーダーを下げて合格率を上げようか」と思ったりする。
しかし、いったん自分に甘くなれば、際限無くとことんまで落ちるしか無い。
「次はこの失敗を糧にしてもっと頑張ろう。」
スリーブの自己採点後はいつもこう思うのだが・・・、すぐに向上するならば苦労は無い。
なかなか、
雑文275「一度目の失敗」で書いたようには、二度目の失敗をしないというのは難しい。
そもそも、過去の失敗と全く同じ撮影条件というのはほとんど無い。それは共通一次試験も同じ。去年と同じ問題が出てくれればこれほど楽なことは無い。
以上、1年浪人した我輩の、ふとした感想であった。