車を維持し続けるのは金銭的に難しいことを
前回の雑文にて書いた。
携帯電話の維持が出来ないためプリペイド携帯で何とかやっている我輩が、よりにもよって車を維持しようとしているのだから、自分の事ながら驚く。
しかしながら、いつまで保つかという限界を追求する意味でも、チャレンジしてみる価値はある。
先日購入した中古のメルセデスベンツW202は車両価格88万円であったものの、住宅ローンを多めに借りることにより貯金を車購入に充てることが出来た。しかし今後はこのようなチャンスは望めないため、どうせ最初で最後となる車ならば良い車を買おうと思った。
恐らく車自体の寿命もあるため、豚児が学校に行くようになり友達が増える頃にはさすがに車は無かろう。
その時に「他の友達の家には車があるのに、なんでウチには車が無いの?」と訊かれたら、「ウチにもこんな車があったんだ、そしておまえもこの車に乗ったんだ。」と写真を見せてやれればと思う。
その時に見せる車の写真。それが、これから撮ることになる車の写真である。
(1)はじめに
車は、写真として撮るにはかなり大きい物体である。そのため、今までの撮影法が通用しない場面が出てくる。
もちろん、ただ写りさえすれば良いのであれば何も気にすることは無いが、車が自分のイメージに合うように撮りたいのであれば、少し考える必要がある。
以前、
雑文267「年の差」で書いたのだが、遠近感というのは忘れてはならない概念である。
少なくとも絵画の分野では、遠近感の概念無しに絵は描けないためそれを意識せざるを得ないのだが、写真の分野ではただシャッターボタンを押すだけで写真が撮れることから、遠近感を忘れる者もいよう。
写真のテクニックというのは様々にあるが、遠近感という最も基礎的なことを忘れて写真を撮るならば、自分のイメージした写真は決して得られない。もし得られたとしても、それは偶然の産物、あるいは漠然とした経験と勘によるものである。非常に効率が悪い。
(2)遠近感の与える影響
遠近感というものは、被写体と背景だけの問題ではない。
先に述べたとおり車は大きな被写体であるため、車の前部と後部にもある程度の距離(奥行き)がある。そのため、車の形状そのものにも遠近感による影響が出る。
遠近感が強い場合、車の前部が大きく、後部が小さくなる。そのため、全体の形として"後すぼまり"となる。ただし立体感は大きくボリュームが出る。
遠近感が弱い場合、車の前部と後部の大きさは同じとなるため、"すぼまり"は無い。ただし立体感が失われ平面的になる。
遠近感の問題は、他の撮影テクニックと異なり、車のボディ形状を変えてしまうため非常に重要と言える。
他の撮影テクニックを加えるにしても、その土台となる遠近感のコントロールがデタラメであれば、写真は完成しないのだ。
もちろん、遠近感の程度については個人によって好みが別れることになろう。
自分の車をどのように表現したいか、どのような形が自分の車らしいのか。
たった一つの解答があるわけではない。それぞれにイメージが違うのであるから、同じ車が何台も存在する中で自分がその写真を撮る意味があるのだ。
(3)遠近感をコントロールするもの
写真のテクニック本などには「遠近感(パースペクティブ)のコントロールはレンズの焦点距離を変えることで行う」と書かれていることがある。また、プロカメラマンでもそう信じている者がいる。
しかし、これは間違いである。
遠近感をコントロールする要因はただ一つ、「撮影距離」である。
レンズの焦点距離を変えても撮影距離が一定ならば、遠近感は不変である。この認識を誤ると先に進めない。
ただ、レンズの焦点距離を変えるということは、映像の拡大率を変えることであるから、当然ながら被写体を同じ一定の大きさに写そうとすれば自ずと撮影距離を変えることになる。そのことが「レンズの焦点距離を変えることが遠近感を変えること」という誤解を生む原因となっているのではないかと思う。
(4)実際の撮り比べ
では、遠近感(撮影距離)が変わるとどのように写るのか。
ここで、同一レンズ(広角28mm)を使い、撮影距離を変えて撮り比べてみたい。
初心者にありがちな撮影として、撮影距離に気を配らずたまたま立っていた場所からズームレンズの調整だけでフレーミングをする人がいるが、それでは自分のイメージは反映されない。
まず最初に、撮影距離を自分の意志で決めること。
それさえ決まってしまえば、後はそのまま撮るも良し、様々な撮影テクニックを加えるも良し。
遠近感のコントロールという大事なポイントさえ押さえていれば、自分のイメージは確実に写真に投影されるだろう。
(注)本雑文は、別サイトに掲載した内容をカメラ雑文向けに書き直したものである。