[408] 2003年03月16日(日)
「信用されていない患者」
2週間前、硬い物を噛むと差し歯が微妙にグラつくのを感じた。手で動かしてみても感じないほどの微妙なグラつきだが、実際に噛むと違和感を覚える。
数日間様子を見ていたが、思いがけない時に抜け落ちても困るので歯医者に行った。
案の定、歯科医は手で動かしてみて異常を感じない様子だった。そして「歯茎が弱っているということでしょう。」などと治療をしない様子だったので、「ある日を境に急にそうなったのだから、差し歯が取れかかっているのでは?」と言ってみた。
歯科医はしばらく考え、「うーん、じゃあ数日様子を見ましょうか。」と言い、次の予約を1週間後に入れた。
1週間後、歯科医は「あれからどうです?」と訊いたので「あの状態のまま変わらないです。」と答えた。
歯科医は再び歯を手で動かしてみている。
「どうしましょうか?一応、差し歯を取って、また付け直すことしますか?」
我輩は、無理に差し歯を取る必要も無いと思い、「じゃあ、ちょっと引っ張って抜けるかどうか試してもらませんか?」と提案してみると、「あ、そうですね。じゃあちょっと試してみましょう。」と言い、助手に「リムーバ持って来て」と指示した。
歯科医はそのリムーバとやらを使い、我輩の差し歯を軽くトントンと打ち出すようなことをした。すると、ポロリと簡単に差し歯が取れた。
「あ・・・、抜けましたね。じゃあこれを洗浄して付け直しておきます。」
我輩は「お願いします」とは言ったものの、心の中では「それ見たことか」と思っていた。
歯の調子などは、実際にそれを使って噛んでいる本人が違和感を覚えたのであるから、不具合が無いなど簡単に言えるものではない。しかも、簡単な触診で何が分かろうか。
まあ、異常も無いのに治療したがる悪質な歯科医もいる世の中、この歯科医は良心的だとは言える。ただ、患者の申告をあまり信用しないというのも、正直言って少し気分が良くない。
さて先日、BRONICA SQ-Aiで並木道を撮影しようとしたところ、シャッターが切れなくなった。バッテリーチェックボタンを押してみたが、ランプが全く点灯しない。
この現象は初めてではなく、以前にも同じようなことがあった。肝心なところでシャッターが切れない。やはりバッテリーチェックボタンを押してもランプは点灯しなかった。
これらの現象は、いずれも電池を新しく入れてから1ヶ月くらいの話だった。いくら電子シャッターのカメラとはいえ、そんなに電池がすぐに無くなるのは尋常ではない。
我輩はスピードグリップを外し、試しに電池室カバーを押してみた。すると、バッテリーチェックのランプが点灯するようになった。接触不良か?
それならば・・・と、電池室にフィルム包装のゴミを少量詰め込んで浮きの無いようにし、再びスピードグリップを装着した。
それからしばらくの間、シャッターは正常に切れていた。しかしやはり、またシャッターが切れなくなった。仕方無くスピードグリップを外して電池室をいじった。今度はなかなか反応が無かったが、色々とやっていると復活した。
スピードグリップの取り外しは面倒なので、シャッターが切れなくなる度にそんなことをするのは非常に効率が悪い。しかも、電池室での接触不良でも無さそうな雰囲気。もっと奥まったところでのトラブルか・・・?
しかしその後も撮影する予定がいくつかあり、修理に出そうにも区切りがつかぬ。騙し騙しではあるが一応は使えるものだから、そのまま使い続けていたら本当にシャッターチャンスを逃す場面に遭ってしまい、悔しい思いをした。これだから電気式カメラは困る。
特に、BRONICA SQ-Aiのように、電磁レリーズのものは単速でも切れないから厄介だ(BRONICA SQの場合はメカニカルレリーズのため電池が無くとも単速1/500秒が切れる)。
「もう、これは修理に出すしか無い。」と踏ん切りをつけた。
ブロニカ(タムロン)の営業所に行く時間が無いので、いつものように上野のヨドバシカメラで修理に出した。現象が確認出来ない可能性があるため、「滅多にその現象が出ない」と言っておいた。
とりあえず修理代金の見積りの知らせが後日あるとのこと。現象が確認出来ずとも、オーバーホールの見積りくらい知らせてくれよう。
ところが2週間後の今日、ヨドバシカメラから電話連絡があり、未修理のまま戻ってきたと言われた。メーカーのほうで現象が確認出来なかったらしい。
「ナニ?・・・ということは、このカメラをそのまま使い続けろということなのか?」
我輩はその瞬間、歯医者での出来事を思い出した。
確かに、直す側が現象を確認出来なければ修理が難しいかも知れないが、現象を確認出来ないからと言ってそのまま未修理で返してくるというのも困る。
現象を確認出来なくとも、ユーザーが不具合を感じているのであるから、外から見た現象の確認だけでなく、内部を開けて点検する必要はあるだろう。少なくとも、「現象が確認出来ませんのでオーバーホールをお勧めします。」と見積金額を提示すれば良さそうなもの。年期の入った外観であるから、そういう発想があるものと期待したが。
結局、我輩はその電話であらためてオーバーホールの依頼をした。メーカーが現象を確認出来なくとも、電子基盤の総取り替えなどの見積りをして欲しいと依頼した。その値段によって、新たに購入したほうが良いかどうかという判断が出来る。撮影に使えず修理も不能とあらば、そのカメラは捨てる以外に方法が無かろう。メインボディだけあっても、置物にも不足である。
今回の件では、ヨドバシカメラ店員は我輩の面倒な要求にも親身に対応してくれた。それだけに、メーカー側の他人事のような対応にはイライラさせられる。
ユーザーは写真が撮れなくて困っているわけだが、それを何とかしようという姿勢が見えてこない。単純に「現象が再現しませんからどうしようもありません。」というのでは、こちらとしてもどうすれば良いのやら。
結局はユーザーのことなど信用していないんだろうな。そのまま未修理で返ってくるなどというのは、そういう気持ちの表れに他ならない。
歯医者の時も同じ気分だったが、信用されていないというのは気分が良くない。
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