[373] 2002年09月21日(土)
「営業活動」
我輩は親会社を含むグループ関連会社担当の営業である。
いわゆる「内販」と呼ばれ、世間の荒波に揉まれる外洋の営業ではなく、内海(うちうみ)の穏やかな環境の下で営業活動を行っている。
しかしながら、やはり営業たるもの顔出しが大切。納品ついでに別の担当者のところへ行って雑談をしたりする。その積み重ねによって新規の仕事を得たり、あるいは他社に対して有利な情報を得たりすることも少なくない。
まあ、最初からそのような下心を以て声を掛けるわけではないのだが、日頃からの繋がりは何にしても大切。
先日、ある担当者O氏のほうに挨拶に行った。O氏は忙しそうに見えたのだが、我輩を見るやO氏から話し掛けてきた。
(O氏)「あっ、我輩さん、ウチでデジカメ買いましたよ。」
(我輩)「"ウチ"というのはOさんの家ということですか?」
(O氏)「あ、いえ、ウチの会社で。」
(我輩)「へー、会社でデジカメを買ったんですか?」
(O氏)「ええ、業務上、部品の写真とか撮ったりするんで。」
(我輩)「何て言うデジカメですか?」
(O氏)「えーと、何て言ったっけなあ・・・。キャノンということは間違い無いんですが。ちょっと手元に無いから・・・何だっけなあ。とにかく一眼レフでした。」
(我輩)「キャノンで一眼レフ・・・ということは、D60ですかね。」
(O氏)「うーん、どうだったかなあ。」
(我輩)「じゃあ、また今度分かったら教えて下さいよ。」
数日後、O氏から電話の問い合わせがあった。
そして用件が済むと、あの時のキヤノンデジタルカメラの話が出た。
(O氏)「あっ、そう言えば例のデジカメの件、今、手元に持って来てますよ。」
(我輩)「ホントですか?機種名は何て書いてます?」
(O氏)「キャノンのイオスです。」
(我輩)「あ、いやその、"イオス"の下に何か書いてませんか?」
(O氏)「えっと、D60って書いてますね。」
(我輩)「あー、やっぱりD60ですか。」
(O氏)「なんか高そうなカメラですね。10万くらいすんのかな?」
(我輩)「いや、20万越えますよ。レンズ入れるともっとするかも。」
(O氏)「えっ?!これってそんなにすんの?スゲー!!」
O氏は手元のカメラがそんなに高価な物だとは知らなかったようだ。しかし、上位機種「キヤノンEOS-1D」ならもっとするのでこれは安いほうである。
(O氏)「ところでこれ、詳しい使い方が分からないんですよ。感度を変えたいのになー。」
(我輩)「D60なら分かりますよ。感度ですか?」
(O氏)「え、分かるんですか?」
我輩の所有する一眼レフタイプのデジタルカメラは、偶然にも「キヤノンEOS-D30」である。D60とほぼ同じ仕様なので、操作体系も同じであるハズ。
D30ならば我輩のメインデジタルカメラであるため、目をつぶればD30の姿とその操作方法が浮かんでくる。我輩は、O氏の手元にあるというD60を操作してもらいながら電話口で説明を始めた。
(我輩)「背面左上にメニューボタンがありますか?」
(O氏)「メニューボタン・・・?あ、あったあった。」
(我輩)「それを押して液晶画面を見ると、真ん中辺りに感度という文字が出てませんか?」
(O氏)「あります、あります!ああ、これかぁー!」
(我輩)「今度は左のダイヤルでその項目を選択してダイヤル真ん中のボタンを押せば変えられますよ。」
(O氏)「うわーホントだ、凄い凄い。まさか、電話から見えてるんですか?」 (我輩)「いえいえまさか。じゃあ、また何かありましたらお知らせ下さい。」
これ以降、O氏との会話は仕事のことよりもカメラのことが多くなってしまった。しかし、良い関係を築くことは何事にも代え難い。
今までは「調子はどうですか?」などと漠然とした内容で話し掛けることしか出来なかったものだが、最近では話をする必然性が出来たためO氏から「こちらに来る日は前もって電話して教えて下さいよ。」と言われるまでになった。これは、営業としてはもちろん、一人の人間としても嬉しいこと。
人間、何が幸いするか分からない。
|