[367] 2002年08月17日(土)
「デジカメを買おうとするヤツら」
営業職にいると、自社内でも本社や営業所を行き来する機会が多くなる。当然、接する人間も多くなる。
そして、そのうちの数人から同じことを相談されるようになった。
「デジカメ買いたいんだけど、何が一番いいかな?」
まるで皆で示し合わせたかのように、この同じ時期に同じことを言ってくる。
「何が一番いいかって言われてもなあ・・・。」
我輩は頭を掻きながら少し考え、当たり障りの無い、かつ、的を射た返答をする。
「それぞれの用途による。」
用途によって選ぶ製品が変わるのは当然のことである。だからこそ、様々なものがラインナップとして用意されている。その中でたった一つの解しか無いとすれば、その他の製品には存在価値が無いということになる。
たった一つの良い物と、それ以外の物。そんな単純な世界があれば、誰も苦労しないで製品を選ぶだろう。我輩にアドバイスを求めるまでも無い。
今回の相談はデジタルカメラの件だったが、今までにも以下のような質問を受けたり聞いたりしたことがある。
「どのカメラが一番いい?」
「どのレンズが一番いい?」
「どのフィルムが一番いい?」
全く、どいつもこいつも・・・。
だが我輩は人間が出来ているので、そのような問いは話を切り出す第一声であろうと好意的に解釈している。だからまず、「それぞれの用途による」と返答し、相手の反応を見る。作品を撮るために使うのか、あるいはメモ用途にするのか。それによって薦める機種の絞り込み範囲がガラリと変わる。
そのような問診を繰り返すことにより、相手の用途や条件を次第に明確にしてゆき、条件に合った機種を数種類ピックアップする。その中から相手の好きなものを選ばせれば良い。
今まではこの方法でアドバイスをしてきた。
しかし、今回のデジタルカメラの件は少し違った。相談者たちは誰も用途を考えておらず、ただ、デジタルカメラを欲しているだけである。
「用途・・・?特に考えてない。」
このように言われると、人間が出来ている我輩でも関西人的ツッコミを入れたくなる。
「どないせえっちゅうんじゃ!」
仕方が無いので、予算から切り込もうと思った。これで少しは絞られるだろう。
それでも予算はハッキリとは言わない。「金が無い」の一点張り。無理に聞けば「1万円以下で」などとフザケたことを言う。それじゃあ、たとえ良い物があったとしても買えないだろう。
驚いたことに、デジタルカメラを買おうとしているヤツらは皆このパターンに当てはまる。なぜだ?
我輩が想像するに、デジタルカメラを買おうとしている輩は、そもそもカメラ自体を知らぬ者ばかりなのだ。ただ単純に、「パソコンに画像を取り込むため」という意識。何を撮るかという動機があるワケではない。
だから、「画質が良く」、「使い易く」、「コンパクトで」、「1万円以下の」デジタルカメラを欲してしまう。まさに"良いとこ取り"のカメラ。そんなカメラがあれば、我輩が真っ先に買っておるわ。
要するに彼らは、カメラ的に世間知らずということか。相場も知らぬわけだ。
このようなユーザーが大半であれば、デジタルカメラの大半がコンパクトカメラ型であるのも頷ける。
初心者とも言えぬような者たちに与えるカメラに、思考を必要とするカメラは相応しくない。何も考えずただボタンを押すだけでソツの無い映像が採集出来るカメラが良い。そして、画素数で差別化を明確にしておけば完璧。
しかし、こういうヤツらがいるおかげで、カメラが単なるパソコン周辺機器の一つにされてしまうのは悔しく悲しい。銀塩カメラを浸食し増殖するデジタルカメラは、もはや趣味の道具では無くなった。そのうち本当に「画質が良く」、「使い易く」、「コンパクトで」、「1万円以下の」デジタルカメラが現れるだろう。それを望む声が圧倒的ならばそうなる。趣味ではないものだから、結局は1つの姿に集約される。それがデジタルカメラの未来の姿。
おぞましい。
写真を趣味とする人間は、デジタルカメラについては蚊帳(かや)の外というわけか・・・。
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