2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
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カメラ雑文

[250] 2001年04月03日(火)
「目的」

「写真を撮る」という行為は、冷静に考えると、小さく薄いフィルムに映像を焼き付けるだけのこと。全く小さなことだ。
しかし、たったそれだけのために人は様々な努力をする。

映画を初めて観たのはいつのことだったろう。そんな昔のことは覚えていない。だが、1本の映画を撮影するのに、数億円もの金を掛けていると聞かされた時の衝撃は忘れない。
絵が写っているフィルム。たったそれだけのものを得るために、莫大なエネルギーが注ぎ込まれているのだということは、我輩にとっては理解を越えた話だった。

しかし今なら、その努力の価値が解る。

フィルム上に小さな映像を焼き込むだけのことのために、高価な機材を揃え、難解な知識と多くの失敗を重ね、寒さや暑さを耐え、貴重な時間を使い尽くす。これら全ての努力は、たった1つの目的「写真を撮る」ということに支えられている。

戦場でシャッターを切るカメラマンは、カメラを構えると恐怖が消えるという話を聞く。
兵士でもないカメラマンが、なぜに安全な地からわざわざ命を危険に晒すのか・・・。そのことだけを考えると、普通では理解できない話かも知れぬ。
だが、写真を撮るという目的は、それを本人すら自覚しないほどに大きな力を与えるのだ。


我輩は、写真に限らず趣味というものは「目的」だと解釈する。

人間は皆、生きている目的をそれぞれに探している。
自分の一生を捧げうる目的を見た者もいれば、まだ何を目的とすべきかを迷っている者もいるだろう。自分の生きる目的は、すなわちエネルギーの源(みなもと)。目的を持って初めて、人は強くなれる。

その中で趣味は、人に小さな目的を与えてくれる。
しかし、どんなに小さな目的であっても、それは頼もしい杖となろう。途(みち)に迷った時、杖は方向を指し示し、心や身体が消耗した時には、杖は丈夫な支えとなるのだ。

世の中、損得で物事を考えることが多いが、そんなことが結局何の目的を持っているかと問われれば、返す言葉も無い。
金、地位、名誉。
それらは、確かに暮らしを楽にするだろう。しかしそれらが人の心を強くするかは別の問題だ。生きることに目的を持つための道具ではあっても、それ自身が決して目的とはなり得ないのである。

写真が力を与えるということに実感が湧かなければ、過去を想い出すが良い。
カメラを持っていなければ行くことはなかったであろう場所、やらなかった努力・・・。それらは全て、1つの目的「写真を撮る」ということのために行われたことだ。

趣味は、すなわち目的。
趣味を持てば、人は強くなる。
その中でも「写真」は、いろいろなことに興味を持てる、良い趣味だ。

写真という小さな目的を追いながら、人生の大きな目的を考えてみる。たまにはそういうのも良いかも知れないな。