[235] 2001年02月28日(水)
「ヤスリ代わり」
我輩がカメラに対して実用一点張りの思想を持っていた頃、多くのメーカーのカメラを揃えようとしていた。それは、あくまで色々な中古レンズを装着できるようにするためであった。
中古というのは1点モノであるため、良い中古レンズを見つけたらそれを逃すと二度と巡り会う事は無い。値段の割に良いレンズがあったりしても、所有カメラのマウント違いで泣く泣く諦めることも多かった。そのため、代表的なメーカーのマウントを取り揃えるため、とりあえず各社の安いカメラを買っていたのだ。その中のCanon-FDマウント用ボディが「Canon FTb」だった。
Canon-FDマウントであればカメラは何でも良かったが、「Canon FTb」を選んだ直接の理由は、\6,000と安かったからだ。
我輩はこのカメラのおかげでトキナーのFDマウント17mmレンズを手に入れ、使うことが出来た。そういう意味で実用的だった。
ところで最近「Canon EF」を使い始めた関連で、久しぶりに「Canon FTb」を棚から取り出した。EFのサブカメラとしてもなかなか感触が良い。
ふと、FTbを裏返して底面を見て仰天してしまった。そこには激しく深いキズが・・・。
最初、なぜこのようなキズがあるのか理解出来なかった。自分でやったことだとも思わなかった。しかし、よく思い出してみると、このキズは確かに我輩が付けたのだ。
記憶を遡ってみると、その時の映像がだんだん浮かび上がってくる。
我輩はその時、何か小さな金属板のエッジをヤスリで削っていた。あるていど粗削りした後、もう少し目の細かいヤスリで滑らかに仕上げようと思った。しかし、手近なヤスリが無い。
そこで目に付いたのが、このFTbだった。
FTbの表面は梨地仕上げで細かくザラついており、しかも硬そうである。これなら研磨出来るかも知れない。
さすがに目立つペンタ部でコスるのは気が引けたので、底面で金属板のエッジをガシガシとコスった。
金属板は思ったほど削れなかったが、FTbの底面は見事に削れてしまった。
当時の我輩は、カメラなどは写真の写りに支障が無ければそれでよく、「EOS630」などの隠しボタンのカバーもペンチで引きちぎったり、グリップに穴を開けて強引に縦位置シャッターボタンを新設したりしたものだった。カメラごとき、ヤスリ代わりに使うことなど何とも思わなかったのだ(名前さえ彫ろうと思ったこともある)。
そしてそのまま、ヤスリの一件は完璧に忘れ去られてしまった。それ故、出し抜けに見せられるとショックを受ける。
しかし、悔やんでも遅い。
今のように、多少なりともカメラに愛着を持つと、とてもそのようなマネは出来ない。
だが・・・、そういえば我輩のデジタルカメラ「OLYMPUS C-2020Z」は、ACコネクタをフタ無しで接続出来るようにするために、プラスチックのカバーをニッパーで強引に切断したりしている・・・。
それはつまり、今度はデジタルカメラのほうが実用一点張りの位置にいるということか。
しかし、さすがにヤスリ代わりに使うには華奢なボディだ。
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