[217] 2001年01月29日(月)
「眼中無し」
最近は、保守的なプロでさえAFカメラを当たり前のように使っている。デジタル表示にも慣れたのか、F4のダイヤルがF5の液晶板になった。
「プロがAFや液晶を使う時代に、MFやダイヤルにこだわる意味などあるのか?」
もしかしたら、このように思われる者もいるかも知れない。まさに正論だな。
確かに、そう思う者はそうすればいい。これは個々人の問題であって、我輩が強制出来るものではない。ただ、自分の意志を持たず闇雲にプロに倣おうとすることには異議申し上げる。
だいいち「プロ」と言っても、どんなプロのことなんだ? スポーツを得意とするカメラマン、ポートレートを得意とするカメラマン、商品撮影を得意とするカメラマン、ドキュメンタリーを得意とするカメラマン・・・。
皆、それぞれに機材への要求性能が違う。
「だが、全員とは言わないまでも、AFや液晶表示式を使うプロがいるという事実には変わりない。そんなカメラを否定出来るのか?」
確かにそうだな・・・。
だがここで言っておくが、我輩はAFについては否定的ではない。しかし、MFとAFのシステムを混在させることには苦労を感ずるため、あえてAFをミノルタαだけに留めているのが現状。それはつまり、現在のMFというものが「AFに取って代わられるもの」、あるいは「単に補助的なもの」として扱われていることによる。
我輩の中では、MFとAFはあくまで対等なのだ。
だが液晶表示については完全に否定的な立場にいる。
もちろん液晶が悪いとは言わない。ダイヤル式では難しい1/2段でのシャッター制御も可能である。そして、それはプロが求めるスペックでもある。
プロには、限られた時間(つまりコスト)内に要求される写真を撮らなければならないというプレッシャーがある。我々が仕事上で改善を迫られるのと同様に、プロも常に改善を続けなければ利益が薄くなり生活が成り立たなくなる。
裕福なプロカメラマンというのは、ほんの一部だと想像する。中にはかなりハングリーなカメラマンもいるだろう。好きでなければ出来ない。
そういうプロにとって、仕事に穴を空けることは何としても避けねばならない。そんな事態になれば、次から仕事が来なくなる。だから、なるべく効率のいい撮影法、なるべく安心な撮影法を選ぶ。我々が「念のためにあと1枚撮っておこうかな」というところを、プロは「念のためにあと1本撮っておこうかな」となるわけだ。液晶表示式カメラならば、1/2段のシャッター調節や自動段階露出(AEB)も行える。
失敗によって被る損失額を考えれば、フィルム1本程度の値段は安いもの。しかし、我々が失敗しても被害額は無い。ゼロだ。なぜなら、他の職業で給料をもらっている。失敗によって給料カットになるわけではないだろう?
我々はむしろ積極的に失敗を重ね、たくましく成長出来る。それにふさわしいのがダイヤル式のカメラではないかと思う。
基本的に失敗出来ないプロと、自分の納得の行くまで何度でもチャレンジ出来るアマチュア。それは腕の違いなどではなく、立場の違いなのだ。
ダイヤル式ならば、そこには「前回の失敗」、「前回の想いが届かなかったところ」がハッキリと刻まれているだろう。それが見えるくらいダイヤル式カメラを使いこなせるようになった時、もうプロの姿など眼中に無くなるに違いない。
自分の立場に誇りを持ち、歩み進め。
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