戦国武将山中鹿之介は、三日月を拝して「願わくば、我に七難八苦を与えたまえ」と念じた。
これは、言葉として前から知ってはいたのだが、最近、「試練を自ら求めそこから得難いものを得る」ということを、我輩は少し実感したような気がした。
年末年始、九州での写真はリバーサルフィルム(ポジ)で撮ってきた。早速、スキャン作業に入っているが、作業スピードはかなり早くなった。なぜだろう。
今まではパソコンへ取り込むことを前提としたものはネガで撮影していた。なぜなら、「どうせパソコン上で調整するのであるから、露出決定の楽なネガで十分だ」という気持ちがあった。スキャンしたあとはネガだろうががポジだろうが、データとしての成果物は同じなので、楽なほうを選んだつもりだった。
しかし、パソコン上での調整はかなり難しい。もちろん、適正露出で撮られたものならば調整は楽である。ところが「ネガ」ということへの油断が露出決定を甘くした。通常、ネガの濃度の過不足はプリント時に補正される。だから露出が甘くても大丈夫だった。強いて言えば、補正するラボマンが苦労するだけである。
しかしネガフィルムを直接スキャンするならば、フィルムの状態がそのままスキャン画像に反映される。その分、色調整に苦労することになった。撮影で楽をすればするほど、スキャン時に苦労する。ラボマンの苦労が我輩の苦労となったのだ。
これがリバーサルフィルムならば、撮影時の苦労はあるものの、失敗写真は最初から除外されることになるので、結果的に色調整も楽になる。しかも原版の色が見本となるので、
前に書いたような余計な迷いが無いのがいい。
撮影時の苦労にしても、注意深く露出を決めればそんなに難しいこともない。画像調整の労力に比べれば、撮影時に調節するほうがかなり効率的だ。
しかし、今までのスキャニングの苦労がムダだったのかと言うとそうでもない。冒頭の山中鹿之介の言葉のように、我輩は苦労を積み重ね、以前と比較して明らかに画像調整の腕が上がった。そうでなければ、リバーサルフィルムのスキャン作業も早くなることも無かったろう。
得難いものを得た。