2000/04/05
OPEN

表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
 F3 (F3H)
 FM3A
 FM2
 FM
 FE2
 FE
 FA
 FG
 FM10
 FE10
 F4
 F-401X

Canon
 AE-1P
 AE-1
 newF-1

PENTAX
 K1000
 KX
 KM
 LX
 MX
 MZ-5
 MZ-3
 MZ-M

OLYMPUS
 OM-3Ti
 OM-4Ti
 OM-2000

CONTAX
 ST
 RTS III
 Aria
 RX
 S2

MINOLTA
 X-700
 XD

RICOH
 XR-7M II
 XR-8SUPER

カメラ雑文

[129] 2000年 9月 2日(土)
「マニアック」

昔、隣の部署にいた山登りの好きな課長が、我輩に1枚の写真を見せてくれた。ブロッケンの写真だった。
「これはブロッケンじゃないですか。へえ〜、凄いなあ。」
「我輩さん、よく分かりましたねぇ。そうです、ブロッケンです。他の人に見せても分かってもらえませんでしたよ。」

「ブロッケン」とは、分かりやすく言えば山で発生する蜃気楼のような自然現象である。何度も山を登っている者でも、滅多に見られるものではない。ただ、知名度はそれほど低くはないとは思うのだが、課長が写真を見せた人間は、たまたまブロッケンのことを知らない者ばかりだったらしい。


写真を撮る時、人それぞれの対象物がある。「人物」、「スポーツ」、「飛行機」、「風景」、「動物」、「地方風俗」・・・。それらは、撮影者が関心を持っている分野だろうと思う。その意味では、写真を趣味としている者は、撮影対象となるもう一つの趣味を持っていると言えなくもない。
ただし、そういった趣味がマイナーなものであるならば、それを撮った写真そのものが理解不能、あるいは評価の対象外となる場合がある。写真の評価をするには、そこに写っているものが何であるかという知識が不可欠なのだ。

ブロッケン現象の場合、それを知らない者がブロッケンの写真を見ても、何だか変な影が浮かんだモヤにしか見えない。見た後、記憶にも残らない。
概してそういうものだ。


さて、写真をコンテストに応募する場合、普通は写真雑誌へ送ることになる。しかし、写真雑誌というのは、ごく一般的な平均的雑誌である。その証拠に、そこに載っている写真のほとんどが、一般人にも理解可能な「人物」、「スナップ」、「風景」で占められている。そこでは、例えば「ジオラマ写真」などが載ることは無い。そういう写真は、模型雑誌にしか載らない。写真として認められないのではなく、一般の知識だけで運営している写真雑誌では手に余るのだ。

我輩は、人物や風景の他に「ブツ撮り」したりもする。対象物はカメラやGUN(モデルガン)である。まさに写真雑誌向きではない。
我輩は、GUNの写真を「月刊GUN」という銃器関係の雑誌のコンテストに投稿した。
写真のタイトルは「ガンショップ」。GUNがガンショップ店頭に並んでいる様を表現した写真だった。ご丁寧にも、「SFエクスチェンジ」というサンフランシスコのガンショップのロゴ入りプライスタグを作って演出した。

果たしてそれは、2000年3月号の160ページに掲載された。ブロンズ賞(3位)だったが、一般写真雑誌では絶対に載らない写真が載ったのだ(写真技法についての評価は厳しくないかも知れぬが)。そして、そのコメントには「SFガンエクスチェンジ」について言及されていた。さすが、解る者には解る。逆にそこまで凝らねば、リアリティを追求するどころか、コメディーになってしまう。

例えばもし仮に、ベトナム戦争の映画でニコンF5が出てきたら変だろう? カメラに詳しくない者が観れば不自然さに気付かないだろうし、そもそもそれがF5であろうとFであろうと、映画の本筋には関係ない。しかし、そんな映画があったとしたら、我々はすぐに違和感を持つに違いない。

例えば映画化された坂本龍馬を見ると、板東妻三郎が演じた竜馬では「コルトポリスリボルバー」を、そして原田芳雄の竜馬ではなんと「バントライン・スペシャル」が使われたそうだ。本当の龍馬が使っていたのは「S&W製モデル2アーミー」であったのだが。
これではリアリティもクソもあったもんじゃない。マニアックと言われようが、事実ではあり得ない風景を作るべきではない。





タイトル:「ガンショップ」
「月刊GUN」2000年3月号掲載