[093] 2000年 7月22日(土)
「マニア」
「カセットデッキ」、「FM/AMチューナ」、「アンプリファイヤ」、「レコードプレーヤ」、「グラフィックイコライザ」、「CDプレーヤ」、「D/Aコンバータユニット」・・・。
これらはオーディオの世界では、それぞれ単体の機器だったものの名称だ。
それぞれに名機と呼ばれるブランドや機種があり、オーディオマニアたちは、それぞれを自分で吟味し、1つ1つ購入していく。その結果、1つの「ステレオ・コンポ」が構築される。この組み合わせによっては、ほとんど世界に1つしか無いステレオコンポにもなる。「コンポ」とはすなわち、「コンポーネント」。「組み合わせ」という意味である。
機器にはそれぞれ一長一短がある。例えばスピーカーの中で、「小音量では良い音が出るが、大音量では音が割れる」ものや「小音量では音がかすれるが、大音量では良い音が出る」ものがあったとすれば、当然、ニーズによって選択が変わることになる。
マニアたちは、自分の組み合わせこそが最高であり、自分の「個性」であると感ずる。これぞ、趣味の醍醐味と言えよう。「良い音」という共通の目標を持ちながらも、そこに達するまでの経路に1つとして同じものが無い。
ところが、最近のオーディオではデジタル化が進み、コンポの構成機器も統合されて行った。CDの自動編集機能、オートスタート録音など、機器相互の制御が進むと、純正品以外の機器はもはや使えない。
こうなると、もうマニアの心は冷める一方だ。「良い音」を手軽に楽しめるようにはなったものの、最高という程ではなくなり、平均的なものになってしまった。
(この後、オーディオマニアたちはPC/AT互換機の自作へ鞍替えすることとなる。そこには、忘れていたコンポの楽しみがあった。)
さて、例によって長い前置きだったが、どうだろう、カメラの世界でも同じようなことを感じないか?
手軽に良い物を求めようとする世の中の流れによって、カメラもどんどん「オールインワン化」し、周辺機器も専用化していった。
シンクロソケットやケーブルレリーズさえ汎用のものが使えない。そのくせ、自分の不要なものばかり詰め込まれ、邪魔で仕方ない。
オーディオ以外にも例えるなら、「十徳ナイフ」とも言える。
別に十徳ナイフが悪いとは言わぬ。便利さはこの上ない。しかし、それぞれ専門の道具に比べれば、勝負にならないことは事実だ。便利さと引換えに失ったものがあるのは否定出来ない。
カメラの世界では、全てのナイフが十徳ナイフへ変わろうとしている。マニアはそれに抵抗するが、いかんせん、数が劣勢でジリジリと押され続けている。寄り切られるのも時間の問題だ。
しかし今の時代、「少量多品種」がトレンドではないのか。ニーズに合わせた、きめ細かい商品の提供が「趣味」の分野では絶対条件だと思うが。
御輿(みこし)をかつぐマニアがいなくなれば、メーカーのブランド力も消えるんだぞ。オーディオの世界がそうだったろう?
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